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【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年2月26日~2018年3月4日)

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水面下の動きが活発です。おそらく自分で感じている以上に、周りの人も表には出さないだけで、様々な心境の変化を受け入れている最中。考えていることを実際に誰かとやり取りしながら、あるいは向こうから依頼や提案を受けながら、試験や課題をクリアしたり、具体的な段取りに向かったり、春を迎える準備に追われる一週間になりそう。

以前よりスムーズに話が進んだり、ふと言葉にしてみたことがキッカケになって、思わぬ展開に追いつくのが大変になったり。自分にとってハッピーなことばかりが起きるとは言えないかもしれませんが、ここは他者からどう見られるのか、条件や負い目や後ろめたさはさておき「自分は本当はどうしたいのか」を素直に認めて意思を発信して吉◎

もしかしたら、そんな「自分の意思を持ち自立しようとする」あなたを引きずりおろそうとする人がいるかもしれない。自分勝手だと責めたり好戦的な意地悪を仕掛けられるかもしれない。だからといって愛想を振る舞うことや、世間体や義理を気にした火消し、閉口することの無意味さにも嫌という程気が付くはず。目指すところだけを見ていてください。状況がこれ以上悪くなることはないはずです。

自分の中にあるちょっと後ろめたい気持ちとの決別も必要になってきそう。呪いのように思いこんでしまっていること、実際の望みを押し殺して天邪鬼になっていること、誰かの失敗や醜態を期待すること、人の気持ちを逆手にとること、ドロドロした想いも時には必要悪ですが、そればかりを起爆剤にしていては、今せっかく仕込んでいるものも、春先にフッと姿を消してしまうかもしれません。

残すものは決めていけるようでいて、実は決まっていて。なんとも言えない自然の摂理のようなものを感じることになりそうです。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
好転反応、リバイバル
◆おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
公明正大、ライフワーク
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
情報収集、ハッシュタグ
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
合理的、ディスカウント
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
砂かぶり、エキサイティング
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
展望、フィーチャリング
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
臨場感、ライブレポート
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
季節モノ、インタラクティブ
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
新商品、ロードショー
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
視覚効果、テクニカル
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
遠隔操作、フィールドビュー
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
単純明快、パワープレイ

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反田恭平が語る2018-2019ツアー~ベートーヴェンで切り拓く新たな地平

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2015年のデビュー以来、圧倒的な存在感を示し続けてきた反田恭平(そりた きょうへい)。彼の躍進は、クラシック音楽ファンの間で長く語り継がれることになるだろう。自身初となった、昨夏の全国横断リサイタル・ツアーでは全13公演が瞬く間に完売した。今年は規模を拡大して、改めて力のこもった熱演を全国に届ける。反田といえば、デビュー以来、リストやラフマニノフの作品を取り上げ、作品のもつ深いロマンティシズムと躍動感を卓越した技巧で表現してきたが、今夏のツアーは、まずプログラムに驚かされる。ベートーヴェンの傑作をそろえたオール・ベートーヴェン・プログラムなのだ。反田は、更なる高みを目指し、昨年のツアーを終えた10月からショパン音楽大学(旧・ワルシャワ音楽院)に留学している。今回のツアーは、プログラムと演奏の両面で反田の新たな一面を見るまたとない機会となろう。ツアーを控えた反田に、プログラムに込めた意図とポーランドでの生活の様子を訊いた。

今、敢えて古典派を演奏する意図は

――まずは、2018-2019ツアーを迎えるに当たっての意気込みを聞かせて下さい。

あっという間に、ツアーを考える時期が来たというのが率直なところですね。9月に昨年のツアーが終わり、その後、幾つかの演奏会をしました。そして、もう1月。人生は、こうして終わっていくのかな……(笑)。

毎月、カレンダーをめくった時に、「今月は、この演奏会がある。ちゃんとやっていこう」と意気込む。それを12回繰り返してきただけです。だから、「特別にやってやるぞ」という気負いはありません。ただ、今年のツアーでは、昨年よりも多くの都市に足を運ぶのが楽しみです。また、土・日を中心に演奏会のスケジュールを組んで頂いたので、体力的にも余裕がでて、万全の状態で演奏に臨めると思っています。

――オール・ベートーヴェン・プログラムは、とても意外でした!

ですよね!! ですよね!! 僕の中では、嬉しい「ですよね!!」です。

CDデビューはリストの曲で、次はラフマニノフ。ロマン派、ロシア系の作品を中心に披露してきましたから、「古典派はどこぞや!?」という感じだったと思います。その2枚のCDを踏まえて、今年は古典派の作品をお届けします。数年単位でプログラムをイメージしたとき、3年目に古典派を演奏するのは、ベストなタイミングだと感じています。

――しかも、3大ソナタを一夜で聴かせるという聴き応えのあるプログラムですね。

そうなんです。ベートーヴェンの32曲のピアノソナタは、どれも名曲ですが、今回演奏する3大ソナタは、いわば、それらを代表する傑作。ですから、曲も楽しみにしていただけたら嬉しいですね。

《悲愴》は初期、《月光》は中期、《熱情》も中期に作られた作品であり、一度に3曲に向かい合うことの意義は大きいと思っています。そして、これらのソナタを経て、晴れて、ベートーヴェンのソナタの集大成とも言うべき、後期3大ソナタ(第30、31、32番)へと歩みを進めることが出来ると考えています。

――反田さんにとって、ベートーヴェンはどのような存在なのでしょうか。

僕にとって、ベートーヴェンはそれほど「特別」な存在ではありません。だからこそ、弾きたい、対峙してみたいと思える作曲家なんです。大好きなモーツァルトに似た部分をもちつつも、彼の人生に基づいた表現もある。実は、幼いころに習っていた大好きな先生に、「将来、君は絶対にベートーヴェン弾きになる。今は分からないかも知らないけど、ベートーヴェンしか弾かないくらいにハマるから」と言われたことがあります。ロシアでも、師事していたヴォスクレセンスキー先生から初めて課題曲として渡されたのが、スクリャービンの《幻想曲》とベートーヴェンの《熱情》でした。印象的だったのは、《熱情》の第3楽章の冒頭。13個の和音の連打で始まるんですが、ロシア正教で13は不吉な意味をもつ数字。不吉なことが起こる前触れのように弾くことを習いました。だから、僕の《熱情》は、ひょっとするとロシアっぽいかも(笑)。

いずれにしろ、ベートーヴェンの良さに対する独特な理解が僕にはあるかもしれません。僕自身はわからないけど、周りから見ればわかるような。

――今回のツアーでは、反田さんの新しい一面に出逢えそうです。

どの曲も有名な曲ですが、僕は、CDでよく聞くようなありきたりな演奏ではなく、少しスパイスを加えた演奏にしたいと思っています。これまでに取り上げた曲は、華やかさをもった曲が中心でしたが、今回は「荘厳」のイメージです。どの曲も短調ですが、その中で、第1楽章と第2楽章との対比や、短調から長調という全体を通じた対比を際立たせたいと思っています。

知的で自己分析的なアプローチ

――昨年10月から、ワルシャワで研鑽を積まれていますが、ポーランドでの生活はいかがですか。

ポーランドは、とにかく治安が良く、人も優しいですね。困っていると声をかけてくれます。3年余り過ごしたロシアにも愛着はありますが、余生を過ごす別荘を買うなら絶対的にポーランド! のどかで美しい、穏やかな場所です。

――ポーランドでの食事は、どういった感じなのでしょうか。

ポーランドに降り立って初めて食べたのが、「ジュレック」という料理。とても大きなパンにスープが入ったポーランドの伝統料理です。本当に大きい。ソーセージも美味しいですよ! 全体に、じゃがいも料理が多いかな。それと、チョコレート。先日飲んだチョコレート・ドリンクもとても大きかった(笑)。

すごく嬉しかったのは、ロシアで「スメタナ」と呼ばれているサワークリームが、ポーランドでも売っていたこと! いつもバッグに入っているくらいでしたから、本当に助かりました。

――第二の留学先としてワルシャワを選んだのは、どうしてですか。

習いたい先生がワルシャワにいたというのが大きな理由です。ショパンを勉強してみたいという気持ちもありました。ロシアで師事したヴォスクレセンスキー先生は、どちらかと言えば、自分と似た情熱的な演奏をする方でしたが、現在、師事している先生は、ポーランド出身で、自分とは違ったものをもっています。「なぜこうなってこうなるのか」、「この音を出すためには、どういう筋肉を使うのか」を追求していく、知的で自己分析的なアプローチをとります。勿論、先生は、その答えを教えてくれないので、探らなくてはなりません。

――音楽的な点では、ロシアのスタイルとの違いを、どういったところに感じているのでしょうか。

ロシアとポーランドは、元々、文化的に近い国ですが、音楽性は全く違うと感じています。ロシアではフォルテの幅を広げることに集中して取り組んできましたが、ポーランドではピアノの幅を広くすることに取り組んでいます。例えば、ピアノでもピアニッシモに近いのもあれば、メゾピアノに近いものもあり、弱音にもグラデーションがあるわけです。そのための指のトレーニングも欠かせません。こうやって指に指令を出して、それが動いているか動いていないかを脳に帰って確認しつつ、音を耳でも確認する。全身の神経を研ぎ澄まし、10本の指をすごく丁寧に扱います。慣れないので10分やっただけですごく疲れます。スポーツ選手の感覚かもしれませんね。ハードですが、学びの多い充実した毎日で、1、2年後に自分がどうなっていくかのかが楽しみです。

――今回のツアーでも、ポーランドでの成果が聴けそうですね。

ええ。今回のプログラムは、実は、指を鍛えるという面でも今の自分が弾かなくてはならない作品なんです。一部分、一部分を抜き出して見れば、《熱情》のように嵐の激しさを湛えた部分もあれば、《月光》の第1楽章のようにピアニッシモでずっと長い息で作るフレーズもある。とても多様な表情があります。

――最後に、ツアーを楽しみにされているお客さまにメッセージをお願いします。

ツアーを通して、新たな一面を皆さんにお届けできるのではないかと楽しみにしています。クラシック音楽をもっと身近なものにしていきたいと思っていますので、映画を観にいくような気分で、友達を誘って気楽に来て頂きたいですね。音楽ホールが気軽に行ける場所としてある…そういう時代になっていくんじゃないかなあと思います。是非、足をお運びください!

取材・文=大野 はな恵  写真=荒川 潤

【ザ・プロデューサーズ】第21回・Zepp青木聡氏、坪田和也氏、久保裕矢氏~クラシック音楽は新たな時代へ「STAND UP! CLASSIC」とは?

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編集長として”エンタメ総合メディア”として様々なジャンルの情報を発信していく中で、どうしても話を聞きたい人たちがいた。それは”エンタメを動かしている人たち”だ。それは、例えばプロデューサーという立場であったり、事務所の代表、マネージャー、作家、エンタメを提供する協会の理事、クリエイターなどなど。すべてのエンタメには”仕掛け人”がおり、様々な突出した才能を持つアーティストやクリエイターを世に広め、認知させ、楽しませ、そしてシーンを作ってきた人たちが確実に存在する。SPICEでも日々紹介しているようなミュージシャンや役者やアスリートなどが世に知られ、躍動するその裏側で、全く別の種類の才能でもってシーンを支える人たちに焦点をあてた企画。

それが「The Producers(ザ・プロデューサーズ)」だ。編集長秤谷が、今話を聞きたい人にとにかく聞きたいことを聴きまくるインタビュー。そして現在のシーンを、裏側を聞き出す企画。

>>プロデューサーズバックナンバーはコチラ

今回の”エンタメ人”~ライブ業界より~

【青木聡】
EPICレコードで葉加瀬太郎などを担当後、ソニー・クラシカルでシリーズ累計売上350万枚を越える『image』を手掛ける。再びEPICレコード勤務となり、元ちとせ、のだめオーケストラを担当。現在、Zepp Live常務執行役員。

【久保裕矢】

2002年国立音楽大学卒業。在学中にモバイル向け事業を展開するベンチャー企業の創業メンバーとして参画。
その後独立し、作家マネジメントや音楽制作を多数手がける。2014年ドキドキファクトリー設立。企画、マーケティング、イベント演出まで総合的なエンタテイメントのプロデュースに携わる。

【坪田和也】
2014年ソニー・ミュージックグループ入社。プロモーション部署を経て、お化け屋敷やマジックなどの体験型エンタテイメントの新規企画開発や、同社教育事業部署にてミュージカル教育プログラム等の開発に携わる。


日本人が持つ「クラシックのコンサート」という概念は、比較的ブレのない一つの映像に集約されるのではないだろうか。奏者も観客もフォーマルな正装に身を包み、静かに座って、荘厳なホールで音楽を感じる。故に愛する人も、少し苦手な人も存在するわけだが、これを根本からひっくり返すようなプロジェクトが存在する。クラシックというものの素晴らしさを世に広めるという根本を持ちながら、改めて別のアプローチでみせていくことにより、改めてクラシックへの興味を多くの人間に広めるということ。このSTAND UP!CLASSICという全く新しい試みによって何が生まれるのか?今回のプロデューサーズは初の対談形式でお送りしたい。

300年前はポップミュージックだったわけで

――まずはこのプロジェクト、企画の狙いから教えて下さい。

坪田:ソニー・ミュージックとして、クラシック音楽を再発掘しようというのが大きな目的です。これまでもクラシッククロスオーバーというジャンルで、葉加瀬太郎さんや、イギリスのイル・ディーヴォのヒットがあったり、1980年代に「最も売れたクラシック・アルバム」としてギネス・ブックに認定されている『フックト・オン・クラシックス』や、ソニーミュージックでも2CELLOSのようなアーティストを輩出していることもあり、音楽シーンを牽引している会社として、今一度クラシック音楽にスポットを当てたい、そしてマーケットの拡大というのが狙いです。

――“STAND UP!CLASSIC”というネーミングがいいですよね。

坪田:最初は“ソニー・ミュージックオーケストラ”でどうだという意見もありましたが、色々と意見を出しているうちに、「そういえばクラシックのコンサートって、何で座っているんだろう?」と話になって。 

久保:クラシックのコンサートというと、どうしてもしきたりや周りのお客さんの目もあて、座って観るのが当たり前になっています。

坪田:今はクラシックと言われていますが、300年前はポップミュージックだったわけで、当時はレコードもないので、コンサートに行かなければ聴けないという制約がありました。なので会場に押し寄せるお客さんを、一度にたくさんの人に聴いてもらうために、ホールで座って聴いていたのではないかと、そんな仮説を立てたり(笑)。今、モーツァルトが現代に現れて、クラシックコンサートを観たら「みんな、なんで座ってるんだろう?」って思うのでは?という妄想を膨らませました(笑)。今、体験型のエンタメもどんどん増えているし、音楽を聴くだけならハイレゾとかでいい環境で音楽体験ができます。でもわざわざ劇場に足を運ぶのであれば、音楽を聴くプラスαのところで、ポップスのライヴでは当たり前の照明演出をクラシックコンサートで体験できたり、新しいクラシック音楽体験をしてもらいたいという思いです。

久保:どうしてクラシックのコンサートでは、レーザーを使って照明を派手にしてはいけないんだろうとか、舞台演出を派手にする事は、クラシック音楽をマイナスのものにするとは思ってなくて。演奏する曲にもよりますが、ホールでやっているクラシックコンサートに、そういう演出を持ち込みたいと思いました。青木さんが手がけられた葉加瀬太郎さんや「Image」コンサートでは、皆さん立って盛り上がっていたので、全然ありだと思っています。

青木:海外ではコンサートの最後にみんなで歌ったり、そういう事が当たり前です。イギリスで毎年夏に行われるクラシック音楽の祭典「プロムス」では、みんな3時間半くらい立ったまま楽しんでいます。ベルリンフィルの「バルト・ヴューネ」も野外コンサートなので、みんなビールを飲んだり、寝っ転がりながら演奏を楽しんでいて、向こうではそういう楽しみ方が当たり前なので、日本でのクラシック音楽の楽しみ方、在り方みたいなものに温度差を感じています。普通のポピュラー音楽として変わらないものなのに、変わるものとして楽しんでいる気がします。でも今回のメインテーマでもある、オーケストラを作る事って、そんなに簡単な事ではなく、僕は11年前に「のだめオーケストラ」を作った経験があり、その経験を今回のこのプロジェクトで生かしたいと思っています。あれは、オケを実際に作って番組にも登場させ、コンサートもやりましょうとメディアにこちらから提案しました。例えば20年位前に登場したクライズラー&カンパニーは、世界中に存在するクラシカルクロスオーバーのプロットタイプとしては一番古くて、日本はクラシック音楽が普及したのは遅い事もあって、そういうクロスオーバーものがやりやすい土壌があります。だから僕達がまだまだ仕掛けられる余地はあると思っています。

多くの人に共感してもらえるスタープレイヤーを育てていきたい

――最初から、既存のオーケストラをリニューアルしてとか、プロデュースしてとかではなく、あくまでもオーディションで一からオーケストラを作ろうという構想ですか?

青木:こういう動きはもちろんクラシック業界でもあって、兵庫県立芸術文化センターの管弦楽団は、世界中でオーディションをやって、35歳以下の若い演奏家を集めて、その任期が3年です。そこで3年間腕を磨き、他のオーケストラに移るという、そういうアプローチはあります。みんな同じような問題意識を抱えて動いています。

坪田:日本は世界でアマチュアのオーケストラの数が最も多い国なんです。クラシックが好きな方がたくさんいるという事で、マーケットもあるのですが、そこで活動して対価を得るというのがなかなか難しい状況です。音楽大学を卒業しても、その後プロとして稼ぐというのはなかなかハードルが高くて、そういう方達が活躍できる土壌を作る事ができたら、日本のクラシック全体のスケールアップにもつながると思っています。

久保:僕は劇伴の制作をやる時に、レコーディングメンバーを色々なところからかき集めてきて、音源は作りますが、その時のメンバーで引き続き活動ができるかというと難しいし、コントロールしていくのも難しいです。スターが生まれるかどうかを考えると、ある程度のクラスの人たちを、今回作ろうとしているチームに落とし込んでも、初期衝動という部分の新鮮さも生まれないと思いました。高校生でも大学生でも力がある人には入ってもらい、先々の事を考えて、このプロジェクトが少しでも長く続けられるようにするにはどうするかという事を、一番に考えています。

――プレイヤーとしてというより、バンドとして考えていると。

久保:そうですね、イメージとしてはバンドです。

青木:“のだめオケ“はまさにそういうニュアンスがありました。あの時は大学卒業して数年経った演奏者を集めました、日本のクラシック業界を見ると、通常のオーケストラに入るには、多くの人が音大を卒業してから数年かかります。当時のだめオケのトップ奏者は、その後、都内の主要オーケストラに入りました。だからそこに至るまでに、こういう活躍する場が必要じゃないかと思いました。

久保:レコーディングやライヴで活躍しているストリングスチームに入るのも狭き門なんです。今回我々は、日本全国の音楽大学、その付属高校、それとオーケストラ部がある大学に、スタッフ全員で足を運んで、総当たりで人材を探しています。オーケストラ部がある企業もあるので声を掛けています。

青木:どの業界もスタープレイヤーが必要です。スタープレイヤーがいるからその業界全体が底上げできるわけで、だから僕らも若くて、多くの人に共感してもらえるスタープレイヤーを育てていきたい。場合によってはソリストとしてやってもらってもいいと思っていますし、とにかくクラシックという事で紐解ける新しい才能を見つけたい。僕らも審査するというつもりではなく、出会いの場であり、音楽家自身のためのソリューションと思っています。

久保:今回のプロジェクトに参加して下さっている、ソニー・ミュージックエンタテインメントの新人発掘部門・SDグループのスタッフの方が、日夜行っている全国のライヴハウスを回って才能を発掘する作業と同様に、我々も全国で行われているクラシックの演奏会を去年からくまなく回っています。クラシックをやっている人の中にはネットに強くなく、自分で発信ができていない人も多いと思い、こちらからでかけて行って探そうと思いました。

坪田:クラシックをやっている人たちは、バンドをやっている人達と同じように、すごくエネルギーが溢れているのに、ステージ上ではすごく真面目な顔をして演奏しているので(笑)もっと演奏を楽しんでいる姿を前面に押し出しても良いと思っています。

久保:クラシックって元々がエンターテイメントだし、まずはお客さんへの聴き方の提案からだと思っていて。いきなり奇想天外な事をやりすぎて、クラシックからお客さんが離れるというのでは意味がない事なので、それは避けたい。

青木:例えば衣装ひとつとっても、クラシック伝統ともいえるあのカラードレスは、なんであれじゃないといけないの?とか。観ている方はそれを見てどう感じているのかという事は、演者は考えた事がないと思う。それがしきたりという事かもしれませんが、でもそれが本当にお客さんにカッコよく見えているのかという事です。年配のお客さんにはそれがカッコよく見えているかもしれませんが、若い人が観に来てくれた時に、憧れないと思う。だから例えば、ビジュアルは全員スッキリすっきりしたスーツで演奏した方がカッコよく見えるんじゃないとか、そんなことにもこだわれたら面白い。

楽器のカッコ良さも追及したくて

――視覚から入ってくる情報は重要ですよね。

久保:クラシックの演者の写真って、みんな楽器を持ってはいても、今までの概念にとらわれているような固い写真のものが多い。それで、そういえばバンドのアーティスト写真って、楽器持ってないよね、という話がスタッフの中から出て、そういうところから掘り下げています。

青木:若い人たちからカッコイイ、自分もやりたいと思ってもらえるものを作らないと、業界自体が盛り上がらない。

久保:実は楽器のカッコ良さも追及したくて。X JAPANのYOSHIKIさんが透明のピアノを弾いていますが、まさにああいう事で、自動車メーカーのプジョーさんが、未来のピアノをデザインして、斬新な型のものを提案していたり。このプロジェクトではそういう楽器のカッコ良さにも注目して、取り入れていきたいです。

最終的にはコンサートがエクスタシーを生みださないと

――オリジナル楽曲に関しても、これまでのクラシック音楽の型にハマらないものを作っていくのでしょうか?

久保:楽曲に関しても、ポップスを基準に考えています。もちろんゆったりしたバラード曲は長めになるかもしれませんが、曲の尺もポップスのように、4~5分で完結するようなものを目指したいです。それから、これはひとつのアイディアですが、できればノンストップの構成でやりたいと思っていて。音を止めないというのも、クラシックではあまりなく、曲と曲の合間を繋ぐのも、お客さんを煽れる演出にしたり、ロックやポップスのライヴのようにすることに、このプロジェクトを作る意義があるのではないかと思っています。

――まずクラシックの概念を壊していく事に、このプロジェクトのプライオリティを置いていますが、逆に残していこうとしているのは、どういう部分ですか?

青木:技術です。例えばシモン・ボリヴァルユースオーケストラが、なぜクラシック業界でも評価が高いかというと、それは技術の高さがあるからで、そこは一番こだわってきちんとやらないと、クラシック業界に失礼だと思っています。

坪田:お客さんに感動してもらうためにも、そこが一番大切だと思っています。

青木:オーケストラは生ものなので、40~50人の演者の総合力がある種の奇蹟を生み出すというか、そういう感覚で臨まないと、最終的にはコンサートがエクスタシーを生みださないと思っています。そこがオーケストラの面白さでもあります。

――指揮者の存在は?

青木:時と場合によると思います。指揮者がいないオーケストラも存在しますが、指揮者がいなくても、オーケストラが息を合わせて演奏したものの方が、もしかしたら凄いものができあがる可能性もあります。

――オーディションの実技審査は、どなたが審査するのでしょうか?

久保:今、オーケストラで現役でやっていらっしゃる方や、音楽大学の講師の他に、我々はその人のスター性や人間性を見させてもらい、技術を見る人と人を見る人、双方向から審査させていただきます。

――このオーケストラは何人編成と考えているのでしょうか?

久保:マックスで考えると50数名です。ポップス業界のオーディションと、クラシック業界のオーディションのいいところを、参考にさせていただきたいと思っています。普通のオーケストラは入団テストがあって、試用期間があり、そこで見極められ正団員になります。そこは我々も同様です。ポップスのオーディションの部分でいうと、やはりスター性が求められますので、そういう人材がいた時は、オーケストラの一員にするのか、ソリストとして育てていくのかは、ふたを開けてみなければわかりません。オーケストラは、やはり一人ひとりの相性が一番大切だと思っています。

番組も作る予定です

――結成後の活動は?

久保:いわゆるアーティスト活動になります。単発のお仕事を発注して終了、という事ではありません。今、関東、関西とでオーディションをやっていて、関西では京都市交響楽団さんにも協力してもらっています。大きなイベントに出演していただきますが、もちろんきちんとライヴ活動も行っていき、総合力の向上を目指します。

青木:番組も作る予定です。それは「のだめ」の時の事を振り返りつつ、当時活躍した団員の現在の姿を追いかけ、その姿を通して、今回のオーケストラをなぜ作るのかというその意義や意味を、ユーザーにわかりやすく伝えられる番組にしたいと考えています。例えば、ピアニストの反田恭平さんのようなスターのコンサートには、若い方もたくさん足を運んでいます。そんな存在になれるアーティストを僕らも育てていきたい。カッコイイ音楽の提供の仕方が、クラシックによってできる可能性があると思います。それはオーケストラ以外にもあって、ポップスやロックの楽曲を演奏して、世界的な人気になっているカルテットもいます。将来的にはそういうグループもいくつか作る事ができたらいいなと思っています。そうする事で新しいクラシックの楽しみ方が提供できて、ファンも増えていくといういい循環を作り上げる事ができたら最高です。

――クラシックをより身近なものにするための考え方として、音楽はもちろん、そのスタイルを近代的にするというところが、今までにはなかった企画ですね。

坪田:クラシックって一般的にわかりづらいもの、知識を持っている人はより楽しめるものという見え方です。コンサートに行くと、パンフレットにライナーノーツが載っていますが、でも客席の明かりが消えたら読めません。そうすると楽曲の背景もよくわからないまま演奏が終わったりします。でも、そういう楽曲が持つストーリーを例えば映像を使って教えてあげると、曲の輪郭もよりハッキリしてくるし、伝わり方が違ってくると思います。

久保:悲しい曲の時は照明を青、楽しい曲の時は赤にしたり、そういった演出さえ普段のクラシックコンサートではなかなかお目にかかれません。海外ではプロジェクションマッピングを取り入れたり、国内でもそういう演出を取り入れようとする動きもあります。

坪田:例えばシネマオーケストラは本当に感動するし、わかりやすいですよね。わかりづらいものを、わかりづらいままにしておく事がよくないと思っています。それが今回の我々が目指すものの、大きなテーマのひとつでもあります。

 

企画・編集=秤谷建一郎  取材・文=田中久勝  撮影=三輪斉史

 

STAND UP! CLASSICへの参加応募締め切り本日まで!
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高橋悠治が到達した究極のピアニズムとは? ~ピアノリサイタル「余韻と手移り」3月2日に開催

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ピアニストで作曲家の高橋悠治。クラシック界のみならず、ポピュラーミュージックやジャズの領域でも多大なるリスペクトを受けてやまないピアノ界のレジェンド。ある時は世界を股にかける、20世紀音楽(ケージ、クセナキス、etc…)の鬼才ピアニストとして勇名を馳せ、またある時はコンピュータ音楽の研究に勤しむ。世界有数のサティ弾きかと思えば、極めて独創性の高いバッハを聴かせる。さらには「水牛楽団」で世界の抵抗歌を演奏するアクチュアリティの徒でもある。このカリスマ・ピアニストが一体どこへ向かうのか、それは常に予測不能だ。

そんな彼が到達した現在の境地こそ、今回の「高橋悠治ピアノリサイタル 余韻と手移り」といえる。しかし、「余韻と手移り」とは何か? 

高橋は今回のリサイタルについて「明け方の雲が色を変えていくように 黄昏の空気が冷えていくように 音楽はことばにならない時代の変化を映す」と説明を寄せている。「いくつかのやりかたで 変化を意識し 手が記憶するにつれて 意識では忘れることになるか じっさいは そこまではいかないし 確信ありげに音を操る名人芸になってはつまらない ことばにならない感触 共有できても一般化できない経験」(「水牛のように」2018年2月号「懸解」より抜粋)。

1938年生まれ、多彩きわまる活動を経てきた現在79歳の彼にしか生み出しえない究極のピアニズム。それは、ことばでは到底言い表すことのできない、深遠で微細な音の変化である。私たちが今度の演奏会で立ち会えるのは、まさに彼の述べる「ことばにならない感触」にほかならない。

プログラムには、J.S.バッハ「組曲ハ短調」、チマローザ「ソナタ イ短調」のほか、オリバー・ナッセン、増本伎共子、クロード・ヴィヴィエ、石田秀実といった、必ずしも世間でよく知られているとは言い難い現代作曲家の作品も積極的にとりあげられる。あえて「知らなかった曲を集めて 弾けないところから練習の手立てを考える」ことで純粋な心持ちで作品に向かい合うことができるということなのだろうか。さらに、高橋自身の新作「荒地花笠」の初演も盛り込む。これも「経験をかさねて 身についたはずの技術が役に立たない」ような、作曲プロセスを踏んでいるらしい。ここでは、あらゆる音の粒子が、前例を踏襲しないゼロベースから立ち上げられるのだ。

この場所、この瞬間でしか味わうことのできない、音楽の究極を体験してみるのも悪くはない。だとすれば、このリサイタルを無視することは不可能であろう。

今回のリサイタルで演奏される曲目については、以下に改めて紹介しておく(演奏会当日配布されるパンフに記載予定の、高橋自身による解説文を参考にさせていただいた)。

「高橋悠治ピアノリサイタル 余韻と手移り」演奏曲目

1. J.S.バッハ : 『組曲 ハ短調』BWV 997
※ライプツィヒで1738~41年に、家にあったラウテンヴェルク(リュート弦の鍵盤楽器)のために作曲したと推測されている作品。

2. オリヴァー・ナッセン : 『祈りの鐘素描』(武満徹追悼)(1998)
※武満徹がピーター・ゼルキンのために書くはずだった曲のタイトルでナッセンが武満への追悼曲を書き、これを東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアルでゼルキンが初演した。

3. 増本伎共子(きくこ) : 『連歌』(2004)
※前後の部分が関連をもちながらすこしずつ変化していく「連歌」は、和歌の技法に由来するという。

4. 高橋悠治 : 『荒地花笠』(2018)
※高橋が実物をまだ見たことがないブラジル原産の植物=アレチハナガサを、その写真から音のイメージを創り上げて作曲した。

5. クロード・ヴィヴィエ : 『ピアノフォルテ』(1975)
※シュトックハウゼンに師事し、メシアンの和音、ガムランや雅楽の響きからも影響を受けたカナダ人作曲家の作品。ちなみにヴィヴィエは1983年、パリのゲイバーで出会った男娼に刺し殺された。

6. 石田秀実 : 『フローズン・シティⅡ(1991)
※石田秀実は古代中国哲学の研究者にして音楽家で、“気”にも通じている。今回はオルガン曲として書かれた原曲をピアノ演奏する。

7. ドメニコ・チマローザ : 『ソナタ イ短調』
※チマローザは18世紀に活躍した人気オペラ作曲家。88曲のチェンバロ・ソナタ(ピアノソナタ)も書いており、今回演奏されるのはその中の一篇である。

”麦わらの一味”の熱い冒険にブラスバンドが加わったら――? 『ワンピース音宴』が注目される理由

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アニメ『ONE PIECE』の世界を、ブラスバンドによる音楽とパフォーマンスで体現するイベント『ワンピース音宴〜イーストブルー編〜』が、2018年8月に東京国際フォーラム・ホールCで開催される。本イベントに出演する主要キャストと、音楽監督の田中公平が監修した『主題歌「ウィーアー!」ブラスバージョン』の音源が公式サイトにて公開された。


主要キャラクターを演じるパフォーマーは、俳優・ブレイクダンス・アクロバット・バトントワリングなどの世界でトップクラスの活躍を見せるエンターテイナーの5名をオーディションより選出。日米混合となるミュージシャンは、ブラス・エンターテインメント界のメガヒット公演『ブラスト!』や、『ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー』の主要キャストを務めた4名に加え、ブレイク必至のパーカッショニスト・中部敬之を選抜している。

パフォーマー

ルフィ役:松浦 司(まつうら・つかさ) cv:田中 真弓(たなか・まゆみ)
ゾロ役:福地 教光 (ふくち・たかみつ) cv:中井 和哉(なかい・かずや)
ウソップ役:森 良平(もり・りょうへい) cv:山口 勝平(やまぐち・かっぺい)
サンジ役:高澤 礁太(たかさわ・しょうた)cv:平田 広明(ひろた・ひろあき)
ナミ役:大北 岬(おおきた・みさき) cv:岡村 明美(おかむら・あけみ)

ミュージシャン

トランペット:米所 裕夢 (よねそ・ひろむ)
トランペット:アマンダ・ベイトマン (Amanda Bateman)
トロンボーン:リサ・チャペル (Lisa Chappell)
チューバ:グラハム・ローズ (Graham Roese)
パーカッション:中部 敬之 (なかべ・たかゆき)

※パフォーマー・ミュージシャンともに出演者は2018年3月1日現在の予定です。やむを得ない事情により変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。 公演中止の場合を除き、チケットの変更及び払い戻しはいたしません。


シャンクスとの麦わら帽子の約束、ゾロvsミホーク、アーロン一味との戦いなど「イーストブルー編」の名シーンの数々を『音楽×パフォーマンス×アニメ映像』で表現する本イベント。熱い戦いや興奮にまみれた体験がそこにあるとき、そばにはいつもブラスバンドの血沸き肉踊る音楽があるものだ。例えば、ブラスバンドのいない甲子園を想像してほしい。物足りなさを感じることだろう。

そもそもブラスバンドは、軍楽隊の音楽としてその歴史をスタートさせている。もし、ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を目指して繰り広げられる”麦わらの一味”の熱い冒険にブラスバンドが加わったなら―――?

『ワンピース音宴 イーストブルー編』では、甲子園などの熱い戦いの場でラッパや太鼓が打ち鳴らされて選手たちの士気を鼓舞したように、超絶技巧のパフォーマンス“ブラス・エンターテインメント”が、『ONE PIECE』の世界をさらに熱く激しく彩る。

いまや世界中で人気となった『ONE PIECE』からこの夏、“ブラス・エンターテインメント”と言う名の世界初のステージが誕生する。

バレエの大きな魅力は、人間の感情を表現できること『バレエ・ローズ・イン・ラブストーリーズ』

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2018年3月、“バラで綴るバレエの恋の物語”が誕生する。『バレエ・ローズ・イン・ラブストーリーズ』は、バレエ・ダンス用品の総合メーカー、チャコット株式会社が主催・企画・制作する「バレエ鑑賞普及啓発公演」第2弾だ。演出・振付は同企画第1弾『バレエ・プリンセス』に続いて伊藤範子(谷桃子バレエ団シニアプリンシパル/コレオグラファー)。物語のあるバレエを創らせたら右に出る者はいないヒットメーカーのマジック(魔力)のもと、日本バレエ界を代表する豪華スターダンサーたちが華麗なる舞台を繰り広げる。

バラがモチーフ? お気づきの方もいらっしゃるだろうが、“愛と美の象徴”といわれるバラは、数々の名作バレエ、珠玉の恋物語を彩っている。たとえば古典バレエの最高峰『眠れる森の美女』。ヒロインのオーロラ姫が4人の王子から求婚され、バラの花を贈られて踊る「ローズ・アダージオ」という名場面が知られよう。今回はバラを切り口に男女の恋を描いた5つのバレエをピックアップし、一晩ものの作品として仕立て上げる。あらかじめお断りしておくが、漫然と小作品を選び並べただけのガラ公演とは一線を画す。

上演演目は『眠れる森の美女』第2幕より幻影の場のパ・ド・ドゥに始まり、『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ、『白鳥の湖』第3幕より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ、『ジゼル』第2幕よりパ・ド・ドゥ、『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥと続く。いずれもバラと関わりのあるラブストーリーの名場面だ。『ジゼル』がバラ?という向きもいらっしゃるだろうが、初演時の台本には「精霊に変わったジゼルがアルブレヒトの腕をそっとすり抜けてバラの花々の只中に消え…」とあり、そこに想を得ている。

伊藤はこう話す。「まず男女が出会い、憧れたり助け合ったりするうちに熱愛になります。そこから裏切りやすれ違いがあり、やがて別れに。男女の恋の物語を起承転結のようにお見せしますが、ハッピーエンドにしたいので、最後は『ドン・キホーテ』の結婚式の場にします」。色によって花言葉が異なるバラ。その色彩の移り変わりと物語の展開がリンクする。そして各作品の前に現代のカップルの映像を混ぜることも考えていて、「映画を観ているような感覚のおしゃれなバレエ」にしたいと意欲を示す。オープニングにも何やら仕掛けが隠されているようなので目が離せない。

出演者は豪華かつ適材適所。『眠れる森の美女』では、清楚な織山万梨子(牧阿佐美バレヱ団)、端正で身体のラインが美しいキム・セジョン(東京シティ・バレエ団)が幻想的なドラマを生むだろう。『ロミオとジュリエット』では、華やかでプリマのオーラ漂う永橋あゆみ、美丈夫にして影のある演技も得意な三木雄馬という谷桃子バレエ団プリンシパル同士がドラマティックに魅せるはず。『白鳥の湖』の池田理沙子(新国立劇場バレエ団ソリスト)は愛らしい踊り手だが、ここでは黒鳥オディールをどのように演じて麗しき王子・井澤駿(新国立劇場バレエ団プリンシパル)を誘惑するのか楽しみだ。『ジゼル』では、音楽性豊かな佐々部佳代(松岡伶子バレエ団)、舞台映えのする清水健太(ロサンゼルス・バレエ プリンシパル)の名演に期待したい。『ドン・キホーテ』では、新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子&福岡雄大がフルスロットルで盛り上げてくれるだろう。また場面によってはソリスト、アンサンブルも活躍し、松本佳織(東京シティ・バレエ団)、塩谷綾菜(スターダンサーズ・バレエ団)という若手ホープや次代のスター候補として注目されている中島耀(シンフォニーバレエスタジオ)も出演する。

伊藤作品は、オペラに取材した作品『ホフマンの恋』『道化師~パリアッチ~』でも、「プリンセス」を切り口に清新な舞台となった『バレエ・プリンセス』でも、ストーリーテリングの妙に加え、登場人物の内面を奥深く伝える。「いろいろな愛とか感情、それぞれの思いの色をどう表現するか――。ドラマですね。テクニックをみせることだけがバレエではありません」と伊藤は創作に賭ける思いを話す。「今のAIの時代に、人間ができること、人間が人間らしくいることとは何かを考えると、感情の表現が大事になってきます。感情を表現できる人間のドラマを描きたい。それこそがバレエの大きな魅力のひとつです」と熱っぽく語る。『バレエ・ローズ・イン・ラブストーリーズ』では、男女の恋物語を通して、人間誰もが抱える喜怒哀楽のドラマを掬い上げ、“一夜限りのおしゃれなロマンティック・ファンタジー”を堪能させてくれるに違いない。

文:高橋森彦(舞踊評論家)

テノール西村悟にインタビュー 〜4名の『藤原歌劇団トップ・テナーズ』の違いを味わうことが震災支援に

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今年の3月で東日本大震災から丸7年を迎える。
皆様ご存知のようにこの間、日本全国から被災地への支援がなされ続けてきた。そうした活動の中には終わるものあれば、新しく立ち上がるものもある。2017年から毎日新聞社と日本オペラ振興会(藤原歌劇団)が連携して立ち上がったのが『震災遺児支援チャリティーコンサート 藤原歌劇団トップ・テナーズ』だ。今をときめくテノール歌手4名が競演し、オーケストラをバックに輝かしい声を響かせる――こんな夢のようなコンサートの聴きどころを、若手テノールの筆頭格として飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍している西村 悟にうかがった。

――日本とイタリアを行き来しながらオペラを学ばれた西村さんから見て、ご所属されている藤原歌劇団はどのような雰囲気の団体ですか?

一言でいうと、“イタリアらしいな”と。稽古場も楽しいですし、かといって手を抜くわけでもない。みんな個人個人に任せられているというか、信頼しあっているんです。歌手ってみなさんペースを守ったりするじゃないですか。リハーサルでは声を抜いたり。そういったところに関しては一人ひとりに任されていて、でもみんな、本番ではしっかりとやるという。そういうところが、すごくイタリアに近いと思います。

――今回ご出演される『藤原歌劇団トップ・テナーズ』には、昨年も出られていますね。西村さんにとっても、テノールだけが集まって歌う機会って……

ないですね、これだけです(笑)。

――(笑)。そして藤原歌劇団のトップ・テノールというと、お客様もある種の期待を持って公演にいらっしゃるのかなと思うのですが。

「藤原といえば、やっぱりテノール」というのは(初代総監督の)藤原義江先生、(三代目総監督の)五十嵐喜芳先生と、往年の名テノールが多いですからね。

西村悟  撮影=中田智章

西村悟  撮影=中田智章

――昨年の公演を振り返ってみると、どんなことが印象に残られていますか?

とにかく、すごく楽しかったです。これだけ集まると、みんなライバルだからギスギスするんじゃないかって僕は思ったんです、最初は。「やりづらいなぁ……」「みんな何を歌うんだろうなぁ……」なんて思って。選ぶ曲は(同じテノールの曲なので)みんなが知っている曲、みんなが歌う曲じゃないですか。だから「なんか嫌だなぁ……」と思っていたんです。

でも、やっぱり“テノール”っていう人種なんでしょうね。みんな仲が良いというか、他人事じゃないんですよ。例えば、笛田(博昭)くんがイル・トロヴァトーレのアリアを歌うとすると、「あっ! ハイCあるな! 笛田くん頑張れ、頑張れ!」って思えるんですよ。自分も歌うから(笑)。

――その大変さが分かるわけですね!

そういうことです。だからみんな共感するんですよね。みんなでアドバイスしあったりもしますし、僕も実際に村上(敏明)さんに「これ、どうやって歌われていますか?」とお聞きすることもあります。そして、みんな包み隠さず教えてくれるんです。

――これだけトップ・テナーズが集まる機会もそうそうないわけですから、公演後のお客様の反応もスゴく良かったんじゃないでしょうか?

テノールって、血が騒ぐそうなんですよ。声も医学的に……というと言い過ぎかもしれませんけれど、なかなか人間離れしたようなことをしているらしいんです。だからお客様が聴いても「ハッ」と心が打たれるというのがあるのでしょうね。そう信じて歌っています。

西村悟  撮影=中田智章

西村悟  撮影=中田智章

――西村さんの他にも、前回に引き続きご出演される方がいらっしゃいますね。西村さんから見て、他の出演者の魅力はどこにあるのでしょうか?

村上(敏明)さんは藤原歌劇団をずっと引っ張ってこられた方ですし、笛田(博昭)くんは3~4つ上なんですけど、生まれ持った声が素晴らしいですね。

――西村さんから見てもすごいんですね!

もうすごいです、すごいです! 真似ができないし、彼はオンリーワンなんですよ。やっぱり彼の声の魅力というのが素晴らしいんです。藤田(卓也)さんは、テクニックも持っていらっしゃって、上から下まで(声質が)すべて繋がって聴こえる方です。だからこの4人は四者四様、タイプが違うということもありますし、テノールばかりでもお客さんは飽きないんじゃないかな?

――そのタイプの違いというのは具体的に言うと、どういうことなのでしょう?

単純に言うと声の重さですね。重い、軽いっていうのがあるんですけども、4人とも全員違うんですよ。笛田くんが一番重くて、そのあとに村上さん、藤田さん、僕がくるという感じです。テノールと一言でいっても、役柄によって必要とされる声が全然違うので、それぞれが歌う曲の選び方を見ても、そういったところが4人全員違うんです。

――曲目のお話が出ましたけど、歌われる曲が被らないように4人で相談したりしたのでしょうか?

面白いんですけど、予想がつくんですよ。「あ、彼は何を歌いそうだな」だなんて。だから、彼があれを歌うなら、僕はこれを歌えばいいかな、と自分なりに考えています。村上さん(の得意とする範囲)はここからここまで、笛田くんはここからここまで……というレパートリーがあるので、実は被っているところはそんなにないんです。そういったところを考えて、他の方も選曲したんじゃないかな?

西村悟  撮影=中田智章

西村悟  撮影=中田智章

――そうしたことを踏まえて今回、西村さんはどういった曲を選ばれたのでしょうか?

マイアベーアの歌劇『アフリカの女』より「おお、パラダイス」、フロトーの歌劇『マルタ』より「夢のように」、そしてロジャースのミュージカル『回転木馬』より「You'll Never Walk Alone」――“君は決して独りじゃない”という3曲を歌います。

――マイアベーアは日本でそれほど知名度の高くない作曲家ですが、近年ヨーロッパでは再評価が進んでいますね。何故、この曲を選ばれたのでしょう?

マイアベーアは、フランスのオペラの礎を作った作曲家ですし、例えばグノーだったり、ビゼーに多大な影響を与えている作曲家です。「おお、パラダイス」は、ヴァスコ・ダ・ガマが、初めてインドに降り立った時に「こんな景色があったのか」「なんて楽園のような」とオペラのなかで言う場面の歌なんです。

何故この曲にしたかというと、被災した東北3県のなかにも、そういったところって必ずあったと思うんです。ただ、この震災によって失われてしまった場所もある。そういった場所をもう一度取り戻していただきたい……時間がかかってしまってもいいから取り戻していただきたい。そんな願いも込めて、この曲を選びました。

――フロトーも名前こそあまり知られていませんが、唱歌「夏の千草」の原曲「夏の名残のばら」が有名な作曲家ですね。今回歌われるのはどういった曲なのでしょう?

もともとはドイツ語で作曲された曲です。ただ、この「夢のように」という曲だけは、往年の名テノールが歌う名曲で、イタリア語に翻訳されて歌われています。とても愛に満ちていて、テノールらしさが出る曲かなと思い選びました。

――リチャード・ロジャースのミュージカル・ナンバーから「You'll Never Walk Alone(君は決して独りじゃない)」を選ばれたのは?

それはもう、まさに歌詞ですね。「決してあなたたちは独りではありません。どんな嵐が来てもその後は必ず青空がきます。だから、あなたはくよくよしないで、顔を上げていきましょう」という歌詞なので、今回の趣旨にピッタリなんじゃないかと。実は今年の話がくる前から、今度この企画があったらこれを歌おうと決めていました。

――しかも、今回はピアノ伴奏ではなくオーケストラ。ミュージカルのレパートリーをオーケストラをバックに歌う機会は、あまりないですよね。

ないです。だから、僕自身としても楽しみなんです!

――西村さんは、イタリアに留学され、イタリア音楽をレパートリーの中心に据えてはいるものの、今回のコンサートでも複数の言語を歌われますよね。言語によって歌い方は変わるのでしょうか?

逆に変えちゃいけないと思っています。発声が変わってしまっては元も子もないですから。イタリア語もフランス語もドイツ語も、全て同じように歌うというのを僕は心がけています。

西村悟  撮影=中田智章

西村悟  撮影=中田智章

――今回共演される指揮者の田中祐子さんとは、既に何度か共演されていらっしゃいますよね。西村さんからみて、田中さんはどのような方ですか?

彼女は、すごく勉強熱心。分からないことは分からないとハッキリおっしゃるんです。どなたに対してもそうで、僕なんかにも「ここはどうやってテノールは歌われるんでしょうか?」と、素直におっしゃっていたのが印象に残っていますね。

――藤原歌劇団の公演ではヴェルディの『椿姫』で共演され、西村さんは主役のアルフレートを歌われていましたよね。印象に残っているエピソードなど、ありますか?

2幕あたまの僕が歌うアリアで、僕が思っていた音楽づくりと、祐子さんがやりたい音楽が若干違ったことがありまして、彼女もこうやってみる、僕もこうやってみる……と試行錯誤することで新しいものがちょっとずつ生まれていったんです。僕がずっとこだわりをもって歌ってきたものよりも、さらに良いものになったことがありました。

――そして今回のコンサートでは、ミュージカル界で大活躍中のテノール田代万里生さんが司会進行を務められます。昨年の田代さんの司会ぶりはいかがでしたか?

お客様をどう暖めるかということが僕らよりも上手いですよね、やっぱり。かといって、あまり脱線せずにしっかり趣旨をとらえてやってくださいました。僕より少し年下だと思うんですけれど、本当に素晴らしいなと。

――アンコールで田代さんが歌われることもあるのでは……?

……どうなるか分からないですね(笑)。乞うご期待です!

――では、最後にメッセージをお願いします!

“聴きに行くことがチャリティーになる”というコンサートは最近多くないと思うので、是非そうしたお気持ちがある方は「楽しめて」、「チャリティーにもなる」このコンサートに足を運んでいただければ! そういった灯を絶対に絶やさないということが第一歩だと思うので、僕らがベストを尽くして、皆様に何かを感じていただければいいなと思います。昨年は会場で募金箱をもたせていただいたので、今年もぜひそうしたいですね。

西村悟  撮影=中田智章

西村悟  撮影=中田智章

インタビュー・文=小室敬幸 撮影=中田智章

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年3月5日~2018年3月11日)

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吹き抜けの高い天井から降り注ぐ光のように、目に映るものに自然な明るさが加わってくるシーズンです。突然パッとすべてを輝かせてくれるようなものではないのかもしれませんが、新しい季節や新しい章のはじまりに向けて、前に進むことだけを考えていこうという強い意志も生まれてきそうです。色々な物事がスピードをあげて変化していくので、ここからしばらくは、ボーっとしていられないかも。

今までやってきたことがうまくいかなかった、追い詰められた状況や環境からは逃げてしまいたかった、という理由で、何かの責務やキャリアから降りることも、このタイミングでは正当なものとして受け入れられやすくなりそうです。なぜなら、あなた自身がそうなってしまったのも、何もかもが自己責任や自業自得というわけでもなさそうだからです。

とある組織や人物の目論見に左右されたり、選択ミスを誘うような悪趣味な集団との接点があったり。それはもちろん自分が選んだ道だけれど、周りから見れば「不健康」と眉をひそめてしまうような、自分では隠しているつもりの(もしくは相手が隠していて気づいてなかった)プライベートな人間関係が原因になっているかもしれません。もしそのような地雷を抱えているなら、ササッと潔く片付けてしまえるチャンス。

周りの人に流され続けてきたことに改めて気づかされ、茫然としてしまうこともあるでしょう。かといって、自分がどこに向かっていくのか定かに見えていない中、見切り発車になるのは嫌だ、捨てがたいと思うこともあるでしょう。ただ後ろ髪を引かれる想いは今はすべて切り捨てていく時期。心の弱さをちゃんと見つめておくと良いようです。

これからの人生の中で、何度も思い返してはエモくなるようなエピソードが、今まさに作られようとしているみたい。願わくば穏やかなシーンであってほしいものですが、意外性を伴う突発的な事故や、予想外の人物が暗躍するなどの複雑な要素も出てきそうです。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
旅立ち、フェアウェル
◆おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
お好みで、バラエティ
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
ダンスホール、シャンデリア
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
沼っぽさ、ディープ
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
オタク、ミュージアム
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
アピール、ビジュアルサーチ
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
スモーキー、ファンタスティック
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
コスプレ、キャラクター
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
電磁波シールド、デトックス
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
環境音楽、ウォーターフォール
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
フレグランス、アクセサリー
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
素材感、ナチュラルボイス

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反田恭平がサプライズ演奏 TVアニメ『ピアノの森』記者発表会で斉藤壮馬・諏訪部順一と共に意気込みを語る

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『モーニング』(講談社)にて2015年まで連載されたクラシック音楽漫画『ピアノの森』(一色まこと著)のTVアニメが、4月8日(日)24時10分からNHK総合テレビで放送開始予定となっているが、主人公・一ノ瀬海役の斉藤壮馬と阿字野壮介役の諏訪部順一が登壇したTVアニメ『ピアノの森』記者発表会が実施された。

本発表会にはサプライズゲストとして、阿字野壮介のメインピアニストを担当する反田恭平も登壇。ピアノ演奏も披露された。

本作への出演・参加が決定した時の気持ちを聞かれた斉藤は「この作品は子供の頃に拝読したことがあったのですが、今回演じさせて頂くに当たって、もう一度読み直させて頂きました。僕は漫画や本が大好きで、読んでいる途中で寝ることが苦手なのですが、本作はそのあまりの面白さに、二日間徹夜で読みきってしまいました。もともと好きな作品で、声優として参加出来ることにドキドキワクワクしております」とコメント、同じく諏訪部は「以前から、とても素敵な作品だと思っていました。アニメ化されるならば是非とも出演したいと思いオーディションに臨んだ結果、阿字野壮介の声を担当させて頂けることになり。大変光栄です。毎回、ひとつひとつのセリフを噛み締めるがごとく、心をこめて演じています」と喜びを語った。

サプライズ登壇の反田は「中学、高校の頃に漫画の単行本を学校に持って行くほどこの作品が好きで、マネージャーに「『ピアノの森』がね・・・」と言われた瞬間に、「イエス!引き受けます」とお答えしました。この作品に携われることが嬉しくて即答でした。僕は阿字野壮介が大好きで、今回の役の演奏が決まった時も、とても周りの人たちにも言いたかったのですが、そういうわけにもいかず、今日やっと言えるようになりとても嬉しいです。阿字野壮介の名前に恥じないように堂々と演奏していきたいと思います」と意欲を露わにした。

自身のキャラクターの印象と、自身との共通点について質問された3人は「僕は役に対するアプローチの際に、あまり自分に似ているかどうかは重要視していないのですが、僕自身は感性が豊かでピュアな一ノ瀬海にはあまり似ているパーソナリティはないかなと思います。しかし、自分と近くないからこそフラットに役に潜っていけると思います(斉藤)」「声の阿字野とピアノの阿字野、そして絵の阿字野。この三つ巴でどのような阿字野壮介が作り上げられていくのか、本当に楽しみです(諏訪部)」とコメント。反田は「ピアニストは基本的に楽譜の作品の背景を切り取って演奏しているのですが、今回は初めて他の人の演奏を想像して、阿字野がどう弾いていたのかを研究して、とても勉強になりました。阿字野は事故でピアノが弾けなくなった悲劇のプリンスで、左腕が動かなくなったように演奏したり、思うように弾けないテンポがあって、プレスト(とても早く)なのにアッレグロ(早く)で少しゆっくり弾くのが、阿字野にとっての精一杯だったり」と、次世代を担うと言われるピアニストならではの視点で語った。

最後にこれからアニメを見る人にコメントを求められた3人は「『ピアノの森』を、アニメーションにした甲斐があるかたちで皆様にお届けできるよう、スタッフ・キャスト一同心を込めて頑張っています。たくさんのこだわりが詰まったこの作品をどうぞ宜しくお願い致します。ぜひご覧下さい!(諏訪部)」「ヨーロッパに行くと、タクシーの中や街角など、身近なところでクラシックが流れています。日本はまだそこまでではないかなと思うので、このアニメを通して日本でもより一層クラシックが広まってもらえると嬉しいです(反田)」「この作品に出会えたことは、いち読者としてもいち役者としても、とても嬉しく思います。心が色々な形で揺さぶられていく作品で、これまで漫画やアニメに触れてこなかった人にも、多くの人に楽しんで頂ける作品です。どうぞ宜しく御願い致します(斉藤)」と答えた。

本作にはこの他に花江夏樹・中村悠一・KENN・悠木碧・坂本真綾なども出演。メインピアニストとして反田の他に髙木竜馬・牛牛・シモン・ネーリング・ジュリエット・ジョルノーなどが作品を彩る。

TVアニメ『ピアノの森』はNHK総合テレビにて4月8日(日)24時10分より放送開始。

ピアニスト高木竜馬が魅せる、卓越したテクニックに裏打ちされた豊かな表現力の煌めき

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2018.2.11 ライブレポート

クラッシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう! 小さい子供も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK! そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート『サンデー・ブランチ・クラシック』。2月11日に登場したのは、ピアニストの高木竜馬だ。

2歳からピアノをはじめ、7歳から故エレーナ・アシュケナージに師事するなど優れた指導者のもと才能を伸ばしていった高木は、渋谷幕張高校在学中にウィーン国立音楽大学コンサートピアノ科に首席合格。現在、特別奨学生として、同大大学院に在籍し、ウィ―ン奏法の真髄に触れながら、数々のコンクールで優勝。世界各地での演奏活動と並行して、出身地である地元千葉県をはじめとした、国内での演奏活動にも力を入れている。

高木竜馬

高木竜馬

なじみ深い名曲に吹き込まれた新鮮な感動

若き気鋭のピアニストが、初めて『サンデー・ブランチ・クラシック』へ登場するとあって、ステージに熱い視線が集まる中、高木が涼やかに現れた。拍手の中演奏された1曲目は、ベートーヴェンの「エリーゼのために」。ピアノ学習者が発表会で演奏する楽曲として、今なお根強い人気を誇る、小品ながら誰もが知る名曲中の名曲だが、高木の演奏は、そうしたピアノ学習者たちが演奏する時よりも、むしろゆったりとしたテンポで奏でられ、あくまでも繊細な響きが実に新鮮。会場が一気に静まり返り、その美しい音色に聞き入った。

高木竜馬

高木竜馬

その演奏が終わると、高木がまずこの『サンデー・ブランチ・クラシック』は、演奏家の自宅のリビングにお客様をお招きしての演奏会、というコンセプトでお送りしていますと説明しつつ「私の自宅はこんなに豪華ではありませんし、普段自宅でタキシードを着て演奏している訳ではありませんが」と笑いを誘う。そして、「是非お食事を召し上がりながらくつろいでお聞きください」と語り、まず冒頭に演奏した「エリーゼのために」について、ベートーヴェンがエリーゼ・マルファッティという貴族の令嬢に恋をして、失恋した時に書かれた曲です、との説明があり、繊細な演奏の秘密が明かされた。

続いて演奏したのは、一転して大曲のショパン「スケルツォ第2番」。「スケルツォ」は本来、ユーモラスなとか、諧謔的なという意味で、明るいイメージのものが多いのだが、ショパンのスケルツォは大半が暗い曲で、何故そんな曲を書いたか?を高木は調べてみたそうだ。それによると、ショパンの恋人として有名な、男装の麗人の詩人ジョルジュ・サンドとの恋には、純粋な恋愛というよりも、当時社交界で絶大な力を誇っていたジョルジュ・サンドに、ショパンが手を借りていたという側面があり、その葛藤がこのスケルツォを生んだのではないか?という解釈が語られ、期待が高まる中、演奏がはじまる。

「スケルツォ第2番は」、ショパンの4曲のスケルツォの中でも、最も著名なものと言って良い楽曲で、壮大で難易度も高いものだが、高木の演奏はその卓越したテクニックに裏打ちされているからこそ、楽曲が軽やかに響き、演奏がある意味テクニックばかりを誇るものに堕ちない美点にあふれている。そのことによって、ショパンならではの美しいメロディーがより際立ち、中でもピアニッシモ、ピアニシッシモのという、音量の小さな音の中に尚豊かな幅があって、起伏のある表現力が可能になっている。その素晴らしさが聴衆を惹きつけ、圧倒的な感動を生み出していった。

高木竜馬

高木竜馬

美しいメロディーに秘められた故国を思う「哀しみ」

熱気の中、2曲続けて演奏されたのはラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲第18変奏」と、ショパンの「ポロネーズ英雄」。フマニノフはロシア革命の狂気に翻弄されアメリカに逃れたあと、作曲家としてでなくもっぱら指揮者、演奏家としての活動を続けていて、何故作曲をしないのか?との問いに「私はもう長いことロシアの大地を踏んでいない。ロシアの白樺も見ていない。リラの花の香りもかいでいない。このような状態でどうして筆を進められようか」と答えたとのエピソードを語り、楽曲の変二長調には「届かぬものへの思い」という意味があるので、そこにはラフマニノフの二度と戻れぬ故国への思いがあったのだろう、と語ってくれた。また、ショパンの「ポロネーズ英雄」は輝かしい曲だけれども、16世紀ショパンの故国ポーランドが列強に侵略される以前、ヨーロッパ最大の強国としての威厳を保っていた頃の、故国よ甦れという愛国心にあふれたショパンの想いが籠められている、と解説。2曲を続けて演奏する意味を、聞く者に十分に届けた後、演奏がはじまった。

高木竜馬

高木竜馬

ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲第18変奏」は、よく知られた美しいメロディーが、高木の澄み切った音色によって美しいまま届けられ、その中に哀愁と、ロシアの広大な大地の情景が浮かびあがり、高木の持つ豊かな表現力がより一層引き立つ効果となっていた。そのまま拍手の間を置かずに、ショパンの「ポロネーズ英雄」へ。この曲でも、輝かしい音色を奏でつつ、華やかに大向こうにというよりも、より音楽の内面に寄り添う高木の演奏スタイルが、楽曲の本質を立ち昇らせる。後半になるに従い力強い雄々しさも加味され、演奏の終わりにはブラボーの歓声と、大きな拍手が会場を包んだ。

その喝采に応えたアンコールは、プロコフィエフの「戦争ソナタ」第7番の第3楽章。第二次世界大戦の最中に作曲された、戦車が通り、銃弾が飛び交う様が表現された楽曲で「とても騒々しい曲です」と、ユーモラスな紹介のあと、アンコール曲はスタート。言葉の通りの烈しさに溢れた楽曲で、この日のプログラムの中で、最も高木の高度なテクニックが惜しみなく前面に出た演奏となり、感嘆と喝采の拍手がいつまでも続いた。ピアニスト高木竜馬の才気が煌めく、豊かで贅沢な約40分のコンサートだった。

高木竜馬

高木竜馬

音楽によってすべてが良い方向に向かうことを理想にして

演奏の余韻が続く中、コンサートを終えたばかりの高木にお話を伺った。

──大変贅沢な素晴らしいコンサートでしたが、まず本日の演奏で目指されたものは?

普段の演奏会というのは、企画を主催する方がいらして、そちらから演奏家が招いて頂いて演奏をするという形なのですが、e+が企画されているこの『サンデー・ブランチ・クラシック』は、演奏家の自宅にお客様をお招きして行うコンサートというコンセプトだとお聞きしたので、僕もそのように意識して、くつろいで聞いていただこうと思いました。

──ショパンの時代のサロンコンサートというのは、こういう感じだったのでは?と想像しながら聞かせていただきました。演奏されていて会場の雰囲気はいかがでしたか?

演奏の時にもお話しましたが、入った瞬間に「ここが僕の家のリビングだと思っていいんだろうか?」と思って(笑)。とても豪華じゃないですか、奥行きも幅もあり、後ろ側にも席があって。リハーサルをした時に、ダイニングのお席とリビングのお席、それぞれの1番後ろと、パティオの中のお席にいきまして、どのくらい響きが違うんだろうか?と確認しましたら、リビングの方のお席は座席がレザー製が多いものですから、少し吸収されますが、それでも煌びやかな音色は全く損なわれなくて。

調律師さん、また音響さんともどう配置すれば1番良い音になるだろうか?と色々調節して考えたのですけれども、あれだけの広さがあって、あれだけお客様がいらっしゃる中でも、会場全体が一体になるような響きを創ることができるように作られているなと感じました。そういった意味でも、自宅のように、あの広いスペースをお客様と共有できることを感じました。それこそがサロンの醍醐味で、お客様と演奏家の相互方向のコミュニケーションが、より密に創ることができるサロンだなと思いました。

高木竜馬

高木竜馬

──また「エリーゼのために」からはじまり、大曲のショパンスケルツォもあるという贅沢なプログラムでしたが、選曲の意図はどのように?

まずやっぱりここのコンセプトとして、お客様にくつろいで聞いていただきたいと思いましたので、すごくマニアックな曲や、難解な曲は場にそぐわないなと、皆様に聞きなじみのある曲から選ぼうと思いました。そして、プログラムの裏コンセプトとしては、すべての曲の共通のテーマに「哀しみ」があって。英雄ポロネーズや、スケルツォもブリリアントな曲ですし、パガニーニも明るくて優しい曲だというイメージがあると思いますが、実はその裏にはそれぞれの作曲家と、彼らの故国に対しての切っても切れない縁の中にある「哀しみ」が、それぞれの曲の中に隠されているということを、もう1つのコンセプトとして曲を選びました。

──演奏の間に解説もしてくださったので、お客様にもとてもわかりやすかったと思います。こういうお食事をいただきながらクラシックが聞けるというのは、なかなかない場ですが、お客様の反応などはどのように感じられましたか?

演奏中はとても静かで、集中して聞いていただいていると感じましたし、食事を楽しみながら演奏を聞いていただく、さらにお子様にも開かれた空間、というところにお招きをして、すごくお客様がリラックスして聞いてくださっているなと。コンサートホールに行くのとは違い、やはり家のサロンでくつろいで音楽を聞くという形が素晴らしいですね。

これは僕が音楽をやっている意義、という話につながっていくのですが、音を出すというのは途中経過で、音が響くというのも途中経過で、お客様の耳に届く、心に、頭に届くことも途中経過で、何が最後に最も重要かというと、僕が信じるところは、例えば何か悩みがあっても、音楽を聞くことによって「また頑張ろう」と思っていただけたり、「元気が出たな」というプラスの感情になっていただけることなんです。また、聞いていただいている間、時を忘れて普段にない瞬間を体験していただくなど、聞いてくださるお客様のモチベーションにつながる、音楽によってすべてが良い方向に動いていってくれることが理想だと思っています。

これがサロンの空間ですと、とても密接な関係で共有することができますし、僕が熱量を持って演奏すれば、お客様にダイレクトに伝わると思います。同時にお客様にすごく静かに聞いていただいているということも、僕にダイレクトに伝わります。お互いが身近に感じられる、こうしたサロンでの演奏というのはとても大切に場所だと思いますので、どんどんそういった場所を大切にしていこうという機運が高まっていくといいなと思います。

──演奏から、ダイナミズムはもちろんとても内省的な繊細なものも伝わってきましたので、本当に素敵な時間だったと思います。是非また演奏を聞かせていただけるのを楽しみにしています。

僕も是非またここで演奏したいと思っています。ありがとうございました。

高木竜馬

高木竜馬

※高木竜馬の「高」は「はしごだか」が正式
取材・文=橘 涼香 撮影=山本れお

童謡100年! 心に優しいピアノを奏でる小原孝が、日本のメロディーCDをリリース、全国ツアーをスタート!

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大正~昭和初期に、良質の童謡や童話を掲載して人気を博した児童雑誌『赤い鳥』。今年は創刊100年にあたり、これにちなんで「童謡100年」と銘打ったCDやイベントなどが多数予定されている。先陣を切って、7日にCDアルバム『ピアノ名曲フォーユー 日本を奏でる』(キングレコード)をリリースするのは、ピアニストの小原孝。9日から全国ツアーもスタートする。

CDは工夫を凝らした選曲、アレンジで、童謡や唱歌で知られる作曲家のピアノ作品が聴けるのが興味深い。

「成田為三が『浜辺の歌』をもとに作った『浜辺の歌変奏曲』、山田耕筰が『からたちの花』をアレンジした『ピアノのためのからたちの花』など、ピアノ作品を5曲。童謡や唱歌は、滝廉太郎の『お正月』、中山晋平の『シャボン玉』、中田喜直の『めだかの学校』など、歌いながら聴いていただけるように25曲をワンコーラスメドレーで。そしてNHK『みんなのうた』で放送されたオリジナル曲『私はブランコ』の弾き語りも収録しています。明治・大正・昭和・平成から次代へ伝えたい日本のメロディー集です」

二葉あき子が歌ってヒットしたクラシック調の歌曲『水色のワルツ』を、作曲者の高木東六が編曲した『水色のワルツ変奏曲』が収録されているのも興味深い。楽譜は全音ピアノピースにあるが、ピアノの名手だっただけに即興アレンジで弾いていたのか、小原の知るたくさんの音源には楽譜通りの演奏は見当たらなかったそうだ。

日本の名曲を高音質のUHQCDで聴ける『ピアノ名曲フォーユー 日本を奏でる』(KICC-1439、¥2778+税)

日本の名曲を高音質のUHQCDで聴ける『ピアノ名曲フォーユー 日本を奏でる』(KICC-1439、¥2778+税)

小原は「ピアノを言葉で弾くのが基本」と、よく口にする。「“ドレミ”ではなく、“あなた”とか“楽しい”とかで弾くと、ニュアンスが生まれるでしょう」と。それゆえ、彼の紡ぐ音色は美しく、心に優しい。歌の演奏に関わるのも早かった。ソロデビュー前の86年から「由紀さおり・安田祥子童謡コンサート」のピアニストとして9年間活躍した。

「おかげさまでソロ活動を始めてからも、ピアノで演奏する日本の歌は、大切なレパートリーになりました」

今回のレコーディングは、昨年9月にEテレ『ららら♪クラシック』で演奏した『浜辺の歌変奏曲』が好反響だったことから実現した。

「僕が国立音楽大学の大学院生だった84年に、大学図書館倉庫で保管されていた初代学長の遺品の中から楽譜が発見され、学内ホールで初演した思い出の曲です。歌をピアノ曲として弾く僕の原点の曲となりました」

成田は晩年に同校で作曲を教えており、楽譜は初代学長に拝呈されたものだった。

「この曲のCDは、これまでに2回、91年と95年に発売しましたが、ソロデビューから30年以上経ってテレビで取り上げられて3度目の録音だなんて、これも運命でしょうか。新たな発見がたくさんあり、今までとはまた違う味わいを醸し出せたと思います」

コンサートは、日本と西洋の名曲を用意したぜいたくな構成のようだ。リスナーのリクエスト曲を即興演奏し続けて早19年になるNHKーFM『弾き語りフォーユー』(月~木)でも、新たなアレンジで聴けるかもしれない。

文=原納暢子

●小原孝 http://www2.odn.ne.jp/cau57200/
●キングレコード http://www.kingrecords.co.jp/cs/artist/artist.aspx?artist=38340

強烈な“犬神”バースデーケーキにダイヤモンド☆ユカイ「中から何か出てこないですよね?」『角川映画シネマ・コンサート』制作発表会見

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3月6日、東京・神楽座にて『角川映画シネマ・コンサート』制作発表会見が行われ、大野雄二、松崎しげる、ダイヤモンド☆ユカイが登壇した。

『角川映画 シネマ・コンサート』は、オーケストラの生演奏と角川映画の名場面の上映、ゲストボーカルのパフォーマンスで構成されるコンサート。角川映画の第1作にしてミステリー映画の金字塔となった横溝正史原作・市川崑監督の『犬神家の一族』(76)や、森村誠一原作・佐藤純彌監督『人間の証明』(77)、『野性の証明』(78)の3作品がラインナップされている。当日は、3作品の劇伴を手がけた大野雄二氏が、総勢50人のスペシャルオーケストラバンド・大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラとともに演奏。松崎しげる、ダイアモンド☆ユカイらが出演する予定だ。

大野雄二 写真:木場 ヨシヒト

大野雄二 写真:木場 ヨシヒト

イベントに登壇する大野は、粋なスーツスタイルでふらりと登場し、控えめな口調でシネマ・コンサートへの抱負を語った。コンサートでは、演奏の間に、大野の盟友であり、『犬神家の一族』などで金田一耕助を演じた石坂浩二によるトークショーも予定しているという。大野と石坂は同じ高校・大学に通うなど、浅からぬ縁があった仲。当日は、スペシャルトークでイベントに華を添えてくれそうだ。

松崎しげる 写真:木場 ヨシヒト

松崎しげる 写真:木場 ヨシヒト

大野に続いて、ゲスト・ボーカリストである松崎しげるとダイアモンド☆ユカイが揃って登場。今回のシネマ・コンサートでは、松崎が「戦士の休息」(「野性の証明」テーマ曲)を、ダイアモンド☆ユカイが「人間の証明のテーマ」を歌唱する。松崎は、「この映画が上映された頃は27歳で、(まだまだ)青春真っ只中!時代が変わった感じがしたよね。それに僕は『ルパン三世』世代でもある。だから(楽曲を手がけた大野は)日本のミュージシャンの中でも本当に憧れの存在だよね。その人と一緒にステージができるというのは、すっごく嬉しいですよね!」と、興奮を抑えきれない様子。一方の大野は、「かつて松崎さんとはCMの仕事で何度かお会いしているんだけどね、(声が)バシン!とくる感じが凄いんですよ。だから、前の人がどうだったからというのではなく、松崎さんらしく歌って貰いたいね」と、エールを送った。

ダイアモンド☆ユカイ ※ダイアモンド☆ユカイの名前の☆は、六芒星が正式表記。 写真:木場 ヨシヒト

ダイアモンド☆ユカイ ※ダイアモンド☆ユカイの名前の☆は、六芒星が正式表記。 写真:木場 ヨシヒト

一方で、ダイアモンド☆ユカイと大野は、これまで仕事で絡んだことがないという。しかし、そこを“ミソ”として、大野は「やってみたかったの!彼なら面白くなるんじゃないかなって思ってね」と期待を寄せる。これを受けたダイアモンド☆ユカイは、プレッシャーを受け止めながらも、「とにかくキョーレツな曲ですよね。それに僕はマザコンなので、お母さんの作品に弱いんです(笑)。去年は母親を亡くしたので 泣かないように……ダイアモンド☆ユカイにしかできない歌をただ一生懸命に歌うだけです!」と、力を込めて語った。

ダイアモンド☆ユカイと“犬神”バースデーケーキ ※ダイアモンド☆ユカイの名前の☆は、六芒星が正式表記。 写真:木場 ヨシヒト

ダイアモンド☆ユカイと“犬神”バースデーケーキ ※ダイアモンド☆ユカイの名前の☆は、六芒星が正式表記。 写真:木場 ヨシヒト

ここで、来週、誕生日を迎えるというダイアモンド☆ユカイを祝し、 『犬神家の一族』の名場面をかたどった強烈な“犬神”バースデーケーキが運ばれてくると、会場は大盛り上がり。ダイアモンド☆ユカイは、「ホントですか!?……でも、ちょっと怖い感じですね。中から何か出てこないですよね?殺されたりしないですか?」と、たじろぐ一幕も。しかし、松崎しげるにケーキを食べさせてもらうと、満面の笑みを浮かべながら「最高です!年をとるって、悪いことじゃないんですね。こんな素敵な先輩達に囲まれて、こんな怖いケーキ……初めてです(笑)!思いっきり歌わせてもらいます!!」と、意気込みを語った。

なお、イベント当日には、会場に『犬神家の一族』の登場人物を模した“スケキヨ像”のリアルなフォトスポットも設置される。

角川映画 シネマ・コンサートは4 月13 日・14 日、東京国際フォーラム ホール Aにて開催。

※ダイアモンド☆ユカイの名前の☆は、六芒星が正式表記。

「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」『リゴレット』の見どころ紹介

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バレエ、オペラともに世界最高の名門歌劇場、英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)の人気公演の舞台映像が「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」として、東宝東和株式会社配給で、TOHOシネマズ系列を中心とした全国の映画館で順次上映中だ。2018年3月9日(金)からは、ロイヤル・オペラ『リゴレット』が全国順次公開となる。ヴィクトル・ユーゴーの戯曲「王は愉しむ」をもとにした、ジュゼッペ・ヴェルディの悲劇的なオペラを、人気演出家デイヴィッド・マクヴィカーが蘇らせた傑作。オペラ史上最も美しい四重唱ほかヒット曲が満載の本作について、クラシック音楽専門TVチャンネル「クラシカ・ジャパン」編成・石川了氏の解説とともに、ROH『リゴレット』の見どころを紹介する。

MICHAEL FABIANO AS DUKE OF MANTUA   (C)ROH.CATHERINE  ASHMORE

MICHAEL FABIANO AS DUKE OF MANTUA (C)ROH.CATHERINE ASHMORE

『椿姫』『イル・トロヴァトーレ』と並ぶヴェルディの中期三大傑作の一つ『リゴレット』。オペラ史上最も美しい四重唱「美しい愛らしい娘よ」や「女ごごろの歌」ほか、最初から最後まで名曲揃いの演目だ。この度、「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18」が届けるのは、2001年のヴェルディ没後100年に因んで英国ロイヤル・オペラで新制作された人気演出家デイヴィッド・マクヴィカーによるプロダクション。リゴレットの衣裳の印象から『ゴキブリ・リゴレット』とも言われている、今回で7度目の再演となる人気演目。石川了氏は、「マクヴィカー演出は、オペラを演劇として捉え、現代の若い観客にもアピールするテンポの良さが魅力。基本のストーリーを尊重しながら、暗いトーンの照明効果と、暴力やセックスといったハードな表現も特徴。第1幕の乱痴気騒ぎは物議を醸した見どころの一つです。」と、その人気の理由を解説する。

MICHAEL FABIANO AS DUKE OF MANTUA  (C)ROH.CATHERINE  ASHMORE

MICHAEL FABIANO AS DUKE OF MANTUA (C)ROH.CATHERINE ASHMORE

今回、繊細さと残忍さを持ち合わせた道化師リゴレットを演じるのは、その堂々とした体格と豊かな声量、見事な演技力で存在感を見せつけた、ギリシャ人バリトンのディミトリ・プラタニアス。リゴレットの一人娘ジルダに扮するのは、古楽も得意とする英国人ソプラノ、ルーシー・クロウ、美男で女たらしのマントヴァ公爵は今最も絶好調といえる若手人気テノール、マイケル・ファビアーノが好演。当初、リゴレット役にはプラタニアスとのダブルキャストとしてロシアの世界的バリトン、ディミトリー・ホロストフスキーが予定されていたが、2017年11月22日に脳腫瘍のため55歳という若さで亡くなり、本公演はホロストフスキーに捧げられている。美しいバリトンヴォイスと歌唱力、そして何といっても人柄の良さから「ディーマDima」という愛称で呼ばれていたホロストフスキー、石川氏も「クラシカ・ジャパンは彼に日本とヴェローナで2度インタビューしており、ちょっと怖そうな顔立ちに反して、思い切り人懐っこい笑顔がとても印象的でした」と、世界中のオペラファンや多くのアーティスト、舞台スタッフに愛された彼の印象を語る。

DIMITRI PLATANIAS AS RIGOLETTO  (C) PERSSON

DIMITRI PLATANIAS AS RIGOLETTO (C) PERSSON

また、シネマシーズンの見どころの一つともいえるのは、幕間の指揮者アレクサンダー・ジョエルによる音楽解説。「ヴェルディが『リゴレット』で初めて試みたのは登場人物にあわせて楽器を使い分けること。『スター・ウォーズ』のように悪役登場のモチーフや、ジェダイなどいろいろなモチーフがある」といったコメントをはじめ、ヴェルディの音楽の秘密を明かす。

口ずさめるような親しみやすい音楽と心が掻きむしられるドラマ展開で観客を惹きつける『リゴレット』。本編の長さも約2時間と短めなことから、オペラ・ビギナーズにも最適の一本だ。

 (C)ROH.CATHERINE  ASHMORE

(C)ROH.CATHERINE ASHMORE

▼石川了(クラシック音楽専門TVチャンネル「クラシカ・ジャパン」編成)『リゴレット』解説全文↓
http://tohotowa.co.jp/roh/news/2018/02/27/rigoletto_column

公益財団法人化に向けて、新たなステージを目指す関西フィル! ~手塚裕之楽団長に聞く~

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個性溢れる指揮者3人を擁する大阪4大オーケストラの一つ、関西フィルハーモニー管弦楽団は現在、公益財団法人化に向けた準備の最終段階を迎えている。

認定NPO法人として行政の力に頼ることなく、演奏会の来場者や個人会員、法人会員(後援会企業)そして協賛企業の応援で、1970年の楽団創立からここまでやって来た関西フィル。楽団長として奏者、音楽スタッフ、事務局員を取りまとめている手塚裕之に、楽団の現状、今シーズンの自主公演の狙いや聴きどころについて尋ねた。

3人の指揮者陣が、魅力あふれる音楽を届けてくれる (C)s.yamamoto

3人の指揮者陣が、魅力あふれる音楽を届けてくれる (C)s.yamamoto

--今年のシーズンプログラムには、1月から来年の3月まで15ヵ月で12公演のプログラムが載っています。これは公益財団法人化に伴う事業年度変更に対応するためですか?

はいそうです。公益財団法人になると、従来の1月〜12月から、4月~3月に年度が変わります。1月半ばで締め切りましたが、今回の定期会員の募集は、いつもより2公演多い全12公演聴けて料金据え置きと大変お得だったのです(笑)。

--関西フィルがここに来て公益財団法人化を目指す狙いは何でしょう。

税制優遇措置の充実を図る事と、社会的信用力の強化ですね。関西フィルが今以上に上を目指すためには避けて通れない道だと考えています。

--外から見ている関西フィルの印象は、定期演奏会をはじめ自主公演全般に集客は申し分なく、テレビの音楽番組「エンター・ザ・ミュージック」で知名度も確実に上がっているように見えます。経営的にも公益財団法人化を目指されるくらいなので悪くないと思われますし、楽団運営は順調に行っているという事ですね。

いえいえ、内情は大変厳しいです。みんなの頑張りに報いるためには、本当ならもっと待遇面の改善も図りたいですし。そんな中にあっても楽団員一同、お客さまに音楽の力で豊かな心と感動をお届けしようと、感謝の気持ちを忘れずに活動しています。

楽団員のソフトな雰囲気も関西フィルの魅力 (C)s.yamamoto

楽団員のソフトな雰囲気も関西フィルの魅力 (C)s.yamamoto

--楽団内での課題としては、公益化以外何がありますか?

2020年に楽団創立50周年を迎えます。2015年に楽団初の欧州遠征を実施しましたが、これがその後の演奏活動においてメンバーのモチベーションに繋がっています。音楽監督のデュメイ氏は、ぜひ2度目の欧州遠征をやろう!と言ってくれています。その事も含め、50周年を節目として楽団がさらなる飛躍を図るきっかけとなるような事を考えているところです。先ずはこの6月に「“がんばれ!関西フィル”コンサートⅢ 三大テノールをむかえて」を開催します。

--関西フィルといえば充実した指揮者陣を擁している事が他のオーケストラとの差別化になっています。定期演奏会のラインナップを見ていると、そのあたりの強みを十分に生かしたプログラムを作っておられるように思います。

就任8年目のシーズンを迎えるデュメイ音楽監督と関西フィル (C)s.yamamoto

就任8年目のシーズンを迎えるデュメイ音楽監督と関西フィル (C)s.yamamoto

デュメイ監督とは8年目のシーズンです。初めて指揮をして頂いてから既に11年が経っていますが、楽団員との刺激的なリハーサルは何も変わっていません。まだまだデュメイ監督から学ぶべき点は多いように感じます。全11回の定期演奏会のうち、監督には3回指揮していただきます。古典派、ロマン派を中心にしたプログラムですが、ムソルグスキー「展覧会の絵」のような煌びやかな曲は少々意外に思われるかもしれませんね。絢爛豪華なロシア音楽、まさに土着の音楽を、デュメイ監督がどのようなスピリットで指揮するか、ぜひ注目していただきたいです。監督はこれまでにも、聴きなれた「田園」や「運命」、チャイコフスキー交響曲第5番なんかを「おっ、そう来るか!」というふうに変貌させて来ました。

デュメイのヴァイオリンが当たり前に聴ける贅沢と言ったら… (C)s.yamamoto

デュメイのヴァイオリンが当たり前に聴ける贅沢と言ったら… (C)s.yamamoto

今回定期演奏会での弾き振りは予定されていませんが、4月の第291回定期演奏会では、ソリストとしてコルンゴルトのコンチェルトを演奏して頂きます。このところ他のオーケストラでも演奏される機会の多い曲ですが、きっと満足して頂けるはず。素晴らしい色彩感があるデュメイ監督のヴァイオリンが奏でるコルンゴルト、天下一品だと思いますよ。

--首席指揮者の藤岡さんはシベリウスの交響曲第1番とヴェルディの「レクイエム」を取り上げられます。シベリウスのツィクルスが終わるのは淋しい気もしますが、最後に第1番…。東京サントリーホールの圧倒的な名演を思い出します。

テレビで人気は全国区。関西随一の集客力を誇る藤岡幸夫 (C)s.yamamoto

テレビで人気は全国区。関西随一の集客力を誇る藤岡幸夫 (C)s.yamamoto

評判が良かったようですね。私は聴いていなかったのですが、そう言って頂けると嬉しいです。この定期演奏会では、大島ミチルさんの「クラリネットとマリンバのための二重協奏曲」の世界初演も聴き逃せません。邦人作品の紹介を積極的にされている藤岡さんならではのプログラムです。

日本でも人気絶大、リチャード&ミカ・ストルツマン (C)LISA MARIE MAZZUCCO

日本でも人気絶大、リチャード&ミカ・ストルツマン (C)LISA MARIE MAZZUCCO

このために、ストルツマン夫妻がやって来てくださいます。そして翌月にはヴェルディの「レクイエム」。藤岡さんがこの曲を初めて指揮されたのも関西フィルでした。相当思い入れのある曲のようです。壮大なこの曲の持つインパクトの強さと繊細さ、そこに藤岡さんの強い熱情が相俟った、凄い演奏になると思います。充実のソリスト、そして関西フィルハーモニー合唱団にもご期待ください。

--すっかり巨匠としての風格を感じる飯守泰次郎さん。2回の定期演奏会は共にブルックナー。人気のある交響曲からではなく、第1番から順にやって来られた連続演奏会もいよいよ大詰め。交響曲第8番と第9番ですね。

巨匠の貫禄十分、桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎 (C)s.yamamoto

巨匠の貫禄十分、桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎 (C)s.yamamoto

はい。ブルックナーに関してはたいへん耳の肥えたお客様が多い大阪ですが、桂冠名誉指揮者の飯守泰次郎氏のブルックナーも評判は良いですよ。ブルックナーに限りませんが、飯守さんから楽団員への要望はとても厳しく高いものですが、楽団員は大きな共感を持って必死にそれに応えようと努力します。このようなリハーサルの雰囲気は確実に本番のステージに現れます。飯守さんと関西フィルの作り出す集中力溢れる音楽にご期待ください。

実はブルックナーのツィクルスは第9番で終わりではなく、次のシーズンには第0番を演奏して幕を閉じます。2019年に第9番、2020年には第0番と洒落も効いていて、飯守さんらしいです。飯守さんには今年のベートーヴェンの「第九」も指揮していただきます。

--全11回の定期演奏会を、デュメイ氏が3回、藤岡氏が2回、飯守氏が2回。残り4回を指揮するのは全員外国の指揮者なんですね。

はい、先日2月の第289回定期演奏会で指揮していただいた名匠クリストは、皆さまお馴染みだと思いますが、あとの3人は初登場です。それぞれ話題のソリストが花を添えます。

若き実力者、アドリアン・プラバーヴァ (C)Gerd Salhoff

若き実力者、アドリアン・プラバーヴァ (C)Gerd Salhoff

第291回定期演奏会を指揮するアドリアン・プラバーヴァにはデュメイ監督が。第296回定期演奏会の指揮者アンドレイ・フェーヘルには関西フィルファンにはすっかりお馴染みのチェリスト北村陽さん。

関西フィルファンの間ではすっかりおなじみ、チェロの北村陽

関西フィルファンの間ではすっかりおなじみ、チェロの北村陽

そして第298回定期演奏会の指揮者ヤニフ・セガルにはベルリンフィルの首席トランペット奏者ガボール・タルケヴィが登場します。

ベルリンフィルの首席トランペット奏者、ガボール・タルケヴィ

ベルリンフィルの首席トランペット奏者、ガボール・タルケヴィ

若い音楽家との共演では、はっとするような想定外の音楽の魅力に出会うことが多々あります。このような楽団員の精神的変化は本当にオーケストラの音色を変えますからね。こういった新たな出会いも、定期演奏会の楽しみの一つです。

--定期演奏会以外の自主公演では、年2回の「Meet the Classic」と年3回の「いずみホールシリーズ」の会場となるいずみホールが4月から半年間、改装のためにクローズされます。その間はどうされるのでしょう。

「Meet the Classic」は毎年1月と8月に開催するのですが、8月は新しく梅田に出来た常翔ホールで行います。「いずみホールシリーズ」としては、5月に豊中市立文化芸術センター大ホール、9月に兵庫県立芸術文化センター大ホールで、それぞれ「特別演奏会」として開催します。8年続いた奈良での演奏会はいったんお休みとし、大阪狭山市のSAYAKAホールで演奏会を行います。関西には素晴らしいホールがたくさんあります。他にも大阪市中央公会堂、フェニックスホール、文化パルク城陽、京都コンサートホール小ホールなど、大小さまざまなホールで色々な編成の音楽を聴いていただく機会を設けているのも、関西フィルならではだと思います。

--最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

デュメイ音楽監督は2018年度プログラムについて「お馴染みの曲を演奏することは興行的に意味はあるが、リスクを冒してでも新しいプログラム、つまり、楽団が集客のためにやりたい曲や演奏者が好きな曲ではなく、お客さまに好きになっていただける曲を選曲したい。」と述べました。硬軟自在なプログラムと、デュメイ音楽監督、藤岡首席指揮者、飯守桂冠名誉指揮者の3指揮者による円熟の演奏、そして将来有望な若手来日ゲスト指揮者による、クラシック音楽の新たな発見がお楽しみいただけると思います。どうぞご期待ください。

私達の演奏会にお越しください。お待ちしています! (C)飯島隆

私達の演奏会にお越しください。お待ちしています! (C)飯島隆

取材・文=磯島浩彰

英国ロイヤル・オペラ・ハウス2017/18シネマシーズン『リゴレット』/主演の熱演が光るヴェルディの傑作

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【動画】ロイヤル・オペラ『リゴレット』Trailer


「英国ロイヤル・オペラ・ハウス2017/18シネマシーズン」、3月9日からの上映はヴェルディの傑作オペラ『リゴレット』だ。演出は英国ロイヤルオペラハウス(ROH)のほか、メトロポリタン歌劇場(MET)の舞台演出で大人気のデイヴィッド・マクヴィカー。この『リゴレット』はROHの2001年の初演以来の人気作品で、今季が7度目のラインナップとなる。

乱痴気騒ぎにふけるマントヴァ公爵(マイケル・ファビアーノ)に仕える主人公、道化リゴレットを演じるディミトリ・プラタニアスが重厚で圧巻の演技はみどころのひとつ。繊細な心理描写とともに、市民革命と独立の狭間の時代の闇までも赤裸々に描き出す舞台セットも物語世界を重厚に描き出す。

■独立気運の高まる当時のイタリアの「時代」を映す

(C)ROH.CATHERINE  ASHMORE

(C)ROH.CATHERINE ASHMORE

ヴェルディの『リゴレット』の舞台はイタリアのマントヴァ。好色な公爵は淫蕩三昧を尽くす日々を送り、リゴレットは公爵の道化師として仕え、乱痴気騒ぎの場を盛り上げる。その一方でリゴレットは亡き妻の形見である娘ジルダ(ルーシー・クロウ)を唯一の心の支えとし、ジルダの存在を公爵や仲間に気付かれぬよう隠していた。しかしジルダは教会で出会った公爵を、そうとは知らずに思いを寄せ、公爵もまた彼女に身分を偽り近づき、ついには誘拐してしまう。リゴレットは娘の復讐のため、公爵暗殺を決意し、それが悲劇へと向かっていく――。

この舞台の初演は1851年、ヴェネチアのフェニーチェ座だ。当時のイタリアは1840年代の市民革命の失敗などで揺れ、オペラや出版物などの検閲が厳しい時代。のちの1861年のイタリア王国成立に向け、市民の不満や独立の機運などが埋火のようにイタリアに広がっている、不安定な時代だった。ヴィクトル・ユゴーの戯曲『王は愉しむ』を原作としたこの作品も、当時のフランスの王権を批判した内容を、時代を変え、王を貴族に変更するなど諸々の変更を経たうえで上演に至ったものだ。このオペラはヴェネチア市民には熱狂的に受け入れられ大成功となり、大作曲家ヴェルディの名を不動のものとしたのである。

■繊細な心理描写を描く音楽と歌手の熱演

(C) PERSSON

(C) PERSSON

『リゴレット』の名作たる理由のひとつに挙げられるのが、アリアとともに歌われる登場人物の心理描写だ。リゴレットのアリア『悪魔め、鬼め』や、ジルダのアリア『慕わしい人の名は』などが物語を綴る。背中が曲がり2本の杖を突き、大きな巨体をゆすりながら歩くプラタニアス演じるリゴレットは、それだけで存在感抜群。公爵の一味であり、同時に娘を愛する普通の父親の苦悩を切々と歌い、そのできばえはプラタニアス自身が幕間のインタビューで「舞台演出共々すべてがこれまで演じた最高のリゴレット」と言い切るほどだ。

(C)ROH.CATHERINE  ASHMORE

(C)ROH.CATHERINE ASHMORE

マントヴァ公爵役のマイケル・ファビアーノは今シーズンもROH『ラ・ボエーム』でロドルフォを演じたほか、METでも同役でソニア・ヨンチェヴァとともに出演した人気急上昇中の若手テノールだ。そのメロディを聞けば「ああ、これか」と思い出す人も多いであろう、マントヴァ公爵の歌う有名なアリア『女心の歌』は、その陽気なメロディが物語の闇を一層深くする。

オペラ史上最高の四重唱ともいわれる、第3幕『美しい恋の乙女よ』も聞き応え満点。相変わらず放蕩にふける公爵とそのお相手マッダレーナ、それを外から見て悲しむジルダと復讐を誓うリゴレットの4人の思いが交差し、やるせなさがひしひしと胸に迫る。物語とともにイタリアの一つの時代を切り取ったような重厚な舞台。幕間の指揮者や出演者インタビューも興味深く、観賞の参考となる。


サガシリーズの楽曲をアコースティックで堪能!伊藤賢治がファンを魅了した『SaGa THE STAGE』ミニコンサート&トークイベントレポート

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(C)SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION:TOMOMI KOBAYASHI

(C)SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. ILLUSTRATION:TOMOMI KOBAYASHI

サガシリーズの人気曲を、ピアノ、ヴァイオリン、ギターのアコースティックバージョンで披露する『SaGa THE STAGE』のミニコンサート&トークショーが、3月4日(日)、池袋・サンシャイン劇場にて開催された。ピアノは作曲の伊藤賢治、ヴァイオリンを土屋玲子、ギターを寺前甲が担当し、オフィシャルでは初めてとなる新編成で熱いステージが繰り広げられた。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

「今日は、サガシリーズの世界をたっぷり、どっぷり、みっちりとお楽しみいただければうれしいです」という伊藤のコメント通り、1曲目で披露されたおなじみの「オープニングタイトル」から、会場は一気にサガシリーズの世界観に引き込まれる。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

サガシリーズの曲が大好きだという土屋は「弾いていてうっとりした気持ちになれるので、一緒に楽しみながら演奏したい」とコメント。伊藤との演奏は久しぶりだという寺前も「今日を楽しみにしていたので、頑張ります」と意気込みを語り、「伝説は始まる〜涙を拭いて」のメドレーで会場を感動で包み込んだ。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

演奏後には、サガシリーズの楽曲を語る上で欠かせない、舞台『SaGa THE STAGE』の世界観監修と脚本原案を担当したサガシリーズのディレクターの河津秋敏氏、サガシリーズプロデューサーの市川雅統氏が登壇し、『魔界塔士 Sa・Ga』の楽曲エピソードを語った。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

「魔界塔士 Sa・Ga」といえば、植松伸夫氏が全ての楽曲を手がけたこととして知られている。ちょうどファイナルファンタジーシリーズの作曲を手がけていた時期だったこともあり、「FFではやらない曲をやろう」という思いでサガの音楽を作り上げたのだそう。河津氏のお気に入りは、「涙を拭いて」。続くシリーズの中でも、「象徴的な場面で使わせてもらった」と語る。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

『魔界塔士 Sa・Ga』発売当時は、小学生だったという市川氏が初めてイヤホンで聴いた音楽が『魔界塔士 Sa・Ga』の曲であったというエピソードを披露し、今回のメドレーには鳥肌が立つほど感動したと興奮気味に語った。

続いて披露されたのは、ロマサガ3より「ポドールイ」と「四魔貴族バトル1」。『SaGa THE STAGE』の福岡・久留米公演で、舞台出演者への感謝の気持ちを込めて伊藤と土屋の2人で演奏したという、「四魔貴族バトル1」は、伊藤曰く「2人編成で演奏できる曲じゃない」という高難度曲。しかし、久留米での演奏はことのほか好評で、これがきっかけとなり、今回のステージでの演奏に繋がったのだという。さらに、3月14日に発売される『Re:Tune Romancing SaGa BATTLE ARRANGE』では、和太鼓のようなドラム音を使用した和の雰囲気が漂う曲に仕上げていると語った。

撮影=かしわだに たかし

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撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

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ここで、『SaGa THE STAGE』で脚本を担当したとちぼり木氏、ミカエル役の中村誠次郎、ブラック役の平山佳延の3人がスペシャルゲストとして登場し、盛りだくさんな舞台エピソードを語った。とちぼり氏は、舞台バージョンの衣装を身につけたキャラのイラストをSNSにアップしてくれているファンの方がいて、とても励みになった」と振り返る。ロマサガシリーズで育ったという中村は、「ゲームの世界観をどう表現するのか、閃きの演出はどうなるのか」など、プレーヤー目線にもなりつつ、楽しんだという。平山は、「楽屋に小道具の斧を忘れる」というハプニングを告白。結局、出番には間に合ったが、ブラックの象徴でもある武器を忘れたことに内心かなり焦っていたと振り返った。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

笑いに包まれた舞台トークの後に、ステージ第2弾『 SaGa THE STAGE〜七英雄の帰還〜』の上演決定がサプライズ発表された。具体的な内容は、今後随時発表されていくとのこと。河津氏による素敵なサプライズ発表に、会場、そして、舞台上は大きな拍手と歓声に包まれた。キーワードは七英雄。つまり、『ロマンシングサ・ガ2』がベースとなる舞台となりそうだ。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

ステージ第2弾『SaGa THE STAGE〜七英雄の帰還〜』の上演決定のお知らせに興奮冷めやらぬ会場を、熱い演奏でさらに盛り上げる。続いて披露されたのは、ロマサガ2より、「七英雄のバトル」「ラストバトル」。2曲続けて、シンプルなアレンジながらも、激しいバトル曲が演奏された。アンコールで、伊藤がピアノソロで「エピローグ」をしっとりと奏で、美しい音色で会場を包み込み、イベントは幕を閉じた。

撮影=かしわだに たかし

撮影=かしわだに たかし

ミニコンサートと題して開催された今回のイベント。「ミニとは言えないくらい内容みっちり」という伊藤の言葉通り、メドレーを含めて全部で8曲が披露されるという贅沢なコンサートだった。伊藤が会場に向かって手拍子を煽るジェスチャーを見せると、観客も手拍子で演奏に参加。会場が一体となり、演奏をさらに盛り上げるコンサートとなっていた。

レポート・文=タナカシノブ

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年3月12日~2018年3月18日)

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【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年3月12日~2018年3月18日)

最近のあなた、語彙力は足りていますか? なんかよくわからないけどすごそう、なんとなく人気出てきてるしヤバそう……フッと目に飛び込んでくる「良さげ」「ヤバめ」な情報をどこまで信じるのかはあなた次第です。自分が信じたいからそれでいい、と思えることもあるでしょうし、おかしいと思えば離れたらいい。それはたしかに、そうなんです。

そんな「よくわからない」で済ませてきたことに、おかしさを感じやすいタイミングがやってきました。これまでは黙っていたけれど急に主張するものがあるのかもしれませんし、ハッキリ言われていなかったことに白黒つけるようなインフォメーションがあるのかもしれません。みんなが空気を読まずに「私はこう思う」を言い始めます。びっくりしているだけでは飲み込まれてしまいそう。

実は、ちゃんと種明かしや回収するべき伏線のようなものは、これまでもあなたには伝えられてきているはずなのです。それが皮肉のような表現だったり、好戦的な表現だったり、相手に思いやりがないんじゃないかと疑ってしまうような、ヒリヒリするような言葉だけではなさそう。自分にとって「心地良い言葉をくれる人」の強烈な批判にも、ようやく気付けるのかもしれません。

キーマンや有名人と繋がっているからといって、自分自身に価値が生まれるわけではありません。楽な環境を与えてくれる人、称賛や絶賛で気を引こうとする人、そんな相手と自分はどういう部分で繋がっていて、どんな価値を認められているのか。自分が上から見てていた景色がどんどんひっくり返されていくようなこともありそう。

脇の甘さを徹底的に突かれていきそうな気配も。隠し通したいことと、もう隠せないこと。どう見られたいよりも、本音はどこにあるのか、聞かれて答える準備はできているのか。そんなことをグルグルと思い巡らせ、ケツを叩かれるような一週間になりそうです。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
快楽主義、ハーレム
◆おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
交換日記、デュエット
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
懐古趣味、アンティーク
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
文学作品、メッセージ
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
精神論、アスリート
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
番外編、エキシビション
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
嗜好品、マニアック
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
付け替え、トレーディング
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
初対面、フレッシュマン
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
密着、プライベートスペース
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
昭和、オールドスクール
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
鮮明な、ビビッドカラー

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開幕迫る! 東京二期会によるベルカントの最高傑作 ベッリーニ《ノルマ》 ~プレ・イベント 城 宏憲ミニ・ライブ レポート~

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東京二期会が、コンチェルタンテ・シリーズと銘打った新たな試みを始める。同シリーズは、二期会のレパートリーになかった作品を、映像と共にセミ・ステージ形式で届けるもの。記念すべき第一弾は、ベルカント・オペラの最高傑作との呼び声も高い、ベッリーニの《ノルマ》。3月17日、18日の二日間にわたってBunkamuraオーチャードホールで上演される。本公演に先立つプレ・イベントとして、ポリオーネ役を務める城 宏憲(じょう ひろのり)によるミニ・ライブ&オペラ・トークが、先日、西新宿の芸能花伝舎で開催された。

城は、2016年の《イル・トロヴァトーレ》で、急きょ、代役としてマンリーコ役を演じて注目を集めた。昨年の《トスカ》でもカヴァラドッシ役を務めるなど、東京二期会の顔となりつつある。熱い期待が寄せられている、今、最も聴きたい若手テノールの一人。今回のプレ・イベントでは、輝かしい美声を聴かせるだけでなく、同公演の演出を務める菊池 裕美子とのトーク・ショーも行った。

イタリア・オペラ、そして《ノルマ》の魅力に迫る充実の60分

ヴェルディ中期の傑作《リゴレット》からアリア「女心の歌」で、華やかに幕が開けた。マントヴァ公爵が、気まぐれな女心を陽気に歌うカンツォーネだ。3拍子の軽やかな伴奏に乗せて、城の美声が会場に響き渡ると、《リゴレット》の世界へと引き込まれた。陰惨で悲劇的なオペラのストーリーに絶妙な対比をもたらす色男マントヴァ公爵の明るさ。開放感溢れる瑞々しい歌声が、この明るさを上手く捉えていた。

続いては、プッチーニ《蝶々夫人》よりピンカートンのアリア「さらば愛の家」。蝶々さんを裏切った夫ピンカートンが、彼女の一途な想いにいたたまれず、かつては二人で住んだ長崎の家に別れを告げるシーンの一曲だ。静謐で美しい前奏に、「さらば愛の家 花に満ちた隠れ家」という歌詞が重なる。冒頭から胸を打つ切なさが感じられた。複雑な感情の揺れが表現されたこのアリアを、城は表情豊かな歌唱で歌い、オペラのシーンが目に浮かぶようであった。

躍動感と情熱溢れる歌唱に、会場は一気にイタリア・オペラの世界に。城と、ピアノ伴奏の黒木 直子に温かな拍手が贈られた。

マリア・カラスに最も難しいオペラと言わしめた作品

演奏後、城と演出家 菊池 裕美子によるトーク・ショーが行われた。城がオペラ歌手を目指したきっかけ、イタリアでの留学生活、そして、先に出演した《イル・トロヴァトーレ》や《トスカ》での現場エピソードといった興味深い話題に、聴衆も聞き入る。二人のトークは軽妙で、会場からが笑いに包まれるシーンも多かった。

憧れの存在を尋ねられ、ファン・ディエゴ・フローレスを挙げた城。「彼の巧みなテクニックによって、ベルカントのオペラ作品が数多く再現されるようになりました。フィギュアスケートの羽生選手が『芸術は、確かな技術に基づいたものである』と言ったそうですが、フローレスがまさにそうなんです。僕も、ベルカントという時代から学べるものは多いのではないかと感じます。今後、色々なオペラ作品を歌っていくなかで、19世紀半ばに書かれた作品も歌える歌手になりたいですね」と語った。

そして、話題は、いよいよ《ノルマ》に。

この作品の舞台は、ローマ帝国の厳しい支配の下におかれたガリア地方。ガリアを治めるローマ総督ポッリオーネは、ガリアの巫女ノルマと禁断の恋中にあったが、次第に若い巫女アダルジーザへと関心が移っていき…、それが悲劇をもたらす。嫉妬と復讐が渦巻く男女の愛憎物語だが、ベルカントの巨匠ベッリーニは崇高にして情熱的な音楽として紡ぎ出すことで珠玉の作品を生み出した。

《ノルマ》は、マリア・カラスに「最も難しいオペラ作品」と言わしめたオペラ作品であると、城はその難しさを語った。ロッシーニの後継者とされ、ヴェルディ登場前夜のイタリアで活躍したベッリーニ。本作品は、ベルカントから劇的歌唱へと移り変わっていく過渡期に作られ、歌手には、均整の取れたフォームと情熱的な表現との絶妙なバランスが求められる。

最大の見どころを訊かれた城は、「何と言っても、第一幕フィナーレの、いわゆる『修羅場の3重唱』」と答えた。三角関係にあった三人が鉢合わせるシーン。激昂し、ポリオーネへの復讐を誓うノルマ、開き直るポリオーネ、呆然自失のアダルジーザの想いが交差するドラマティックな三重唱に、観る側も思わず手に汗を握ってしまう。

一方の菊池は、今回の演出の構想を訊かれて、「音楽はとっても難しい曲なので、まずは音楽を主体に、堪能していただければと思っています。そのなかで、演技が付き、ソリスト、合唱、オケに配慮しながら、映像や照明をつけます」と答えた。また、主人公のノルマについては、「オペラの最初の方から、やっぱりノルマがいい人なんだということが、分かるような演出にしたいですね」と語った。宗教、民族、そして国家の壁に阻まれながらも、ポリオーネを愛し、あるいは憎み、女性、母、そして巫女として苦悩するノルマの姿が、どう描き出されるのかに期待したい。

さらに、城は、第一幕のポリオーネとアダルジーザの二重唱を楽しみにしているシーンとして挙げた。「共にローマへ行こう」と熱心にアダルジーザを口説くポリオーネに対して、情熱的な誘いに抗いきれず、アダルジーザは駆け落ちを承諾してしまう。菊池も「その二重唱は、こだわっています!」とし、ストーリーや台詞に応じて歌手の立ち位置を動かしていく考えがある旨を述べた。

トーク・ショー終了後、鳴りやまない喝采に応えて城は、カンツォオーネ・ナポリターナ《カタリ・カタリ》を熱唱。名残惜しさの残る会場に、抒情的な歌声が響くと、ナポリの情熱的な風が吹きこんだ。

《ノルマ》はまさに今、リハーサルのただ中である。難曲中の難曲といわれる「カスタ・ディーヴァ」を歌うタイトルロールを大村博美(7日)と大隅智佳子(8日)が、ポリオーネ役を城(7日)と樋口達哉(8日)が務める。圧倒的な存在感をもつ歌手陣による「声」の響宴が待ち遠しい。オペラの本場でも上演回数の少ない《ノルマ》。この傑作を聴くまたとない貴重な機会を、お聴き逃しなく!

取材・文・撮影=大野はな恵

岩代太郎のオーケストラ音楽と、浦沢直樹の作画模様が一期一会のコラボレーション!?~MANGA SYMPHONY「○」岩代太郎に聞く

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2015年6月、国立新美術館で「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」という企画展が開幕。その後は海外でも巡回展が行われるなど、ここ数年また改めて日本初のサブカルチャーへの再評価がすすんでいる。国際的に受容されている日本の「マンガ」を、単なるビジネス上の商機ではなく、世界に誇れる日本文化として国内外に発信していく――こうした動きは、国策レベルで今後ますます加速してゆくはずだ。

そんな時代だからこそ実現したといってもいいだろう。マンガの新しい可能性を切り開く、前代未聞のイベントが2018年3月31日に東京芸術劇場(池袋)で開催される。

映画『レッドクリフ』(ジョン・ウー監督)の音楽を手がけるなど、今や国際的に活躍する作曲家としての地位を築いた岩代太郎。数多くのヒット作を生み出してきただけでなく、TV番組『漫勉』などによって日本マンガ界におけるオピニオンリーダー的立場を確立しつつある浦沢直樹

共に50代、各々の分野でフロントランナーとして活躍するクリエイターふたりが組んで「マンガ・シンフォニー」を作ろうというのだから、面白くないわけがない。この「マンガ・シンフォニー」とは一体どのようなものなのか――企画を立ち上げた岩代太郎にじっくり話をうかがった。

岩代太郎

岩代太郎

――浦沢さんの「マンガ」と岩代さんの「オーケストラ音楽」がコラボレーションされると伺った時にまず頭に浮かんだのは、浦沢さん原作の「アニメ」に岩代さんが「音楽」をつけるのとどう違うのかということです。今回、「アニメ」ではなく「マンガ」とのコラボレーションとした意図はどこにあるのでしょうか?

それは単純明快です。クリエイターふたりがイーブン(同等)に、がっぷり四つに組みたいんだったら、自分は音楽で時間軸で動くので、時間軸を持たない人間と組まないといけないんです。アニメだとその場でどうこうできる問題じゃないから、結局作られたアニメーションに対して、通常のサウンドトラックと同じやり方で音楽を合わせなくちゃならない。それはやっぱりイーブンじゃないですよね。今回の話はその場で同時にがっぷり四つに組んで、発表していきたい作品なんです。だから時間軸をもっていない平面で勝負している作家さんじゃないと、うまくいかないんですよ。

――なるほど。普段、岩代さんが手がけられているような映画やテレビの音楽とは、そもそも制作のプロセスが全く違うわけですね。

映画のように何分何秒と尺が決められたものは、語弊を恐れずに言えば、あくまでも音楽は脇役ですよね。編集が終わった映像を引き立てるために何が出来るのか。たとえ音楽が主役のように主張することがあったとしても、その画を活かすためにやることなので。少なくとも音楽のために画を撮っているわけじゃない。

だから皮肉交えて言うと、とにかく音楽ありきの画を撮っても、それじゃミュージック・ビデオじゃないかと。映像作品の本来あるべき姿ではないと思う。テレビの場合は尺が決まっているわけじゃないけれど、どういうようなシチュエーションでも対応できるような音楽のカタログを揃えるんです。だから、そこには漠然とした最初にまず表現するべき動画があって、それに後ではめていく。だから今回のものとは、映画もテレビも全然成り立ちが違います。

岩代太郎

岩代太郎

――時間軸をもたない作家さんは数多く存在しているなか、今回は浦沢直樹さんとコラボレーションされます。浦沢さんとはどのように出会われたのでしょうか。

この企画を何とか立ち上げたいと思ったときにご相談した方々から、絆のような縁がつながっていって、この企画だったら……とお名前が挙がったのが浦沢さんだったんです。僕はすぐ浦沢さんへの手紙を書きまして、お会いしましょうということになりました。この企画を人に話しはじめてから、浦沢さんに実際にお会いするまでに1年以上時間かかっているかな。現在までの時間でいうと優に2年超えると思うけど。そのくらい時間をかけて準備してきました。

――浦沢さんはミュージシャンとしての顔を持たれているほど、音楽に造詣が深い方ですが、ロックやフォークがお好きというイメージで、オーケストラと共演されるというのは正直、意外でした。

浦沢さん自身のなかにある音楽観というのは即興性みたいなもの。ライヴ感じゃないけれど、それを大変重要視されている方なんだよね。オーケストラというのはいうまでもなく大合奏だから、そうはいかない。そういう意味でいうと彼が日頃親しんでいる即興性に富んだ音楽とは、成り立ちが違います。

彼が日頃親しんでいる即興性みたいなものをオーケストラ側に入れるのか、考えなかったわけではないです。そういったものも現代音楽にはあるじゃない? だけど僕自身が自分のオリジナルとして作品を書くにあたって「岩代太郎の音楽」っていう括りで考えたとき、やっぱり明確に伝えたいメッセージを、自分の意思のもとで音符として書いたもので残していきたいっていうことだったんだと思う。

岩代太郎

岩代太郎

――コンサートの前半(第1部)では、今年生誕90周年を迎える漫画家 手塚治虫さんへのトリビュートとして、手塚アニメの名曲を、岩代さんによるこのコンサートのための書き下ろしアレンジで披露されるそうですね。

このコンサートならではのアレンジを施したいと思っているんですよ。そうすると、誰もが知っている曲じゃないと、デフォルメしたときに分からないじゃない。アレンジ上の自由度を確保するためにも、「ジャングル大帝」(冨田勲 作曲)とか「鉄腕アトム」(高井達雄 作曲)とか、誰もが知っている曲がベースにないと表現しきれないだろうなと思うんだよね。

たとえばクラシック音楽的にいえば、「きらきら星」は誰でも知っているから、あれだけモーツァルトが(「きらきら星変奏曲」で)色々変えても分かるわけじゃない。だけど、きらきら星を聴いてなかったら、その面白さは半減してしまう。そういう理屈ですよ。あの曲がこうなったんだ!……という驚きと歓びを表現したいなと思います。

――浦沢さんは手塚作品をリメイクするなど、手塚治虫と浅からぬ縁をお持ちでいらっしゃいますが、岩代さんにとっての手塚治虫はどのような存在なのでしょう?

手塚治虫さんという人間そのものに対しての尊敬の念も抱いているし、その業績みたいなものは亡くなられてもなお、いま改めて評価されるべきだと思うんです。そういう思いがこの企画の根底に流れていますね。

岩代太郎

岩代太郎

――コンサートの後半(第2部)では、いよいよ全8楽章の「MANGA SYMPHONY『○』」が演奏されます。浦沢さんの作画模様と共演されるとのことですが、岩代さんが書かれた音楽の部分はどのように作られているのでしょうか?

パッと聴いた感じで言うと、それぞれが独立した8曲からなる「組曲」になっています。シンフォニー(交響曲)だからってソナタ形式で作っているわけではないんですが、専門的にいうなら、あからさまにメインのモティーフ(音型)が表に出てきてるのが第1、4、8楽章。それ以外の楽章に関しては、細かいモティーフをちりばめています。

―― 一度話が立ち戻るのですが、今回の「マンガ・シンフォニー」の趣旨を聞かせていただくうちに、岩代さんがこれまで主軸におかれてきた映像のための音楽と結構大きな違いがあることが伝わってきました。なぜ、こういった新しい試みをなされようと思われたのでしょう? もともと油絵も書かれるそうですが、そうした美術とのかかわりも関係しているのでしょうか。

7歳から14歳まで、僕は油絵をやっていたんです。この3~4年は描いていないんだけど、家には油絵を描く部屋もあります。だけど、それを仕事に直結させるっていうことではなかったんですよ。あくまでも趣味は趣味なんで。そういう意味で、自分のバックボーンに美術とか写真はあったんだけど、今回の企画に関しては、全くそこがオリジン(起源)ではないんです。どちらかというと、自分が音楽家として仕事をしていった人間関係の中から、こういう芸術の可能性みたいなものがあるんじゃないかなと思うようになったかな。

 ――そうだったんですね。

僕はよく作曲家の人生を「ソナタ形式」(※「提示部―展開部―再現部」の3つの部分から構成される形式)になぞらえることがあるんですよ。そうすると最初の「提示部」なんていうのは、言ってみれば自分が音楽家になろうと思って勉強し始め、自分なりにこんな仕事をしようと思っている頃。僕の場合は大学院を出た25歳からスタートして、業界で「岩代太郎ってこういう作曲家ですよ」ということを、まさに「提示」していく時期です。

岩代太郎

岩代太郎

――では「展開部」はどういった時期なのでしょう?

レコード会社だとかテレビ局や映画会社に行って、名刺を出して何処のどなた様ですか?……みたいなことが無くなりはじめた30代ぐらいに入ってきた頃。自分なりにあんなこともこんなことも出来るんじゃないかなという時期です。でも50歳近くになってときに年齢的なこともあって、もう一度初心に戻りたいと思ったんです、「再現部」ですね。

これまで20年近く様々な方々と様々な仕事をさせていただいてきたわけですが、基本的にはいただいた仕事で「人から期待される自分」に応え、自分の能力を高めていったわけです。ところがやっぱり根本論、なんで自分が作曲をやっているかと言ったら、人に頼まれるから書くんではなくて、書きたいから書くんだっていう気持ちの自分が、どこかにいるんですよ。

――なるほど。

もちろん、いま言った「展開部」的な、人から期待されることで自分の才能やスキルを伸ばしていくっていうのは絶対に大切な時期だし、どんな作曲家にも必要な時期だと思うんですけど、1年先まで仕事が埋まってるときに「仕事に恵まれて嬉しいなぁ」と思っていた時期から、不思議と「ちょっと、このままじゃマズいんじゃないか」って思い始める段階が来たんですよ。

そして作曲家として生涯現役でいたいと思ったときに、ただ発注をこなしているだけで消費されている側になっちゃうと、生涯現役じゃいられない。作曲家に限らず、映画監督だろうが演出家だろうが俳優だろうが何だろうが、自分から発信していっている人間でオピニオンリーダー的な部分にポジションを見いだせない人間は、なかなか70歳過ぎまで現役でいられないっていう将来像が見え隠れしたんです。

岩代太郎

岩代太郎

――そこまで考えていらっしゃっるのですね。

それからは、ちょっと格好つけた言い方になりますけど、「期待される自分」と「期待する自分」。その両者がイーブンな状況が、実は作曲家にとって理想なんじゃないかと思うようになりました。

そんな思いを具現化するきっかけになったのは多分、東日本大震災だったと思います。あの時に、やっぱり多くの人たちが自分なりに何か役立てないんだろうかと思いましたよね。被災地の現場から送られているニュース映像を見ていると、自分の得意分野(教育とか医療とか運搬とか)をゼッケンに書いて、現地でボランティアされてる。あとで知ったのは、それは阪神淡路大震災のときの教訓で、どなたに何を頼んでいいか分からないので、頼まれやすいように、ボランティアが自ら得意分野を書いたというんです。

そのときに「作曲って書いても役立たんな~」と思うわけですよ。自分の専門分野が何にも活かせないという忸怩たる思いを抱いたときに、自分なりに何か出来ることはないのかっていうので動き出したひとつが東日本大震災復興・音楽プロジェクト『魂の歌』だったんです。

 ――そうだったんですか!

その時は確実に「期待される自分」とは別の、もうひとりの自分。「期待する自分」っていうものを意識しました。そろそろ年齢的にも、キャリア的にも意識するべきなんじゃないかっていうのはこうしたバックボーンにあったと思うんです。

もうひとつ、2011年の年末に娘が生まれたというのも、とっても大きかったんです。人の親になるということで、言い古されたことではありますけど、有無を言わさず次の子どもの世代にどんな社会を残すべきかということを考えますよね。そこでやっぱり自分なりに何かをアクションを起こしたいと。

50歳手前頃から、段々とそういうものが大きくなって、自分からいくつかの色んな企画を投げているんです。そのうちのひとつで、多くの方々のお力添えをいただいて立ち上がったのが今回の「マンガ・シンフォニー」ということになります。

――岩代さんご自身としては、これまでの活動から連続したところに今回の企画があるということがよく分かり、胸に迫る熱いお気持ちが伝わってきました! 最後に、コンサートに足を運ぼうかどうか迷われているお客様にメッセージをいただけますでしょうか?

ふたりのクリエーターが本気を出して何かを伝えたいと思う――そういう現場、ソフトコンテンツって、なかなかないと思うんですよ。頼まれたわけでもなく、自分達がただそこで何かを伝えたい、発表したいと思う。そういう、ある種の本気を是非とも体感していただきたいと思います。

更にいうと、再演は相当難しいんです。オーケストラと共演というのは、規模といい、ハード面といい、簡単に出来るものではないので。だから「是非、次回は!」だなんて思わないで、3月31日に東京芸術劇場に来ていただきたいですね。

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取材・文=小室敬幸

NBAバレエ団『海賊』~若き振付家と西洋剣術師範の才が新たな冒険に彩を加える! 宝満直也&新美智士インタビュー

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3月17日(土)・18日(日)に世界初上演となるNBAバレエ団、久保綋一版『海賊』。


意欲に満ちたこの作品は、振付助手に新国立劇場バレエ団より移籍し、振付作品に定評のある若き才能・宝満直也、剣術指導に日本唯一の西洋剣術インストラクターにして、宝塚歌劇団『All for One』でも剣術パートの振付を行った新美智士を迎え、さらに新垣隆に新たな音楽を依頼するなど、製作スタッフ陣も一味違う。「一人の男を巡る女二人の結末」というキャッチコピーとともに、既存の『海賊』とは一線を画した新たな冒険世界が展開される予感だ。

公演を前に、宝満直也、新美智士に話を聞き、稽古場を覗いた。

◆宝満直也「濃厚なキャラクターに素晴らしい音楽。ぜひ見ていただきたい作品」

■「物語を紡ぐガイドのように」。主要なパ・ド・ドゥに振り付け

――今回の久保綋一版『海賊』、いわゆる古典の『海賊』とは違った全く新しいものになりそうな印象ですが、その辺りはいかがでしょう。

宝満 すべては言えないのですが、バイロンの原作『海賊』の要素を取りながら、古典のエッセンスを加えた冒険ストーリー、という感じでしょうか。海賊のコンラッドにオスマン軍側のギュルナーレが思いを寄せ、しかしコンラッドにはメドーラという恋人がいる。想いの叶わないギュルナーレに、オスマン軍のザイード・パシャなどが絡み、物語が展開するという感じです。

――なるほど。新国立劇場バレエ団からNBAバレエ団に移籍し、振り付け助手として作品に携わっていらっしゃるということですが、どのように作業を進めているのでしょう。

宝満 久保監督の主旨に沿いつつ、「いい作品にしたい」という思いのもと、スタッフがそれぞれ意見を出し合いながら進めています。久保監督の考えに「極力無駄なシーンを省略しコンパクトに」というものがあり、でも場面と場面を繋いでいくと、例えばビルバント役の大森さんから「なぜここでこう動くの?」という疑問が出たりする。そういった流れを自然にするために、その間の動きや振りを加え、僕の方から「こうした方が物語や気持ちが伝わるのでは」と提案し、任せていただくこともあります。

――自由闊達に意見を出し合える場があるわけですね。宝満さんは具体的にどのパートを振り付けされているのでしょう。今までのお話では振り付けパートも増えたのでは。

宝満 最初の予定からだいぶ増えました(笑) 僕が担当したのは幕開きのメドーラのソロ、コンラッドが登場してきてからのパ・ド・ドゥ、パシャの登場のハーレムの女性たちの踊り、奴隷のパ・ド・ドゥが終わってからコンラッドが押しかけてきて女奴隷たちを解放するまでの流れ、海賊たちの踊り、ギュルナールとコンラッドのパ・ド・ドゥ、オダリスクのアントレ、パシャとメドーラのパ・ド・ドゥ、花園のコーダ、クライマックス等々……です。新垣さんが新たに書いてくださった音楽がとても素晴らしくて、その音楽部分のパートはほとんど振り付けしました。

――主要なパートはほとんど宝満さんが振り付けているんですね。宝満さんはかつて小作品などもたくさん作られましたが、こうした全幕物と小作品の振り付けはやはり違いますか?

宝満 全然違います! もちろん「振り付け」という本質は変わりませんが、全幕物は長い物語と登場人物がある。小説を書いているような感覚に近いのですが、でも「NO」という仕草ひとつ取っても踊り手によりそれぞれ違い正解がない。物語を紡ぐガイドのような、そんなつもりで当たっています。

■パシャ・ザイード役も。様々な挑戦の日々

――今回は振り付けに加わるほか、17日にはパシャ・ザイード役を踊られます。このザイードも久保綋一版『海賊』では、古典の丸っこい、時にはファンキーなキャラクターのパシャとは違うのですね。

宝満 はい。久保版ではかなり重要な役です。コンラッドと敵対するオスマン軍の首領ですから。自分にとっては大きな挑戦で、これまで接した先輩方のイメージを頭に思い浮かべながら役作りをしています。コンラッドとザイードの最終決戦では海賊たちの大乱闘があり、そこで剣術指導の新美先生が関わってくださっています。剣術の型や動き方などを振り付けの中で教わっており、とても楽しいですし勉強になります。

――振り付けに加え、ダンサーとしても新たな境地を開いているわけですね。

宝満 いろいろ経験させていただいています。全幕物の作品がどうやってできるのか――セットや衣装の作成やスタッフの動きなど、NBAに移ってから学ぶことがとても多く、本当に勉強になるし、自分次第で様々なものを吸収できます。振り付けにしても動きや伝え方、身体や目線の角度など、今後に取り入れて使おう、と思うものもたくさんありますね。すごく鍛えられていると思います。

――今後はどういった挑戦を。

宝満 国内のバレエ団すべてに作品を振り付けてみたいです。そしていずれ海外にも打って出たいですね。

――期待しています。最後に作品の見どころを。

宝満 キャラクターがそれぞれ濃いですし、新垣さんの音楽が素晴らしいです。随所にスタッフの様々なこだわりが反映されていますので、ぜひ見てください。

◆新美智士「バレエのイメージを変える新たな作品」

■剣術の振り付けは「動きの提案」

引き続き、宝満とともに作品に新たな振りとエッセンスを加える西洋剣術インストラクターの新美氏にお話を伺った。

――新美さんはアメリカで剣術などを使ったステージ・コンバットを学び、2007年に日本人初のインストラクターとなられました。舞台のお仕事としては宝塚歌劇団の『All for One』、劇団四季『ノートルダムの鐘』などの剣術指導がありますが、今回バレエに携わってミュージカルとの違いなど、新たに感じられたことはありますか。

新美 バレエには以前首藤康之・中村恩恵『DEDICATED2016 “DEATH” HAMLET』で参加させていただき、今回の『海賊』で2作目です。NBAバレエ団からお話をいただき、まず『HIBARI』を拝見したのですが、自分がそれまで抱いていた「バレエ」のイメージを覆り、驚きました。一般的にもそうだと思うのですが、バレエは「とっつきにくい」「敷居が高い」というイメージがあったのですが、若者もすんなり入り込める新しい作品があったんだと。またダンサーの稽古場も見学し、身体能力も問題ないと判断しお受けしました。バレエは西洋の動きですし、私の西洋剣術とも合うはずだと。

――どちらも西洋のものなので融和性があるのですね。バレエの剣術の振り付けに苦労はあったのでしょうか。音源を聴きながら振り付けをしたのですか?

新美 いいえ、音源を聴くということはしません。バレエらしく、というよりもその場面の演技、感情の出し方のアクション――動きを私が提案し、その動きをダンサーが音楽に乗せながらバレエの形にしていきます。音楽のカウントに合わせるやり方も昔はやったことがありますが、それでは動きが限定され、表現の可動域が狭くなってしまうんです。

――可動域、ですか。

新美 はい。舞台――バレエは言葉のない芸術であるだけに、ダンサーの感情・演技ありきですよね。戦いの場の剣術は「声」でもあるわけです。ダンサー個々の自由裁量でそれぞれがより登場人物をより表現できるように、私は剣術アクションの流れをつくるんです。

■「安全」を最重要視。新しい作品は新規観客開拓の第一歩

――今回剣術指導をするにあたり、型の指導など特別なことはされたのでしょうか?

新美 とくにはしていません。私はアメリカでステージ・コンバットを学びましたが、そもそもアメリカをはじめ海外ではこうした剣や武器を使った舞台なり映画に出演する際は、かならずブートキャンプのようなところに入って、一定期間殺陣の訓練するのが常識です。日本はそういうキャンプを経ず、役者あるいはダンサーとしていきなり殺陣を行うという時点で、ステージ・コンバット界の認識としてはまず前提そのものが違う。

――それだけ危険なものだということですね。

新美 はい。だから私が教える際に一番重要視しているのは、いかに安全に、ケガをせずに殺陣を行うか、ということに尽きます。それは大前提のうえで、さらに動きにリアリティを持たせ、感情を込められるか、が振り付けになります。剣のアクションだけに限らず、剣を持たずともただ転ぶシーン一つにしても、安全な転び方というのがあるわけです。そうしたところも指導することで、ダンサーもケガ無く長く活躍できる。

――なるほど。そのほかに重要視していることはなんでしょう。

新美 海外のお客様が見たらどう思うか、ということを常に意識しています。たとえば西洋人が日本の侍の真似をして刀をふるっても何か変だ、と思いますよね。そうならないよう、西洋の人が西洋の殺陣を見て「すごい!」と思える、リアリティのあるものを目指しています。今回海賊はキリジ刀、オスマン軍はカトラスと、その時代に応じた刀も特注しました(笑)。

――新美さんをはじめ、随所に様々な関係者の思いが反映された作品になりそうですね。

新美 バレエをはじめ舞台は人間だけの娯楽だと思います。だからこそ役者やダンサーはそこに魂を込めているし、私も真剣に向き合います。共同制作という思いで、踊り手の気づかないところに対し、私が意見を出すというような形で当たっています。

この『海賊』はこれまでバレエをあまり見たことのない人の、バレエのイメージを変える作品になると思います。新しい顧客を開拓するには、古いものばかりでは難しいと思うのです。とくに若い人は新しいものを見て「こんなものがあるんだ。もっと知りたい」と思ったうえで、古典を見るのではないでしょうか。

――演劇で言えば最初からシェイクスピアを見せるのではなく、親しみやすい劇団から、ということですね。貴重なご意見です。ありがとうございました。

◆男が童心に帰る、剣術リハーサル

インタビュー後、実際に剣術シーンの稽古場を見学した。この日行われていたのは、コンラッドとザイードとの決闘シーンだ。

まず音楽なしでリハーサルが行われ、新美氏は「コンラッドはそこで身体を反り返らせたほうが、リアリティが出る」など、動きやアクションの見栄えなどにアドバイス。剣のみならず、殴る、蹴るが加わっている。

動きの確認だけなら舞台の殺陣の稽古だが、いざ音楽とともにダンサーが動き始めると、それは途端、バレエとなる。またこの時2組のキャストがリハーサルに当たっていたが、確かに2人のコンラッド、2人のザイードはそれぞれに間や距離の取り方が微妙に違う。ダンサー自身が剣術の振りとともに個々の役作りに当たっている様子がうかがえ、新美氏の言う「可動域」「自由裁量」の意味を思い出した。

また宝満が「(剣術は)楽しい」と話した通り、剣を持ち打ち合うダンサーたちの目は真剣ながらも、やはり楽しそうで非常にいい空気が感じられる。

コンラッドとザイードが決闘のリハーサルを繰り返している間、新美氏は海賊たちのリハーサルにも当たる。説明を聴きながらポーズを取る鉄砲隊の目が、こちらもまた子供のようにキラキラとしていたのが実に印象的だった。

振り付けとともにザイード役にも意欲を燃やす若き振付家にしてダンサーの宝満と、バレエに新たな可能性を提示する新美の西洋剣術のエッセンス。様々な才と知恵が創り上げたNBAバレエ団『海賊』は、必見の舞台になる。ぜひバレエに縁のない知人も誘って、出かけてほしい。

※文章中一部敬称略

取材・文=西原朋未

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