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図抜けた歌唱と楽しいトーク! イタリアのテノール・トリオ「IL VOLO(イル・ヴォーロ)」来日公演ルポ

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3大テノールのルチアーノ・パヴァロッティ(1935~2007)が亡くなって早10年。バリトンへ転向したプラシド・ドミンゴは、ヴェルディ作品でバリトン役のレパートリーを拡大しながら、指揮者としても活躍。ホセ・カレーラスは新作オペラに出演したり、リサイタルで来日したり。もしパヴァロッティが長生きしていたら……。「ポスト3大テノール」といわれるスターは複数いるが、3人でのコンサートは成立していないのだ。

そんな状況下、イタリアのクラシカル・クロスオーバーのテノール・トリオ、IL VOLO(イル・ヴォーロ)が欧米で人気を博し、ついに日本に。「3大テノール」を彷彿させるグループにと、TVオーディションをきっかけに結成され、10代半ばにデビューして7年になる。メンバーはジャンルカ・ジノーブレ、イニャツィオ・ボスケット、ピエロ・バローネ。

来日公演は東京と川崎の2カ所で、どちらも完売。川崎での「Notte Magica~魅惑の夜~」公演に出かけたが、満員の客席を終始大いに沸かせた。

会場のカルッツかわさき(神奈川県川崎市)は、約2000人収容のホール

会場のカルッツかわさき(神奈川県川崎市)は、約2000人収容のホール

プログラムは、昨年イタリアのフィレンツェでドミンゴとの共演がかなった「3大テノールに捧げるコンサート」でのクラシカルな曲を軸に、カンツォーネやミュージカル曲、オリジナル曲など、計20曲余り。本家本元「3大テノールコンサート」の演目をベースにしており、オペラ『トゥーランドット』のアリア『誰も寝てはならぬ』や、カンツォーネの『帰れソレントへ』『オー・ソレ・ミオ』など、名曲揃いである。また、個々の特長を生かして、ソロあり、デュオあり、トリオありで、オーケストラをバックに歌い上げる。まさに「3大テノールコンサート」と同じようなシチュエーションなのだ。

オープニングは3人で『誰も寝てはならぬ』。ジャンルカが甘くムーディーな声で歌い始め、ピエロがハイトーン域を美しく響かせると、すでに観衆はうっとり。イニャツィオも、名シーンが目に浮かぶような歌唱で、トリオで高らかにフィニッシュすると、とても1曲目とは思えない盛り上がり。この状態が最後まで続くのである。

笑い満載のトークも全開。

「パヴァロッティ……、カレーラス……、ドミンゴ……、に捧げるコンサートにようこそ」と絶妙の間をとり、自分たちを3大テノールの面々に見せるフェイントをかませて、のっけから観客のハートをゲット。陰マイクで日本語に同時通訳され、若者らしいユーモアに富んだ会話がムードメーカーのイニャツィオを中心にテンポよく展開していく。

しかし音楽が始まると瞬時に大人のクラシカルな歌手の顔になり、それぞれの個性を発揮して歌うのだった。

ロマンチックな貴公子キャラのジャンルカ

ロマンチックな貴公子キャラのジャンルカ

ジャンルカは、ロマンチックでスィートな魅力を、レオンカヴァッロの『朝の歌』やロッシーニの『踊り』、ロドリーゴの『アランフェス』などで表現。歌い終えるたびにファンがステージに詰めかけ、抱えきれないほどの花束プレゼント攻撃!  これには驚いた。

ムードメーカーのイニャツィオは「Mr.カンツォーネ」タイプ

ムードメーカーのイニャツィオは「Mr.カンツォーネ」タイプ

イニャツィオは「ミスター・カンツォーネ」と呼びたくなるおおらかなイタリアン。パヴァロッティの十八番だったオペラ『愛の妙薬』の『人知れぬ涙』を熱唱したり、ミュージカル『ウエストサイド物語』の『トゥナイト』を天性の明るさで表現したり……。

ハイトーンで朗々と歌うピエロは、オペラ歌手の風格

ハイトーンで朗々と歌うピエロは、オペラ歌手の風格

ピエロはすでにオペラ歌手の風格で、カレーラスの得意な『グラナダ』では、曲中の感動的なロングトーンに拍手が! ドミンゴの真骨頂『トスカ』の『人知れぬ涙』やフランク・シナトラのヒット曲『マイ・ウェイ』もスケール感たっぷりで、ソロサバルの『ありえない』を伸びやかな高声で朗々と歌うとホールが響き、喝采が暫く鳴り止まなかった。

お互いの歌唱を讃美し合う。見ていて気持ちいいシーンだ

お互いの歌唱を讃美し合う。見ていて気持ちいいシーンだ

また、ローマ法王の前でも披露したオリジナル『アヴェ・マリア』では、ジャンルカが「カトリック信者の一人としてとても感激しました。CDに録音してフランチェスコ法王にプレゼントしました」と思い出を感慨深げに語ったりも。

「日本の女性はエレガントですね」とリップサービスもなかなかのもので、20代前半とは思えないステージ運びだった。イニャツィオが「日本で本物の寿司のおいしさにビックリしました。いろんな人に出会って、忘れられない思い出がたくさんできました。また来年帰ってきたいです!」と締めくくり、客席の手拍子とともにオペラ『椿姫』の『乾杯の歌』を歌い、盛り上がってエンディングとなった。

盛り上がったフィナーレ。左から3人目は、指揮者のマルチェッロ・ロータ

盛り上がったフィナーレ。左から3人目は、指揮者のマルチェッロ・ロータ

アンコールで、ヒット曲『グランデ・アモーレ』を歌い終わると、客席はスタンディングオベーションに。あちこちから「ブラボー!」が飛び交い、ステージのエプロンには握手を求める大勢のファンが!

休憩なしでたっぷり2時間。熱気に包まれ、興奮した観客のおしゃべりが終演後も暫くそこかしこから聞こえた。
「素晴らしくて! 最後に2階席から下りてきてよかった。ピエロと握手ができた」
「花を用意してくればよかった。まあ、今年は予行練習、来年の本番ではジャンルカにいっぱい渡すから(笑)」
「みんな成長の真っ只中で、応援しがいがある。イニャツィオがさらに成長して、カンツォーネをたっぷり歌うのをゆったりと聴いてみたい!」などなど。

伸び盛りのイタリアン「テノール・トリオ」の今後が楽しみだ。

文=原納暢子

公演記録
『IL VOLO Notte Magica ~魅惑の夜~』

■日時:2017年12月01日(金) 18:30~
会場:カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)
出演:IL VOLO (ジャンルカ・ジノーブレ、イニャツィオ・ボスケット、ピエロ・バローネ)
曲目:オペラ『トゥーランドット』より『誰も寝てはならぬ』、オペラ『愛の妙薬』より『人知れぬ涙』、オペラ『トスカ』より『人知れぬ涙』、レオンカヴァッロ『朝の歌』、ロドリーゴ『アランフェス』、『帰れソレントへ』『オー・ソレ・ミオ』他
■公式サイト:http://tate.jp/concert/IL%20VOLO/concertgilvolo.html

ドラマ『相棒』コンサートが2018年秋開催決定 杉下右京がナビゲートするオーケストラとバンドの生演奏×名場面映像

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テレビ朝日ドラマ『相棒』をオーケストラとバンドの生演奏、そして特別編集した名場面映像で楽しむ『相棒コンサート-響-』が2018年秋に東京・大阪の2都市で開催されることがわかった。

2014年・2016年と好評を博した『相棒コンサート-響-』待望の第三弾となる本コンサートは、ライブならではの迫力と臨場感で『相棒』の新たな魅力、楽しみ方を体感、堪能できるプレミアムなもので、ナビゲート映像には杉下右京役でお馴染みの水谷豊も登場する。 

公演情報
相棒コンサート-響-

■開催日時  
東京公演2018年9月23日(日)開場:午後5時00分 開演:午後6時00分
2018年9月24日(月・休) 開場:午後0時00分 開演:午後1時00分

大阪公演2018年10月6日(土)開場:午前11時00分 開演:午後0時00分
開場:午後3時30分 開演:午後4時30分

■会場 
東京公演東京国際フォーラム ホールA
大阪公演フェスティバルホール

■出演 
指揮・作曲・音楽監督:池頼広
演奏:相棒サウンドトラック・オーケストラ&バンド、 相棒CHOIR、 ソリスト
ナビゲート映像:杉下右京(水谷豊)
スペシャルゲスト:後日発表

■チケット 
全席指定 ¥9,800(税込)
※イベント公式HPにて、 チケット最速先行予約受付中(抽選制)
■ 問い合わせ 先 
東京公演ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999 (平日12:00~18:00) 
※1月8日(月・祝)までは音声ガイダンス対応
大阪公演キョードーインフォメーション 057-200-888(10:00~18:00)


 イベント公式HP 
http://www.tv-asahi.co.jp/aibouconcert/

 

 

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【今週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年1月1日~2018年1月7日)

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さぁ、2018年の幕開けです。年末年始の煌びやかな雰囲気も、今年はあっという間に流れていくかもしれません。家族や気の置けない仲間と顔を合わせること、お墓参りや初詣、お雑煮やお節料理、季節の食材を食べるなど「ルーツ」「しきたり」「伝統」のような古き良きものに触れることをおすすめ。無意識な疲れもほどけていくような出来事がありそうです。昔好きだったな、というものに触れてみたり、スマホの中に溜まったデータを整理整頓すると、意外なヒントや活力が得られそう。

年末から引き続き、意外な情報が明らかになったり、見通しがつきにくい保留事項の急展開があったり、情報の交通整理が行われています。年明け早々、大きなニュースや周囲の動きに対応することになりそうなので、休める時にはしっかりと休息を。

今すぐにではなくとも、何かしら完了、終了、結末を迎えるものが幾つかあるかもしれません。新たな始まりと捉えらえることが鍵になります。収入、財産、権利、権威、契約、愛情に関するもので、長らくの間もたついていた問題にはここで終止符が打たれそう。時の流れを経て積み重ねてきた一時代が幕を下ろし、大きな節目を具体的に迎えていく準備のタイミングであることを実感していくことになるでしょう。

これまでは周囲への気遣いや空気の読み合いで受身になっていた場合、表立った言葉や態度で示すことのなかった「真意」について、いよいよ自ら積極的に表明していくことになるのかもしれません。何においても自発的に取り組む姿勢が問われそうです。

絡み合ったお互いの事情というものも踏まえ、建設的に「このままギブ&テイクを続ける」もしくは「終わらせる計画」を立てる必要も出てきそう。油断していると美味しい話に足元を掬われ、新たな争いの火種がうまれたり、不利な契約に落ち着いてしまうかも。自身の地に足付いた生活、謙虚さが問われます。現実的な考え方が吉。逃げずに対処を。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
視野をひろげる、サラウンド
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
回転するもの、ミラーボール
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
異次元、ファンタジー
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
予想外、ギャグ
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
現実主義、シュール
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
意外性、ドラマティック
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
純真、ナチュラル
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
融合、オーケストレーション
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
地盤固め、ベーシック
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
視覚的な、ポップス
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
万感の、クライマックス

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話題騒然の英国ロイヤルバレエ団『不思議の国のアリス』アンコール上映がいよいよ1月5日より!各日の上映時刻発表

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バレエ初心者にして「バレエとは、こんなにも面白いものなのか」と興奮を抑えられなくなり、それどころかバレエ通さえも「こんなにも豊かで楽しいバレエが可能なのか」と驚愕してしまうバレエ作品。それがバレエ『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland)なのである。あくまでバレエの伝統をしっかりと踏まえながらも、もはやバレエを超えた極上のエンターテインメントの域に達している。そこでは、舞踊はもとより、音楽、美術、文学、演劇、映像などすべての表現要素が最新形で結晶化されている。これぞ、21世紀の大英帝国が生み出した舞台芸術の魔法と呼んでも差し支えないだろう。


そんなバレエ『不思議の国のアリス』が「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」として日本全国の映画館で上映されたのが、ついこの間、2017年12月のことだった。忽ち評判を呼び、TOHOシネマズ日本橋では連日チケットが完売する盛況ぶりだった。観ることのできなかった人が続出、一度観た人からも「もう一度観たい」という声が多数あがった。そこで、2018年1月5日(金)から11日(木)までの一週間限定で、TOHOシネマズ日本橋にて異例のアンコール上映が行われることとなったのだ。そして、このほど、その上映時間が次の通り、ようやく明らかとなった。

1/5(金)・9(火)~11(木) 19:00
1/6(土) 12:45
1/7(日)・8(月) 11:30

チケット予約は、鑑賞日の2日前より劇場サイトおよび劇場窓口にてチケット予約が可能だ。詳しくは、こちら

英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson

英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」で上映されるバレエ『不思議の国のアリス』は、2017年9月~10月にロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスにおいて、英国ロイヤル・バレエ団により上演された舞台である。英国等では2017年10月23日に映画館で生ライブ中継された。

本作品は2011年に英国ロイヤル・バレエ団により初演、当初2幕(現在、DVDやブルーレイで購入できるヴァージョン)だったが、2012年までにアリスとハートのジャックのパドゥドゥーが追加されて現在の3幕に改訂された。同バレエは、2013年に英国ロイヤル・バレエ団の来日公演でも上演され、こちらもチケット完売により追加公演が打たれるほどの人気ぶりだった。

英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson

英国ロイヤル・バレエ「不思議の国のアリス」 (C) ROH.Johan Persson

さて、このバレエ『不思議の国のアリス』、原作は言わずもがなの、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland)。英国人数学者チャールズ・ドジソンが前述のペンネームで1865年に発表した児童小説であり、世界ナンセンス文学史上の金字塔である。この言語遊戯に満ち溢れたファンタジーから、あらゆる言葉を抜き去り、新たな現実と夢を往還する恋物語として台本を再構築したのが、英国人劇作家のニコラス・ライト(Nicholas Wright)だった。そして、その世界を舞踊表現によって巧みに現前化してみせた天才振付家こそ、クリストファー・ウィールドン(Christopher Wheeldon)なのだった。

ウィールドンは、1973年生まれ現在44歳の英国人振付家である。1991年、英国ロイヤル・バレエ団にダンサーとして入団(同年ローザンヌ国際バレエ・コンクールで金賞を受賞)、1993年にニューヨーク・シティ・バレエに移籍後、1997年より振付を手掛けるようになる。2007年にバレエ・カンパニー「モルフォーセス」を設立し、数々の意欲作を発表。また、サンフランシスコバレエ団、ボリショイバレエ団、そして英国ロイヤル・バレエ団などから振付を委嘱されるようになった。元々の出身母体である英国ロイヤル・バレエでは2011年にバレエ『不思議の国のアリス』、2014年にバレエ『冬物語』を発表した。

その一方で、ウィールドンはミュージカルの分野でも注目すべき仕事を行っている。2014年にガーシュインのミュージカル『パリのアメリカ人』を演出&振付、パリで初演後、2015年ブロードウェイに進出、トニー賞ミュージカル部門で最優秀振付賞を受賞した。なお、同作品ではバレエ『不思議の国のアリス』のスタッフでもあったナターシャ・カッツ、クリストファー・オースティン、ボブ・クロウリーもそれぞれトニー賞の最優秀照明賞、最優秀編曲賞、最優秀舞台美術賞を受賞している。

ときに、バレエ『不思議の国のアリス』の魅力的要素としてまず特筆したくなるのが、非常に美しく、それでいて機知に富む音楽だ。これを手掛けたのが、ジョビー・タルボット(Joby Talbot)。1971年生まれ現在46歳の英国人作曲家。今回の『不思議の国のアリス』ではオーケストラの約半分を打楽器群が埋め尽くすという大胆な楽器編成で、スピード感や躍動感が聴く者の心を躍らせる。ちなみに、タルボットは、日本でもヒットしたアニメ映画『『SING/シング』(2017年)の音楽をはじめ、『銀河ヒッチハイク・ガイド』、『ペネロピ、『ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日』、『リトル・ランボーズ』、『バーク アンド ヘア』など数多くの映画音楽を手掛けてきた。また、バレエでは、ウィールドンとの仕事(『不思議の国のアリス』『冬物語』等)以外に、英国ロイヤル・バレエ団の『Chroma』(2005年)や、パリ・オペラ座バレエのために作られた『Genus』 (2007年) といった、英国ロイヤル・バレエ団振付家ウェイン・マクレガー(Wayne McGregor)との仕事も有名である。身体の動きや情景に連れ添う音楽を作ることはお手の物といった趣が感じられる。

他方、目を見張らせる舞台美術と衣裳を担当したのは、名匠ボブ・クロウリー。1952年アイルランド生まれの天才舞台美術家である。トニー賞ノミネーションの常連であり、実際の最優秀舞台美術賞受賞作も『アイーダ』『ヒストリー・ボーイズ』『コースト・オブ・ユートピア』『ワンス』、そして今年日本で上演される『メリー・ポピンズ』などミュージカル、ストレートプレイを問わず、枚挙にいとまがない。それにしても『アリス』の原作をよりポップに炸裂させた美術と衣裳は、強烈無比である。アリスのすみれ色の衣裳、ハートの女王、チェシャ猫、芋虫、もみの木……列挙していたらキリがないほど、ヴィジュアル・イメージが豊かすぎる洪水である。数あるボブ・クロウリーの仕事の中でも『アリス』こそは最高傑作に挙げられるべきものと断言できる。


クロウリーの美術や衣裳の他にも、『アリス』では映像やプロジェクションマッピング、そして人形劇など、驚きの意匠が次から次へと飛び出してくるから、油断がならない。

これら完全無欠のスタッフワークと共に、もちろん声を大にして語らずにはいられないのが、英国ロイヤル・バレエ団の出演ダンサーたちである。初演でもアリス役を演じたローレン・カスバートソンのなんという、端正で可愛らしく優雅にして清々しくお茶目な演技。そして、マジシャン/マッドハッターを演じるスティーヴン・マックレーの超絶的タップには打ちのめされそうになる。圧巻はハートの女王のラウラ・モレーラ。あるバレエのパロディシーンでは、凄まじい顔芸と共に高度な踊りをスラプスティックにこなす。その他、ダンサーの魅力点を語り始めたら、これまた止まらなくなってしまうので、気になる向きには観てのお楽しみとしておこう。なお、こちらから、キャスト表がダウンロードできるので、観に行く際には参考にしていただきたい。

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」の上映では、開演前後や休憩後に入る解説や関係者インタビューも気が利いている。英国演劇界きっての名優サイモン・ラッセル・ビール(ナショナルシアターライブ『リア王』などでおなじみ!)も登場し、初演で侯爵夫人を演じた思い出を語るのは演劇ファン必見であろう。

なお、バレエ『不思議の国のアリス』は、今年2018年11月に新国立劇場オペラパレスにおける「2018/2019シーズン開幕バレエ公演」として、新国立劇場バレエ団により上演されることがアナウンスされている。 アリス役には、小野絢子と米沢 唯が、そして、ハートのジャック役には福岡雄大と渡邊峻郁が、振付のクリストファー・ウィールドンによってキャスティングされた。これは、今年の日本のバレエ界において最も注目される公演となるだろう。

そのPVも12月にyoutubeにアップされたので、ここに改めて紹介する。

 
イベント情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン
『不思議の国のアリス』アンコール上映

 
■振付:クリストファー・ウィールドン
■音楽:ジョビー・タルボット
■指揮:クン・ケセルス
■出演:
ローレン・カスバートソン(アリス)
フェデリコ・ボネッリ (ハートのジャック)
ジェームズ・ヘイ(ルイス・キャロル/白ウサギ)
*エドワード・ワトソンから変更
ラウラ・モレーラ(ママ/ハートの女王)
*ゼナイダ・ヤノウスキーから変更
スティーヴン・マックレー(マジシャン/マッドハッター)
■上映劇場:TOHOシネマズ日本橋
■上映日程:2018年1月5日(金)~1月11日(木)
1/5(金)・9(火)~11(木) 19:00
1/6(土) 12:45
1/7(日)・8(月) 11:30
■上演時間:3時間13分
■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
■劇場サイト:https://hlo.tohotheater.jp/net/schedule/073/TNPI2000J01.do

新国立劇場2018/2019シーズン開幕バレエ公演
『不思議の国のアリス』〔新制作〕

 
■上演日程:2018年11月
■上演回数:6回(予定)
■会場:新国立劇場オペラパレス
■出演:新国立劇場バレエ団
■振付:クリストファー・ウィールドン
■台本:ニコラス・ライト
■音楽:ジョビー・タルボット
■美術・衣裳:ボブ・クロウリー
■照明:ナターシャ・カッツ
■映像:ジョン・ドリスコール、ジェンマ・キャリントン
■パペット:トビー・オリー
■マジック・コンサルタント:ポール・キエーヴ
■共同制作:オーストラリア・バレエ
■公式サイト:http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_010527.html

【来週の星占い-おすすめエンタメ情報-】(2018年1月8日~2018年1月14日)

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お正月ムードも落ち着き、世の中が想像以上に目まぐるしく動き出しそうな空模様。あまりにも一気に展開していくので状況についていくのがやっと、という方が多くなるかもしれません。気持ちが激しく揺さぶられたり、選択肢を前に右往左往したり、落ち着いて何かを決断していくというには、あまりに時間や情報整理が足りないかも。

実際に目指している当初の計画や理想と違っても、やるべきことが目の前にあるのなら、とにかく今はこなしていった方がいいみたい。それをしたからといって、何かがどうにかなるとかそういうものではなさそうだけれど、予想してなかったチャンスを得ることになったり、以前から準備を重ねて来たものにはパッとスポットライトが当たるようなラッキーも同時に動いています。逆にこの流れに対して頑固に動かないでいるとバタン!と音を立てるほどの高い圧力で、今までやってきたことまで倒されてしまうことにもなりそう。

自分は何がやりたいのか、何をしたいのか。そもそもなぜそうしたいのか。自分自身の本性、善悪の判断基準、他者とのかかわり方を再確認しながら、言動には十分に気を付けたいとき。思わぬ相手が引きずりおろしにかかっていることに気づいたり、うっかり自分が誰かにそうしてしまいそうになったり、自覚している気持ちが二転三転してゾッとするなんてこともあるかもしれません。普段から地に足付けてちゃんとしているかどうかを点検されるような気運。

甘く見ていたものには容赦なくお叱りがやってきそうですし、想像以上にそのハードルが高いものであることに気づいて、気を引き締めなくてはいけないと思うことがあるのかも。毎日をウソ偽りなく丁寧に。当たり前のことを当たり前に。がキーワード。盛り過ぎに注意です。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
新機軸、モダンアート
◆おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
再点検、リバイバル
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
感情表現、アーティスティック
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
論理的、ヘッドセット
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
探求精神、ワークアウト
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
熟考する、マーブル
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
拡張する、エクステンション
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
発散、スパークリング
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
恩返し、メモリアル
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
隠し技、テクニカル
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
預言的な、シャーマン
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
鋭角の、ショートカット

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ピアニスト清塚信也が吉田鋼太郎主演舞台の音楽を担当 「楽士」として舞台への出演も

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ピアニスト・清塚信也が今年5月に開幕する吉田鋼太郎主演舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』で劇中の音楽を担当、そして楽士として出演することが決まった。清塚はTBS系 金曜ドラマ『コウノドリ』でピアノテーマおよび監修・音楽を担当し、自身もドラマに出演するなど今話題のピアニストの一人である。

本舞台のストーリーには、主人公シラノ(吉田鋼太郎)が愛するロクサーヌ(黒木瞳)のために詩を作り読む。ロクサーヌが美青年クリスチャン(大野拓朗、白洲迅Wキャスト)を思い慕うなど、ロマンティックな場面も多いため、劇中の音楽はピアノを主とした音楽家を起用したいと、制作サイドが演出の鈴木裕美に清塚の起用を提案。昨年2017年に、鈴木と清塚との話し合いの場を設けられた。

今まで日本でも幾度と上演されてきた作品ではあるが、今までにないエンターテイメント作品として描きたいという鈴木から、ピアノの音だけの表現でなく、より広がった音楽観で劇中を飾りたいと提案され、清塚もその場ですぐに音楽のプランを提案。その日初めて会って話した二人だったが、創作に対する意見は合致し意気投合し、一緒にこの作品を創り上げていくことが決定した。

清塚信也

清塚信也

加えて、清塚は鈴木から劇中の音楽を舞台裏で奏でるのでなく、せっかくなので、100年前の当時にもきっといたであろう楽士として清塚が舞台に出演するのはどうかと言われ舞台への出演も快諾したと言う。

以前にヨーロッパにて、シェイクスピアの『テンペスト』の劇中音楽を制作したこともある清塚だが、日本で日生劇場公演のように大劇場サイズの公演の演劇作品を手がけるのは、今回が初めてである。

公演情報
シラノ・ド・ベルジュラック

日程:2018年5月15日(火)~30日(水)
会場:日生劇場
 
作:エドモン・ロスタン
上演台本:マキノノゾミ 鈴木哲也
演出:鈴木裕美
<キャスト>
シラノ・ド・ベルジュラック:吉田鋼太郎
ロクサーヌ:黒木 瞳
クリスチャン(Wキャスト):大野拓朗/白洲 迅
 
ル・ブレ:大石継太
ラグノー:石川 禅
ド・ギッシュ伯爵:六角精児
ほか

<チケット>
一般前売開始:2018年1月20日(土)
料金(全席指定・税込)S席12,000円/A席7,000円/B席4,000円

 

 

小原孝が語る『渋谷道玄坂★おしゃべりピアノ・カフェ~小原孝のピアノ名曲フォーユー~』、岡本真夜とのスペシャル・コラボ!

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NHK-FMの『弾き語りフォーユー』は、リスナーから寄せられたリクエスト曲を、ピアニストで作編曲家でもある小原 孝(おばら たかし)が、独自のアレンジで即興演奏する人気音楽番組。パーソナリティも務める小原の優しく包み込むような語り口も人気で、19年間にわたって、心地よいひとときを届けてきた。その彼が、e-plus LIVING ROOM CAFE&DININGで、『渋谷道玄坂★おしゃべりピアノ・カフェ ~小原孝のピアノ名曲フォーユー~』と題したライブ・シリーズを始める。来る1月24日、記念すべき第一回のスペシャル・ゲストは、シンガーソングライターの岡本真夜(おかもと まよ)。岡本は、2016年にプロデビュー20周年を迎え、ピアニスト“mayo”としての活動をスタートし、大きな反響を呼んでいる。二人のアーティスト、小原と岡本のコラボは、果たしていかに!? ライブを目前に控えた小原に、ライブへの想いから今後の展開まで、じっくり話を訊いた。

音楽とおしゃべり、お料理とお酒が楽しめる「大人のカフェ」に

――まずは、今回、「おしゃべりピアノ・カフェ ~小原孝のピアノ名曲フォーユー~」に臨む現在のお気持ちを聞かせて下さい。

この渋谷で、音楽とおしゃべり、そして、お料理とお酒が楽しめる「大人のカフェ」のような企画が出来たらいいなぁとずっと考えていました。少し前ですが、六本木のスイートベイジルで似たようなシリーズをやっていました。一年毎もしくは半年毎のライブで、シリーズ自体が終わっても、形を変えつつ、色々と続けていました。あの頃みたいに根付いた形のライブ・シリーズを復活させたいという想いがあり、この素敵な場所を知って、新しいシリーズを立ち上げる運びとなりました。渋谷は、僕にとって特別な場所。レギュラー放送を長年にわたって務めてきたNHKとも近く、慣れ親しんだ大切な場所なんです。

――第一回は、岡本真夜さんをゲストに迎えられますね。今回のコラボは、どういった経緯から実現したのでしょうか?

真夜さんは、近年、ピアニストとしての活動にも意欲的で、僕は歌とピアノの両方のライブに行かせていただいています。前々から、「是非、一緒にやりましょう」という話はありました。今回、新しいシリーズを立ち上げるに当たって、今までできてなかったことをやりたいとの想いがあり、真夜さんに声を掛けました。

――どのようなプログラムが予定されているのでしょう。

前半は、僕のソロコーナー。クラシック音楽の名曲をたっぷり楽しんでいただこうと思っています。後半は、真夜さんを迎えて、彼女の作品を取り上げつつも、ライブでは聴けないような多彩なコラボをお届けしたいと思っています。

また、今回のライブでは、トークも楽しみにして欲しいですね。ピアニストが一緒に語り合うという機会はそう多くありません。よい機会ですから、ピアニストとして真夜さんの考えていることを訊いてみたいなと思っています。「おしゃべりピアノ・カフェ」というタイトルをつけたのも、こういった考えがあったからです。

――前半のソロコーナーでの聴きどころを教えてください

ライブの副題に付けた「ピアノ名曲フォーユー」というのは、僕の最新アルバムのタイトルから採りました。まずは、このCDに収録した曲から幾つかを聴いていただこうと思っています。大曲はもちろんですが、初心者向けの小品にも魅力があり、それぞれのストーリーがあります。例えば、《乙女の祈り》や《エリーゼのために》。どちらも有名な曲ですが、プロのピアニストは殆ど取り上げない作品です。僕は、こうした曲を敢えて収録し、リサイタルでも演奏してきました。ライブで、そういったこともお伝えしたいですね。

実は、1月12日放送予定の「ららら♪クラシック」(NHK)は《乙女の祈り》の特集で、僕は解説と演奏をします。この曲は、バダジェフスカというポーランドの女性作曲家による作品。バダジェフスカは、音楽教育は受けてはいませんが、作曲が好きな裕福な家庭のお嬢様でした。当時は、女性が作曲家としてやっていくのは厳しく、ポーランドが国として一時、消滅したという歴史もあって、資料も極めて少ない幻の作曲家です。この曲は、日本ではよく知られていますが、彼女の祖国ポーランドでは知られていなかったんですよ。日本で広く愛されていたことが、最近、ポーランドに伝わって再評価が進んでいます。番組では、そういったことも取り上げています。

小原×岡本のここでしか聴けない演奏を

――後半に予定されている岡本真夜さんとのコラボはどういったものになるのでしょうか。

真夜さんの歌とピアノの両方の魅力を伝えられるようなライブをしたいですね。まず、真夜さんにオリジナルのソロ作品を弾いていただきます。彼女は、作曲家としても大変なメロディーメーカーで、ピアノ曲にもそれが反映されています。センスの良い、美しい曲を沢山書かれてきました。

僕と真夜さんでのピアノ連弾もありますが、これは僕自身、とても楽しみにしています。今回は、多くの候補の中からラヴェルの《マ・メール・ロワ》より「眠れる森の美女のパヴァーヌ」と松田聖子さんの《SWEET MEMORIES》を演奏する予定です。

――お二人の連弾というのは、ここでしか聴けないものですね。コラボならではの企画として、他にはどういったものをお考えですか。

「みんなのうた」から、僕が作曲した《私はブランコ》と真夜さんの《ハピハピバースデー》の2曲をお届けします。また、僕は、東日本大震災の復興支援として、『逢えてよかったね』友だちプロジェクトという活動を続けてきましたが、その曲も二人でデュエットします。

忘れてならないのは、真夜さんの代表作《TOMORROW》。実は、去年、僕はアルバム(「弾き語りフォーユーpresents~ランチでピアノ3」)の中でこの曲をピアノ曲にアレンジしたんですが、偶然にも、同時期に彼女もピアノ曲にアレンジした《TOMORROW》を、ご自身のアルバムに収録されていました。今回、僕は自分のアレンジを演奏しますが、もしかしたら真夜さんもピアノのアレンジを披露してくれるかもしれませんね。

――このシリーズでは、今後のどのような方をゲストに迎えていくのかをお聞かせいただけますか。

色々な方とやってみたいですが、特に若い方々をゲストに迎えていきたいですね。僕自身の経験としても、若い時期に先輩方と共演させていただいたことは大切な財産になりました。

20年以上も前のことですが、全国ツアーの中で、よく地元の子どもたちと「ねこふんじゃった」を一緒に連弾していました。その頃は、練習曲がつまらないとか、ピアノの先生が厳しいとかいった理由で、ピアノを辞めてしまう子どもが多くて、趣味として、楽しくピアノを続ける人が増えたらいいなあと思って始めたものです。実は、この「ねこふんじゃった」コーナーに出演した子の中には、現在、プロとして活躍している方もいます。感慨深いですね。結果というのは、すぐに出るものじゃない。10、20年経った後に分かることや、これから分かることも沢山あります。世代を超えて伝えていくということが、とても大事だと感じています。

――最後に、読者のみなさんに、公演に向けてのメッセージをいただけますか。

新しい企画ですし、僕もすごく楽しみにしています。コンセプトは「大人のカフェ」。気軽に楽しめるような場所になったらいいなあと思っています。この日しか聴けないコラボですので、是非、足を運んでいただけたら嬉しく思います。

小原孝&岡本真夜 コメント動画


取材・文=大野はな恵  写真撮影=武田敏将

ライブ情報
『渋谷道玄坂★おしゃべりピアノ・カフェ ~小原孝のピアノ名曲フォーユー~』
 
■出演:
小原孝(Pf.)
ゲスト:岡本真夜(
mayo)(Vo、pf.)
■日時:2018年1月24日(水)open 18:30/start 19:30
■会場:eplus LIVING ROOM CAFE&DINING
■公式サイト:https://livingroomcafe.jp/

新国立劇場が2018/2019シーズン オペラ ラインアップを発表

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新国立劇場が2018年1月11日、2018/2019シーズン オペラ ラインアップを次の通り発表した。

<2018/2019シーズン オペラ ラインアップ>
『魔笛』[新制作]
『カルメン』
『ファルスタッフ』
『タンホイザー』
『紫苑物語』[新制作・創作委嘱作品・世界初演]
『ウェルテル』
『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ』
『ドン・ジョヴァンニ』
『蝶々夫人』
オペラ夏の祭典 2019-20 Japan↔Tokyo↔World『トゥーランドット』[新制作]


オペラ次期芸術監督 大野和士からのメッセージ

2017/2018シーズンに開場20周年を迎えるこの劇場に素晴らしい歴史を積み上げてくださった先人の先生方の跡を継ぐことに、この上ない責任を感じると共に、今後新たな創造に向かって限りなく邁進する覚悟でおります。この度は、新国立劇場を応援してくださるすべての皆様に、来る新シーズンのラインアップをご紹介できることを大変な喜びと感じております。

就任に先立ちまして、私が今後目指す大きな目標として、皆様に次の5つの点をお伝えしたいと思います。

第1に、レパートリーの拡充。新国立劇場はこれまで年間3演目の新制作を行ってきましたが、それを4演目に増やすことを計画しています。この枠の中で、新国立劇場の公演が世界初演出になるようなプロダクションを制作する他、現在まさに世界のオペラ界を席巻している旬の演出家の評判のプロダクションを積極的にご紹介していきたいと思います。新国立劇場はこれまでにも、20世紀の優れた作品などを果敢に上演して参りましたが、海外の劇場からのレンタルの関係で、一度限りの上演の後、元の劇場に帰ってしまう場合も多く、新国立劇場の誇る多彩なパレットに、その全てを加えることができませんでした。そこで海外のプロダクションを導入するにあたっては、繰り返し再演できるようにするシステム作りを目指します。

第2は、日本人作曲家委嘱作品シリーズの開始です。これは1シーズンおきに、日本を代表する作曲家に新作オペラを委嘱するものですが、その作品の創造過程では、これまでにないような、作曲家、台本作家、演出家、芸術監督との間での綿密な協議が重ねられ、最終的に音楽的にも、演劇的にも、日本オペラの歴史に新機軸を打ち出すことを目指します。その中から海外の劇場に引き継がれる日本オペラが生まれてくることを頭に描きながら。

第3は、2つの1幕物オペラ(通称ダブルビル)の新制作と、バロック・オペラの新制作を1年おきに行うこと。ダブルビルでは、例えば1年目は、プッチーニ作曲『ジャンニ・スキッキ』とツェムリンスキー作曲の『フィレンツェの悲劇』がカップリングされますが、その次には、例えば『ジャンニ・スキッキ』と他の1幕ものとを組み合わせることによって、一晩の公演とし、結果、一挙に演目を増やしていく意図に基づいています。"まさに一粒で二度おいしい"企画と言えます。また、今まで新国立劇場では、まだバロック・オペラが舞台上演されていないということですので、2019/2020シーズン以降に登場するこの新しいオペラジャンルにも是非ご期待いただけたらと思います。

第4は、旬の演出家、歌手をリアルタイムで皆様にお届けすることです。新制作で招聘する3人の演出家は、私自身共演の機会もあり、新時代の創造者として、また、オペラの舞台にそれぞれに独特な美しい視覚的体験をもたらす巨匠として、長らく皆様にご紹介いたしたいと思っていた方々です。歌手については、国際的な歌手に加え、重要な役にも優秀な日本人歌手を起用。これまで新国立劇場を支えてきた日本人歌手のみならず、海外で活躍する才能ある日本人歌手のニューフェイスもご紹介させていただければと思っています。

第5は、積極的な他の劇場とのコラボレーションです。今後、新国立劇場で、著名な演出家によって創造されるワールド・プレミエの機会を積極的に作って参りますので、それが海外の歌劇場との共同制作を通して、日本発のオペラ新演出が世界に広まるという新しい時代を切り開きたいと思います。既に、私と幾つかの劇場の総監督との間では、具体的な共同制作の話が始まっており、実現の暁には、古典的なオペラのレパートリーが東京から海外へと発信される大変名誉な例となることでしょう。同時に、国内の劇場や新国立劇場の他部門(演劇、舞踊、研修所)との連携も強化していきたいと思います。

具体的に、このシーズンで取り上げる新制作4演目についてご紹介させていただきます。

『魔笛』は、南アフリカ出身の現代美術の巨匠、オペラ演出におけるプロジェクションの魔術師として知られるウィリアム・ケントリッジによるプロダクションです。2005年にモネ劇場で初演されたのち、十数か所の劇場で上演されヨーロッパで大評判となりました。

続いて、日本人作曲家委嘱作品シリーズの第1弾である、西村朗作曲『紫苑物語』(石川淳原作)。演出は日本人オペラ演出家で唯一無二の世界的名声を誇る、笈田ヨシです。物語は、歌人の家に生まれた才能ある若者が、自分の存在意義を求めてさまよう、'ある芸術家の人生'。ある意味でオペラによる日本の『ジャン・クリストフ』とでもいえばよろしいでしょうか。石川淳の耽美的で情熱的な世界を、西村、笈田のコンビがどのようにオペラに移し替えるか興味がつきません。

次に、1幕ものを二つ合わせて一晩に上演するツェムリンスキー作曲『フィレンツェの悲劇』とプッチーニ作曲『ジャンニ・スキッキ』のダブルビル。両作品ともフィレンツェを舞台とする、片や男女の三角関係を描いたオスカー・ワイルド原作に基づく悲劇、もう一方は、ダンテの『神曲』'地獄篇'に題を得た、遺産相続をめぐる、てんやわんやの喜劇です。ダブルビル第一回目の演出は、イタリア語を自由に操り、日本オペラ界に新しい指針をもたらした粟國淳です。

最後は、『トゥーランドット』。オペラ・演劇制作集団であるスペインの"ラ・フーラ・デルス・バウス"の芸術監督であり、現在世界のオペラ界で引っ張りだこのアレックス・オリエが東京で初めてオペラを演出、プッチーニの新制作を世界へ発信します。彼が世界初演出を東京で行うことは、オペラ界の大きな話題となることでしょう。

再演6演目には、新国立劇場の誇るレパートリーから、イタリア、ドイツ、フランスのプロダクションをバランスよく取り上げました。

指揮者陣については、スカラ座での"ケントリッジの魔笛"を指揮したローラント・ベーア、ヴェローナ野外音楽祭でもおなじみの『カルメン』の指揮者ジャン=リュック・タンゴー、ドレスデンやナポリでデビューが続いている、『ドン・ジョヴァンニ』の指揮者、若いイタリアの俊英フランチェスコ・ランツィロッタといったフレッシュな顔ぶれに、オペラ指揮者として確固たるキャリアを築いているカルロ・リッツィ(『ファルスタッフ』)、ポール・ダニエル(『ウェルテル』)、アッシャー・フィッシュ(『タンホイザー』)という布陣です。

歌手陣は、タミーノ役でヨーロッパを飛び回っているスティーヴ・ダヴィスリム、パミーナ役、日本の名花、林正子。カルメン役、メトロポリタン歌劇場にもデビューの"カルメン歌い"ジンジャー・コスタ=ジャクソン、ファルスタッフ役、イタリアの大御所ロベルト・デ・カンディア、タンホイザー役、ワーグナーのオペラのタイトルロールで飛ぶ鳥を落とす勢いのトルステン・ケール、ドン・ジョヴァンニ役、洒脱で芳醇なワインの香りのようなニコラ・ウリヴィエーリ、『トゥーランドット』は、イレーネ・テオリン、リッカルド・ザネッラートに二人の輝ける日本人ソプラノ中村恵理、砂川涼子らの夢の共演。また、我が国の誇り、藤村実穂子が満を持して『ウェルテル』のシャルロットで登場するのも大きな見どころです。

オペラパレスで皆様とご一緒に、夢を追いかけることができたらどんなに素晴らしいことでしょう。


なお、大野和士 次期オペラ芸術監督による2018/2019シーズン演目説明会が、2018年1月19日(金)14:00に、新国立劇場オペラパレス客席で開催される。入場無料/自由席、誰でも参加可。事前申込みは不要、当日、直接会場に行けば聞くことができる。


新国立劇場が2018/2019シーズン バレエ&ダンス ラインアップを発表! 開幕は超話題のバレエ『不思議の国のアリス』

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新国立劇場が2018年1月11日、2018/2019シーズン バレエ&ダンス ラインアップを次の通り発表した。

<2018/2019シーズン バレエ ラインアップ>
『不思議の国のアリス』 [新制作]
『くるみ割り人形』
『ニューイヤー・バレエ』
『ラ・バヤデール』
『シンデレラ』
『アラジン』

<2018/2019シーズン ダンス ラインアップ>
JAPON dance project 2018 × 新国立劇場バレエ団『Summer / Night / Dream』
『ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2018』
新国立劇場バレエ団『DANCE to the Future 2019』
森山開次『NINJA』

大原永子 舞踊芸術監督

大原永子 舞踊芸術監督

舞踊芸術監督 大原永子からのメッセージ

2018/2019シーズンのバレエは、新制作の全幕バレエ『不思議の国のアリス』で開幕いたします。2011年に英国ロイヤル・バレエで世界初演された話題作を、オーストラリア・バレエとの共同制作により、日本のバレエ団として初めて上演します。本作は英国の作家ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を題材として、振付にはバレエ界を席巻する気鋭の英国人振付家クリストファー・ウィールドン、音楽には映画やテレビ番組の音楽を手がけるジョビー・タルボット、美術には数々の作品でトニー賞を受賞しているボブ・クロウリーという錚々たる英国人アーティスト達が集結して創作された作品で、日本では新国立劇場バレエ団が初めて上演の許可を得ました。世界でも有数のカンパニーしか上演できないこの作品をバレエ団のレパートリーに加えられることを誇りに思います。バレエの新たな息吹を感じさせる本作を通じて、ダンサー達の表現力と芸術性をより一層高め、お客様に楽しんでいただける舞台を創っていきたいと切望しております。古典バレエとは一味違う身体表現、現代のテクノロジーを駆使した舞台装置、色彩豊かな衣裳等、エンターテインメント性と芸術性を兼ね備えた華やかな舞台にご期待ください。

12月のクリスマス・シーズンには、2017/2018シーズンの開幕を飾ったイーグリング振付『くるみ割り人形』を上演します。1月には『ニューイヤー・バレエ』と銘打って、新旧の作品を上演します。約100年前に創作されたフォーキン振付『レ・シルフィード』『ペトルーシュカ』、そして現代の日本の舞踊界を牽引する振付家の中村恩恵による新作『火の鳥』という三演目での構成です。3月には、濃厚な人間ドラマが描かれる牧阿佐美演出・改訂振付の『ラ・バヤデール』、そしてGWにはアシュトン振付の心温まる名作『シンデレラ』を上演し、6月にはビントレー振付の人気作『アラジン』で、シーズンを締めくくります。

2018/2019シーズンのダンスでも、多彩な演目が並びます。8月には、ダンサー/振付家として国際的に活躍する日本人アーティストが構成・振付を担当して高い評価を受けた「JAPON dance project」が、シェイクスピアの名作『真夏の夜の夢』をテーマにした新作を創作します。11月には、日本独自のダンスの歴史を振り返る企画「ダンス・アーカイヴ in JAPAN」の第三弾として、『ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2018』を上演。3月には、新国立劇場バレエ団の中から振付家を発掘し育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」で生まれた選りすぐりの作品が小劇場に登場します。創作活動を通じてさらに磨かれるダンサー達の表現力にご注目ください。そして大人も子どもも楽しめるダンス公演『サーカス』を創作して大好評を得た森山開次による『NINJA』で、シーズンの最後を飾ります。

世代を超えて様々なお客様に楽しんでいただけるような多様性に富んだ、質の高い新国立劇場のバレエ、ダンス公演でありたいと願っています。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

新国立劇場2018/2019シーズンラインアップ説明会で新芸術監督を迎えた野心的なプログラムを発表

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2018年1月11日(木)、新国立劇場が主催する公演の2018/2019シーズンラインアップ説明会が開催された。登壇したのは新シーズンからオペラ芸術監督に就任する、指揮者・音楽監督として世界的に活躍する大野和士、2018/2019シーズンで5期目を迎える舞踊芸術監督の大原永子、歴代最年少で演劇芸術監督に抜擢された小川絵梨子の3人。この日発表されたのは同劇場にて上演されているオペラ、バレエ&ダンス、演劇の3ジャンル。このうちオペラ10演目中4演目が新制作、バレエでは世界中で活躍する振付家クリストファー・ウィールドンの人気演目である『不思議の国のアリス』をオーストラリア・バレエとの共同制作で日本初上演、演劇は2本が新作、新訳上演3作、日本初演1作という野心的な内容になっている。

■オペラ

まず、大野が、オペラ芸術監督として目指す5つの目標を挙げた。第1にレパートリーの拡充。そのために、これまで1シーズンに3演目だった新制作を4演目に増やす。また、これまでは海外の劇場からレンタル公演をした場合、その時限りでレパートリーの蓄積につながらなかったが、今後は上演権を買い取るなどして再演を可能にしていく等の方策をとる。

第2に、日本人作曲家委嘱作品シリーズの開始。重唱を多用したオペラ的なオペラを創作。日本発オペラの海外への発信を目指す。第3に、ダブルビル(1回の公演で1幕物のオペラを2作上演すること)の新制作と、バロック・オペラの新制作を1年おきに行う。2018/2019シーズンには『ジャンニ・スキッキ』と『フィレンツェの悲劇』のダブルビルを上演。このダブルビルは一方をほかの演目と組み合わせることもできるため、大野は「将来的なレパートリーの拡充につながる」と語った。

第4は旬の演出家・歌手の起用。「奇をてらった演出ではなく音楽に寄り添った演出で、オペラの世界で視覚的にこんなことができるという舞台を届けたい」という考えに加え、海外からの招聘歌手ばかりでなく、誇るべきレベルにある日本人歌手も積極的に登用し「イタリア人歌手ならスカラ座に、アメリカ人歌手ならMETの舞台に立つことに憧れるように、日本の歌手が新国立の舞台に立ちたい、と思うようになって欲しい」とビジョンを明かした。

第5には、他の劇場とのコラボレーションを掲げ、新国立劇場で著名な演出家によるワールド・プレミアを行い、海外の劇場との共同制作を通し日本発のオペラ新演出を世界に発信していくことを目指すという。ミラノ・スカラ座、メトロポリタン歌劇場、パリ・オペラ座など世界の名だたる歌劇場やコンサートホールで活躍する大野和士新芸術監督が、新国立劇場オペラをどんな新時代に導いてくれるのか、楽しみである。

大野和士

大野和士

■バレエ&ダンス

舞踊芸術監督として5期目を迎える大原は、芸術監督としての目標は最初から変わることなく、観客動員・公演スタンダードの高さ・ダンサー強化の3つを挙げた。現在の新国立劇場バレエ団ダンサーたちのプリンシパルから群舞に至るまでのレベルの高さ、安定した集客力を見れば、大原の言葉を借りれば「必勝のハチマキを巻いて」尽くしてきた努力の成果は明らかだ。4期目の今シーズンは古典作品の上演が多く、一部からは批判も受けたそうだが、古典作品を踊ることが何よりもダンサーたちの技術的・精神的な成長を大きく促したと言う。

そして2018/2019シーズンは、2011年に英国ロイヤル・バレエで初演されて以来、国際的に注目され話題となっている『不思議の国のアリス』が開幕を飾る。世界中の子どもたちに親しまれているルイス・キャロル原作のお話を元に、巨大で華やかなセット、テクノロジーを駆使した演出、色彩豊かな衣裳に加え、テクニック的にも難しいステップや、ジャズダンスやタップダンスの要素まで入った、エンターテイメント性と芸術性を兼ね備えた本作では、主なキャストの選定に振付家のクリストファー・ウィールドンも加わり、ちょっと意外なキャスティングもあるとのこと。

また2019年1月のニューイヤー・バレエでは『レ・シルフィード』『火の鳥』『ペトルーシュ』の3作品を上演するが、そのうち『火の鳥』は日本の舞踊界を牽引する中村恩恵による新振付。中村は2017年に新国立劇場バレエ団のために振り付けた全幕ダンス作品『ベートーヴェン・ソナタ』でも彼女の人柄がにじみ出たような繊細で美しい振付が好評を博しており、新作への期待が高まる。また、中村は新たなコンテンポラリー作品を生み出す『DANCE to the Future 2019』でも2016年に続きアドバイザーを務めている。

大原永子

大原永子

■演劇

そして、2018/2019シーズンから演劇芸術監督に就任する小川。小川は、今年39歳という若さながら、演出でも翻訳でも数々の賞を受賞しており、2018/2019シーズンの新国立劇場でも『スカイライト』と野木萌葱の新作の演出、『かもめ』の翻訳を手がける。

小川は芸術監督としての今後4年間の大きな方針として、3つの柱を考えている。1つ目は、幅広い観客層に演劇を届けること。子どもも大人も楽しめる企画や作品、地方公演も積極的に行う。

2つ目は、演劇システムの実験と開拓として、オーディション企画と「こつこつプロジェクト」を始動。オーディション企画では、すべてのキャストをオーディションで決めることにより、作り手が本当に必要とする俳優を見つけることを目的とする。また「こつこつプロジェクト」と銘打った企画では、ディベロップメントとして、1年という時間をかけた作品作りを目指す。小川は「海外では常に200ぐらいプロジェクトが動いており、機が熟した時に上演するというやり方をしている国立劇場もある。このプロジェクトでは、そのような実験と開拓を重ね、演劇を発展させていきたい」と考えを明かした。なお、新シーズンでは2019年3月に演出に大澤遊、西悟志、西沢栄治を迎えたリーディング公演を、「こつこつプロジェクト」の第1弾として上演する。

3つ目に挙げたのは、横のつながり。国内外の演劇団体と交流、招聘を行い「海外の劇場との関係も、10年、20年と持続していきたい」と語った。新シーズンでは、小川自身も大ファンだという、天野天街が主宰する名古屋の劇団「少年王者舘」を招聘する。

小川絵梨子

小川絵梨子

3人の芸術監督はそれぞれ、日本の観客の要望や需要を見据えながら、海外との交流、海外への発信も視野に入れていた。野心的でバラエティに富んだ新シーズンの開幕が待たれる。

新国立劇場主催公演2018/2019シーズンラインアップは、下記のとおり。

☆オペラ(計10演目) ※すべてオペラハウスにて上演
『魔笛(新制作)』2018年10月
『カルメン』2018年11~12月
『ファルスタッフ』2018年12月
『タンホイザー』2019年1~2月
『紫苑物語(新制作)(創作委嘱作品・世界初演)』2019年2月
『ウェルテル』2019年3月
『フィレンツェの悲劇/ジャンニ・スキッキ(新制作)』2019年4月
『ドン・ジョヴァンニ』2019年5月
『蝶々夫人』2019年6月
オペラ夏の祭典 2019-20 Japan⇔Tokyo⇔World『トゥーランドット(新制作)』2019年7月

☆バレエ(計6演目) ※すべてオペラハウスにて上演
『不思議の国のアリス(新制作)』2018年11月
『くるみ割り人形』2018年12月
『ニューイヤー・バレエ』2019年1月
『ラ・バヤデール』2019年3月
『シンデレラ』2019年4~5月
『アラジン』2019年6月

☆ダンス(計4演目)
JAPON dance project 2018×新国立劇場バレエ団『Summer/Night/Dream』2018年8月 中劇場
『ダンス・アーカイヴ in JAPAN 2018』2018年11月 中劇場
新国立劇場バレエ団『DANCE to the Future 2019』2019年3月 小劇場
森山開次『NINJA』2019年5~6月 小劇場

☆演劇(計8演目)
『誤解(新訳上演)』2018年10月 小劇場
『誰もいない国』2018年11月 小劇場
『スカイライト(新訳上演)』2018年12月 小劇場
フルオーディション1『かもめ(新訳上演)』2019年4月 小劇場
少年王者舘『1001(イチゼロゼロイチ)(仮題)(新作)』2019年5月 小劇場
『オレステイア(日本初演)』2019年6月 中劇場
『野木萌葱 新作』2019年7月 小劇場
こつこつプロジェクト―ディベロップメント― リーディング公演
『スペインの芝居』『マクベス』『あーぶくたった、にぃたった』2019年3月 小劇場

★平成30年度公演
青少年を対象とした公演

高校生のためのオペラ鑑賞教室
『トスカ』2018年7月 オペラパレス

高校生のためのオペラ鑑賞教室・関西公演 ロームシアター京都
『魔笛』2018年10月 メインホール

こどものためのバレエ劇場
『シンデレラ』2018年7月 オペラパレス

(取材・文・撮影/月島ゆみ)

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年1月15日~2018年1月21日)

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新年早々、バタバタと過ごしている方も多いかもしれません。この辺りでホッと一息ついておきたいところですが、うっかり気を抜いたタイミングでの凡ミスや、些細なキッカケから起きるトラブルに注意したいとき。

そんなことってある? なんて笑い話ですむようなものから、上司、目上の人、権威、組織にまつわる笑えない話まで、自分におよぶ影響範囲に大小はあるにせよ、ちょっと意外性のあるニュースが飛び交うかも。

誰かに評価されたいというわけでもなく自分の中で淡々と続けていた物事が急に脚光を浴びたり、自分では何とも思ってなかった対象に急に萌えポイントをみつけたり、ふとした瞬間に印象が違って見えてくるものもありそう。嬉しい発見、想像上に面白くなりそうな取り組み、好きなアーティストやジャンルから大きな発表があるかもしれないので、アンテナは張っておいて。見落としてた情報にすごい良い情報が潜んでいる感じ。

SNSでのパフォーマンスが脚光を浴びる、実績も知名度もないところから急にスターとして登場するなど、瞬間視聴率の高いものがもてはやされてきた近頃ですが、話題性に飛びついてばかりいても、自分自身はあんまり満たされてないことに気付き始める時。これまで実力にふさわしい適正な評価をうけていなかったものごと、地道な努力や準備をしている人に注目してみるのもよさそうです。安心の、信頼の、安定の、がキーワード。

ヘッドフォンやスピーカーなど「耳にする情報が出てくるもの」を新調するのもおすすめ。物事の見方や解釈は、自分が選んだ環境次第でどんな風にでも変えていくことが出来る、そんなタイミングです。人から得る情報と自分の感性、どちらを信じるか、ふと考えさせられるようなことがあるかもしれないですよ。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
適材適所、オーガナイズ
◆おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
観察、フィードバック
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
予行演習、ショールーム
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
全部乗せ、パレード
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
想像力、ファンタジー
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
大は小を兼ねる、ギャラクシー
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
歴史的、ルーティン
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
意外性、セッション
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
隠し玉、ジョーカー
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
冷笑的な、ブラック
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
解放感、ファッショニスタ
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
熟成された、ゴールデンタイム

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最初で最後か? 伝説のアニメ『チャージマン研!』が奇跡のシネマコンサートに!

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伝説のアニメ『チャージマン研!』が、ライブシネマ形式でオーケストラが映像に合わせて生演奏される「シネマコンサート」としてフィーチャーされることとなった。「この機会を逃せばもうないだろう」「最初で最後」とも言われる奇跡のコンサートである。

『チャージマン研!』(通称「チャー研」)は1974年4月~6月の平日夕方にTBSテレビなどの10分枠で放送されていた1話完結形式のテレビアニメ。製作予算が低すぎてスタッフがやる気をなくした結果、驚くほど低品質な内容となり、それが2000年代になりネットを中心にカルト的なブームを起こすにいたった。「出演声優の稚拙な演技」「頻発する作画の乱れやフィルムに写り込むゴミ」「ご都合主義的だったり辻褄を無視した強引なストーリー展開」などが指摘される(ウィキペディアより)。「ボルガ博士!お許しください!」「気にするな!」「うぇーい」「ジュラル星人の仕業に違いない!」など数々の名セリフも残している。

しかし、そんな残念アニメの音楽を担当してるのが名匠・宮内國郎(みやうちくにお/1932-2006)なのだ。宮内は誰もが知る『ウルトラマン』『ウルトラQ』『宇宙猿人ゴリ/スペクトルマン』などの音楽を担当した大家。少年時代にガーシュインを聴いたことが音楽への道に進んだきっかけだっというだった、という彼が『チャージマン研!』において、ジャズやロックの要素も加えつつ、オーケストラサウンドの魅力をフルに花開かせた。アニメの内容と不釣り合いなまでに見事でカッコよすぎる音楽を聴くことができるのも、このアニメを伝説化させた要因の一つだろう。

今回の「シネマコンサート」では、第1部が「宮内國郎特集 コンサート形式」と題され、宮内國郎メドレー「ウルトラQ、ウルトラマン、快獣ブースカ、とびだせバッチリ、宇宙猿人ゴリなのだ、スペクトルマン・ゴーゴー、ラブラブショー、ガス人間第1号オープニング、エンディングより」、オール怪獣組曲(「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」より)、交響組曲「チャージマン研!」、ひばり児童合唱団の歌唱による「チャージマン研!主題歌」「研とキャロンの歌」が演奏される。

そして第2部では、ライブシネマ形式で『チャージマン研!』の三大傑作+1をスクリーン上映しながらオーケストラが生演奏をおこなう。上映されるのは、第16話「殺人レコード 恐怖のメロディ」、第45話「鳩時計が 3 時を指したら」、第31話「危機!爆破一秒前」、第35話「頭の中にダイナマイト」という人気の4話だ。

+1として追加される第31話「危機!爆破一秒前」の内容は次のとおり。ボルガ博士のときだけでなく「爆弾」フィーチャーなお話である。今回の事件は、ナント!コンサートホールに仕掛られた爆弾を10分以内に処理しなければ3万人の聴衆もろともホールは大爆発!というもの。爆弾のことを知らずに美しい音楽を奏でるオーケストラ。必死に爆弾を探すチャージマン研たち。ステージではクラシックの名曲であるオッフェンバック「天国と地獄(地獄のオルフェ)」が演奏される(もちろん宮内國郎作曲ではなくブラームス作曲でもない)。このままでは全員爆死という緊迫の一瞬で映し出される謎の実写画面「R-1 23話」を見逃すな!など、見どころ、ツッコミどころも豊富な逸品なのだ。コンサートホールに爆弾が仕掛けられる曲を、実際にコンサートホールで生演奏という、ギリギリの臨場感に緊張を禁じ得ない。

演奏は、オーケストラ・トリプティーク。ゴジラや黒澤明作品など東宝映画を中心に演奏してきたオーケストラで、今回、髙橋奨が指揮をする。さらに、アニメでも歌っている名門、ひばり児童合唱団も登場。音楽的クウォリティは文句のつけようのないほど高いものとなる。

今回の演奏会開催に関連する動画も複数公開されたので、参考までに見ておくとよいだろう。

あのキチ○☓ピアノを世界最高のピアノで演奏してしまいました!


 

ボルガ博士死のバラードを指揮者が演奏!


 
公演情報
チャージマン研!ライブシネマコンサート【宮内國郎特集】

■日時:2018年2月17日(土) [開場]13:30 [開演]14:00
■会場:渋谷区文化総合センター大和田4階さくらホール
(〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町23-21)
■料金:全席指定 S席¥7,000 A席¥6,000 B席¥5,000(税込)
※未就学児入場不可(限定6席の親子席は事務局扱い)
■お問合せ:事務局スリーシェルズ 070-5464-5060 (平日12:00~18:00)
■総合INFO:https://www.3s-cd.net/concert/jpn/km/

[主催] チャージマン研!コンサート実行委員会
[公認・協力] 株式会社ICHI
[企画制作] スリーシェルズ / ジャパニーズコンポーザーアーカイブズ
[作曲] 宮内國郎 復元編曲:今堀拓也
[指揮] 髙橋奨
[演奏] オーケストラ・トリプティーク
[合唱] ひばり児童合唱団
[ゲスト] 皆川おさむ

 
【予定内容】
第1部 宮内國郎特集 コンサート形式
宮内國郎メドレー
ガス人間第1号より
オール怪獣組曲
ひばり児童合唱団による「チャージマン研!」「研とキャロンの歌」
交響組曲「チャージマン研!」
第2部 ライブシネマ形式
チャージマン研!の三大傑作+1
第16話「殺人レコード 恐怖のメロディ」
第45話「鳩時計が 3 時を指したら」
第31話「危機!爆破一秒前」
第35話「頭の中にダイナマイト」
ライブシネマ形式でオーケストラが映像に合わせて生演奏!
その他、BGMを全曲演奏!
 
プロフィール
◆宮内國郎(みやうちくにお 作曲)
1932年2月16日東京都世田谷生まれ。『ウルトラQ』『ウルトラマン』『快獣ブースカ』『ガス人間第一号』『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』などの音楽を手掛けたアニメ・特撮音楽の巨匠。
ジャズの味わいを基本に、オーケストラサウンドまで幅広くフォローした作風で、児童合唱を使った『チャージマン研!』の主題歌、挿入歌、不気味サウンドやビートの効いたロックもふまえたBGMは重要作品である。2006年11月27日に74歳で亡くなった。
 
◆オーケストラ・トリプティーク
2012年、旧奏楽堂にて日本の弦楽オーケストラ曲を集めて第1回コンサートを開催して評価を受ける。第2回、第3回演奏会は、朝日新聞文化財団の助成を受け浜離宮朝日ホー ル(朝日新聞社内)で開催し、いずれもCD化され新聞、音楽誌他で好評を得た。2014年は伊福部昭百年紀の公式オーケストラとして、NHKや新聞の取材 も受け、3回の公演を成功に導く。2015年は、生誕90年の作曲家特集として、芥川也寸志と渡辺宙明の個展を開催して好評を得る。フルオーケストラ、弦楽オーケストラ、アンサンブル、小編成まで様々な形態で日本の作曲家の音楽をアーカイヴすべく活動している。リリースされたCDは10枚。タワー・レコード やamazonのチャートで1位も記録している。トリプティーク(三連画)とは、前衛、近現代音楽、映像音楽という三本の柱を持ち活動する意思の表明でもある。http://3s-ca.jimdo.com/
 
◆高橋 奨(たかはしすすむ 指揮)
東京生まれ。東京音楽大学音楽学部ヴィオラ専攻を経て、洗足学園音楽大学大学院修了。これまでにヴィオラを兎束俊之、 百武由紀、岡田伸夫の各氏に、指揮を上杉隆治氏に師事。2009年、ゲルハルト・ボッセ指揮ジャパンアカデミーフィルハーモニック参加。2009年横浜OMPオーケストラメン バー。2009年トリトンアーツ主催アドヴェントセミナー参加。新田孝指揮ロイヤル・シンフォニック首席ヴィオラ奏者。横浜山手クラシカル・プレイヤーズ 指揮者。
 
◆迫田圭(さこだ けい コンサートマスター)
東京音楽大学卒業。同大学院を給費奨学金を得て修了。在学中、東京音楽大学シンフォニーオーケストラのコンサートマスターを務める。東京音楽大学コンクール入選、第28回市川市新人演奏家コンクール弦楽器部門最優秀賞。現代音楽の演奏を主として結成されたロリエ弦楽四重奏団のメンバーとしてプロジェクトQ第10章に参加。ソリストとして新作初演にも数多く携わっており、サントリーホールの芥川作曲賞では新日本フィルハーモニー交響楽団(杉山洋一指揮)と共演した。現在、東京音楽大学ピアノ伴奏科演奏助手。これまで、ヴァイオリンを大熊庸生、安冨洋、景山誠治、木野雅之、荒井英治、各氏に、作曲を伊左治直氏に師事。
 
◆今堀拓也(楽譜復元・編曲 いまほりたくや)
1978年横浜生まれ。2001年にガウデアムス賞(オランダ)受賞。IRCAM(フランス)、スイス・ジュネーヴ高等音楽院修了、2017年イタリア国立ローマ・アカデミア・サンタチェチーリア研究科課程作曲専攻を最高位評価で修了。ならびにミラノ市立クラウディオ・アバド音楽学校指揮予備科で指揮を学ぶ。 ドナウエッシンゲン音楽祭(ドイツ)、ラジオフランス・プレザンス音楽祭、横浜みなとみらいホール委嘱、ベルリン・ブランデンブルク放送、ニコシア・ファロス国際現代音楽祭(キプロス)、ジュネーヴ・アルシペル音楽祭(スイス)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(イタリア)などで作品が演奏されている。ヴィスビー国際作曲家センター(スウェーデン)2012年および2015年レジデント作曲家。玉川大学芸術学部非常勤講師、日本大学芸術学部音楽学科助教を経て、現在ヴェルシリア音楽アカデミア(イタリア、トスカーナ州ルッカ県ヴィアレッジオ)作曲講師。http://takuyaimahori.strikingly.com/
 
◆ひばり児童合唱団
1943年、東京荻窪で皆川和子により創立され2017年には創立75周年を迎えた日本を代表する児童合唱団。安田祥子・由紀さおり姉妹を輩出し、吉永小百合が幼少期にレッスンに通っていたことでも知られている。創始者の皆川和子は「歌を通して子どもたちに希望を」という願いのもと合唱団を立ち上げた。『文明堂』や『ヤンマーディーゼル』の歌唱、CMやテレビへの出演など昭和のエンターテイメントを支えた児童合唱団。http://hibari-children1943.com/
 
【演奏メンバー
指揮 髙橋奨
Vn 迫田圭、藤代優意、荒井智子、知見寺武
Va 星光、伊藤美香
Vc 竹本聖子、細井唯
Fl 、Picc 向井理絵
Cl、B-Cl 古川邦彦
Fg 宮部貴絵
A-Sax、S-Sax 中嶋紗也
Hr 本田史由記
Tp 肥田尚子、森崎美穂、秋宗章太
Tb 山本靖之
Bas Tb 鯖瀬真義
Electric Guiter 大坪純平
Electric Bass(videolon) 佐藤洋嗣
Drum 重本遼太郎
Electone 竹蓋彩花
Piano 藤井麻理
Perc 岩見玲奈、日比彩湖
合唱 ひばり児童合唱団 15名
音響・映像操作 磯部英彬
ライブラリアン 青島佳祐
企画構成司会 西耕一

米津真浩&小瀧俊治の快活に響く連弾 4手の競演 『サンデー・ブランチ・クラシック』ライブレポート

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.12.3 ライブレポート

日曜の午後を渋谷のカフェで、クラシックを聴きながら過ごすひと時を。
12月3日のサンデー・ブランチ・クラシックは2人のピアニスト、米津真浩と小瀧俊治による1台4手の連弾だ。今回2度目の共演となる2人は、息の合った連弾のナンバーやそれぞれのソロも交えつつ、それぞれのピアニストとしての幅を披露。まるでキラキラの宝物が詰まったおもちゃ箱を覗いたような、楽しい30分であった。

オープニングは「カルメン・ファンタジー」

登場した米津&小瀧は1台のピアノに並んで腰かけ、一呼吸。
低音のトレモロが響き、始まった曲は「カルメン・ファンタジー」だ。ビゼーのオペラ『カルメン』の有名なフレーズをちりばめて編曲されたもので、オーケストラや吹奏楽をはじめ、様々な楽器のアレンジで演奏されている。今回は森亮平の編曲による連弾バージョン。

曲は「ハバネラ」や「闘牛士の行進」など、どこかで聴いたことがあるフレーズが次々と現れる。どことなくスイング感のあるジャジーなムード実にゴキゲンなテイストを醸し、客席も一気に引き込まれる。

まずは1曲弾き終えて、それぞれが「趣味はラーメンの食べ歩きで、1日2食食べたら1年で17キロ太りました」(米津)、「動物が好きです。犬とか猫のとかの画像を見て癒されています」(小瀧)と自己紹介。およそ“ピアニスト”というキリっとしたイメージとはちょっと違う、フレンドリーな雰囲気に客席も和む。

2人のソロと情景たっぷりのスリリングなメドレー

2曲目は小瀧のソロでドビュッシーの「月の光」。しっとりとしたなかにリリカルな響きが感じられる。

小瀧俊治

小瀧俊治

3曲目は再び連弾で、「クシコスポスト」と「熊蜂の飛行」のメドレーだ。「クシコスポスト」は運動会などでお馴染みの曲。連弾らしいパワフルな入り方で、この瞬間また会場の体温が1度くらい上がる。徒競走や二人三脚など、聴く人によってさまざまな思い出が浮かんできそうな運動会のあと、立て続けに今度は熊蜂が飛びはじめる。その息をつかせぬ曲と曲の繋ぎが実に面白く鮮やかだ。

「熊蜂の飛行」はピアノやヴァイオリンなど、様々な楽器で弾かれる超絶技巧の曲だが、これが連弾となると音色に一層厚みが出て、蜂の群れも数を増しているのかのようだ。郵便馬車が蜂の群れに突っ込んだようなスリリングさも感じさせ、聴いていて実に楽しい。

ドキドキするようなメドレーの後は、米津のソロでプレトニョフ編曲によるバレエ曲『くるみ割り人形』より「パ・ド・ドゥ」が。熊蜂が飛び回った会場が一転、夢の世界に変わる。

米津真浩

米津真浩

パフォーマンスとしても楽しい、連弾の魅力

5曲目に入る前に12月2日に誕生日を迎えたばかりの小瀧に、米津から「本日の主役」のタスキが贈呈される。会場からは拍手が沸き起こった。

そして5曲目はローゼンプラット作曲「2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ」だ。「モスクワの夜」やロシア民謡「カリンカ」など耳馴染のあるフレーズがちりばめられたアップテンポな曲であるうえ、演奏中に低音側の奏者がもう一人の奏者に覆いかぶさるように高音・低音を演奏、そして最後は2人の奏者の位置が入れ替わる。初めて観ると「えっ?」と思うようなパフォーマンスも楽しめる、実に盛り上がる、ピアノ連弾ならではの曲だ。

鳴りやまない拍手の中でのアンコールはローゼンプラット作曲「不思議の国のアリス」。「猫踏んじゃった」やショパンの「華麗なる大円舞曲」など、どこかで聴いたことのある曲が次から次へと顔をのぞかせる、パロディ要素がいっぱいの愉快な曲だ。最後にこれを持ってくるセンスがいい。弾くこと、聴くことなど、会場にあらゆる楽しさが満ち溢れたひと時だった。

終演後の様子

終演後の様子

連弾ならではの曲と、ソロならではの曲をチョイス

終演後、米津・小瀧両氏に話を聞いた。

――楽しい演奏をありがとうございます。2回目となる今回は、どのようなテーマ、コンセプトで曲を選ばれたのでしょう。

米津:ちょっとずつ新しい曲をお披露目したいなと。また選曲は普通ではない、なかなか聞く機会のない曲をやりたいとい思いました。アンコールはもともと2台のピアノで演奏する曲を無理やり連弾にするという荒業をやりました。

――荒業というと?

米津:元が2台のピアノ用の曲なので、1台にするとどうしても音が重なったり手がぶつかったりというところがあるんです。それをなんとか上手く振り分けられるようにしました。

インタビュー中のおふたり

インタビュー中のおふたり

――なるほど、1台で連弾する場合、そういう工夫も必要なんですね。それぞれのソロの曲はどのように選ばれたのですか?

小瀧:「月の光」は場の雰囲気。連弾の曲とのバランスを考え、全く違う世界観の曲を選びました。

米津:バレエ曲「くるみ割り人形」はシーズナリティで(笑)。 個人的にソロのプロジェクトで編曲ものを取り上げているので、その一環でもあります。

――奏者が移動して弾く「2つのロシアの主題によるコンチェルティーノ」ですが、あれはパフォーマンスとしても面白い曲ですが、もともとそういう曲だったんですか?

米津・小瀧:そうです。

米津:2台ピアノでは、全く同じフレーズをそれぞれが弾くということがあるのですが、連弾の場合も同じフレーズをそれぞれが繰り返しているんです。でも各奏者が同じ配置で弾いているだけでは面白くない。また、もともと2台ピアノで弾く曲は、それぞれの奏者へとフレーズがスイッチしたことが聴き手にわかるようなつくりになっているんです。それを1台ピアノでの連弾でやる場合、その面白さを損ねないため、ちょっと無理をしてでも移動して逆転して弾く。その結果が、あの面白いパフォーマンスになるわけです。

米津真浩

米津真浩

――実はずっと気になっていたんですが1台ピアノを2人で弾く連弾、狭さなどは感じないのでしょうか?

米津:うーん、でも僕がちっちゃいから良かったのかな。小瀧はスリムで腕も長いし結構届くから。

小瀧:それぞれの身体・体格の長所短所が合うのかもしれない(笑)。 それぞれ腕が長いと肘の角度でぶつかっちゃったりする。譲りあっちゃったりすることもあるし。

米津:特殊って言えば特殊ですよね。身体の重心の位置もソロでやる時に比べると変わったりするので。

――1台ピアノの連弾や、2台ピアノなど、それぞれ表現や見せ方の違いなどはあるのでしょうか? 今回は連弾の方がいい、2台の方がいいなど……?

米津:というよりももっと現実的な問題で、ピアノを2台置けるかどうか、ですね。また2台でやるとどうしても互いの距離があるので、1台を隣り合わせで弾いた方がいいこともある。

小瀧:連弾はよりアンサンブル感が強いかな。パフォーマンス的なところでは腕が交差したりという、「狭さ」もプラスに作用することがある。2台あると音としてはすごいけれど、パフォーマンス的なところも含めると、連弾の方がお客様には伝わるものが多いかもしれません。

小瀧俊治

小瀧俊治

――なるほど。お2人の今後の活動は?

米津:今後も2人で組んで演奏することは続けたいです。元々僕たちはそれぞれがソロで活動しているんですが、連弾もやっていきたい。僕たちの強みは、元々ソリストだからソロでもちゃんと聴かせられるし、連弾もできるという点。その両方の持ち味をミックスした、面白い演奏会をやっていければと思います。

小瀧:広い意味でのクラシックの普及、クラシックに興味がない人にも興味を持ってもらうような活動をしていければと思います。今回のような連弾とか、工夫しながら活動を続けていきたい。連弾は連弾の魅力があると思うので、選曲も含め、そういうものをよりわかりやすく伝えていければと思います。

――ありがとうございました。また次回の登場を楽しみにしています。

米津真浩、小瀧俊治

米津真浩、小瀧俊治

インタビュー・文=西原朋未 撮影=荒川潤

サンデー・ブランチ・クラシック
1月21日(日)
鈴木愛理/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

1月27日(日)
實川風/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

ロックがクラシックになった? 1966カルテットの熱い名演に英国ロックの魅力を再発見

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.12.10 ライブレポート

毎週日曜日の渋谷で、実力のある奏者を招いて開催される『サンデー・ブランチ・クラシック』。「クラシック」と銘打ってはいるが、枠にとらわれず、ジャズやポップスなどを得意とする奏者も登場する。

12月10日は、女性4人からなるユニットの「1966カルテット」が登場した。ヴァイオリンの松浦梨沙をリーダーとして、ヴァイオリンの花井悠希、チェロの林はるか、ピアノの江頭美保というメンバーで活動している。カルテット名の“1966”とはビートルズの来日年のことで、ビートルズをはじめとする洋楽ロックのカバーを活発に行うユニットだ。

『サンデー・ブランチ・クラシック』には2017年6月4日以来の出演となる。会場には大勢のファンが詰めかけて満員となっているが、今日はどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか。

13時の開演時刻とともに舞台に登場したメンバーたちは、早速演奏を披露してくれた。ピアノの和音に続けて、弦楽器が耳に馴染みのあるメロディーを奏でる。ビートルズの「ノルウェイの森」だ。歌いだしたくなる叙情的なメロディーが、弦楽器の中で受け渡される。メロディーはユニゾンで弾かれるだけでなく、カノンのように重なり合って豊かな表情を見せる。音楽は徐々に盛り上がり、情熱的なクライマックスをつくって終わりとなる。

拍手に応えて、リーダーの松浦が快活に挨拶した。

「皆さんありがとうございます、1966カルテットです。先日、私たちはCDデビュー7周年を迎え、無事8年目に突入いたしました! そんな私たちが取り組んでいるのが、『UKロックヒストリー』です。ビートルズの枠を少し超えて、英国ロック界を彩ってきた名曲を、1960年代から現在まで一気にカバーする試みです。ビートルズを外側から見ることで、新たな魅力を発見できたらと考えています。今日はその『UKロックヒストリー』の第2弾ということで、今日は喋ってる暇もありません(笑)。どんどん進みたいと思います」

30分強のミニコンサートだが、たくさんの新曲を届けてくれるということで、トークをする時間も節約したい様子だ。

2曲目に演奏されるのは、ポリス「見つめていたい」。導入は、2本のヴァイオリンのピッツィカートと、ピアノによる短い刻みだ。早めのビートに乗って、チェロがメロディーを奏でる。たっぷりとした、包み込むような音色が魅力的だ。メロディーは切々と訴えるように繰り返され、やがて2本のヴァイオリンの合奏に移っていく。ヴァイオリンの高音域でも、音色は優しく豊かな和音が聴こえる。落ち着いた雰囲気で曲を閉じると、再び惜しみない拍手が起きた。

次に演奏された3曲目は、オアシス「Don't Look Back in Anger」。情感にあふれたピアノの導入に続けて、弦楽器による闊達なメロディーが現れる。ロックからとった旋律だが、パッヘルベルのカノンを連想するクラシカルで暖かい響きのアレンジだ。

ピアノが刻む力強いビートとともに、音楽は徐々に盛り上がっていく。1stヴァイオリンとチェロによる掛け合いや、2ndヴァイオリンがセンチメンタルに奏でるメロディーなどの見せ場を経て、静かにテンポを緩めて収束していく。

切れ目なく、4曲目のエルトン・ジョン「Candle in the Wind」の演奏に入った。2ndヴァイオリンとチェロがゆったりとしたリズムをつくり、その上に載って1stヴァイオリンの旋律が歌う。落ち着いた上品な雰囲気は、バロックか古典派の室内楽に近い。

やがてピアノが伴奏に入ると、全体に動きのある音楽となる。テンポを落とし、じっくりとためを作りながら、ロマンティックで叙情的なメロディーを歌い上げていく。ヴァイオリンの高音域で歌うメロディーからは、胸を打つような切なさも感じられる。最後には、しっとりとした雰囲気の中、穏やかに幕を閉じる。

満場の拍手に応えつつ、再び松浦がコメントする。

「これまでもグループ内でユニットをつくっての活動もしてきました。私と花井ちゃんは、ビートルズの『A Hard Day's Night』を、はるちゃん(林)とはクイーンの『地獄へ道づれ』を弾いてきました。そこで、次は私と美保さん(江頭)でやってみたいなというところから、次の演奏は2対2に分かれてのユニット対決をお届けします。

まずはるちゃん・花井ちゃんのペアに、アニマルズ『朝日のあたる家』を弾いていただきたいと思います。リーダーからの「愛のムチ」と言える編曲に仕上がっていまして(笑)、超絶技巧が盛りだくさんです。二人の奮闘ぶりを見ていただけたらと思います。そしてお姉さんチームは、レッド・ツェッペリン『カシミール』をお届けします!」

ヴァイオリン花井悠希、チェロ林はるか

ヴァイオリン花井悠希、チェロ林はるか

元気の良い曲紹介に続けて、花井・林によるアニマルズ「朝日のあたる家」の“変奏曲”の演奏が始まった。クラシカルで荘厳な雰囲気の導入で始まると、タイトルの通りに同じメロディーが次々と変奏されていく。チェロのゆったりした伴奏に大きな動きのヴァイオリンの旋律を聞かせたかと思うと、今度は逆にチェロが大きな動きになる。デュオならではの掛け合いの緊張感が伝わってくる。

さらに、重音による激しい曲想、急速なピッツィカート奏法、フラジオレットを多用した糸を引くような高音と、クラシックの弦楽器による様々な技巧が披露される。最後には、情熱にあふれる迫力満点の変奏を響かせて終止する。

ヴァイオリン松浦梨沙、ピアノ江頭美保

ヴァイオリン松浦梨沙、ピアノ江頭美保

切れ目なく、今度は松浦と江頭による、レッド・ツェッペリン「カシミール」の演奏に移る。重厚なピアノの和音に導かれ、ヴァイオリンが叩きつけるような重音を連打する。クラシックの楽器ながら、ロックの激しいビート感を見事に再現していた。やがて、ヴァイオリンに情熱的なメロディーが現れ、音楽をさらに盛り上げていく。曲想に合わせて動きも激しくなり、視覚的にも魅せる演奏だ。ピアノの刻む重厚なビートに乗ってヴァイオリンがテンションを上げていくが、甲高い高音域になっても音の厚みを失わない。クライマックスの緊張感を保ったまま、終わりまでを駆け抜けた。

気迫に満ちた2組のユニットの演奏に、会場全体が拍手を贈った。

「さて、この『サンデー・ブランチ・クラシック』ですが、曲目にクラシックの曲も入れないといけないので、私たちのデビュー時から楽曲のアレンジをしてくださっている加藤真一郎先生の曲を演奏したいと思います。2年前に私たちのために書いてくださった曲で、クラシックの現代曲に入ると思いますので。2年ぶりに弾いてみると、以前は気付かなかったことにも気付けて、クラシックとはそういうものなんだなぁと思いました。私たちの『UKロックヒストリー』もそうなればいいな、と。ベートーヴェンのようなクラシックは、演奏者ごとの解釈がありますが、レッド・ツェッペリンのようなロックだとオリジナルが絶対です。でも、私たちは歌がない分、オリジナルの色を薄めたひとつの解釈として届けられたらと思っています」(松浦)

本日7曲目のプログラムとなる、加藤真一郎「We will Barock you」の演奏が始まった。しっとりとしたピアノの序奏から、叙情的な曲想で音楽は始まる……かと思うと、唐突に雷鳴のような激しい楽想が現れる。ヴィヴァルディの『四季』より「夏」の楽想が取り入れられているのだ。弦楽器の叩きつけるような重音、ヴァイオリンの金切り声のような高音が強烈な印象をもたらす。一方で、嵐の合間にロマンティックで甘美なメロディーも登場し、鮮やかなコントラストを見せる。コーダでは一気にギアを入れ、協奏曲のフィナーレのような急速なテンポで終わりまで駆け抜ける。

続けて演奏される8曲目は、レッド・ツェッペリン「天国への階段」。淡々としたチェロのピッツィカートとピアノの伴奏系に乗せて、2本のヴァイオリンが哀愁に満ちたメロディーを奏でる。メロディーはピアノに受け継がれ、ピアノの導きで少しずつ緊張感を高めていく。やがて少し活発な楽想となり、チェロの情感に満ちた旋律も聴こえてくる。1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンの掛け合いによって音楽は激しさを増していき、情熱的で迫力のあるクライマックスに向かう。音楽は終わりに向けて少しずつ落ち着いていき、心地よい静寂の中で閉じられる。

最後の9曲目は、エリック・クラプトン「いとしのレイラ」。たくさんの曲が披露されたのに、あっという間に感じてしまう。始まりはピアノのソロで、ノリよく希望にあふれた雰囲気を演出する。続いて、チェロが粋な感じの旋律をのせる。さらにヴァイオリンが入り、4台の楽器による迫力のある演奏が展開された。情熱的なメロディーが複雑に絡み合い、クラシカルな豊かな響きが感じられる。同時に、リズム感は現代のポップミュージックのもので、体全体で熱い思いを表現しているのが分かる。印象的な弦楽器のポルタメントの音とともに、曲は堂々と閉じられる。

この日一番の拍手が、1966カルテットの4人に贈られる。一旦舞台袖に引けた4人も、カーテンコールに応えてすぐ舞台に舞い戻った。

「慌ただしくお届けしましたが、次の機会はもう少しゆっくりしたテンポでできたらと思います。『UKロックヒストリー』も第3弾、第4弾があればいいなと……。さて、アンコールも楽しく愉快に、最後まで走りきりたいと思います。今日は長くて疲れたと思いますが、お付き合いいただきありがとうございました!」

そうして始まったアンコールは、ビートルズの「A Hard day’s night」。冒頭から疾走するような早いリズムを作ると、元気の良いメロディーが現れる。メロディーはあくまでも明るいが、粋でおしゃれな雰囲気も失わない。途中で挟まれるピアノの華麗なグリッサンドも印象的だ。

と、途中でチャイコフスキー『くるみ割り人形』より「トレパーク」の音楽に交代する。“楽しく愉快に”というリーダーの宣言通りに、テンポと情熱に更なる加速をつけて終わりまで駆け抜けた。

終演後は写真撮影も

終演後は写真撮影も


終演後、多忙の合間を縫って、少しだけメンバーにお話を伺うことができた。

――1966カルテットの皆さんは、『サンデー・ブランチ・クラシック』への出演は今年6月以来4回目となります。今回は、演奏や選曲面で、前回までとどのような違いを意識されましたか?

松浦:前回は『UKロックヒストリー』というプロジェクトが始まったばかりの1回目だったので、「まずはこれ!」という曲を出しました。今回の場合は、昔から現在までのロックの歴史を全部網羅したいと思い、歴代の大御所たちをカバーした新曲ばかりを詰め込みました。

江頭:私はピアノなので、ビート感とかグルーヴを作る役割がすごく多いです。ビートルズの時は割と緩さが大事で、厳しさよりもはっちゃける感じのドラムの再現が難しいです。UKロックだと逆に、ロック特有のカチッとした感じになります。その中で、自分なりの変化をつけていくというのを、今回特に注意しました。

花井:この間と比べると、今回はロック色が強めだと私は思っています。各年代の曲も入っていますし、UKロックに脈々と受け継がれてきた、ビートルズのルーツにもなる欠片のようなものも感じ取ってもらえると思いました。今回は前回よりロック色が強い分、みんなCDを聴きまくったりして歌い口を研究したと思います。歌だけでなくギターソロが目立ち、技術的にも難しい曲もあったので、今回は挑戦的な部分が増えたと感じています。

:技術的なところだけでなく、ロックの気持ち、スピリッツのようなものも難しい点でした。体力的にも前回より厳しいものになったので、芯を強く持ちたいとも思いました。ただ、私たちの根底はクラシックにあります。私たちの変わらない部分を、ヴィヴァルディを取り入れた加藤真一郎さんの作品や、私たちの原点である「ノルウェイの森」に込めました。初心を忘れず発展していきたいという気持ちを持ちながら、今回演奏させていただきました。

1966カルテット

1966カルテット

毎週日曜日、渋谷・道玄坂のeplus LIVING ROOM CAFE & DININGで行われる『サンデー・ブランチ・クラシック』。是非一度、訪れてみてほしい。

取材・文=三城俊一 撮影=岩間辰徳

サンデー・ブランチ・クラシック情報
1月21日(日)
鈴木愛理/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

1月27日(日)
實川風/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: \500

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

 

ダンス界夢のコラボ! マリア・パヘス&シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS-ドゥナス-』が来日会見

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フラメンコ界屈指の舞姫マリア・パヘスとコンテンポラリーダンスの鬼才であるシディ・ラルビ・シェルカウイがタッグを組む『DUNAS-ドゥナス-』が日本に上陸する。2018年3月~4月、東京・Bunkamuraオーチャードホール他で公演が行われる。スペイン・アンダルシア出身で4歳からフラメンコとスペイン舞踊を学んだパヘスと、ベルギーのアントワープでモロッコ人の父親とベルギー人の母親の間に生まれ世界を股にかけて活躍するシェルカウイ。バックグラウンドの異なるふたりがコラボレーションのプロセスを大いに語った合同取材会見をレポートする。

運命的な出会いと再会

── おふたりはどのように出会い『DUNAS-ドゥナス-』を創られたのですか?

シェルカウイ 2004年にモナコのモンテカルロで行われたダンスフォーラムのレセプションでマリアに会いました。マリアの作品を観ていて好きでしたし、ふたりともシンプルな人間で、人生や振付、踊り、ダンスの話をして、とても気が合いました。その後、メキシコ、中国などで運命的な再会が重なり、2006年にふたりで一緒に何か創ることになりました。2009年に初日を迎えたので創作期間は3年間でした。マドリードだったりアントワープだったり世界のいろいろな国で時間を見つけては作品を創っていきました。

パヘス モンテカルロでの出会いが決定的でした。ラルビがモナコ公国モンテカルロ・バレエ団のために創った『In Memoriam』を観て共感する部分がたくさんありました。その後パーティーで話したのですが彼はオープンで親切でした。そのときがこの「旅」の始まりになったと言えます。その後の再会は運命的でした。『DUNAS-ドゥナス-』の創作過程は凄く均衡に恵まれた旅だったと思います。お互いに対する尊敬、学びたい、何かを吸収したいという気持ちがあるプロセスでした。大切なことは、この作品を創るきっかけが外からの圧力からではなく、自分たちふたりで何かを創ろうとしたことです。

タイトルが訴える豊かなイメージ

── 『DUNAS-ドゥナス-』とは、スペイン語で「砂丘」を意味するとのことですが、そのタイトルになったのはどうしてですか?

パヘス コンセプトとして「砂漠」がありました。大きな空間で何もないけれど、いろいろなものが生まれる可能性があり、常に変化していくというイメージがありました。お互いに「砂漠」というものを何かが始まる場所として捉えるのがいいのではないかと話をしました。タイトルを『DUNAS』に決めたのは私の息子の提案です。ふたりで創っているのにスペイン語にするのは気が引けたのですが、ラルビが「音もいいし、ふたりの母国語ではない英語で『DUNE』とするのもおかしいし」と言ってくれ『DUNAS』にすることに決まりました。

シェルカウイ マリアが話した通りです。ふたりとも「砂」ということがとても好きでした。小さくか弱いけれども同時にふたりで大きな絵を創れるという思いがありました。「砂丘」というのは小さな砂からできているので、いいコンセプトだと思います。ふたりとも地球というものに魅力を感じました。マリアが木というものが好きだと言っていて、最終的にこの作品で使われているすべての要素は自然からとっているものです。木から根っこ、土、砂という風に連想していきました。「砂」「砂漠」という言葉も脳裏に浮かびましたが、DUNASという言葉がより詩のような感じがしますし、いろいろなイメージを持っている言葉だと思いました。メランコリックであり、希望もあり、癒しもあり、そして常に変わっていくというイメージは我々に訴えるものがありました。

「出会い」から生まれる、奇妙なラブストーリー

── 動画を観ましたが非常に美しい作品で、「動く絵画」のような印象を受けました。いっぽうで攻撃的で、暴力を連想させるような振付があったりしますが、あのシーンは何かを象徴しているのでしょうか?

シェルカウイ 男女のなかにも暴力が存在すると思います。しかし作品のなかではアラブとスペインの関係を示しています。アンダルシアでは歴史的にアラブの文化とスペインの文化が一緒でしたが宗教的な理由で離された歴史を持っています。ひとつであったものが暴力によって分かれてしまうことを見せたかったのです。

パヘス 『DUNAS-ドゥナス-』には人間関係に関する大きなメッセージが込められています。そういったものが動き、あるいは音楽、またはダンスという意図でつながっていると思います。『DUNAS-ドゥナス-』において対立が描かれてはいますが、それよりも重きを置いているのは「出会い」です。

シェルカウイ ひとつ付け加えると、暴力を描くことによって繊細さを引き出すことも表現方法としてはありだと思います。この作品のなかでそれぞれが暴力をふるう者、服従する者という役を演じたりしますが、それがどんどん柔らかくなってきて、最終的にはひとつになります。最初は(日本公演の)ポスターに使われている写真と同じように左右対称だったりしますが、そこから少しずつ違いが顕著になり、対立が無くなって、ひとつになります。ある意味、奇妙なラブストーリーのような作品といえるかと思います。

フラメンコとアラブ音楽のミュージシャンが共演する音楽にも注目!

── 音楽について教えてください。

パヘス ラルビの作品で作曲している方、自分のカンパニーのミュージシャンに参加してもらい一緒にオリジナルの音楽を創りました。もちろんスタイルも曲の作り方も違いますが、アイディアを出し合いながら創っていきました。アラブ音楽の歌手、フラメンコの歌い手もいますし、ポーランド人のピアニストもいますし、ヴァイオリニスト、パーカッショニストもいます。いろいろな文化の音楽的な要素を取り入れているのですが、そこに「出会い」があり、会話が生まれ、ひとつのものを創っていく── 。その結果、本当に美しく、何度聴いても飽きない音楽が出来上がったと思っています。

シェルカウイ アラブの音楽、フラメンコの音楽の会話を目撃できたのは興味深かったです。アラブ音楽とフラメンコの歌い方には、大きな声で感情をこめて歌うという共通点があります。ただアラブの方は精神的なところから、フラメンコはどちらかといえば民衆から発生した歌が多い。いろいろな音楽をミックスするのは面白かったです。

共通する部分を見出し取り入れるおもしろさ

── フラメンコとコンテンポラリーは一見異なるジャンルのような気がしますが、踊る上での共通点、相違点はありますか?

シェルカウイ 初めてマリアの踊りを見たときの印象は、エレガントであり、動きが正確で、感情が現出してくるという思いでした。フラメンコというレッテルを貼る前に、一人の女性が動いている── 。そこにはピナ・バウシュと共通する部分があると思います。自分はジャンル分けをして違いを観るのではなく、共通する部分を見出す方がおもしろい。マリアとは最終的に伝えたいメッセージが同じです。マリアがフラメンコ的な動きをしたり、自分がコンテンポラリーに寄った動きをしたりすることもありますが、取り入れていくおもしろさがあると思います。

パヘス お互いのルーツや仕事のやり方が違っても、それを理解することが大切です。ラルビはオープンです。彼は必ずミュージシャンを使いますが、それはフラメンコでも同じで音楽は生でなければいけない。違うダンスの分野のふたりですが、同じような創作のプロセス、同じような舞踊言語を持っています。ラルビは舞台装置を振付に組み込む才能を持っていますが、自分も舞台のすべての要素を振付のなかに組み入れようと努力しています。ふたりとも同じ土俵の上でスタイルのことは考えずに協同作業ができたと考えています。


取材・文=高橋森彦  撮影=髙村直希

公演情報
マリア・パヘス&シディ・ラルビ・シェルカウイ
DUNAS-ドゥナス-

 
■演出・振付:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ
■出演:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ ミュージシャン7名

 
[東京公演]
■日程:
2018/3/29(木)19:00開演
2018/3/30(金)14:00開演
2018/3/31(土)14:00開演
■会場:Bunkamuraオーチャードホール
■料金:S・¥12,500 A・¥10,000 B・¥7,000(税込)
■問合せ:Bunkamura 03-3477-9999(10:00-17:30)

 
[愛知公演]
■日程・会場:2018/4/5(木) アートピアホール
■問合せ:中京テレビ事業 052-588-4477(平日10:00~17:00)

 
[大阪公演]
■日程・会場:2018/4/6(金) 豊中市立文化芸術センター 大ホール
■問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)

 

フラメンコ界の女王マリア・パヘスに直撃! 鬼才シディ・ラルビ・シェルカウイと共演する『DUNAS-ドゥナス-』を語る

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フラメンコ界を代表するミューズであるマリア・パヘスとコンテンポラリーダンスの旗手として活躍するシディ・ラルビ・シェルカウイが共演する『DUNAS-ドゥナス-』が2018年3月~4月、東京・Bunkamuraオーチャードホール他で上演される。パヘスはスペインのアンダルシア出身でフラメンコとスペイン舞踊を極め、アイリッシュ・ミュージカル『リバーダンス』の主演ダンサーとしても人気を博すなど著名だ。シェルカウイはベルギーのアントワープ生まれでモロッコ人の父親とベルギー人の母親の間に生まれた国際派。プロモーションのために来日したパヘスに、シェルカウイとのコラボレーションで感じたことや来日公演への思いを聞いた。

ふたりで手を取り合ってきた「旅」

── シェルカウイさんとは2004年にモナコのモンテカルロで出会われ、その後世界各地で「運命的な再会」を繰り返すうちにふたりで何かを創ろうという話になったそうですね。2009年に初演された『DUNAS-ドゥナス-』(スペイン語で「砂丘」の意味)のクリエイションはどのように進めましたか?

明確だったのはゼロからふたりで何かを創りあげていかなければならないということです。一番重要だったのはベースで、それぞれが表現したいことを自由に出せる空間でなければなりません。お互いのアイディアをシェアするなかで共通する動きがありました。ラルビも私も手とか腕を表現のツールとして使うのが似ています。そこからコンセプトが生まれ、舞台の空間をどう創り上げるのか、音楽をどう創るのかが協同作業を通して生まれました。ふたりで手を取り合って歩いてきたひとつの「旅」だと思っています。そこに対立は一切なく、何もない砂漠のようなところからすべての可能性を探って創りあげていきました。

── クリエイションを通してシェルカウイさんから受けた印象はどのようなものでしたか?

初めて会ったときから笑顔が素敵でつながりを感じました。私のユーモアのセンスは変わっていて、普段あまり表には出さないのですが、ラルビは理解してくれます。ふたりでいつも笑っています。2004年の出会いから初日を迎えるまでに5年間の時間がありますが、創作過程の最後の方にジローナ(スペイン・カタルーニャ州)で1か月間集中的に作業したときもふたりでよく笑っていました。ふたりの人間がひとつのものを創るときにまったく対立しないということはあり得ないと思うのですが、我々の場合、一度もないのです。創作のプロセス自体が楽しいものでした。ラルビはベジタリアンなのですが、1か月も一緒にいると、自分もベジタリアンになるのではないかというくらい影響を受けました(笑)。

── 『DUNAS-ドゥナス-』では「対立」を描いた場面もありますが、次第にふたりがひとつになっていきます。作品とクリエイション時のおふたりの心境はシンクロしていたのですね?

ええ。創作の過程もまったく同じです。先ほど申し上げたように一度たりとも対立、喧嘩、意見の相違がなかったです。ラルビと「『DUNAS-ドゥナス-』というフレーズはI agree(同感する、同意する)のことだね!」とジョークを言っています。ラルビと私は英語でコミュニケーションをとっていたので、私たちのなかで『DUNAS-ドゥナス-』=I agreeなのです(笑)。

── シェルカウイさんとのコラボレーションから得たものは何でしょうか?

ラルビと仕事をすることによって、人としてもそうですし、自分の作品にも影響されたのは間違いないと思います。それが具体的には何なのか分からないのですが、呼び起こされた感情や生まれてきたアイディアをどのように実現していくのかということに影響を受けました。『DUNAS-ドゥナス-』は自分が人間として、そして振付家・ダンサーとしてのキャリアにも大きく影響してきたと思います。

創作のインスピレーションは何にでもある

── パヘスさんはご自身の舞踊団を率いて度々来日されています。近年ではブラジル人建築家のオスカー・ニーマイヤーの仕事から想を得た『UTOPÍA ~ユートピア~』、「カルメン」をパヘスさん流に舞台化した『Yo, Carmen 私が、カルメン』を上演し好評を博しました。作品を創るにあたってインスピレーションをどこから得ているのですか?

インスピレーションは何にでもあると思います。ものだったり、状況だったり、人の経験から生まれたり、自然だったり、人間関係だったり何からでも得られると思います。たとえば、この部屋の窓からみえる木だったり、その葉の色だったり、葉が落ちていくはかなさとかだったりでもインスピレーションに成り得ると思います。ただ大事なのは視野を広げて何でも受け入れられる素養を持つことだと思います。そして機会を逃さないことも大切です。

日本に来る4日前に新作『時間へのオマージュ(原題:Una oda al tiempo)』を発表しました。私の夫エル・アルビ・エル・ハルティ(エグセクティブ・ディレクター)とは仕事上のパートナーでもあり、彼と共に「時間」をコンセプトにして創りました。「時間」というのは人間誰にでも関係することですし、人生を刻むものでもあるし、人生のなかの矛盾をも表現していると思います。なぜなら人間は生まれた時から死に向かって歩いているわけですから。それと「時間」は相対的なもので、早く感じるときもあれば遅く感じるときもあります。「時間」というものは多くのアーティストにとってインスピレーションの源だと思います。

── ご主人のお話が出ましたし、『DUNAS-ドゥナス-』というタイトルは息子さんが提案されたものを採用されたとうかがいました。ご家族の存在は大きいのですね?

私の場合、家族が創作活動に直接的に影響します。夫と一緒に仕事をしているので家業みたいなものだからです。夫と出会ったときから仕事上での関係が生まれたのではないのですが感受性が似ていて向かうところが一緒です。夫とふたりのプロジェクトでは、ふたりでシェアする部分も多い。この仕事に人生を賭けているのですから、その旅路に理解してくれるパートナーがいて一緒に歩めるということは安心できます。

好きだし、やらずにはいられない作品

── 『DUNAS-ドゥナス-』に話を戻します。シェルカウイさんと「旅」のように歩んできた作品ですが、再演を続けてこられての思いをお聞かせください。

それぞれの活動の合間を縫って年に1度は踊るようにしています。よくラルビが『DUNAS-ドゥナス-』をやることは自分たちにとって休暇のようなものだと言います。ラルビは忙しいし、私も舞踊団を持っているので自分のことは後回しになります。舞踊団にいる29人は家族だと思っていますが、まずその人たちのことを考えなければいけません。その点『DUNAS-ドゥナス-』のメインは自分とラルビだけなのでお互いのことだけを考えればいい。ホッと息をつける機会でもあり、有難い時間です。日本で公演するのは私とラルビが製作当初からずっとやりたかったからです。好きだし、やらなければいけない、やらずにはいられない作品だと思っています。

── 『DUNAS-ドゥナス-』を日本で上演するにあたって楽しみなこと、期待していることを教えてください。

期待しているのは劇場がお客様でいっぱいになることです(笑)。『DUNAS-ドゥナス-』は日本のお客様に凄く理解していただけると思っています。知的で感受性が強くいらっしゃるし、この作品には東洋的な部分もあるので価値を認めていただきたい。自分を知っているお客様、ラルビを知っているお客様に絶対に見に来ていただけるという確信があるので楽しみです。


取材・文=高橋森彦  撮影=髙村直希

公演情報
マリア・パヘス&シディ・ラルビ・シェルカウイ
DUNAS-ドゥナス-

 
■演出・振付:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ
■出演:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ ミュージシャン7名

 
[東京公演]
■日程:
2018/3/29(木)19:00開演
2018/3/30(金)14:00開演
2018/3/31(土)14:00開演
■会場:Bunkamuraオーチャードホール
■料金:S・¥12,500 A・¥10,000 B・¥7,000(税込)
■問合せ:Bunkamura 03-3477-9999(10:00-17:30)

 
[愛知公演]
■日程・会場:2018/4/5(木) アートピアホール
■問合せ:中京テレビ事業 052-588-4477(平日10:00~17:00)

 
[大阪公演]
■日程・会場:2018/4/6(金) 豊中市立文化芸術センター 大ホール
■問合せ:キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00~18:00)

 

漫画家・桜沢エリカ、バレエ愛・ハンブルク愛・リアブコ愛を語る!

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『メイキン・ハッピィ』などの代表作で知られ、自宅での出産や専業主夫の夫との子育てを描くエッセイも人気の漫画家、桜沢エリカは大のバレエ好き!昨年には自身初となるバレエ漫画『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』が単行本化され、現在は「女性自身」にて『スタアの時代外伝・バレエで世界に挑んだ男』を連載中。そんな彼女が現在最も楽しみにしているのが、開幕まで1か月を切ったハンブルク・バレエ団の来日公演だ。『ニジンスキー』に至っては全日分購入済(!)の桜沢が語る、同バレエ団の魅力とは……?

桜沢エリカ『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』 (C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

桜沢エリカ『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』 (C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

実は20年来のバレエオタク!

――ブログを拝読したのですが、ものすごく頻繁にバレエをご覧になっているのですね!

ものすごくではないですが(笑)、観てますね。私よりディープな方はたくさんいらっしゃいますけど、私も十分“オタク”だと思います、同じ公演をアホみたいに何回も観に行ったりしますから(笑)。30歳を越えたくらいの時って、仕事がひと段落して、よくみんなお稽古事を始めたり歯の矯正をし出したりするじゃないですか。私の場合はそれがバレエ鑑賞で、1998~99年あたりから頻繁に観るようになったんです。ほかの舞台芸術も観てはみたんですが、私にとっては、観ていていちばん気持ちがいいのがバレエだったんですよね。

――気持ちがいいというと、具体的にどんなところが?

まず、バレエダンサーの身体が素晴らしい!身体そのものが芸術、というのはほかの舞台にないものだと思います。それと、オーケストラの生の音を浴びるのも気持ちがよくて。音合わせも好きで、客電が落ちてシーンとなった瞬間には大きな高揚感がありますね。あとは、言葉がないところ。セリフも字幕もないから、純粋にその世界に入り込めるんです。言葉がないとストーリーが分からなくて楽しめない、という方もいるかもしれないですが、私の場合「とりあえず観てしまえ」という感じ(笑)。あとからパンフレットで確認することもありますけど、まずは観てしまったほうが、ストーリーも入ってきやすいと思います。

――特にどういう系統の作品あるいはバレエ団が好き、というのはありますか? ブログを拝読する限りだと、万遍なくご覧になっている印象ですが。

万遍なく観ていると、「ここが好き」というのは出てくるものですよね(笑)。バレエ団全体の雰囲気や姿勢で好きになることもあるけれど、多いのはやっぱり、いいダンサーがいるから好き、という場合。私はイケメン好きだから(笑)、マチュー・ガニオみたいな正統派ももちろん大好きなんだけど、味のある人にも惹かれます。今その意味で特に好きなのが、アメリカン・バレエ・シアターのマルセロ・ゴメスと、ハンブルク・バレエ団のアレクサンドル・リアブコ。リアブコはね、見た目はほぼエガちゃんなんですよ(笑)! でも表現力が素晴らしくて、特に狂気をはらんだ演技で、彼の右に出る人はいないんじゃないかな。

漫画と舞台のリンクに感動

――今回の来日公演で上演される『ニジンスキー』は、まさにリアブコの“狂気をはらんだ演技”が存分に観られる演目ですね。

実はね、この作品を全幕で観るのは初めてなんです。去年の3月に、ハンブルクまで観に行こうとしてチケットも買ってたんだけど、占いで「今そっち方面は行っちゃダメ」って言われちゃって(笑)。どうしよう~って思っていたら、すぐあとに来日公演が発表されたから待ってたんですよ。でも前回の来日公演の時、ガラ公演『ジョン・ノイマイヤーの世界』は観に行ったから、リアブコの『ニジンスキー』も一部分は観ています。この一瞬でここまで狂えるなんてすごい!と思った記憶が鮮明だから、全幕で観られるのが本当に楽しみ。もうひとりのニジンスキー役、若手イケメンのアレクサンドル・トルーシュにも期待しています。

桜沢エリカ『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』 (C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

桜沢エリカ『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』 (C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

――『ニジンスキー』でその人生が描かれるニジンスキーと、彼がいた伝説のバレエ団バレエ・リュスは、桜沢さんが手掛けられたバレエ漫画の題材でもあります。

そうなんです。バレエ漫画はずっと描きたい描きたいと思っていたものの、なかなか機会がなくて、ようやく描けたのが『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』でした。史実を忠実に追ってはいますけど、今までのディアギレフ像とかニジンスキー像とは、ちょっと違って描けたかなと思っています。『春の祭典』の本番中に、ニジンスキーが舞台袖でテンポを取っているというシーンがあるんですけど、『ジョン・ノイマイヤーの世界』で観た『ニジンスキー』にもそのシーンがあった時は感動しましたね。実は、自分がハンブルクに行くまでに単行本化して、持って行って団員の皆さんに渡そうと計画してたんですよ。行かないことにしたら、気持ちが緩んで出すのが遅れちゃったんですけど(笑)。

――この来日公演は、いよいよ渡すチャンスですね!

「渡す」と言っても、直接面会とかは私、恥ずかしくてできないんですけどね……。インスタでは、自分が描いたイラストをダンサーにタグ付けして載せたりとか、はた迷惑なことをしてるくせに(笑)。テレビ局でいかりや長介さんとかビートたけしさんを見かけても声をかけられないのと同じで、ダンサーに対しては「は~っ!」ってなっちゃうんですよ。だからこの作品も、楽屋の備品として一冊ずつ置いてもらえたら嬉しいなと思ってます(笑)。

桜沢エリカ『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』 (C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

桜沢エリカ『バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ』 (C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

ノイマイヤーはやっぱりすごい!

――今回上演される『ニジンスキー』以外の演目についても、ぜひ桜沢さんなりの“ここが楽しみ”ポイントを教えてください。まず、『椿姫』はいかがですか?

前回の来日公演で観た時は、アルマン役のリアブコがもうエガちゃん過ぎて! これ、誉め言葉ですよ(笑)。マルグリットの足元にバタンって倒れたフリをするシーンの面白さが特に印象に残ってるんですけど、ロベルト・ボッレがアルマンを演じた映像を見たら、見え方が全然違ったんですよね。今回リアブコが演じるのは、アルマンじゃなくデ・グリューのほう。ダンサーによる違いを楽しむのもバレエの面白さだから、リアブコのデ・グリュー役はもちろん、今回のアルマン役たちがそのシーンでどう見えるのかも楽しみですね。

――では、先ほども少し話が出た『ジョン・ノイマイヤーの世界』については。

ガラと言ってもただの切り貼りじゃなく、ノイマイヤー役の人がいたりノイマイヤーご本人も登場したりして、ものすご~く良かったです。ベジャールの『くるみ割り人形』とかもそうですけど、振付家が過去の自分を振り返って作る系の作品って、観ていて寂しくなることがありますよね。この『ジョン・ノイマイヤーの世界』にもそういう部分はあるんですけど、それでも観ておいたほうがいいと思える素敵な作品です。

――深いバレエ愛が伝わるお話をありがとうございました!最後に、桜沢さんの思う今のハンブルク・バレエ団の魅力について、改めてお聞かせいただければと思います。

ダンサーも今すごくいいけれど、やっぱりノイマイヤーがすごいんだと思いますね。バレエの新しい潮流、歴史というものを、現在進行形で生み出している人。そんな人が今生きている、というのは本当に貴重なことなので、なるべく多く観ておきたいバレエ団です。そんなバレエ団が来てくれるというんですから、それは全日程買ってしまうというものですよ(笑)。

取材・文=町田麻子  撮影=高村直希
(C)桜沢エリカ/祥伝社フィールコミックス

公演情報
ハンブルク・バレエ団 2018日本公演
 
「椿姫」プロローグ付全3幕
■会場:東京文化会館 大ホール(東京都)
■日程:2/2(金)~2/4(日)
■音楽:フレデリック・ショパン
■振付・演出:ジョン・ノイマイヤー
■美術・装置:ユルゲン・ローゼ
■演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

 
ガラ公演 〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉 2部構成
■会場:東京文化会館 大ホール(東京都)
■日程:2/7(水)
■予定演目:「キャンディード序曲」「アイ・ガット・リズム」「くるみ割り人形」「ヴェニスに死す」「ペール・ギュント」「マタイ受難曲」「クリスマス・オラトリオ」「ニジンスキー」「ハムレット」「椿姫」「作品100─モーリスのために」「マーラー交響曲第3番」より
■音楽:バーンスタイン、ガーシュウィン、チャイコフスキー、バッハ、ワーグナー、シュニトケ、ショスタコーヴィチ、ティペット、ショパン、サイモンとガーファンクル、マーラー
■振付・演出・語り:ジョン・ノイマイヤー
■演奏:特別録音による音源を使用

 
「ニジンスキー」 全2幕
■会場:
:東京文化会館 大ホール(東京都)
■日程:2/10(土)~2/12(月・祝)
■音楽:フレデリック・ショパン、ロベルト・シューマン、ニコライ・リムスキー・コルサコフ、ドミトリー・ショスタコーヴィッチ
■振付・舞台装置・衣裳:ジョン・ノイマイヤー
■演奏:特別録音による音源を使用

 
■公演日程/会場:2018/2/2(金)~12(月・祝)東京文化会館 大ホール(東京都)
■料金:S席:¥23,000 A席:¥20,000 B席:¥17,000 C席:¥14,000 D席:¥11,000 E席:¥8,000
※出演者はダンサーの怪我、カンパニーの都合や芸術的判断等で変更になる場合があります。出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。正式な配役は公演当日に発表いたします。
※未就学児童入場不可
■主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社
■後援:ドイツ連邦共和国大使館

■問い合わせ:NBSチケットセンターTEL 03-3791-8888(平日10:00~18:00、土曜10:00~13:00)
■公式サイト:
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/-2018.html
 
<特別キャンペーン企画> 桜沢エリカ先生の「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ 」(祥伝社)をプレゼント!
■キャンペーン期間:2018/01/17(水)~1/27(土)18:00
■対象公演日 「ニジンスキー」2018/02/10、2018/02/11 2公演のみ

■販売席種:S席:¥23,000、A席:¥20,000
■特典内容:キャンペーン期間内に対象公演のS席、またはA席を購入の方限定で、
桜沢エリカ先生の「バレエ・リュス ニジンスキーとディアギレフ 」(祥伝社)をプレゼント!
※1枚購入の方に1冊プレゼントいたします。
※特典の引換は当日会場にて引換券と交換いたします。
※特典引換=観劇日当日「特典引換所」予定
 

ハンブルク・バレエ団
ガラ公演<ジョン・ノイマイヤーの世界>

 
■日時:2018年2月17日(土)14:00
■会場:ロームシアター京都 メインホール
■チケット料金:S席20,000円、A席16,000円、B席10,000円、C席6,000円、D席(完売)、ユースS席(25歳以下)10,000円
※ユースチケットをご購入の方は、公演当日、証明書のご提示が必要です
※未就学児童入場不可

 
■振付・演出・ナレーション:ジョン・ノイマイヤー
■出演:ハンブルク・バレエ団
■予定演目:『キャンディード序曲』、『アイ・ガット・リズム』、『くるみ割り人形』、『ヴェニスに死す』、『ペール・ギュント』、『マタイ受難曲』、『クリスマス・オラトリオⅠ-Ⅵ』、『ニジンスキー』、『ハムレット』、『椿姫』、『作品100―モーリスのために』、『マーラー交響曲第3番』
※特別録音による音源を使用
■上演時間:約3時間(予定)
■問合せ先:ロームシアター京都チケットカウンター
TEL.075-746-3201(10:00~19:00、年中無休)
■公式サイト:http://rohmtheatrekyoto.jp/program/6776/

 

英国ロイヤルシネマシーズン2017/18 ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』~何度でも見たくなる大スクリーンならではの華麗な舞台

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英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18、年明けの最初は名作『くるみ割り人形』だ。ピーター・ライトによる英国ロイヤルバレエ団(ROH)の、クリスマスの日ひとときは描いたこのバレエは、ストーリーや魅力的な登場人物たちに、英国らしい演劇性たっぷりのダンサーたちによる踊りとともに、夢いっぱいの幸せあふれるひとときを約束してくれる。初見の人はもちろん、2度目、3度目でも十分に満足できる、クオリティの高い内容だ。

■ROH総力を挙げての夢いっぱいのストーリー

年末恒例の『くるみ割り人形』はプリンシパルからスクールの子供たちに至るまで、さらにはダンサーを指導するOB、OG、もちろんバックヤードのスタッフに至るまで、総力を結集して作り上げるクリスマスのための夢舞台だ。

今回は本編に入る前に子役で出演する子供たちが舞台裏のインタビューに登場。「2カ月かけて作り上げてきた」という晴れ舞台への期待を語る姿が実に微笑ましく、同時にこうした経験が次代のダンサー達を育てていくのだなぁと感じる。

Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet © ROH. TRISTRAM KENTON

Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet © ROH. TRISTRAM KENTON

さて、ROHの看板作品のひとつといえるピーター・ライト振り付けの「くるみ割り人形」の魅力は数々あるが、とくに秀逸なのは明確で筋の通ったストーリーだ。

舞台はドロッセルマイヤー(ギャリー・エイヴィス)の工房から。甥のハンス・ピーター(アレクサンダー・キャンベル)はネズミの王様によってくるみ割り人形の姿に変えられてしまっている。その呪いを解こうと、ドロッセルマイヤーはくるみ割り人形を少女クララ(フランチェスカ・ヘイワード)に託す。

夜、時計の音とともに人形たちが動きし、くるみ割り人形を先頭にネズミの王様たちとの戦いが始まる。クララの投げたスリッパでネズミの王様たちは退散し、くるみ割り人形はハンス・ピーターの姿に。ドロッセルマイヤーは2人をお菓子の国へと誘う。金平糖の精(サラ・ラム)と王子(スティーヴン・マックレー)に迎えられた2人は夢のようなひと時を過ごすのだ。そしてラストの余韻は……ぜひ劇場でご覧いただきたい。

Artists of The Royal Ballet in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

Artists of The Royal Ballet in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

■「演劇の国」の面目躍如。踊りと演技が一体となったダンサー達にも注目

ROHの魅力の一つは演技力。それは今作にも素晴らしい踊りとともに、いかんなく発揮され、見応え十分だ。なかでもストーリーを引っ張るドロッセルマイヤー役のエイヴィスが見事。名ドロッセルマイヤーとしてすでに評判の高いエイヴィスだが、見飽きるということはない。見るたびにその立ち居振る舞いや表情の一つひとつに唸らされる。大スクリーンではその細かな仕草、眼力に一層の迫力がある。これは映画ならではの楽しみだ。

Francesca Hayward as Clara in The Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

Francesca Hayward as Clara in The Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

クララ役のヘイワード、ハンス・ピーターのキャンベルももはやお馴染みのキャストだが、常に初々しく、愛らしい。そして金平糖のラム、王子のマックレーは堂々たる、プリンシパルならではの貫禄を見せてくれる。

無論舞台上に、無駄なものは何一つない。プリンシパルからコールドバレエ、子役に至るまで、全てがそれぞれの輝きを放ち、そこに立ち、物語をつくりあげていく。

またこのシネマシーズンならではの目玉とも言える、幕間のインタビューも注目だ。今回は指揮者のワーズワースが、チャイコフスキーの音楽の魅力を語るほか、初演で金平糖の精を踊ったレスリー・コリアとラムとのリハーサルにも注目したい。「経験を引き継ぐ」という言葉には、単なる踊りの指導ではなく、ROHの伝統がまさに作られている姿だ。

The Corps de ballet in The Royal Ballet's Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

The Corps de ballet in The Royal Ballet's Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

練り込まれたストーリーと、ブラッシュアップを重ねられる振り付け、一流のダンサー達と彼らを目指すスクールの子ども達による「くるみ割り人形」。華麗な衣装や重厚感あふれる豪華なセットともども、ぜひ大スクリーンで楽しんでいただきたい。何度でも見たくなる、多幸感あふれる舞台だ。

上映情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18
『くるみ割り人形』
 
振付:ピーター・ライト
音楽ピョートル・チャイコフスキー
指揮バリー・ワーズワース
出演フランチェスカ・ヘイワード(クララ)/サラ・ラム(こんぺいとうの精)/ギャリー・エイヴィス(ドロッセルマイヤー)/スティーヴン・マックレー(王子)/アレクサンダー・キャンベル(ハンス・ピーター/くるみ割り人形)/英国ロイヤルバレエ団
上演時間2時間40分
 
■上映会場・日程:
北海道 ディノスシネマズ札幌 2018/2/17(土)~2018/2/23(金)
宮城 フォーラム仙台 2018/1/20(土)~2018/1/26(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2018/1/20(土)~2018/1/26(金)
 
■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh

ミラノ・スカラ座の今期開幕公演『アンドレア・シェニエ』と、昨秋の『パヴァロッティ没後10年記念コンサート』をBSプレミアムシアターで

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1月22日(21日深夜)のNHKーBS『プレミアムシアター』は、豪華ラインナップだ。イタリアオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座の今シーズン開幕公演『アンドレア・シェニエ』と、『パヴァロッティ没後10年記念コンサート』を一挙に放送する。

まず、前半の『アンドレア・シェニエ』は、フランス革命時に実在した詩人・シェニエと伯爵令嬢・マッダレーナの悲恋を描いた、ウンベルト・ジョルダーノ(1867~1948)の傑作オペラ。世界の歌姫、アンナ・ネトレプコと夫のユシフ・エイバゾフが、マッダレーナとシェニエを演じて話題を呼んだ。

舞台は、革命の嵐が吹き荒れる18世紀末。伯爵家の夜会で、令嬢のマッダレーナと下僕のジェラールは、若き詩人・シェニエの即興詩「ある日、青空をながめて」に心を奪われる。3人の運命が大きく動き始める瞬間だ。革命後、ロベスピエールの恐怖政治が始まると、政府を批判したシェニエは密偵に追われる身に。逆に、ロベスピエールの部下となったジェラールは出世し、密かに思いを寄せていたマッダレーナの行方を追う。シェニエを愛するマッダレーナは、侍女にかくまわれていたが……。

投獄されたシェニエは、やがて辞世の詩「5月の晴れた日のように」を詠み、32歳の若さで断頭台に送られる。彼を思うマッダレーナは、女囚に化けて死出の旅をともにする。オペラ版「ベルサイユのバラ外伝」とでも言おうか、フランス革命にまつわる情熱的でドラマチックな悲劇だ。ちなみに、史実ではロベスピエールも失脚して断頭台へと送られる。

ミラノ・スカラ座で1896年に初演されて以来、シェニエの「ある日、青空をながめて」と「5月の晴れた日のように」は名唱が数多く残されている。テノールの定番アリアで、マリオ・デル・モナコをはじめ3大テノールのルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスのCD・DVDは、平成の今も人気が高い。舞台装置、衣装なども豪華なので、映像での見比べ・聴き比べも一興だ。

また、どん底の日々を送るマッダレーナが、生活の激変とシェニエへの愛を歌う「亡くなった母が」は、マリア・カラスの歌唱が映画『フィラデルフィア』(ジョナサン・デミ監督、米93年)で使われている。エイズの主人公(トム・ハンクス)の、死の直前の意味深いシーンが心にしみる。もしネトレプコの歌唱を映画で使うとしたら、同じ映画の同じシーン?

さて、後半の『パヴァロッティ没後10年記念コンサート』は、パヴァロッティ(1935~2007)没後10年の昨秋、9月6日の命日にヴェローナ野外劇場で開催されたメモリアル・コンサート。ドミンゴ、カレーラスをはじめ、ズッケロ、ヴィットリオ・グリゴーロ、アンジェラ・ゲオルギウ、アンドレア・ボチェッリら、世界的スターが集結して、パヴァロッティのありし日を偲びながら熱唱。パヴァロッティの映像とともに、かつての3大テノールが舞台によみがえる……。

文=原納 暢子

番組情報
NHK-BS プレミアムシアター
ミラノ・スカラ座2017/18シーズン開幕公演 歌劇『アンドレア・シェニエ』
『パヴァロッティ没後10年記念コンサート』


■放送局:NHK BSプレミアム
■放送時間:1月22日(月)【1月21日(日)深夜】午前0時00分~午前4時00分
■放送内容:
本日の番組紹介(0:00:00~0:04:00)
ナレーション: 水落幸子(みずおち ゆきこ)

 
ミラノ・スカラ座2017/18シーズン開幕公演
歌劇『アンドレア・シェニエ』(全4幕)ジョルダーノ 作曲 【5.1サラウンド】(0:04:00~2:10:00)

■出演

アンドレア・シェニエ:ユシフ・エイヴァゾフ(テノール)
マッダレーナ:アンナ・ネトレプコ(ソプラノ)
カルロ・ジェラール:ルカ・サルシ(バリトン)ほか
合 唱:ミラノ・スカラ座合唱団
管弦楽
ミラノ・スカラ座管弦楽団
指 揮
リッカルド・シャイー
■収録:2017年12月7日 ミラノ・スカラ座(イタリア)

 
『パヴァロッティ没後10年記念コンサート』(2:12:30~3:49:00)
■出演

ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ、ルチアーノ・パヴァロッティ(映像)
ズッケロ、ヴィットリオ・グリゴーロ、アンジェラ・ゲオルギウ
アンドレア・ボチェッリ、フランチェスコ・メーリ、2CELLOS  ほか
<司会>カルロ・コンティ
<管弦楽>ブレーシャ&ベルガモ、ピアノ・フェスティバル交響楽団
<指揮>ユージン・コーン、レオナルド・デ・アミーチス
■収録 2017年9月6日 ヴェローナ野外劇場(イタリア)
■曲 目
マイ・ウェイ  フランソワ/ルヴォー
歌劇「トスカ」から 星はきらめき  プッチーニ 作曲
歌劇「連隊の娘」から ああ 友よ!  ドニゼッティ 作曲
イマジン  ジョン・レノン 作曲
歌劇「愛の妙薬」から 人知れぬ涙  ドニゼッティ 作曲
歌劇「椿姫」から 乾杯の歌  ヴェルディ 作曲 ほか

音楽の生まれた街(3:49:00~4:00:00)
■演 奏
トーマス・クヴァストホフ(バリトン)
チャールズ・スペンサー(ピアノ)
■曲 目
歌曲集「冬の旅」から おやすみ、春の夢
シューベルト 作曲
■公式サイト  http://www4.nhk.or.jp/premium/

バレエ初心者は観た、「ROHシネマシーズン 2017/18」ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』~本日1/19より上映の話題作

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「英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH) シネマシーズン 2017/18」ライヴ上映。2017年12月に一週間上映され連日超満員を記録、2018年1月5日~11日に、TOHOシネマズ日本橋にてアンコール上映もされた話題のロイヤル・バレエ『不思議の国のアリス』に続き、早くもバレエ次回作がスクリーンに登場する。ホフマンの童話に基づくデュマの小説をバレエに仕立てた『くるみ割り人形』が、2018年1月19日(金)~25日(木)まで、東京・千葉・神奈川・愛知・大阪・京都で上映される(仙台・福岡は1月20日~26日、札幌は2月17日~23日)。今回は、2017年12月5日にロンドンはコベントガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスで上演されたピーター・ライト振付版である。

ここでは少々趣向を変えて、バレエ初心者の視点から、このロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』を紹介したい。

<あらすじ>
クリスマスイブの夜、少女クララにミステリアスな魔術師ドロッセルマイヤーが、彼女の好きなくるみ割り人形をプレゼントする。
そのくるみ割り人形は、呪いによってその姿になってしまったドロッセルマイヤーの甥ハンス・ピーターだった。
くるみ割り人形になったハンスを救うためにはネズミの王を倒すこと。クリスマスツリーが魔法にかかったように大きくなり、おもちゃの兵隊が動き出してネズミの王の軍隊と戦う。ネズミの王を倒した後、クララとくるみ割り人形は雪の国を通ってお菓子の国へ向かうと、こんぺいとうの精と王子が素晴らしい踊りで出迎える。
そんな不思議な冒険は夢だったのか?クララが目覚めると、くるみ割り人形のような美しい若い男とぶつかる!
 
Artists of The Royal Ballet in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

Artists of The Royal Ballet in The Nutcracker. © ROH, 2017. Photographed by Karolina Kuras

 

子どもから大人まで数多のダンサーたちが出演。第一幕前に18分間上映される解説+インタビューでは、兵隊やネズミを演じる11歳~12歳の子どもたちが、「憧れのスターと共演できて嬉しい」と目を輝かせる。

さて、この子どもたち、ロイヤル・バレエ・スクールの生徒もいるのだろうか。ミュージカル『ビリー・エリオット』で、ビリーが受験し合格した、あのロイヤル・バレエ・スクール。そこからロイヤル・バレエ団へと上がってゆくダンサーも多い。

その『ビリー・エリオット』において、『くるみ割り人形(The Nutcracker)』は、ビリーの親友マイケルが、チュチュを着てビリーに踊りをせがむシーンにおいて股が裂けてしまい、「Nuts cracker!」と叫んでいたことでもおなじみだ。「くるみ割りって、痛いのね」的な翻訳がされていただろうか。イギリス英語で「nuts」とは睾丸のことだ。「タマが割れちゃう!」を、バレエの名作とひっかけるセンスの効いたセリフだった。ちなみにダンサーたちは、タマが割れないように、タイツの下にサポーターをつけている。ビリーのオーディションの際に、炭鉱夫の父親にタバコを差し出してきた男性ダンサーと同じスタイルだ。

The Corps de ballet in The Royal Ballet's Nutcracker  © ROH. TRISTRAM KENTON

The Corps de ballet in The Royal Ballet's Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

さて筆者は、バレエについてはほぼ門外漢だが、英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)の『不思議の国のアリス』で、すっかりバレエの楽しさ・美しさに、ビリビリと魅了されたのだ。そう、『ビリー・エリオット』における「Electricity」のように。

場面場面の可愛さ、美しさ。遊び心に訴える視覚演出。バレエとは、言葉を発せず、表情と身体でもって表現する。それは海外でも、どこででも通じるものなのだ。今回の『くるみ割り人形』も、「バレエの古典作品って高尚で、踊りだけで表現されてもわからないんじゃないの?」と身構える心配はゼロ! 世界のトップ・バレエとは、美しすぎるダンサーたちが、その魅力を余すところなくみせてくれる、究極のノンバーバル表現なのだと気づかされる。

『くるみ割り人形』第一幕は、ヴィクトリア王朝の時代のドレスや装飾が、美しく描かれる。動物や人形が踊り出し、舞台に雪が舞う。子どもたちがピョンピョン跳ねる小ギャロップや、クリスマスツリーが大きくなる等の場面が楽しい。少女クララ役のフランチェスカ・ヘイワード、くるみ割り人形役のアレクサンダー・キャンベルが、お菓子の国へ向かうところで第一幕は終了する。くるみ割り人形役のアレクサンダーは、『不思議の国のアリス』上映にて司会を勤めていたスター・ダンサーである。

Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet © ROH. TRISTRAM KENTON

Meaghan Grace Hinkis as Clara in The Nutcracker, The Royal Ballet © ROH. TRISTRAM KENTON

ここまででも大いに楽しいのだが、特筆すべきは第二幕! ロシア・アラビア・中国の踊りが続くのだが、それがもう、見せ場、見せ場、見せ場!なのである。ひとつひとつの踊りごとに拍手を送りそうになる出来栄えだ。そしてバレエ初心者であっても、「この曲も、この曲も知っている!」と、心までも踊ってしまった。

筆者注目はアラビアの踊り。普通、人間は動いたらシワのひとつも寄りそうだが、ダンサーの腰には無駄な肉が1ミリもないから、それがない。どんなに踊っても美しいままなのだ。それにはあんぐりと口を開けて見惚れるばかり。

その第二幕でも最大の見せ場は、ラストに控えるサラ・ラムのこんぺいとうの精、スティーヴン・マックレーの王子によるパ・ド・ドゥだ。スティーヴン・マックレーは、『不思議の国のアリス』において、あのタップダンスを見せてくれたマッドハッターを演じた人物……といえば、「それは見逃せない!」と思うファンも多いだろう。


サラとスティーヴンが組むのは初めてだそうで、2人での踊りをより美しく見せるために、実際にピーター・ライト振付でこんぺいとうの精を踊ったレスリー・コリアが指導にあたる様子が、第二幕直前の解説+インタビューで見られる。

なお、ここでは『不思議の国のアリス』上映の際同様、トゥシューズのCMが入る。2~3日で一足履きつぶしてしまうほどにハードなバレエの世界、スポンサーは必須なのだと思わされる。ダンサーは、舞台の上で息を切らすことが禁じられている。汗ひとつかかず、足音もたてず、優雅で軽やかに踊るには、強靭な体力と、日々の厳しいレッスンが必須なのだ。

上演時間は、
解説+インタビュー:18分
第一幕:53分
休憩:13分
解説+インタビュー:18分
第二幕:58分
の、2時間40分。だが、体感時間はあっという間。とにかくウットリしているうちに、時があっという間に過ぎてしまう。ダンサーたちは立ち姿だけでも美しく、カーテンコールの花の受け渡しすら、「美」なのだ。

ミュージカル『コーラスライン』の「At the Ballet」に、こんな歌詞がある。
「Everything was beautiful at the ballet」
バレエをやっている間、観ている間は、浮世の憂さもすべて忘れられる。それほどまでに美しい。

終映後、司会者がこう叫んだ。
「What a treat!」
伝統あるチャイコフスキーのスコアと、色褪せないピーター・ライトの振付を特等席で堪能できるのは、クリスマスのご褒美だ。そんな気持ちがこの一言に詰まっていた。筆者も幸せな溜息をつきながら、「バレエって、こんなに楽しいんだ!!」と、あらためて驚きと嬉しさでいっぱいになった。もう1月ではあるけれど、クリスマスのハッピーな気分を味わうには、まだ遅くない。映画館の大スクリーンで、クララと不思議なクリスマスの一夜を体験しよう!

Francesca Hayward as Clara in The Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

Francesca Hayward as Clara in The Nutcracker © ROH. TRISTRAM KENTON

上映情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18
『くるみ割り人形』
 
■振付:ピーター・ライト
■音楽:ピョートル・チャイコフスキー
■指揮:バリー・ワーズワース
■出演:フランチェスカ・ヘイワード(クララ)/サラ・ラム(こんぺいとうの精)/ギャリー・エイヴィス(ドロッセルマイヤー)/スティーヴン・マックレー(王子)/アレクサンダー・キャンベル(ハンス・ピーター/くるみ割り人形)/英国ロイヤルバレエ団
■上演時間:2時間40分
 
■上映会場・日程:
北海道 ディノスシネマズ札幌 2018/2/17(土)~2018/2/23(金)
宮城 フォーラム仙台 2018/1/20(土)~2018/1/26(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2018/1/19(金)~2018/1/25(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2018/1/20(土)~2018/1/26(金)
 
■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh
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