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鈴木舞(ヴァイオリン)&加藤大樹(ピアノ)によるドイツ&ポーランドの香り漂うコンサート

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.12.24 ライブレポート

リビングでくつろぎながら音楽を楽しむ日曜のひととき『サンデー・ブランチ・クラシック』。年の瀬も押し迫ったクリスマスイブ、12月24日に登場したのは鈴木舞(ヴァイオリン)&加藤大樹(ピアノ)だ。

鈴木はすでに本イベントではお馴染みの音楽家。今回は加藤と初めて組んでのコンサートである。現在ミュンヘンに拠点を置きながら活動する鈴木と、パデレフスキ国際ピアノコンクールを通してポーランドに縁のある加藤。曲目もモーツァルトやブラームスといったドイツ・オーストリアと、シマノフスキ、パデレフスキというポーランドゆかりの音楽家のものが取り上げられ、どことなく異国情緒漂う、中央ヨーロッパの風が吹き抜けるような演奏が繰り広げられた。

鈴木舞

鈴木舞

加藤大樹

加藤大樹

心に響く第一音

時間となり赤いドレスの鈴木と、黒のジャケットに身を包んだ加藤が登場する。1曲目はモーツァルトの「ヴァイオリン・ソナタ K.305」の第1楽章だ。演奏前に鈴木が「モーツァルトの故郷、ザルツブルクは空港の名前もヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト空港。町中全体がモーツァルトを応援し、愛している」と語り、作曲家の故郷に誘う。

そして奏でられる鈴木の第一音がズン!と、身体中に深く響いてくる。「外見とギャップがあるとよく言われるんです(笑)」と鈴木本人が語るように、その音色はソフトな外見とはまったく違う、骨太で芯のしっかりした、それでいてまろやかに心に深く訴えてくる。

「この曲はモーツァルトがマンハイムに立ち寄った際にソプラノ歌手に恋をした、幸せ溢れる喜びが感じられる」と鈴木が語ったように、音色は次第につややかな輝きを放ち広がっていく。

次いで2曲目はシューマン「ヴァイオリン・ソナタ 第2番ニ短調 Op.121」より第1楽章。「シューマンが晩年、心を病んでいた頃に書かれた曲だが、不安や悲しみの間に思い出がキラキラと垣間見える」と鈴木。心のなかでぐるぐると渦を巻くような不安ややるせなさを訴え、ともすればメロディが激流のように迫ってくる。しかし鈴木の演奏はしっかりと地に足がつき、決して流されないというような確たる芯のようなものが感じられた。

続いて3曲目はブラームス「ハンガリー舞曲集 第1番 ト短調」。普段はピアノで演奏される機会の多い曲だがこの日はヨアヒムによるヴァイオリンとピアノに編曲されたものだ。ヨアヒムの門下生であるアウアーの弟子がハイフェッツ、その弟子である清水高師に鈴木は学んでいて「思い出深い曲」だという。 会場はハンガリー舞曲らしい、またブラームスらしい哀愁と情熱を帯びた音色に包まれた。

ポーランドの独立に情熱を傾けた音楽家パデレフスキ

4曲目に入る前に加藤が「今日は私たちには一つのミッションがあります。それは来ていただいたみなさまに“パデレフスキ”という音楽家を知っていただくということです」と話す。

イグナツィ・パデレフスキ(1860年~1941年)はポーランドのピアニストにして作曲家。「当時は今でいうマイケル・ジャクソンやレディ・ガガ並みに有名なピアニスト」で、ヨーロッパやアメリカなど各地で演奏活動を行う傍ら、そこで得た出演料等を当時ロシア帝国下にあった祖国ポーランドの独立運動に投げうった活動家でもあった。そして第一次大戦後にポーランドが独立した際、首相に選出されるという「闘うピアニストであり音楽家」だ。

加藤大樹

加藤大樹

演奏された曲は、まず同じくポーランドの作曲家シマノフスキ『ロマンス ニ長調 Op. 23』。ヴァイオリンとピアノがまるでロマンティックな男女の語らいのような、どこか大人の雰囲気を漂わせる。最後のヴァイオリンの高音が官能的な味わいとともに静かに響き、消えていく。

そして5曲目がパデレフスキ作曲による「ヴァイオリン・ソナタ イ短調 Op.13」より第3楽章。スーパースター・ピアニストとして、また政治家としても活躍したパデレフスキだが、20歳の時に結婚するもすぐに妻に先立たれたという不孝にも見舞われている。加藤のピアノは祖国独立と音楽に情熱を傾ける疾走感、鈴木のヴァイオリンは悲しみを乗り越え、自らを奮い立たせ希望を見出そうとするような感情か。この2人の音色が重なりパデレフスキの駆け抜けた人生が描き出されるかのようだった。

鈴木舞

鈴木舞

演奏後、プチプライズとして鈴木がミュンヘンのクリスマスマーケットで購入してきたクリスマス・グッズの当たるじゃんけん大会が行われ、会場は盛り上がる。そしてアンコールにドヴォルザーク「我が母の教えたまいし歌」が演奏され、コンサートは幕を閉じた。

ポーランドのコンクールが縁。メジャーな曲と珍しい曲を

演奏後、鈴木と加藤の2人にお話を伺った。

――素敵な演奏をありがとうございました。鈴木さんはもう何回も出演されていますが、今日のお客様はいかがでしたか?

鈴木:毎回お客さんの雰囲気が違いますね。今日はアットホームな感じでした。ここはお客様の顔が見えて距離が近く感じ、音楽を手渡ししていような空間だなと思います。

――2人で組んだのは今日が初めてということでしたが、今日の選曲はどのようにして決めたのでしょう。

鈴木:メインはポーランドの作曲家パデレフスキです。この2人が珍しい作曲家でもあるので、そのほかは聴きやすいシューマンやブラームス、モーツァルトなどを選びました。

――「パデレフスキを覚えて帰ってください」というミッションがありましたが、なぜでしょう。

加藤:私は4年前にポーランドのパデレフスキ国際コンクールに出場し、それをきっかけにパデレフスキの作品をレパートリーの一つとするようにしてきました。この作曲家はピアノソロの小作品が多いのですが、今回は鈴木さんと共演ということで、ヴァイオリン・ソナタをやってみたいと思ったんです。パデレフスキ自体が、ヴァイオリン、ピアノいずれの演奏家にとってもメジャーとは言い難いのですが、若い情熱があり、ロマンチシズムもあり、非常に美しい作品ですので、それを誰かが弾いていくことで知っていただき、また誰かが弾くといったように広まっていけばいいなと。

――鈴木さんはパデレフスキを演奏したことは?

鈴木:日本にパデレフスキ協会があり、そこの方にヴァイオリン・ソナタがあると教えていただきました。また動画サイトにも音源があって興味を持ち楽譜を見たら、いい演奏ができそうだと思ったんです。演奏している方が少ないので、取り組んでみたいとも思いました。

――鈴木さんは現在ミュンヘンに拠点を置かれていますね。前回出されたCDはフランスの曲でまとめられていましたが、勉強する場所というのは音楽に影響が出てくるものなのでしょうか。

鈴木:全然違いますね! 私はずっとフランスが好きでフランス音楽をやってきました。小学校の時に学校の授業にフランス語があったこともあり、フランス語の雰囲気は身体に入っており、最初に留学したローザンヌはフランス語圏なのでフランス人が多く、フランス文化にどっぷり浸りました。

その後、今度はドイツのレパートリーを勉強しようと思いミュンヘンに移ったのですが、音楽も全然違うんです。 求められている音色も奏法も違い、同じ曲を一つ取ってもフランスとドイツでは解釈がまるで違う。ドイツは論理的に、フランスはイマジネーションやフィーリングを大事にする感じというのでしょうか。まったく知らない言葉を一から勉強するような感じでした。ドイツ音楽ってこういう風に弾いてこういう風に解釈していくんだという、本当にひとつひとつ新しいことを学んでいる感じです。

――加藤さんはパデレフスキ国際ピアノコンクールで3位入賞とうかがっています。ポーランドと音楽について少しお話を聞かせていただけますか。

加藤:ポーランドは非常に難しい国で、2018年で独立100周年を迎えます。それまでは何百年も他国に支配されていたため、ポーランド人の魂というのは彼等にとっては特別大切なものなんです。音楽でいうと、パデレフスキ、シマノフスキにショパンのほか、有名な作曲家としてショパンを生んでいます。またポーランド出身の素晴らしい音楽家もたくさんいて、ポーランド独自の音楽文化を持っているとともに、彼らがヨーロッパの音楽に深く精通していることを感じます。私は今は日本に拠点を置いていますが、しばしば海外に行く機会があるので、そういう時にいろいろ吸収してこようと思っています。

――国やその土地の雰囲気は書かれた曲に深く影響を与え、またそうした空気が演奏に生かされ、おふたりそれぞれご自身の音楽の糧にされているということですね。ありがとうございました。

加藤大樹(ピアノ)、鈴木舞(ヴァイオリン)

加藤大樹(ピアノ)、鈴木舞(ヴァイオリン)

取材・文=西原朋未 撮影=岩間辰徳

公演情報
鈴木 舞
トリトン・アーツ・ネットワーク
雄大と行く昼の音楽さんぽ(お話し付き/90分休憩なし)

日時:5月15日(火)11:00~
会場:第一生命ホール
出演:鈴木舞(ヴァイオリン)、實川風(ピアノ)、山野雄大(音楽ライター)

加藤大樹
MIN-ON クラシック・プレミアム ベートーヴェン「英雄」「皇帝」
日時:3月1日 (木) 19:00~
会場:横浜みなとみらい大ホール
指揮:田中祐子
演奏:加藤大樹(ピアノ)、神奈川フィルハーモニー管弦楽団
曲目:ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」Op.55、ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」Op.73
モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲 K.49

 

サンデー・ブランチ・クラシック情報
2月18日(日)
土岐祐奈/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

2月25日(日)

滝千春/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月4日(日)

藤井香織/フルート&藤井裕子/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月11日(日)

あいのね/フルート、ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月18日(日)

但馬有紀美/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月25日(日)

太田糸音/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

4月8日(日)

寺下真理子/ヴァイオリン&SUGURU​/(from TSUKEMEN)ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

『犬神家の一族』スケキヨがあなたの部屋に 『角川映画 シネマ・コンサート』オリジナルポスタープレゼントキャンペーンがスタート

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4月13日(金)、14日(土)に東京国際フォーラム ホールAで開催される『角川映画 シネマ・コンサート』から、オリジナルポスターがもらえるプレゼントキャンペーンがスタートした。

『角川映画 シネマ・コンサート』は、オーケストラの生演奏と角川映画の名場面の上映、ゲスト・ボーカルのパフォーマンスで構成されるコンサート。角川映画の第1作にしてミステリー映画の金字塔となった横溝正史原作・市川崑監督の『犬神家の一族』(76)や、森村誠一原作・佐藤純彌監督『人間の証明』(77)、『野性の証明』(78)の3作品がラインナップ。当日は、3作品の劇伴を手がけた大野雄二氏が、総勢50人のスペシャルオーケストラバンド・大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラとともに演奏。松崎しげる、ダイアモンド☆ユカイらの出演が予定されている。

『犬神家の一族』

『犬神家の一族』

『人間の証明』

『人間の証明』

『野生の証明』

『野生の証明』

本日2月14日(水)から、同コンサートのTwitterアカウントにて、『犬神家の一族』の名物キャラクターである“スケキヨ”をフィーチャーしたオリジナルポスターをプレゼントするキャンペーンが始まっている。Twitter公式アカウント(@KadokawaConcert)をフォローし、該当ツイートをリツイートすると、非売品の公演オリジナルポスター(B2)が抽選で10名に贈呈されるというものだ。スケキヨを自宅に迎えたい方は応募してみてはいかがだろう。

『角川映画 シネマ・コンサート』オリジナルポスター

『角川映画 シネマ・コンサート』オリジナルポスター


 
キャンペーン情報
『角川映画 シネマ・コンサート』公式Twitter ポスタープレゼントキャンペーン
キャンペーン期間:2月14日正午~2月19日
プレゼント内容:公演オリジナルポスター(B2)
■STEP1
公式Twitterアカウント(@KadokawaConcert)をフォロー。
■STEP2
14日正午に公式Twitterアカウント(@KadokawaConcert)より
投稿されるTweetをキャンペーン期間内にリツイート(RT)するだけで応募完了!
 ご応募頂いた方の中から抽選で10名様に、「公演オリジナルポスター(B2)」をプレゼントいたします。当選された方には、Twitter公式アカウント(@KadokawaConcert) より、TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)にてご連絡致します。
※2018年2月20日以降に当選連絡、2018年2月26日以降にプレゼントの発送を予定しています。
 
<注意事項>
・ご自身のアカウント設定を“公開”にした状態でご参加ください。アカウントが非公開の場合は参加とみなされません。
・Twitter公式アカウント(@KadokawaConcert)へのフォローが解除されている場合、当選後のDMの送信ができないため、当選無効とさせていただきます。
・すでにフォロー済みの方もご参加いただけます。
・賞品のお届け先、他必要事項をご返信いただけない場合は、当選無効とさせていただきますのでご注意ください。なお、ご連絡方法はDMに限らせていただきます。
・頂いた個人情報は、賞品プレゼント発送以外の目的では使用致しません。
・Twitterアカウントをお持ちでない方は、Twitterサイトにてアカウントを作成の上ご参加ください。
 
イベント情報
角川映画 シネマ・コンサート
日時:2018年4月13日(金) [開場]18:00 [開演]19:00
    2018年4月14日(土) [開場]13:00 [開演]14:00
会場:東京国際フォーラム ホールA
上映作品:
『犬神家の一族』(1976)
『人間の証明』(1977)
『野性の証明』(1978)
 
【出演者】
演奏:大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ 大野雄二(音楽監督・Piano,Keyboard)
市原 康(Drums) / ミッチー長岡(Bass) / 松島啓之(Trumpet)/鈴木央紹(Sax) / 和泉聡志(Guitar) /宮川純(Organ)/佐々木久美(Vocal、Chorus)/ Lyn(Vocal、Chorus)/ 佐々木詩織(Vocal、Chorus)/ MiMi(Hammered Dulcimer)他
 
トークゲスト:石坂浩二
ゲスト・ボーカル:松崎しげる ダイアモンド☆ユカイ        
 
特別開催:『角川映画ギャラリー』東京国際フォーラム ホールA会場内ロビー
角川映画に関する貴重な資料等、多数展示。公開当時のポスター、チラシ、台本、市川崑監督ゆかりの品々を展示。フォトスポット「スケキヨ像」を設置(予定)。
 
料金:全席指定 9,800円(税込)※未就学児入場不可
 

主催:KADOKAWA / BS朝日 / ディスクガレージ / 朝日新聞社 / TOKYO FM
協力:オフィスオーガスタ / バンドワゴン / ユーキース・エンタテインメント
企画・制作:KADOKAWA / BS朝日 / ディスクガレージ / PROMAX / 朝日新聞社
 
問合せ:ディスクガレージ 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)
角川映画 シネマ・コンサート 公式サイト:http://kadokawaeiga-concert.com/
角川映画 シネマ・コンサート 公式Twitter:https://twitter.com/KadokawaConcert

大阪交響楽団創立38年目のシーズンを目前に、赤穂正秀事務局長に聞く!

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1980年の創立から38年目を迎える大阪交響楽団。栄えある40周年を目前に、楽団運営にもスピード感が増してきたように思われる。大和ハウスをはじめとする理事会社の強固なバックアップ体制の下、2018年度中には公益社団法人化に向けた動きにも目処が立ったようだ。それにしてもここ数年、楽団を上げての経営再建に向けた努力は、端で見ていても凄まじいものを感じた。そんな中で発表された来年度自主公演のラインナップはとても意欲的なプログラムが並ぶ。

同楽団の事務局長である赤穂正秀にあんな事やこんな事を聞いてみた。

--来年度は定期演奏会が11回に増えるそうですね。

赤穂事務局長 はい。おかげさまで観客数も増えていますので、強気に8回から11回へと増やしました(笑)。いずみホール定期演奏会は、会場となるいずみホールが改修工事で4月から半年クローズしますが、下半期だけで今年と同様の3回6公演をキープします。名曲コンサートも今年度同様、5回10公演を実施します。

--法人会員の数も飛躍的に増えているように見受けられますが、課題にされていた公益社団法人化はどのような状況ですか。

赤穂 来年度中、夏ごろを目処に行けるのではと思っています。組織体制が変われば、心機一転気持ちも新たに頑張ってまいります。

--来年度の定期演奏会の聴き所を教えてください。
ミュージック・アドバイザーとして3年目のシーズンを迎える外山雄三 (c)飯島隆

ミュージック・アドバイザーとして3年目のシーズンを迎える外山雄三 (c)飯島隆

赤穂 11公演の内、ミュージック・アドバイザーの外山雄三氏と常任指揮者の寺岡清高氏にはそれぞれ2公演ずつを指揮していただきます。外山氏には第223回定期で堤剛氏を招いてドヴォルザークのチェロ協奏曲とチャイコフスキーの交響曲第5番、第226回定期では、いよいよ外山氏自作の新作交響曲を世界で初めて演奏します。

来シーズンで常任指揮者を退任する寺岡清高 (C)木村護

来シーズンで常任指揮者を退任する寺岡清高 (C)木村護

一方、寺岡清高氏は15年続いた楽団とのラストイヤーとなります。お馴染みの「ウィーン世紀末のルーツ」シリーズもこれが最後。シュレーカー、コルンゴルト、シェーンベルクといった如何にもな第217回定期。そして1月の第225回定期では、このシリーズを締めくくるに相応しい大曲マーラーの交響曲第3番を指揮していただきます。

--他の定期演奏会はどんな指揮者が振られるのでしょうか。

赤穂 残りの7公演を、8年振りのユベール・スダーン氏や2015年ブザンソン国際指揮者コンクールの覇者ジョナサン・ヘイワード氏、川瀬賢太郎氏、沼尻竜典氏、延原武春氏、他といった、バラエティに富んだ指揮者陣でお届けし致します。

若手ナンバーワンの呼び声も高い指揮者 川瀬賢太郎 (c)Yoshinori Kurosawa

若手ナンバーワンの呼び声も高い指揮者 川瀬賢太郎 (c)Yoshinori Kurosawa

オススメですか?すべてオススメですが(笑)、第220回定期の川瀬賢太郎氏には、R・シュトラウスの楽劇「ばらの騎士」より自ら抜粋した曲を指揮していただきます。若手ナンバー1の呼び声の高い指揮者だけに楽しみです。

(C)Jeremy Ayres Fischer

(C)Jeremy Ayres Fischer

第222回定期に登場するブザンソンの覇者ジョナサン・ヘイワード氏は、アニバーサリーイヤーのバーンスタインの交響曲第2番「不安の時代」を前プロに、ショスタコーヴィチ交響曲第5番「革命」という贅沢なプログラムで初登場です。

初登場と言えば、定期演奏会に初登場となる沼尻竜典氏もハイドンの第101番「時計」とブルッフ第3番というダブルシンフォニーを引っさげてシーズンを締めくくる第227回定期に登場!こちらも楽しみです。

--なかなか挑戦的なプログラムですね。いずみホール定期演奏会も名曲コンサートも、当たり前のように昼夜2回公演。これ、他のオーケストラではなかなか出来ないワザですね。外山先生も2回指揮されるんですよね。

赤穂 はい。うちでは当たり前ですが、他では難しいのかも知れませんね。外山氏はまだまだお若いですよ。いずみホール定期では、ベートーヴェンの交響曲第4番、第5番「運命」を昼夜2回指揮していただきます(笑)。

海外で活躍中の若手指揮者を次々聴き比べられるという意味でも、名曲コンサートはお客さまにとっても嬉しい出会いの場ではないでしょうか。

人気と実力を兼ね備えたヴァイオリニスト大谷康子 (C)Masashige Ogata

人気と実力を兼ね備えたヴァイオリニスト大谷康子 (C)Masashige Ogata

外山氏のロシアプログラム、ヴァイオリニスト大谷康子氏を招き、シンシナティ交響楽団のアソシエイト・コンダクター原田慶太楼氏の指揮でお届けするドイツヴァイオリン協奏曲プログラム、そしてアニバーサリーイヤーのロッシーニプログラムを指揮するのは、「ロッシーニの大家」アルベルト・ゼッダに師事する園田隆一郎氏。テーマに沿った名曲の数々をお楽しみください。

--ミュージック・アドバイザーに外山雄三氏を迎えた事で、大阪交響楽団の音が変わったと言う声をよく耳にします。ベートーヴェンやブラームスで厳しいリハーサルが行われている事は容易に想像出来ますが、そろそろ音楽監督や首席指揮者と言った楽団のシェフの話題が気になる所です。そのあたりはいかがでしょうか。

赤穂 はい、現在検討中ですが、もう少し時間がかかりそうです。今しばらくお待ちいただければと…。

--2019年秋には本拠地堺市に客席数2000席を誇るフェニーチェ堺が誕生します。堺の街のオーケストラを標榜して来た大阪交響楽団にとっては好機到来!と言えるのではないでしょうか。

赤穂 現在、ホールを管理する財団や堺市と話し合っているところです。これまでの実績などを見ていただいていると思うので、良い回答をいただけると信じています。

--最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。

赤穂 飛躍し続ける大阪交響楽団の音楽を肌で感じ取ってください。皆さまのご来場を心よりお待ち致しております。

2018年度中の公益社団法人化を目指す大阪交響楽団 (c)飯島隆

2018年度中の公益社団法人化を目指す大阪交響楽団 (c)飯島隆

取材・文=磯島浩彰

公演情報
大阪交響楽団定期演奏会
 
第217回定期演奏会
ウィーン世紀末のルーツ~フックスとブラームスから始まる系譜(5)
■日時:4月27日(金)19時開演 (18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:寺岡清高
独奏:クリストファー・ヒンターフーバー(ピアノ)
曲目:
シュレーカー:弦楽のための間奏曲
コルンゴルト:左手のためのピアノ協奏曲 嬰ハ調
シェーンベルク:
交響詩「ペレアスとメリザンド」(シュタイン編)
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第218回定期演奏会
日時:6月1日(金)19時開演 (18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:カーチュン・ウォン
曲目:
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「プルチネルラ」
ラフマニノフ:交響曲 第2番
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第219回定期演奏会
日時:6月29日(金)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:エルンスト・タイス
独奏:小川典子(ピアノ)
曲目:
シェーンベルク:浄められた夜
R.シュトラウス:
ピアノと管弦楽のための「ブルレスケ」
シューベルト:交響曲 第5番
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第220回定期演奏会
日時:7月20日(金)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指 揮 : 川瀬賢太郎
独唱:木澤佐江子(ソプラノ)、上村智恵(ソプラノ)、
    北野加織(ソプラノ)、黒田まさき(バリトン)
曲目:
モ-ツァルト:交響曲 ニ長調 k.320
(セレナード 第9番『ポストホルン』の交響曲稿)
R.シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」より 抜粋
料金:
S席6500円、A席5500円、B席4000円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第221回定期演奏会
日時:9月21日(金)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:延原武春
独唱:福原寿美枝(アルト)
曲目:
シューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」序曲
シューベルト:水の上の精霊の歌
ブラームス:アルト・ラプソディ
シューマン:交響曲 第3番 「ライン」
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第222回定期演奏会
~バーンスタイン生誕100年記念~
日時:10月11日(木)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:ジョナサン・ヘイワード
独奏:アンドリュー・タイソン(ピアノ)
曲目:
バ-ンスタイン:スラヴァ!(政治的序曲)
バ-ンスタイン:交響曲 第2番「不安の時代」
ショスタコヴィチ:交響曲 第5番「革命」
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第223回定期演奏会
日時:11月2日(金)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:外山雄三
独奏:堤剛(チェロ)
曲目:
ドヴォルザ-ク:チェロ協奏曲 ロ短調
チャイコフスキ-:交響曲 第5番
料金:
S席6500円、A席5500円、B席4000円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第224回定期演奏会
日時:12月13日(木)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:ユベール・スダーン
独奏:郷古廉(ヴァイオリン)
曲目:
モーツァルト:フリーメイソンのための葬送音楽
ベルク:ヴァイオリン協奏曲 (ある天使の思い出に)
シューベルト:交響曲 第2番
料金:
S席6500円、A席5500円、B席4000円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第225回定期演奏会
ウィーン世紀末のルーツ~フックスとブラームスから始まる系譜(6)
日時:2019年1月10日(木)19時開演 (18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:寺岡清高
独唱:福原寿美枝(アルト)
女声合唱:関西二期会合唱団/大阪響コーラス
児童合唱:未定
合唱指揮:中村貴志
曲目:
マーラー:交響曲 第3番
料金:
S席6500円、A席5500円、B席4000円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第226回定期演奏会
日時:2019年2月28日(木)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:外山雄三
曲目:
モーツァルト:歌劇「後宮からの逃走」序曲
ベートーヴェン:交響曲 第1番
外山雄三:交響曲(世界初演)
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第227回定期演奏会
日時:2019年3月15日(金)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:沼尻竜典
曲目:
ハイドン:交響曲 第101番「時計」
ブルッフ:交響曲 第3番
料金:
S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
オルガン席2000円
青少年学生券1回券1000円、5回券4000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。

いずみホール定期演奏会

第31回いずみホール定期演奏会
日時:10月17日(水)
<昼の部>14時半開演(14時開場)
<夜の部>19時開演(18時半開場) 
会場:いずみホール
指揮:太田弦
独奏:チャン・ユジン(ヴァイオリン)
曲目:
チャイコフスキ-:ヴァイオリン協奏曲
シベリウス:交響曲 第2番

料金
S席4000円、A席2500円、B席1500円 <昼の部><夜の部>共通
※B席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
青少年学生券 <昼の部><夜の部>とも 1000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第32回いずみホール定期演奏会
日時:11月21日(水)
<昼の部>14時半開演(14時開場)
<夜の部>19時開演(18時半開場)
会場:いずみホール
指揮:外山雄三
曲目:
ベートーヴェン:交響曲 第4番
ベートーヴェン:交響曲 第5番「運命」
料金
S席4000円、A席2500円、B席1500円 <昼の部><夜の部>共通
※B席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
青少年学生券 <昼の部><夜の部>とも 1000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。
 
第33回いずみホール定期演奏会
日時:2019年3月6日(水)
<昼の部>14時半開演(14時開場)
<夜の部>19時開演(18時半開場)
会場:いずみホール
指揮:寺岡清高
独唱:熊谷綾乃(ソプラノ)
曲目:
モ-ツァルト
:歌劇「フィガロの結婚」序曲
:演奏会用アリア「大いなる魂と高貴な心は」
:演奏会用アリア
「誰が知っているでしょう、私の愛しい人の苦しみを」
:6つのドイツ舞曲 K.567より第1番 、第2番
:演奏会用アリア「アルカンドロよ、わたしはそれを告白する
    ~わたしは知らぬ、どこからやってくるのか」
:シュ-ベルト:交響曲 第8(9)番 「グレイト」
料金
S席4000円、A席2500円、B席1500円 <昼の部><夜の部>共通
※B席は、楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
青少年学生券 <昼の部><夜の部>とも 1000円
※青少年学生券は楽団のみ取り扱い。

名曲コンサート
 
第101回名曲コンサート
オ―ストリア・モーツァルトの系譜

日時:5月19日(土)<昼の部>13時半開演(12時半開場)
          <夜の部>17時開演 (16時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮&ピアノ:高橋直史
曲目:              
モ-ツァルト:
ピアノ協奏曲 第9番「ジュノム」
モ-ツァルト:
セレナ-ド 第6番「セレナータ・ノットゥルナ」
モ-ツァルト:
交響曲 第36番「リンツ」
料金:S席3500円、A席3000円、B席1500円
※B席は楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
 
第102回名曲コンサート
ロシア・ロマン派音楽の系譜Vol.2

日時:7月7日(土)<昼の部>13時半開演(12時半開場)
         <夜の部>17時開演 (16時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:外山雄三
曲目:
チャイコフスキ-:歌劇「エフゲニー・オネ-ギン」より“ポロネ-ズ”
ムソルグスキー/リムスキー=コルサコフ編:
交響詩「はげ山の一夜」
リムスキー=コルサコフ:歌劇「サルタン皇帝」より”熊蜂の飛行”
ボロディン:歌劇「イーゴリ公」より”だったん人の踊り”
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」
料金:S席3500円、A席3000円、B席1500円
※B席は楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
 
第103回名曲コンサート 
イギリス・東欧の系譜

日時:8月25日(土)
<昼の部>13時半開演(12時半開場)
<夜の部>17時開演 (16時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:小林資典
独奏: 長富彩(ピアノ)
曲目:
スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
ドヴォルザーク:交響曲 第8番
料金:S席3500円、A席3000円、B席1500円
※B席は楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
 
第104回名曲コンサート 
ドイツ・ヴァイオリン協奏曲の系譜

日時:9月29日(土)
<昼の部>13時半開演(12時半開場)
<夜の部>17時開演 (16時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:原田慶太楼
独奏:大谷康子(ヴァイオリン)
曲目: 
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調
(合奏協奏曲集「調和の霊感」より 第6番)
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
料金:S席3500円、A席3000円、B席1500円
※B席は楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。
 
第105回名曲コンサート 
イタリア・オペラの系譜 ~ロッシーニ没後150年~

日時:11月11日(日)
<昼の部>13時半開演(12時半開場)
<夜の部>17時開演 (16時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮:園田隆一郎 
独唱:光岡暁恵(ソプラノ)、小堀勇介(テノール)、山本康寛(テノール)、
曲目:
<オール・ロッシーニ・プログラム>
歌劇「チェネレントラ」序曲
歌劇「セヴィリアの理髪師」より “もう逆らうのをやめろ”(小堀)
歌劇「ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)」より パ・ドゥ・シス
歌劇「ランスへの旅」より “私は出発したいのです”(光岡)
歌劇「ウィリアム・テル (ギヨーム・テル)」序曲
歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
歌劇「オテッロ」より “ああ、なぜ私の苦しみに” (山本)
歌劇「アルミ-ダ」よりバレエ音楽
歌劇「オテッロ」より 三重唱 “さあ来い、お前の血に復讐を”  
料金:S席3500円、A席3000円、B席1500円
※B席は楽団WEB前売限定。当日券の販売は無し。

特別演奏会

「感動の第九」
日時:12月27日(木)19時開演(18時開場)
会場:ザ・シンフォニーホール
指揮: シズオ・Z・クワハラ
独奏:弓張美季(ピアノ)
独唱:木澤佐江子(ソプラノ)、山田愛子(アルト)
   二塚直紀(テノール)、萩原寛明(バリトン)
合唱:はばたけ堺!合唱団、大阪交響楽団感動の第九特別合唱団2018
曲目:
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第20番
ベートーヴェン:交響曲 第9番「合唱付き」
料金:S席6000円、A席5000円、B席3500円、C席2500円、D席1000円
※D席は楽団WEB前売限定
オルガン席2000円、青少年学生券1000円
※青少年学生券は、25歳までの学生・当日座席引換。楽団のみ取り扱い。

公式サイト:http://sym.jp

3月は香港に行こう! アートイベントが集中する「香港アートマンス」では、ローカル地区の味わい深いアートも必見

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香港の3月は、各地でアートイベントが行われ、芸術に触れるのに最適な1ヵ月間となる。このアートに満ちた「香港アートマンス」では、国際的にレベルの高いアートイベント、世界各国の舞台芸術プログラム、地元のコミュニティによるユニークなアートなど、様々な芸術が香港に集結する。

国際的なアートイベントの数々が香港で開催

アメリカン・バレエ・シアターの「ホイップクリーム」  (c)Gene Schiavone

アメリカン・バレエ・シアターの「ホイップクリーム」 (c)Gene Schiavone

「香港アートマンス」のキックオフイベントとなるのは、2月23日(金)から始まる『香港藝術節(Hong Kong Arts Festival (HKAF))』だ。今年で46回目を迎えるHKAFでは、3月24日(土)までの約1ヵ月、香港内外から1,700人を超えるアーティストが130公演を行う。

今年は、アメリカン・バレエ・シアターの『ホイップクリーム』、英国国立劇場の『夜中に犬に起こった奇妙な事件』、ウェールズ・ナショナル・オペラによるドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』といった有名作品の公演が予定されている。

公式サイト:https://www.hk.artsfestival.org/en/

また、3月27日(火)から4月1日(日)までは、『アート・セントラル香港』が、香港島・セントラルのハーバーフロント・イベントスペースで行われる。今年で4回目を迎える本イベントでは、初参加の30ギャラリーを含む100以上の海外ギャラリーが参加。そのうち、75%以上がアジアパシフィックからの参加となり、過去最大のスケールでインタラクティブ展示、パフォーマンス、パネルディスカッションを含む様々なイベントが開催される。

公式サイト:http://artcentralhongkong.com/

「第5回アート・バーゼル香港」(2017)の様子  (c)Art Basel

「第5回アート・バーゼル香港」(2017)の様子 (c)Art Basel

さらに、世界的に有名な国際アートフェア『第6回アート・バーゼル香港』が、3月29日(木)から3月31日(土)まで、香港コンベンション&エキシビションセンターで行われる。32の国と地域から248のギャラリーが参加、そのうち28ギャラリーは、アジアパシフィック、ヨーロッパおよびアメリカからの初参加。20世紀前半の近代美術の傑作から最新の現代美術まで、ベテランおよび新進気鋭のアーティストによる作品を紹介する。

公式サイト:https://www.artbasel.com/hong-kong

ローカル地区の味わい深いアート

「HK Urban Canvas」

「HK Urban Canvas」

「HK Urban Canvas」

「HK Urban Canvas」

下町情緒が漂うローカルな街で行われる本格的で刺激的なアートイベントは、まさに宝の山。香港で最も歴史ある街のひとつである九龍の深水埗(シャムスイポー)は、今回の「香港アートマンス」の注目すべき場所のひとつだ。香港青年藝術協会の主催するコミュニティアートプロジェクト「HK Urban Canvas」は、地元の有能なアーティストや学生が協力し、深水埗とその近隣にある各商店のシャッターに、店の歴史を物語るような10のアートを制作。3月下旬から4月上旬の週末には、そのアートや地域をめぐる無料のガイドツアー(中国語)が開催される。

Pekin Fine Arts (Hong Kong) Aniwar Mamat

Pekin Fine Arts (Hong Kong) Aniwar Mamat

Longmen Art Projects

Longmen Art Projects

また、「第6回アート・バーゼル香港」に訪れたら、黄竹坑(ウォンチュクハン)のギャラリーホッピングも楽しみたい。黄竹坑を含む香港島の南側は2016年末にMTR南港線が開通したこともあり、香港のアートハブとして発展している。3月29日(木)には、「South Island Art Day」が開催され、本地区の16のアートギャラリーやアートスタジオを解放、様々なエキシビションやパフォーマンスが催される。

Joy Art Club Winnie Davies

Joy Art Club Winnie Davies

そして、新界にある工業ビルの狭間にも、いまだ知られていない今後注目のアート地区、火炭(フォータン)が。2000年以降、地域の家賃が手ごろになり、工業地帯から活気ある芸術的な街へと変貌をとげてきた。陶芸、彫刻、中国書画から現代アートまで、常に興味深い作品を見ることができる。また、3月31日(土)には、「Fotan Open Studios」が開催され、地元のアーティストによるワークショップ等が行われる。

ほかにも、見逃せないイベントが目白押しの「香港アートマンス」。詳細は、香港政府観光局のホームページでチェックしよう。

話題沸騰のメッゾソプラノ、脇園彩が歌うロッシーニのシンデレラ物語『チェネレントラ』

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ロッシーニの『チェネレントラ』がフェスティバルホールで上演される。「チェネレントラ」とはイタリア語で「シンデレラ」のこと。今オペラ界でもっとも注目されているメッゾソプラノ、脇園彩がシンデレラの物語を歌い演じる。しかもそれが大阪だけの出演とあって、東京や海外からも聴きに来るオペラ・ファンがいるという話題の公演である。

大阪芸術大学デザイン学科在学生の金珉志(キム・ミンジ)さんが制作した、「チェネレントラ」フェスティバルホール公演のチラシデザイン

大阪芸術大学デザイン学科在学生の金珉志(キム・ミンジ)さんが制作した、「チェネレントラ」フェスティバルホール公演のチラシデザイン

『セビリャの理髪師』や『ウィリアム・テル(ギヨーム・テル)』序曲で広く知られるロッシーニ。今年は没後150年にあたり、記念の演奏会が数多く開かれている。ロッシーニは近年ブームとなっている作曲家で、『セビリャの理髪師』のようなオペラ・ブッファ(コミカルなオペラ)だけでなく、オペラ・セリアという悲劇的なジャンルの作品も世界的に上演が進んでいる。『チェネレントラ』は『セビリャの理髪師』が発表された翌年、1817年にローマで初演された。コミカルなだけのオペラ・ブッファではなく、主人公のシンデレラ(このオペラの中ではアンジェリーナという名前)とラミーロ王子の間の真摯な愛が描かれた名作となっている。

ジョアキーノ・ロッシーニ

ジョアキーノ・ロッシーニ

ドニゼッティ歌劇場『ラ・ピッコラ・チェネレントラ』より舞台写真 ラミーロ

ドニゼッティ歌劇場『ラ・ピッコラ・チェネレントラ』より舞台写真 ラミーロ

シンデレラといえば魔法使いの助けをかりて舞踏会に行き王子様と恋に落ち、宮殿を立ち去る時に落としたガラスの靴が足にぴったりはまって幸せになる、というストーリーで有名だ。ところがロッシーニはヒロイン役を、もっと強い女性として描いている。義理の父親と姉たちにいじわるされながらもけなげに生きるアンジェリーナは、王子の家庭教師に見出され、従僕に変装した王子と彼の身分を知らないで恋に落ちる。単なるラッキー・ガールではなく、自分自身の心根の優しさとしっかりした性格で、本当に愛する人との人生を勝ち取る娘の話なのだ。

ロッシーニはこの物語に最高の音楽を書いた。胸の高鳴りを示す活き活きとしたリズム。アンジェリーナの歌う旋律の美しさはイタリア・オペラの真髄を示している。そして〈アジリタ〉というロッシーニの音楽を彩る早いパッセージの装飾歌唱。それは恋の輝きを表現する花火が次々に打ちあげられていくようなめくるめく瞬間なのである。

『チェネレントラ』の上演には超絶技巧を持ったロッシーニ歌手が必要だ。そこで登場するのがオペラ界の若きスター、脇園彩である。脇園は東京藝大大学院を卒業するとすぐにイタリアに留学。そこでロッシーニ演奏の最高峰と言われるロッシーニ・オペラ・フェスティバルとミラノ・スカラ座のアカデミーに学び、現在はイタリアを中心に活躍している。今年の夏にはロッシーニ・オペラ・フェスティバル『セビリャの理髪師』にロジーナ役で主演することが決まっている。

脇園 彩  (C)井村重人

脇園 彩 (C)井村重人

2017年のロッシーニ・オペラ・フェスティバル(イタリア、ペーザロ)にて。オペラ「試金石」の主役、クラリーチェを演じる脇園彩 (C)Studio Amati Bacciardi

2017年のロッシーニ・オペラ・フェスティバル(イタリア、ペーザロ)にて。オペラ「試金石」の主役、クラリーチェを演じる脇園彩 (C)Studio Amati Bacciardi

脇園 彩 (メッゾ・ソプラノ)
東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。同大学院修士オペラ専攻修了。在学中に安宅賞、卒業時にアカンサス音楽賞・同声会賞受賞。国際コンクール新しい声 2013 セミファイナリスト。2013年10月より文化庁新進芸術家海外研修員として渡伊、パルマ国立音楽院を経て、ミラノ・スカラ座研修所修了。14年ペーザロにて『ランスへの旅』メリベーア侯爵夫人役でイタリアデビュー。スカラ座には同年11月に『ラ・チェネレントラ』(短縮版)のヒロインでデビューし、翌年『セビリアの理髪師』ロジーナ役でも成功を収めた。以降、ヴェローナやボローニャ他イタリア各地の重要な歌劇場や音楽祭に主要な役で出演。17年には『試金石』のヒロイン役でロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルにデビューを果たした。イタリアを中心に活動しながら、M.デヴィーア、B.M.カゾーニの各氏に師事し研鑽を積む。世界的に重要な指揮者や演出家らからの信頼も厚く、現在最も注目される若手アーティストのひとりである。

 

深く暖かみのあるメッゾソプラノの声は、ロッシーニの超絶技巧を楽々こなす高い技術を持っている。それに加えて脇園の一番の魅力は、舞台の登場人物になり切る能力である。彼女は演劇の俳優を目指していた両親の影響で子どもの頃から舞台や映画に親しみ、ミュージカル女優になるために音大に入学したという。そして学生の時に観たメトロポリタン歌劇場来日公演『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』に感銘を受け、オペラ歌手になることを決心した。

「歌が大好きでしたが、演じることも好きでした。オペラの舞台に立つ時には、その場所に、その役として存在していることが自分の理想なんです。」

脇園 彩 (撮影:狩野常雄)

脇園 彩 (撮影:狩野常雄)

イタリアで出会った恩師たちからは、ロッシーニ歌唱の意味を教わったという。指揮者、研究者、そして教育者として今日のロッシーニ・ブームを生み出したアルベルト・ゼッダはその一人で、昨年惜しくも世を去ったが、脇園の声を見出した重要人物であった。

「ゼッダ先生は〈アジリタ〉という装飾歌唱の技術について、テクニックのひけらかしになってはいけない、といつもおっしゃっていました。なぜその細かい音符、パッセージがあるのか。どんな感情やシチュエーションをロッシーニが描きたかったのかをまず考えなさいと。実はロッシーニが〈アジリタ〉を書いている部分は、悲しさや喜びなどの感情のボルテージがMAXになってしまった時に、それを越えた状態を表現するためにあるんです。ですから歌手はその意図を汲み、テクニックを感情の表出のために使わなくてはいけないんです。」

2017年のロッシーニ・オペラ・フェスティバル(イタリア、ペーザロ)にて。オペラ「試金石」の主役、クラリーチェを演じる脇園彩 (C)Studio Amati Bacciardi

2017年のロッシーニ・オペラ・フェスティバル(イタリア、ペーザロ)にて。オペラ「試金石」の主役、クラリーチェを演じる脇園彩 (C)Studio Amati Bacciardi

ロッシーニの音楽の中で超絶技巧は、テクニックのひけらかしのためではなく、人の心を表現する手段として使われる。今回の『チェネレントラ』では、オペラの最後に脇園が歌う有名なアリア「苦しみと涙のうちに生まれ」でその至芸を聴くことが出来る。

「楽譜に書かれた音楽が、いまそこで生まれているような歌を歌えたら最高だと思います。一流の芸術家たちは、彼ら自身ではなく、その役となって舞台に存在していると思うんです。自分を消すわけではないけれど、自分が前に出るのではなく、音楽や作品がこんなにも素晴らしい、ということを表現するために舞台に立ちたいです。」

脇園 彩 (撮影:狩野常雄)

脇園 彩 (撮影:狩野常雄)

今回の『チェネレントラ』上演は脇園の他にも、ラミーロ王子を歌う小堀勇介、家庭教師アリドーロを歌う伊藤貴之など、ロッシーニの歌唱で高い評価を受けている歌手が勢揃いしている。そしてイタリア・オペラ、特にロッシーニのエキスパートである園田隆一郎の指揮と、イタリアならではの美しい舞台作りに定評があるフランチェスコ・ベッロットの演出。最高の『チェネレントラ』になることは間違いないだろう。

園田隆一郎 (C)Fabio Parenzan

園田隆一郎 (C)Fabio Parenzan

フランチェスコ・ベッロット(演出家)

フランチェスコ・ベッロット(演出家)

取材・文=井内美香

公演情報
第56回大阪国際フェスティバル2018
大阪国際フェスティバル×藤原歌劇団×日本センチェリー交響楽団
ロッシーニ作曲 オペラ『チェネレントラ』

全2幕/原語(イタリア語)上演・日本語字幕付き
※2008年 伊ベルガモ・ドニゼッティ歌劇場"La Piccola Cenerentola"のプロダクション(フル・バージョン改訂)

 
■日時:2018年5月12日(土) 14:00開演(13:00開場)※上演時間約3時間
■会場:フェスティバルホール(大阪府)

 
■台本:ヤーコポ・フェッレッティ
■音楽:ジョアキーノ・ロッシーニ
■指揮:園田隆一郎
■演出:フランチェスコ・ベッロット
■演出補:ピエーラ・ラヴァージオ
■舞台美術:アンジェロ・サーラ
■舞台美術補・衣裳:アルフレード・コルノ
■照明:クラウディオ・シュミット
■管弦楽:日本センチュリー交響楽団
■合唱:藤原歌劇団合唱部
■キャスト:
〈チェネレントラ・灰かぶり娘〉アンジェリーナ:脇園 彩
〈王子〉ラミーロ:小堀 勇介
〈従者〉ダンディーニ:押川 浩士
〈男爵〉ドン・マニフィコ:谷 友博
〈姉〉クロリンダ:光岡 暁恵
〈姉〉ティズベ:米谷 朋子
〈家庭教師〉アリドーロ:伊藤 貴之

 
■チケット料金:
S席12,000円、A席8,000円、B席6,000円、BOX席16,000円、
バルコニーBOX席(2席セット)24,000円 学生席1,000円
母の日チケット(S席ペア券)24,000円/ビュッフェ・コーナーで利用できるご飲食券1,000円×2枚付き(公演当日のみ有効)。
※未就学児童入場不可 
※全席指定・税込
※バルコニーBOX席はフェスティバルホール チケットセンター(電話予約)のみの販売
※母の日チケットはフェスティバルホール チケットセンターの電話予約&窓口販売のみ

※学生席はフェスティバルホール チケットセンターのみの販売(限定100席/25歳以下/学生本人の名前で予約のこと。当日座席指定券と引き換え/要学生証提示)
※やむを得ない事情により曲目、出演者等が一部変更になる場合がございます。
※公演中止の場合を除き、チケットの変更・払い戻しはできません。予めご了承ください。

 
■主催:朝日新聞文化財団、朝日新聞社、大阪国際フェスティバル協会、日本オペラ振興会、
■日本センチュリー交響楽団、フェスティバルホール
■後援:イタリア文化会館-大阪、日本ロッシーニ協会
■協力:大阪芸術大学
■問い合わせ先:フェスティバルホール  06-6231-2236
■公式サイト:http://www.festivalhall.jp

 
【あらすじ】
ドン・マニフィコ男爵の城。クロリンダとティズベの姉妹は、継子のチェネレントラ(灰かぶり娘)ことアンジェリーナをこき使う毎日。城に物乞いの老人(ラミーロ王子の家庭教師アリドーロ。王子の花嫁候補を探すために変装している)が現れると、チェネレントラは食べ物を差し出すが、姉妹は冷たい。ラミーロ王子が従者に変装して登場、チェネレントラと出会い、二人は恋に落ちる。王子に変装した従者ダンディーニが現れ、王子の花嫁選びのため宮殿の舞踏会へ男爵家を招待する。アリドーロは留守番のチェネレントラを宮殿へ送り出す。宮殿に突如現れた美女。だが皆はチェネレントラだと気づかない。チェネレントラは偽王子ダンディ―ニに「従者(実は王子)を愛しています」と告げ、片方の腕輪を渡して立ち去る。物陰でそれを聞いた王子は喜び、チェネレントラを探す。そしてついに二人は……



オペラ『チェネレントラ』満喫講座
■日時:2018年5月12日(土)11:00-12
:15 料金(S席チケット含む):14,000円(消費税込み)
■内容:11:00-11:45講座(見どころ、オペラ制作について)/11:45-12:15バックステージ見学
■会場:フェスティバルホール
■講師:仁科岡彦(公益財団法人日本オペラ振興会・事業部長)
■講座と公演チケット(S席)のセット券を販売します。※申込先着順。定員になり次第締め切り。
・ご予約: 朝日カルチャーセンター中之島(06-6222-5224)
■ホームページ: http://www.asahiculture.jp/
■主催:朝日新聞社、朝日新聞文化財団、朝日カルチャーセンター

「角川映画シネマ・コンサート」大野雄二インタビュー by 高木大地(金属恵比須)

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2018年4月に東京国際フォーラム ホールAにて「角川映画シネマ・コンサート」が開催される。ジャズ・ミュージシャンにして、アニメ『ルパン三世』など数多くの傑作を手掛ける映像音楽の巨匠・大野雄二氏が、特別編成のスペシャル・ジャズ・オーケストラ&バンドを率いて、角川映画初期3作品のハイライト映像と共に生演奏を行うのだ。

かつて日本映画界に旋風を巻き起こした角川映画。その中で大野氏が音楽を担当した初期の3作『犬神家の一族』(1976年)、『人間の証明』(1977年)、『野性の証明』(1978年)の名シーンを特別に編集して上映するのが今回のシネマ・コンサートである。これはもう完全に「金田一さん、事件です!」(『犬神家の一族』のキャッチコピー)と叫ばずにはいられない。しかも二部構成で、一部は『犬神家』、二部は『人間』と『野性』である。これは完全に「お父さん、こわいよ! なにか来るよ」(『野性の証明』のキャッチコピー)と戦慄してしまう。

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

全く別物? 映画音楽とサウンドトラック盤の秘密

まずは大ヒットした角川映画第一作目の『犬神家の一族』サウンドトラック盤について。今までテレビ音楽(CM含む)を手掛けてきた大野氏は『犬神家の一族』の音楽を手掛けるまで映画音楽が未経験だったという。

「当時、角川書店の社長だった角川春樹さんが、自ら映画を製作して、横溝正史さん(『犬神家の一族』の著者。推理小説作家)を盛り上げようとしていた。その時、音楽担当として僕に声をかけてくれたんだ。今まで映画音楽をやっていた人よりも、僕のような未経験者の方がインパクトあると思ったんだろうね」

そのとき、映画製作が未経験だった角川氏だからこそ思いついたアイデアが「メディアミックス」だった。

「映画の封切時に、小説も、サウンドトラック盤も同時に発売するという“三位一体”のメディアミックスを初めて行なったわけ」

これが大ヒットの要因となった。しかし、

「普通、音楽を映画につけるのは、映像の編集が終わった後で、一番最後の工程なんだよ。でも、そうするとアルバムの発売が映画の封切りに間に合わない」

となると、発売用のサウンドトラック・アルバムはどのように作られたのか?

「映画とは別にイメージアルバムとして(映画で使用する音楽とは別に)録音したよ。それが当時は画期的なことだったんだ​」

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

つまり、映画で流れている音とサウンドトラック・アルバムとは全く別物として作られていたのだ。

「もうちょっと叱ってよ!」市川崑監督と佐藤純彌監督の違い

では、実際『犬神家の一族』の映画本編に音をつけるのは、どのような作業だったのか。

「市川崑監督は、(大野氏が作曲したものを映像に合わせて)音を出すと全部『違う』とか、なんでもかんでも『ダメ』っていうんだ(笑)」

大野氏が笑いながら語る言葉の中に、市川監督のこだわりの一端を垣間見た気がした。映画用に録音する時は、監督の指示で最終的にアレンジの変わったものが少なくないという。従って楽譜もその場でどんどん書き換えられ、最終決定校が残っていないのだそうだ。ならば、今回のコンサートでは如何にしてそれらの音楽を再現するのだろうか。

「僕が映像からまた音をコピーしなきゃいけないんだよ(笑)」

まるで筆者のような大野雄二ファンがやるようなことを、氏自らがやっているのである。涙ぐましい努力。頭が上がらない。

さて音楽に対しても細かくチェックを入れる『犬神家の一族』の市川崑監督に較べて、『人間の証明』『野性の証明』の佐藤純彌監督の場合はどうだったのだろうか。

「“ド”がつくほど、市川監督とは違う。佐藤監督は“放し飼い”……どころではなく、もうすべて“おまかせ”。『ああしろ!』『こうしろ!』という指示型ではなく、みんなに好きなことをさせてからまとめる調整型タイプだったね

なるほど。だから『人間の証明』のサントラ盤では、どこを切っても「大野節」ともいうべき大野氏特有のフュージョン音楽が炸裂していたのか。要するに、自由な音楽制作が許されたのだ。そこにはもはや不満などあるはずもなさそうだが……。

「いや、『犬神家の一族』とは、映画制作の姿勢に違いがありすぎて、なんかちょっとねぇ、物足りなかったというか、佐藤監督には『もうちょっと叱ってよ!』なんて思ったね(笑)」

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

一同爆笑。マゾヒスティックなジョークでインタビュー現場を和ませるのも大野氏のお人柄。

石坂浩二氏に「えー!! 石坂浩二って武藤兵吉だったのー!!

さて、それらの大ヒット映画音楽を、今回のシネマ・コンサートではどのように演奏するのだろうか。

「公演全部が“映像を流して演奏しました”だとつまらないから、映像を流さずに音だけを聞いてもらう部分も少しは入れようと考えているよ

大野氏には、あくまでも「音楽のコンサートだから」という強い認識があり、音楽中心に楽しめる内容になるという。また、自身もピアノ演奏を楽しむために、指揮者は別に立てて、プレイに専念するという意気込みようだ。

演奏者は約50名のビッグ・バンドになるが、「同じことをやることが嫌い」と公言してやまない大野氏のアレンジのこだわりは何だろうか。楽譜できっちりとアレンジを確定させることを“法律”という譬えを用いて、こう述べた。

「約50名の演奏者がいるし、映像と合わせることもあるので、“法律”で縛るところもある一方で、“法律”のゆるいところ(=あえてアレンジを確定せず、演奏者が自由に演奏できる部分)も用意するつもり。だから、公演1日目と2日目で微妙に演奏の違うところも出てくると思うよ

ということは、筆者のような熱心なリスナーにとっては、2日間とも聴きに行ったほうがよさそうだ。まあ、もとよりそのつもりではあったが。

ところで今回は、ゲストボーカルの松崎しげる氏による「戦士の休息」や、またダイアモンド☆ユカイ氏による「人間の証明のテーマ」歌唱が予定されている他、私立探偵・金田一耕助役として最も有名な石坂浩二氏がスペシャル・トークゲストとして出演することも決して見過ごすことはできない。石坂氏は大野氏と慶應義塾の高校~大学で同級生でもあった。

「彼の本名は武藤兵吉っていうんです。同級生時代は、もちろん本名しか知らなかった。その後、僕がお菓子メーカーのコマーシャルの音楽を作っていた時、ナレーションの人がスタジオに現れた。『石坂浩二さんです』と紹介されたその人の顔を見たら、『えー!!石坂浩二って武藤兵吉だったのー!!』って(笑)」

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

その辺りの話も公演当日に会場でさらに深く聞けることだろう。

禁忌?『犬神家』とピンク・フロイドの相似

筆者のようなプログレッシヴ・ロック・ファンの間では、『犬神家の一族』サウンドトラックに収められた「憎しみのテーマ」が、ピンク・フロイド「狂ったダイヤモンド」のイメージに非常に近いというのが、昔からお馴染みの話題であった。非常に畏れ多かったが、この際なので、勇気を振り絞って尋ねてみた。

高木「大野さんのサントラが大好きでよく聴かせてもらっているのですが、1976年発表の『犬神家の一族』には、非常にロックの、とりわけ当時まだ隆盛を極めていたプログレッシヴ・ロックのエッセンスが感じられます」
大野「そうだね」
高木「特に『憎しみのテーマ』とか……いわゆる、ピンク・フロイドっぽいところがあるかな……と。ピンク・フロイドの曲は1975年に発表されており……その翌年にそれを取り入れてるって、ものすごく早いなァと感心させられまして……」
大野「いや、僕はそういうのあんまり聴いてないよ。あの頃に参加していたミュージシャンたちが影響受けていただけじゃないかな?色々なロック物は聴いてはいたけどね」

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

なんと、大野氏の主導ではなかったのか!

「ほかの才能で助けてもらいたい」大野雄二から学ぶマネジメント論

さきの発言にもあったように、大野氏は自身の曲の演奏に際して、ミュージシャンたちの自由を尊重するタイプのようだ。

「僕は基本的にアルバムを作るとき、縛りを出来るだけなくすアレンジをして、ミュージシャンたちを“放し飼い”にしたいんだ。ガチガチに縛ることは簡単だけど、それははっきりいって、つまらない

市川崑監督と真逆なことをサウンドトラックにおいて実践していたのだ。

「指示通りに演奏できる人がいればそれはそれでOKなんだけど、僕は欲張りだからもうワンランク上を目指したいの。ミュージシャンのプラスアルファの才能で僕を助けてもらいたいんだよ(笑)。僕の書いた曲やアレンジを理解してくれた上で、ミュージシャン一人一人から助けていただきたいなと。方向性が間違ってないかぎり、僕が思ってたことと違うことをやったとしても、それが良かったらそちらに変更しちゃう(笑)。今回のコンサートには約50名の演奏者がいるから、その人たちみんなにちょっとづつ助けてもらいたい」

まるでビジネス本。管理職を狙う若きサラリーマンや、或いはバンドを主宰する筆者自身にとっても有効な教訓になりうる、マネジメントのカガミのような考え方である。すなわち佐藤純彌監督的“放し飼い”の思想が氏の音楽の中に生きていると見た。“放し飼い”とはつまり固定化されていない流動性を意味する。だから「角川シネマ・コンサート」は、当日に会場でその演奏を聴くまでどんなものになるか見当もつかないのだ。

これはやはり「金田一さん、事件です!」。

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

大野雄二氏(PHOTO:木場 ヨシヒト)

取材・文=高木大地(金属恵比須)

公演情報
角川映画シネマ・コンサート

■日時:
2018年4月13日(金)開場 18:00 / 開演 19:00
2018年4月14日(土)開場 13:00 / 開演 14:00
■会場:東京国際フォーラム ホールA
■料金:全席指定 ¥9,800(税込)※未就学児入場不可
■上演作品:「犬神家の一族」「人間の証明」「野性の証明」
※各映画の上映は全編上映ではございません。各映画のオリジナル映像を元に特別に編集された ハイライト映像に合わせて生演奏の音楽でお楽しみ頂く、最新のライブ・エンタテインメント= シネマ・コンサート形式で上演致します。予めご了承ください。
■出演
◇演奏:大野雄二と“SUKE-KIYO”オーケストラ
大野雄二(音楽監督・Piano, Keyboards) 市原 康(Drums) ミッチー長岡(Bass) 松島啓之(Trumpet) 鈴木央紹(Sax) 和泉聡志(Guitar) 宮川純(Organ) 佐々木久美(Vocal, Chorus) Lyn(Vocal, Chorus)佐々木詩織(Vocal, Chorus)MiMi(Hammered Dulcimer) 他
◇ゲストボーカル:松崎しげる(「戦士の休息」歌唱)、ダイアモンド☆ユカイ(「人間の証明のテーマ」歌唱)
◇スペシャル・トークゲスト:石坂浩二
※都合により出演者が変更になる場合がございます。予め御了承ください。
■問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00-19:00)
■公式サイト:http://kadokawaeiga-concert.com/

 

生まれつきの脳の障害を乗り越え、野田あすかが1stアルバム発売

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ピアニスト・野田あすかが、2018年3月21日にファーストアルバムをリリースする事が決定した。

野田は、1982年生まれ、宮崎県在住のピアニスト。子どもの頃から人とのコミュニケーションがうまくとれず、それが原因でいじめを受け、転校を余儀なくされた。憧れであった宮崎大学に入学するも、人間関係によるストレスで過呼吸発作を起こし、たびたび倒れて入退院を繰り返し、大学を中退。本人も「どうして、まわりの人とうまくいかないの?」と悩み続けた22歳の時に、生まれつきの脳の障害である「発達障害」と診断される。

その後、自分の障害と向き合い演奏活動を続け、第12回宮日音楽コンクールでグランプリ並びに全日空ヨーロッパ賞を受賞し、2017年には岩谷時子賞奨励賞を受賞。東京・築地の浜離宮朝日ホールをはじめ、大阪、宮崎などでもリサイタルを開催し好評を博した。

今回リリースされるアルバムは、2017年11月16日・17日に浜離宮朝日ホールにて行われたリサイタルをライブ収録。ショパン、ドビュッシー、ラフマニノフらの作品だけでなく野田あすかによるオリジナル曲も収められている。

たくさんの苦しみを抱え、自分の障害と向き合ってきたことで、あすかの奏でる「やさしいピアノ」は多くの人の感動を呼び、今後の活動が注目される。

★関連記事:広汎性発達障害のあるピアニスト・野田あすかにインタビュー

リリース情報
『哀しみの向こう』
2018年3月21日発売
仕様:CD+DVD2枚組 全10曲収録
品番:VIZL-1318
定価:¥2,778+税
 
<CD収録曲>
1. ノクターン 第1番 変ロ短調 Op.9-1 (ショパン)
2. アラベスク 第1番 (ドビュッシー)
3. 3つの小品 Ⅰパストラール/Ⅱ讃歌/Ⅲトッカータ(プーランク)
4. なつかしさ (野田あすか)
5. ココロのふるさと (野田あすか)
6. あしたに向かって (野田あすか)
7. アンダンテ・カンタービレ(「パガニーニの主題による狂詩曲」より第18変奏)(ラフマニノフ)
8. 哀しみの向こう (野田あすか)
 
<DVD収録曲>
1.なつかしさ (野田あすか)
2.あしたに向かって (野田あすか)
3.哀しみの向こう (野田あすか)
 
◎ソロリサイタル「野田あすか ピアノ・リサイタル~ありのままで~」(2017年11月16日・17日 浜離宮朝日ホール)にてライブ収録

<配信>
iTunes Store、レコチョクほか主要配信サイト、及び、Apple Music、LINE MUSIC、Amazon Music Unlimitedなど主要定額制音楽ストリーミングサービスにて3月21日より配信開始

 

公演情報
野田あすか ピアノ・リサイタル ~全国ツアー2018~
 

【島根公演】2018年3月21日(水・祝)島根県民会館 大ホール
【新潟公演】2018年5月11日(金)長岡リリックホール・コンサートホール
【高知公演】2018年5月13日(日)高知県立県民文化ホール・オレンジホール
【東京公演】2018年7月13日(金)紀尾井ホール
【静岡公演】2018年7月15日(日)浜松市福祉交流センター
【愛知公演】2018年7月18日(水)アートピアホール
【大阪公演】2018年7月20日(金)あいおいニッセイ同和損保 
ザ・フェニックスホール
【兵庫公演】2018年7月21日(土)神戸新聞松方ホール
【宮崎公演】2018年9月30日(日)都城市総合文化ホール 大ホール


 

アメリカで活躍中の若手バリトン歌手、大西宇宙がチャイコフスキーの『イオランタ』に出演!

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ニューヨーク、ジュリアード音楽院のプロ歌手養成コース(アーティスト・ディプロマ・コース)でトップの成績を収め、現在はシカゴ・リリック・オペラで活躍中の大西宇宙(たかおき)が、得意のロシア・オペラでついに日本に登場する。今年の6月、ミハイル・プレトニョフ指揮によるロシア・ナショナル管弦楽団のチャイコフスキー『イオランタ』が演奏会形式で上演され、大西はイオランタの許嫁ロベルト公爵役を歌う。一時帰国中の大西に話を聞いた。

ーーロベルト公爵の魅力はどこにありますか?

ロベルト公爵は登場してすぐに歌うアリアが一番の聴き所です。チャイコフスキーは『エフゲニー・オネーギン』のタイトルロールもそうですが、バリトンに分かりやすいヒーローではない役柄をもっていくのが上手いんです。ロベルト公爵も『スペードの女王』のエレッツキー公爵もその例ですね。まあ一般的に言っても、テノールの恋は最後にちゃんと成就しますが、バリトンにはほぼそれはありませんので……(笑)。

ー―大西さんはジュリアード音楽院のオペラ本公演で『エフゲニー・オネーギン』のオネーギン役とモーツァルト『フィガロの結婚』のアルマヴィーヴァ伯爵役を歌われています。留学先にジュリアードを選んだ理由は何だったのですか? 動画等で拝見すると大西さんは発声も発音も素晴らしいですし、舞台での立ち居振る舞いも自然で演技に魅力があります。これはジュリアードで勉強した成果が大きいのでしょうか?

もともとニューヨークに留学した理由の一つに、色々なジャンルの曲をやりたい、色々な国の言葉をやりたい、ということがありました。自分に近いハイ・バリトンの声を持つ歌手たちのレパートリーを見ていると、イタリアものに加えて、フランス、ロシア、ドイツなどワールドワイドに勉強出来るところがいいと思ったのです。最初に苦労したのはジュリアードに入るための英語の試験をクリアすることでした。ちゃんとコミュニケーションをとれるところまで勉強してから音楽院に入ったのでその勉強は役に立ちましたが。

ジュリアードの大学院ではソルフェージュや和声等もかなり勉強します。日本ですでにやったことを英語で学び直すのが大変でした。でも、ジュリアードで学んだ理論メソッドは後でとても役に立ちましたね。ソルフェージュも現代曲の読み方などをきちっと教えてくれるんです。音と音のインターバル(間隔)も、絶対音感などの感覚だけで音程をとるのではなく、関係性をきちっと計算すること。和声を音楽の歴史の変遷に沿って理解すること。ジャズの作曲も手がける有名な先生の「すべての臨時記号には理由がある」という至言も忘れられません。おかげで後になって『ヴォツェック』やその他の現代オペラに出演した時にもスムーズに歌うことが出来ました。

ーーアメリカでの教育はもっと実践ばかりなのかと思っていました。

大学院の後に通ったアーティスト・ディプロマというプロフェッショナル養成スタジオでは、実践の教育でした。ディレクターが演劇畑出身の演出家だったので、彼の演劇メソッドの指導を毎日受けました。登場人物の心情、舞台にどういう考えで立っているかなど、キャラクターを深く掘り下げるための具体的な指導は、その後の活動にも生きています。

ーー様々な国のオペラを歌うことについての指導はいかがでしたか?

ジュリアードには各国語のコーチがいて、勉強するレパートリーごとに指導を受けられるんです。MET(メトロポリタン歌劇場)も近いですから、METとジュリアードの両方で指導している先生も何人かいました。『フィガロの結婚』の練習をしていたときも、イタリア語には同じ母音でも開口音や閉口音など違いがあるんですが、毎日コーチの先生が歌詞に沿って発音をチェックして、リハーサル終りに「明日までにここを直してきてね」とメモを渡してくれるんです。

ーーその二年間を終えた後、シカゴ・リリック・オペラの研修所に入られたのですか?

そうです。ただシカゴの場合は、研修所というよりは歌劇場のアンサンブルという立場に近いんです。実際のオペラのプロダクションでカバー歌手をしたり、いくつかの役で出演したりと、一流のプロ歌手たちと一緒に舞台に立つ機会が多いです。最近ではマリウシュ・クヴィエチェンのカバー歌手としてビゼー『真珠とり』や『エフゲニー・オネーギン』に参加しました。リハーサルにすべて出席するので、どのように舞台を作っていくのか、歌手が演出家や指揮者とどのように仕事をするのか、などを間近に見ることが出来てとても勉強になります。カバー歌手は大変なこともあります。朝、電話がかかってきて「誰だれさんが具合が悪いみたいだから、今日は劇場に早めに来てウォームアップしていてくれ。」と言われたり。劇場に行ってカツラと衣裳を全部つけてスタンバイすることもあるんです。

ーードキドキして心臓に悪そうなお仕事です(笑)。ところでシカゴでは、大西さんの尊敬する、最近惜しくも亡くなられたロシア人のバリトン歌手ディミトリー・ホロストフスキーさんとの出会いもあったのですね?

はい。ホロストフスキーさんがシカゴでリサイタルを開かれた時でした。実は僕は、彼と誕生日が一緒なんです。彼に「リリック・オペラの団員なんです」と話しかけてそのことを言いました。日本で学生の頃、ロシアもののレパートリーはホロストフスキーさんの録音を聴いて覚えるところから始めていましたし、彼のラフマニノフやリムスキー=コルサコフの歌曲などもかなり聴き込んでいました。今回歌う『イオランタ』のロベルト公爵役もホロストフスキーさんが良く歌っていた役で、若いときのレコーディングがあります。『イオランタ』で6月に帰国する時に、これまでの自分の勉強してきた集大成となるリサイタルを東京の浜離宮ホールで開く予定なのですが、そこでもロシアの曲に関しては、最後に歌うオネーギンを含めすべて彼が歌ったことがある曲です。ディミトリーへのトリビュートを兼ねてと思っています。

ーーどうもありがとうございました。6月のご帰国を楽しみにしています。

取材・文=井内美香  撮影=岩間辰徳

公演情報
2018 ロシア年&ロシア文化フェスティバル オープニング
ロシア・ナショナル管弦楽団 ミハイル・プレトニョフ(創設者/音楽監督)
 
<東京公演>
■日時:2018年6月12日(火) 18:30
■会場:サントリーホール
■曲目・出演:
ミハイル・プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団
<オール・チャイコフスキー・プログラム>
◇セレナーデ・メランコリック 木嶋真優(ヴァイオリン)
◇歌劇「イオランタ」 [演奏会形式/日本語字幕付]
イオランタ(ルネ王の盲目の娘):アナスタシア・モスクヴィナ(ソプラノ)
ヴォテモン伯爵(ブルゴーニュの伯爵・イオランタに恋する騎士):ナジミディン・マヴリャーノフ(テノール)
ルネ王(プロヴァンスの王):平野和(バス・バリトン)
ロベルト公爵(ブルゴーニュの公爵・イオランタの許婚):大西宇宙(バリトン)
エブン=ハキア(ムーア人の大医師):ヴィタリ・ユシュマノフ(バリトン)
アルメリック:高橋淳(テノール)
ブリギッタ:鷲尾麻衣(ソプラノ)
ラウラ:田村由貴絵(メゾ・ソプラノ)
ベルトラン:ジョン・ハオ(バス)
マルタ:山下牧子(アルト)
新国立劇場合唱団
 
<その他の公演>
6月14日(木) 武蔵野市民文化会館 問合せ:同左 0422-54-8822
6月17日(日) 札幌コンサートホールkitara問合せ:オフィス・ワン 011-612-8696
6月19日(火) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール問合せ:CBCテレビ事業部 052-241-8118
6月20日(水) 福岡シンフォニーホール アクロス福岡問合せ:KBCチケットセンター 092-720-8717
6月21日(木) 高知県立県民文化ホール 問合せ:同左 088-824-5321
6月23日(土) 周南市文化会館 問合せ:同左 0834-22-8787  
6月24日(日) 所沢市文化センター ミューズ 問合せ:同左 04-2998-7777
 

大西 宇宙 バリトン・リサイタル
■日時:2018年6月19日(火) 19:00
■会場:浜離宮朝日ホール
■プログラム
フィンジ:歌曲集≪花束を捧げよう≫
モーツァルト:歌劇『ドン・ジョヴァンニ』より「窓辺においで」
ベッリーニ:歌劇『清教徒』より「永遠に彼女を失った」
チャイコフスキー:歌劇『エフゲニー・オネーギン』より第1幕及び終幕のアリア

■一般発売開始日:3月25日(日)発売予定

ヴァイオリニスト・鈴木愛理が贈る優美でスケールの大きい音の世界

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2018.1.21 ライブレポート

毎週日曜日の渋谷で、実力のある奏者を招いて開催される『サンデー・ブランチ・クラシック』。1月21日に登場したのは、ヴァイオリニストの鈴木愛理だ。今回は、ピアニストの吉武優と共演する。

2006年、ポーランドでの第13回ヴィエニャフスキ国際コンクールで第2位を受賞して注目を浴びた鈴木は、その後も国内外での演奏活動と研鑽を重ね、評価を高めている。今年1月には、いよいよデビューCDも発売された。

今回伴奏を務める吉武は、2010年~16年までベルリン芸術大学で学び、2012年の日本音楽コンクールファイナリストになるなど、国内外のコンクールや演奏会で実績を積んでいる。

お食事を楽しみながらクラシックを

お食事を楽しみながらクラシックを

表情を変えるブラームス

開演時刻の13時。拍手とともに舞台に登場した鈴木と吉武は、早速1曲目を披露してくれた。最初の曲目は、ブラームス作曲「スケルツォ(F.A.Eソナタより第3楽章)」。ヴァイオリンの刻む忙しない音型から、曲は始まる。ヴァイオリンとピアノの掛け合いは、激しくステップを踏み、跳躍するような印象を与える。初めに提示されるメロディーは悲愴だが、気品も感じさせる。

やがて曲調は趣を変え、緩やかなテンポとなる。冒頭とは対照的に、伸びやかでリラックスしたメロディーだ。緊迫感のあるピアノのリズムが徐々に雰囲気を盛り上げると、冒頭のメロディーが帰ってくる。異なる曲調に対して、テンポの落差をつくるなどして鮮烈な対比を見せているのがわかる。

音楽は再び大きく速度を緩める。甘く切ないヴァイオリンのメロディーが奏でられ、豊かな音色で聴き手を曲の中に引き込んでいく。短い曲の中で、鮮やかに表情の切り替えを行っているのが印象的だ。最後には二人で息を合わせ、踏みしめるようにテンポを緩めていく。重厚で堂々とした和音を響かせ、音楽は閉じられる。

鈴木愛理

鈴木愛理

昨日が初対面 鈴木愛理×吉武優の共演

会場全体からの拍手に応えて、鈴木がマイクを取り挨拶した。

「皆さんこんにちは、本日はお越しいただきましてありがとうございます。私は、この『サンデー・ブランチ・クラシック』に出演させていただくのは、約1年半ぶりの2回目となります。その時はピアニストの阪田知樹さんとの共演でした。今回一緒に弾いていただく吉武さんとは……実は昨日初めてお会いしたんです。もちろんお名前は前から伺っていたんですが、お会いしたのは昨日が最初です。そしてリハーサルをして、今日の本番に臨んでいるというわけです。吉武さんは本当に素晴らしいピアニストなので、本日は短い時間ですが楽しんでいただけると思います」

鈴木愛理

鈴木愛理

吉武優

吉武優

そんな舞台裏も紹介しながら、鈴木は曲目についても解説してくれた。

「先程演奏したのは、ブラームス作曲の『スケルツォ』で、アンコール・ピースとして演奏されることも多い曲です。次に演奏させていただくのは、バルトークの『ルーマニア民俗舞曲』という曲です。この曲は6つの舞曲からなっている、民俗的な音楽で、特に5つ目、6つ目の舞曲は皆さんもテレビなどで耳にされたことがあると思います。どうぞお楽しみください」

民族舞踊をもとにした「ルーマニア民俗舞曲」

第1舞曲は、ピアノの短い序奏に続くヴァイオリンの情熱的な旋律で始まる。長い棒を持って激しく踊る民族舞踊をもとにしており、東欧の音楽に良くみられる土着的な雰囲気をまとっている。深く激しい情感のこもったメロディーだが、踏みしめるような落ち着いたテンポが維持される。第2舞曲ではやや活発さを増し、跳躍するような快活な印象となる。こちらは飾り帯を身につけた少女が踊る舞曲で、熱がこもりながらも愛らしい曲調だ。

鈴木愛理(ヴァイオリン)、吉武優(ピアノ)

鈴木愛理(ヴァイオリン)、吉武優(ピアノ)

第3舞曲では、一転して静かで幻想的な雰囲気となる。微かなピアノがリズム音型を作ると、ヴァイオリンが超高音域を使ったエキゾチックな旋律を奏でる。耳をつくような鋭いフラジオレットの音色のおかげで、ヴァイオリンというよりは異国の楽器で弾いているかのような雰囲気が醸し出されている。旋律は全体にメランコリックで、微妙なゆらぎをつくりながら表情の変化をつけていた。第4舞曲は、角笛で演奏される旋律が元になっている。テンポはゆったりしており、ヴァイオリンの伸びやかな旋律が特徴だ。メロディーは哀愁漂っており、どこか気だるげでもある。

鈴木愛理

鈴木愛理

第5舞曲のポルカになると、ギアを入れたように音楽は急速なものとなる。小さな動物がせわしなく走り回るような、活発なメロディーだ。聴く者に息をつく暇も与えず、最後の第6舞曲に入る。非常に煌びやかで、喜びを爆発させるような派手な音楽だ。ピアノの作り出すテンポに乗って、重音などの技巧も披露される。音楽は勢いを止めることなく、一気に終曲まで駆け抜けた。

鈴木愛理

鈴木愛理

1月に発売したばかりのデビューCDからの一曲

迫力満点の演奏に、満場の拍手が送られる。このタイミングで、1月24日に発売となった鈴木のデビューCDの告知も入った。

「実は私、この度デビューCDを出させて頂くことになりました。次は、そのCDに入っている曲目の一部を演奏したいと思います。」

鈴木愛理

鈴木愛理

チューニングを経て、3曲目のリヒャルト・シュトラウス作曲「ヴァイオリン・ソナタ」より第1楽章の演奏が始まった。ピアノによる、インパクトの強い強奏の出だしに続けて、ヴァイオリンの伸びやかなメロディーが提示される。闊達に、開放的に歌うような明るい旋律だ。ピアノの伴奏が先導して曲調を変え、甘い叙情的な表情や激しく情熱的な表情が次々と現れる。2台の楽器の間で情熱的な楽句の掛け合いをしながら、音楽は盛り上がりに向かう。強い音でも音色は柔らかく、会場全体が音に包み込まれているようだ。

吉武優

吉武優

やがて音楽はテンポを落とし、今にも消え入りそうなピアニッシモとなる。静まった中で、会場は自然と音楽に集中し、心地よい緊張感が生まれる。続いて現れるのは、急速なピアノの伴奏音型に乗った、ヴァイオリンの激しく哀切なメロディーだ。2台の楽器だけで弾いているとは思えないほど、遠くまで響く豊かな音色が生まれていた。

小編成ながら、荘重で華麗な音のやり取りは迫力があり、聴き手を没頭させていく。曲想は一見悲愴であり、力強く肯定的な印象も受ける。多面的な表情の出し方がとても面白い演奏だ。曲の終わり近くになると、一旦音楽に少しずつブレーキがかかる。わずかな静寂の後、ピアノが一気にクレッシェンドをかけ、堂々とした終止を響かせる。

鈴木愛理(ヴァイオリン)、吉武優(ピアノ)

鈴木愛理(ヴァイオリン)、吉武優(ピアノ)

30分強のミニコンサート。ラストの曲は――

最後の曲目は、ショパン作曲・サラサーテ編曲「ノクターン(夜想曲)第2番」。

冒頭から早速、ヴァイオリンによって甘美な旋律が奏でられる。余りにも有名な旋律だが、ヴァイオリンの音色だと伸びやかで、気品のある印象になる。叙情的な曲だけに、ぴったりと息を合わせて微妙なためをつくり、表情をつくり出している。

ヴァイオリンの名手であったサラサーテの編曲らしく、美しいだけでなく技巧も凝らされている。曲の途中では、華麗な重音による美しいハーモニーも披露された。鳥のさえずりのような高音域でも、音は鋭くならず柔らかい。同じメロディーでも、中音域を使う時は対照的に暖かく優しい響きとなる。印象的なグリッサンドなど、ヴァイオリンの持ち味を生かした編曲であり、その魅力を存分に伝えてくれる演奏だ。

曲の終わり近くになると、協奏曲のカデンツァのようなヴァイオリンのソロパートが現れる。技巧的な早回しを軽やかに弾ききり、音楽は穏やかに閉じられる。

鈴木愛理

鈴木愛理

この日一番の拍手を受けて、鈴木は締めくくりの挨拶をした。

「この曲は、フィギュアスケートの浅田真央さんが、ソチ五輪のショートプログラムでも使用していた曲で、いつかヴァイオリンで弾きたいと思っていました。サラサーテの編曲を見つけたのですが、簡単そうなメロディーでもとても難しく、初めて楽譜を見たときはびっくりするほどでした(笑)。楽しんでいただきましたでしょうか?」

鈴木の問いかけに応えるように、再び盛大な拍手が起こる。最後に、共演した鈴木、吉武が並んで一礼し、楽しいひと時は終幕となった。

吉武優、鈴木愛理

吉武優、鈴木愛理

「皆さんに馴染みのある曲を」

コンサートの後、出演した2人に少しの時間を頂き、お話を伺うことができた。

――『サンデー・ブランチ・クラシック』に出演されるのは、鈴木さんは2016年8月以来の2回目、吉武さんは初めてとなります。今回出演されてのご感想はいかがでしたか?

鈴木:今回は2回目ということで、会場がどんな雰囲気なのかもわかっていましたので、皆さんに馴染みのある曲を中心に選曲しました。ヨーロッパなどでは、日曜日の朝はゆっくり過ごして『ブランチ(朝兼昼の食事)』を取る習慣がありますね。(『サンデー・ブランチ・クラシック』のように)食べながらクラシック音楽を聴くコンサートは、中々他でもやっていないので、すごく良い機会だと思います。

吉武:私は今回初主演なのですが、初めて会場を見たとき『すごく良い雰囲気だな』と思いました。本番も『どんな感じになるかな?』と思っていたのですが、皆さんとても静かに聴いてくださっていて、暖かい雰囲気でした。まるでサロンで弾いているようで、私自身も楽しめる本番だったと思います。

(左から)吉武優、鈴木愛理

(左から)吉武優、鈴木愛理

――鈴木さんは、3月9日(金)と11日(日)に、CDリリースの記念として続けてリサイタルに出演されます。聴き所や注目ポイントは何でしょうか?

鈴木:3月9日(金)の浜離宮のリサイタルでは、CDに収録している曲を中心に弾かせていただきます。CDの音と、会場で聴く生の音は雰囲気が全然違いますし、演奏の仕方も違います。CDを聴いた方は、その違いを楽しんで頂けると嬉しいです。

――リサイタルでは、CDと同じくボリス・クスネツォフさんがピアノ伴奏を務められますね。CDの収録と、会場での演奏はどのように違うのでしょうか?

鈴木:マイクが目の前にあるのと、広い会場で弾くのは、音の飛ばし方などが全然違います。今回は、私も初めての録音だったので、収録では『いかに繊細に弾くか』に気をつけて弾きました。

(左から)吉武優、鈴木愛理

(左から)吉武優、鈴木愛理

取材・文=三城俊一 撮影=鈴木久美子

公演情報
デビューCDリリース記念 ヴァイオリン・リサイタル
日程:2018年3月9日(金)
会場:浜離宮朝日ホール (東京都)
出演: 鈴木愛理(ヴァイオリン)/ボリス・クスネツォフ(ピアノ)

<曲目・演目(予定)>
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 へ長調 Op.24「スプリング」 
エドヴァルド・グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調 Op.45 
ショスタコーヴィチ:4つのプレリュード~「24のプレリュード」 Op.34 
R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 Op.18

 

 

サンデー・ブランチ・クラシック情報
2月18日(日)
土岐祐奈/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

2月25日(日)

滝千春/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月4日(日)

藤井香織/フルート&藤井裕子/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月11日(日)

あいのね/フルート、ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月18日(日)

但馬有紀美/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月25日(日)

太田糸音/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

4月8日(日)

寺下真理子/ヴァイオリン&SUGURU​/(from TSUKEMEN)ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

悲劇の王、ルートヴィヒが憧れた白鳥の騎士『ローエングリン』、深作健太がワーグナーのオペラを東京二期会で演出!

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東京二期会のオペラ公演、ワーグナー『ローエングリン』の初日が近づいている。映画監督、演劇の演出家として活躍する深作健太の新演出による舞台で、大胆な読み替えが話題を呼んでいる。

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

悲劇の王、ルートヴィヒ2世に白鳥の騎士ローエングリンを重ねる演出

リハーサルが行われている都内の稽古場にて、記者たちに今回の『ローエングリン』の演出コンセプトを説明する会があった。深作は2015年にやはり東京二期会で、リヒャルト・シュトラウス作曲『ダナエの愛』を演出して以来、今回が二度目のオペラ演出である。

「大好きなワーグナーを演出させていただくことになりました。前回の『ダナエの愛』の時、指揮の準・メルクルさんに楽屋に呼ばれ、「健太は『タンホイザー』と『ローエングリン』どっちがいい?」と聞かれたんです。僕はどちらが好きかと聞かれているのかと思い、『タンホイザー』が大好きなのでそう答えたんですが、実はその質問は、次に一緒に仕事をする作品としてどちらを演出したいか?という意味でした。だとしたら僕は、メルクルさんが非常に美しい音楽を奏でるマエストロなので、彼とご一緒するなら『ローエングリン』が聴きたい、という思いが非常に強くありました」

演出コンセプトの説明会 (C) Naoko Nagasawa

演出コンセプトの説明会 (C) Naoko Nagasawa

「『ローエングリン』を今、日本でやる意味って何だろう?と思った時に、正直に言いますと、先人たちの『ローエングリン』を観て、ワーグナーの他のオペラのように、傑作だと思える演出、自分にとってこれだと思える演出、というものが思い浮かばなかったんです。『ローエングリン』は10世紀のアントワープという、歴史的な時と場所がはっきり指定されていて、そのリアリズムの時代劇の中に、ローエングリンという白鳥の騎士が現れます。つまり物語の中に現実とメルヒェンの対比があるのです。それからこれは政治劇であり、人々を戦争に誘う軍事的な歴史が背景にある」

「戦争と平和の他にも、男と女、昼と夜、強者と弱者、という対比があります。これがどちらか一面になってしまってはダメなんだ、というのが今回、最初に考えたことでした。抽象的な演出にするとローエングリンの世界に寄ってしまう。しかも、ローエングリンという人がどこから来たのか?ということが気になってしまいます。あるいは史劇としての面に偏れば、すごく古い時代劇になってしまう。ワーグナーがこの台本を書いた時に、当時の現実を打つ何かがあったはずだと考えていった時に、19世紀末のドイツの状況を重ねることによって、描かれていることの意味合いが分かってきたんです」

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

「歴史上、『ローエングリン』を愛した著名な人物がふたりいます。一人はアドルフ・ヒトラー。彼はこの作品の最後に出て来るFührer(指導者)という言葉を(総統)という意味で自らの称号に用いました。僕から見れば『ローエングリン』の間違ったイメージ、変なイメージを植え付けてしまった。後々、チャップリンの『独裁者』からコッポラの『地獄の黙示録』に至るまで、みながワーグナーのそういう面を強調し、男性的なイメージが非常に強くなっていった」

「もう一人、ローエングリンを愛した人はワーグナーの時代のバイエルンの国王ルートヴィヒ2世でした。16歳の頃、ローエングリンの音楽に出会い、18歳で国王に即位した時すぐにやったことは、ドレスデンで革命に加担し追われる身であったワーグナーをバイエルンに招くことでした。彼は精一杯ワーグナーを庇護し、最終的にバイロイトでワーグナーの音楽祭が開かれるようになったのも、彼の支援があったからです。このルートヴィヒが見ているローエングリン像というのがすごく気になって、ルートヴィヒの視点から『ローエングリン』を上演することが出来ないか、と考えだした時に、なぜ僕はローエングリンにこんなに惹かれるんだろう?なぜここで今『ローエングリン』をやりたいんだろう?と思ったら、この騎士は闘わないんです。第一幕の終りには英雄としてこれから戦争に行く、という展開になりますが、その後、エルザが禁じられた問いを投げかけてしまったことにより、彼はこの国を去ります。戦わない英雄、というところに注目していったんです」

(C) Naoko Nagasawa

(C) Naoko Nagasawa

ストーリーは1884年、ルートヴィヒ晩年の、まだ建設中のノイシュヴァンシュタイン城で展開する。ルートヴィヒは『ローエングリン』の楽譜をめくりながら自分の今までのことを思い出す。ルートヴィヒとローエングリンという二人の人物の物語が重ね合わされるのだ。プロイセンが戦いを呼びかけ、バイエルンは戦争にまきこまれることになる。悪役テルラムントにはルートヴィヒ国王をあやつろうとする医師グッデン、エルザにはオーストリア皇妃エリーザベトが重ねられる。

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

俳優によって演じられるルートヴィヒの憧れの騎士ローエングリン

「エルザの行方不明になってしまう弟は、もともとの台本上では黙役として書かれています。ワーグナーさんは若い女性が演ずるのが好ましい、と指定しています。このゴットフリートは今回は少年(ダブル・キャストのうち一人は少女)が演じます。ゴットフリートは音楽と出会った頃の若きルートヴィヒのことも表しているんです。そしてもう一人、ルートヴィヒが自分がこうなりたかったという憧れのローエングリンの騎士の姿を、俳優の丸山敦史さんに甲冑を身に着けて演じてもらいます。ですからルートヴィヒが三つの姿で舞台に存在することになるんです」

深作健太 (C) Naoko Nagasawa

深作健太 (C) Naoko Nagasawa

『ダナエの愛』では物語に描かれているギリシャ神話の時代と現代にまたがった演出に加え、スペクタクルな舞台美術も素晴らしかった。今回の舞台はより象徴的な美術セットとなるそうだ。有名な前奏曲の半ばで幕が開き、三角形の舞台面が天井まで迫り上がっていくが、その三角形は白鳥を表現している、という。

「三角形を意識したのは、ワーグナーさんがそういう音楽を書いているから、というのもあるんです。憧れの騎士の世界に行って英雄になりたい、という思いと、そしてまた少年時代のもっと美しいものを求める思い。その二つの間でルートヴィヒは悩みます。第一幕の終りでローエングリンが英雄として登場し国が戦争に巻き込まれるのは、ある意味、彼が選択を間違えるわけです。日本、そして世界中、70年もたつと人間は色々なことを忘れてしまいますし、人々はお金が無くなると戦争を求めます。僕は、芸術を志す人間としては戦争など冗談じゃありませんし、お金よりも愛、と思いたい。『ローエングリン』のことをワーグナーさんはロマンティック・オペラと名付けたわけなんですが、ロマンの世界に生きようとするルートヴィヒ王は、政治の世界、強さの世界からひたすら逃げた人でした。その生き方にシンパシーを感じているのが今回、演出家としての自分のスタンスにあります」

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

歌手たちと作り上げていく舞台

「このように、コンセプトを自分なりに作ってからリハーサルに臨みましたが、でも一番大事なのは稽古場です。歌手のみなさんの歌唱の素晴らしさが自分にとって一番のインスピレーションになっていますし、それに従って内容も変えていきます。特に、外国で作ったものを持ってきてそれを演じてもらう、という形ではなく、日本のプロダクションとして日本人キャストと一から作っているので、話し合って変えていく、ということが出来るし、それが新作のいい所ですから。そういう現場にいられることが本当に幸せです。ローエングリン役ひとつとっても、福井敬さん、小原啓楼さんというキャストごとに内容もかなり違ってきています」

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

取材の後半は稽古場に移動し、小原啓楼、木下美穂子、小森輝彦、清水華澄などが出演する組の第一幕のリハーサルを見学した。髪を伸ばした小原は幕が開いたときからすでに舞台で晩年のルートヴィヒ国王を演じ、それがやがてローエングリンの姿に重なっていく。彼の目に見えている子供時代のルートヴィヒと騎士ローエングリンという三人のルートヴィヒ=ローエングリンが、舞台に同時に存在している瞬間もある。リハーサルながら、物語の中に引き込まれる要素はたっぷりだった。

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

アンサンブルでは特に男声合唱の仕上がりの素晴らしさは特筆に値する。声の揃い方、迫力、そして動きも含めた演技まですべてが素晴らしい。オルトルート役の清水華澄の深みのある声も圧倒的な存在感で響いてくる。ちなみに今回の演出ではオルトルートは医師グッデンに付き添う看護婦という役になっているが、片目に黒い眼帯をしている。これはオルトルートがキリスト教の神でなくヴォータン、フリッカなどの古代ドイツの神々を信仰しているので、ヴォータンへの言及としての姿だという。

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

深作との信頼関係が深まっている準・メルクルの研ぎすまされた音楽、そして一流の歌手達による演唱がこのプロダクションに良く合った『ローエングリン』となりそうだ。第3幕の最後、ローエングリンは有名な《聖杯の物語》を歌いエルザと皆に別れを告げる。ルートヴィヒ国王はどうなってしまうのか?謎は最後に私たちをどこまで連れて行くのか。注目の舞台である。

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

東京二期会『ローエングリン』稽古風景 (C) Naoko Nagasawa

取材・文=井内美香  撮影=Naoko Nagasawa

公演情報
東京二期会オペラ劇場
『ローエングリン』オペラ全3幕 日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演

 
■日程:2018/2/21(水)~2018/2/25(日)
21日(水) 18:00
22日(木) 14:00
24日(土) 14:00
25日(日) 14:00
■会場:東京文化会館大ホール (東京都)
 
■台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー 
■指揮:準・メルクル 
■演出:深作健太 
■出演:
☆ハインリヒ・デア・フォーグラー:
小鉄和広 2/21(水)2/24(土)
金子 宏 2/22(木)2/25(日)
☆ローエングリン
福井 敬 2/21(水)2/24(土)
小原啓楼 2/22(木)2/25(日)
☆エルザ・フォン・ブラバント
林 正子 2/21(水)2/24(土)
木下美穂子 2/22(木)2/25(日)
☆フリードリヒ・フォン・テルラムント
大沼 徹 2/21(水)2/24(土)
小森輝彦 2/22(木)2/25(日)
☆オルトルート
中村真紀 2/21(水)2/24(土)
清水華澄 2/22(木)2/25(日)
王の伝令
友清 崇 2/21(水)2/24(土)
加賀清孝 2/22(木)2/25(日)
☆4人のブラバントの貴族
吉田 連 2/21(水)2/24(土)
菅野 敦 2/22(木)2/25(日)
鹿野浩史 2/21(水)2/24(土)
櫻井 淳 2/22(木)2/25(日)
勝村大城 2/21(水)2/24(土)
湯澤直幹 2/22(木)2/25(日)
清水宏樹 2/21(水)2/24(土)
金子慧一 2/22(木)2/25(日)
☆ローエングリン(青年時代):丸山敦史(全日)
 
■合唱:二期会合唱団 
■管弦楽:東京都交響楽団

日本音コンを制した2000年生まれのピアニスト吉見友貴にインタビュー

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2017年、音楽コンクールを題材とした小説『蜜蜂と遠雷』(恩田陸 著)が、直木賞と本屋大賞をW受賞して大きな話題となった。クラシック音楽の演奏家にとって大きなコンクールで優勝を獲れるかどうかというのは、その後の人生を大きく左右してしまう事柄であり、どれほどシビアであるかを、この小説を通して追体験された方も多いのではないだろうか。そして個性豊かなピアニストたちが競い合ったり、交流したりする様を通して、コンクールという場が決して無味乾燥なものではなく、一般の聴衆にとっても魅惑的なイベントであることを知った方もいらっしゃるかもしれない。

一般の読者や聴衆にとって唯一、残念に思うかもしれないのは、現実のコンクールでは小説ほどドラマティックな人生を背負った出場者ばかりではないことだ。しかし、それが音楽家としての魅力を減じさせてしまうわけではない。むしろ、地に足が着いているからこそ、継続して研鑽を積み、比類なき高みへと歩んでいけるのだから。

日本で最も伝統あるコンクールとして、これまで数多くの国内外で活躍する音楽家を輩出してきた「日本音楽コンクール」(毎日新聞社、NHK 主催)。昨年2017年に開かれた第86回の大会で、ピアノ部門を制したのは2000年生まれの高校2年生、吉見友貴(よしみ ゆうき)だ。

現役の大学生はもちろんのこと、大学院生や卒業生まで幅広い年代が出場する日本音楽コンクールにおいて、高校生が優勝することはもはや珍しいこととは言えない。だが吉見の物腰柔らかな落ち着いた雰囲気からは未来の巨匠を予感させるものが漂っている。そんな稀有な存在である吉見に、コンクールのことや3月2日に開催される受賞者発表演奏会のことなど、色々とお話を伺わせていただいた。

吉見友貴  撮影=中田智章

吉見友貴  撮影=中田智章

――ご出身はどちらなんでしょうか?

生まれは東京で、2~3歳ぐらいのときに広島に引っ越しました。

――その後は5歳でピアノを始められ、小学生の頃から既にコンクールに入賞されていますね。中学生になるタイミングで、お父様を広島に残したまま、お母様と東京に引っ越されたというのは珍しいんじゃないでしょうか。

多分、あまり多くないですね。本当は高校から桐朋(※桐朋女子高等学校音楽科)に入る予定だったんですけれど、先生の薦めもあって「どうせ行くのだったら、早く行ったら?」と後押しいただきました。母の協力があったおかげですね。

――そして昨年、高校2年生のときに日本音楽コンクールに優勝されたわけですが、このコンクールは、ピアニストとして第一線でやっていくためには、まずこれに入賞しなければ……と多くの人が思われている存在ですよね。

そうだと思います。皆さん、そういった気持ちで臨んでいらっしゃいます。でも優勝する自信はなかったですね。もちろん、落ちたらもう一回来年があると思っていたし、まだ(来年でも)高校3年生だしと思っていたので。高2でどれだけいけるか挑戦したかったというのと、やっぱり出るからには最後までは行きたいという気持ちがあって複雑でした。

――コンクールのなかで演奏しなければいけない曲を準備するだけでも大変ですしね。

同じ毎日新聞社主催の学生音楽コンクールなどは1曲ずつ弾くので、準備はそんなに大変ではなかったんです。けれど、日本音楽コンクールは、短い期間でソロの曲が何曲もあって、そのあとにコンチェルト(協奏曲)というのがこれまでになかった経験で、精神的な負荷やステージをこなす肉体的な負荷もありました。

――なんでも、本選のプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を1ヶ月で仕上げたそうですね。他にも予選ではリストのソナタなど、大曲を演奏されていましたけれど、以前から弾いていた曲なのですか?

演奏したことは無かったです。三次予選で大曲を弾かなければいけないコンクールなので、先生と話し合って決めました。すごく大好きな曲で、ずっと弾きたいと思っていたので、多分ダメだとは思うけど勉強してみたいなっていう気持ちで先生に相談したら「OK」が出たんです。でも、練習していくうちに「本当に弾くんだ……」と思ったりもして(笑)。そんな感じでトントンとすすんで、コンチェルトも1ヶ月で仕上げる形になってしまったんです。

吉見友貴  撮影=中田智章

吉見友貴  撮影=中田智章

――本選のプロコフィエフを演奏されている映像を拝見したのですが、演奏だけでなく、弾き終えた瞬間の笑顔がとても印象に残りました。

オーケストラと弾くのが初めてだということもあって、弾き切れた嬉しさもありましたし、もうちょっとオケと弾いていたい、という幸せな気持ちもありました。あとはやっぱり、長いコンクールがやっと終わったんだという気持ちが一番大きかったです(笑)。

――安堵の笑顔だったんですね(笑)。

はい(笑)。コンクールの本選の時は「わぁ、スゴい!」と思いながら弾いていたので、正直に言うとコンクールの緊張感はなかったです。本選は一番緊張しなかったですね。

――それは驚きです!

一次予選が一番緊張しました。ここで落ちたらもう終わるんだと思って。三次と本選は逆にあまり緊張しなかったです。特に三次予選は会場がほぼ満席でしたし、かなり長い時間を弾かせていただけるので。本選はオペラシティで、沢山のお客さんがいらっしゃる環境のなかで弾けたことが、とても嬉しかったですね。本選よりも、そのあとの学校の実技試験の方が緊張しました(笑)。

吉見友貴  撮影=中田智章

吉見友貴  撮影=中田智章

――現在、高校2年生ということで、高校卒業後に日本の音楽大学に進むのではなく、すぐに留学するということもあり得るかと思うのですが、どういった予定でいらっしゃいますか?

違う環境で勉強したいという気持ちもあるので、留学を視野に入れてどうしていこうかなと考えている時期ですね。ヨーロッパで学ぶのと、日本で学ぶのでは全然違うと思うので。向こうの空気に触れて、勉強したいなと思っています。ただ、まだ何も決まっていません。

――そして日本音楽コンクールを制したわけですから、次は国際コンクールを……というお声がきっと周囲からも挙がっているかと思います。

世界を知るのは大事だと思うので、受けられるレベルになったら受けたいと思います。いま受けても落ちると思うので(笑)。

――憧れていたり、受けたいと考えていらっしゃる具体的なコンクールはありますか?

ショパンコンクールは憧れですね。2000年にユンディ・リが優勝したときのドキュメンタリーを、たまたま再放送か何かで観たんですが、すごく強烈に印象に残っています。小さい頃だったので、ただひたすら「すごい」と思いましたね。コンクールの空気感、緊張感であったりというのが、日本のコンクールじゃ味わえないものでしょうし、キャリアがかかっているわけですから。

――ということは、ショパン作品もお好きなわけですね。

自分にとって大切な作曲家といいますか、大好きな作曲家なので。他の作曲家の音楽と違って、何ともいえない難しさ……純粋で、イノセントで、美しい音楽なので、弾くのはとっても難しいんですけれど、人生をかけて追求していけたらと思っています。

――なるほど。他に、これまでどんなレパートリーを弾いてこられたのでしょうか?

今までは、ラヴェルやリストなどの鮮やかさを求められる音楽をやってきました。そういったものは得意だったのかもしれませんが、これからは音楽的な深みのある曲……例えばベートーヴェン、バッハ、ショパンなどを勉強したいなと思っています。音楽家としての基礎になるようなものをじっくり勉強したいんです。

――コンサートに行くのも大変お好きだと伺いました。どんなコンサートに足を運ばれるんですか?

この前(1月末)は、チョ・ソンジンを聴きに行って感動しましたね。特に、ベートーヴェンの30番のソナタがとても良かったです。チョ・ソンジンを初めて生で聴いたのは去年(2017年)の1月なのですが、心を入れ替えてもう一度ちゃんとさらおうと思いました。

――生演奏以外ではどんなピアニストの演奏を聴かれているんでしょうか?

ここ最近は、2015年のショパンコンクールで3位だったケイト・リュウの演奏が一番好きで、あの音のきらびやかさに惹かれてよく聴いています。もちろん、クラウディオ・アラウや、エミール・ギレリスのベートーヴェンのソナタなど巨匠たちの演奏も聴いて勉強したりしています。端正で、隅々まで丁寧で、勉強され尽くしているという音楽を自分でもしたいなと思っているので。

――いつ頃から、そう思われるようになったんでしょう?

今までは与えられた曲を必死にやるしかないと思っていたんですけど、やはり弾くだけではどうしようもならないというか……。どう表現したいかを最近よく思うようになりました。

吉見友貴  撮影=中田智章

吉見友貴  撮影=中田智章

――さて3月2日には、日本音楽コンクールの受賞者発表演奏会にご出演されますね。今度は、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の第1楽章を選ばれていますが、こちらも演奏は初めてなんでしょうか?

今回が初めてです。先生の薦めもあったんですけれども、プロコフィエフとまた違った作品が弾きたいと思いまして。同じロシアの作曲家ですけれど、全く違いますよね。プロコフィエフの3番はアメリカにいたときの作品なので、どちらかといえばモダンな作品で、チャイコフスキーの方はロシアの香りが色濃く残っている作品です。

――この作品は、派手でケレン味のある演奏がなされることも多いですが、吉見さんはどのようなアプローチで向かい合われているんですか?

コンチェルトはコンチェルトですけれど、チャイコフスキーのシンフォニーやバレエ音楽が連想できます。例えば(コンクールで弾いた)プロコフィエフの3番よりもオケとの関連性が強いと思うので、あまりショーピースみたいには弾きたくないですね。

――今回演奏される第1楽章のなかで、特にお好きな場面はありますか?

カデンツァが好きですね。様々な要素があって、きらびやかなオルゴールのような響きがあったり、心を抉るような激しさもあって、そのあとでオケがさーっと入ってくる瞬間も好きです。

――では最後に、受賞者発表演奏会へお越しくださるお客様へのメッセージをお願い致します。

弾くのは自分だけじゃなく、他の部門で一位を取られた素晴らしい方々ばかりなので、それぞれの楽器の良さを楽しんでいただけるようになっていると思います。レベルの高い演奏を楽しんでください。

吉見友貴  撮影=中田智章

吉見友貴  撮影=中田智章

インタビュー・文=小室敬幸 撮影=中田智章

公演情報
第86回日本音楽コンクール受賞者発表演奏会

日時:2018年3月2日(金) 18時開場/18時30分開演
会場:東京オペラシティコンサートホール

<出演者>
作曲部門/小鍛冶邦隆指揮、アンサンブル・リーム  
演奏部門/梅田俊明指揮、東京フィルハーモニー交響楽団 

久保哲朗(作曲部門):BABEL for 6 musicians(受賞作再演)  
鈴木玲奈(声楽部門):ドニゼッティ 歌劇<ランメルモールのルチア>〝あの方の優しい声が聞こえる~香炉はくゆり~苦しい涙を流せ〟
吉見友貴(ピアノ部門):チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23より 第1楽章  
大関万結(バイオリン部門):ワックスマン カルメン幻想曲  
香月麗(チェロ部門):エルガー チェロ協奏曲 より第3楽章、第4楽章  
濱地宗(ホルン部門):ホルンと弦楽のための協奏曲 作品150

※演奏順未定。曲目は変更になることがあります。

 

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2018年2月19日~2018年2月25日)

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年明けからウロウロしていた計画や、どうしたものか考えあぐねていたことがスッと動き始める一週間になりそう。そろそろ雪融けしてもいいのでは、と思っていた冷戦関係に思わぬ助け船がやってくるのかもしれませんし、春以降の新しい生活スタイルが具体的に見えてくるのかもしれません。

要らないものはだいぶ片付いてきているはずですが、最後の一押しとして「済」のハンコを押しまくりたくなるかも。気持ちがアガらなくなったものは、無理に連れて行かなくても大丈夫ですよ。誰もあなたを身勝手だとは言わないはずです。それなりに結果はこうなると、薄々解っていたことだと思います。

さて、どうしましょうか。気合いという言葉や気持ちは、今の所はまだ大きな原動力にはなりにくいかもしれません。だってまだ寒いですからね。身体が凝り固まっていては、本来の動きも出てこないのと同じです。こうかな、こうすればいいかな、こんな感じかな。イメージをどうやって形にしていくのか、試作に挑戦してみるといいかも。誰にも見せない、口外しない、秘密の特訓の開始です。

週が明けると一気に空の明るさが変わったように感じられるかも。外へどんどん出掛けて行って「はじめまして」「よろしくお願いします」となるのは、もうちょっと先になりそうですが、フワーッとトンネルから抜け出す手前の、あの明るさがドンドン大きくなっていくような四次元空間から現実へ舞い戻るような、そんな感覚があるかも。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
保存版、メモリアル
◆おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
試し使い、アンバサダー
◆ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
検索、フィーリング
◆かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
夢みたいな、ファンタスティック
◆しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
お気楽な、コメディ
◆おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
一発芸、ギャグ
◆てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
破壊的、ノイズ
◆さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
最終話、ラスト
◆いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
飛び出す、アクションゲーム
◆やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
往年の、バブリー
◆みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
目視確認、ギャラリー
◆うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
妄想、フリーテンポ

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クラシックを身近に感じさせる、益子侑(ヴァイオリン)&小瀧俊治(ピアノ)が紡ぎ出す楽しさ弾ける音楽世界

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2018.2.4 ライブレポート

クラッシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう! 小さい子供も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK! そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート『サンデー・ブランチ・クラシック』。2月4日に登場したのは、ヴァイオリニストの益子侑と、ピアニストの小瀧俊治だ。

3歳よりヴァイオリンを始め、東京音楽大学で研鑽を積んだ益子侑は、クラシック音楽に留まらず、「音を楽しむ」をテーマに掲げ、有名テーマパークで演奏実績を積む他、ライブ・TV・PVにて、エンヤ、SMAP、福山雅治、松田聖子、サザンオールスターズ、平井堅、KONISHIKI他、様々なアーティストと多数共演。2016年2月には、デビューアルバム『益子侑ヴァイオリン・リサイタル』を発表。このアルバムは、音楽之友社『レコード芸術』にて準特選盤に輝いた。

そんな益子侑ならではの、あらゆる世代に贈る新しいヴァイオリンの世界を共に創り出すのは、同じく東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業後、同大学大学院修士課程を修了し、音楽コンクールでの輝かしい入賞歴を持ち、ソロ活動と共にアンサンブルピアニストとして多くのアーティストと共演を重ねる他、近年はX JAPANボーカルToshlのライブサポートメンバーとしての活動など、ジャンルの垣根を越えた活動を展開しているピアニスト小瀧俊治。

共にクロスオーバーな音楽活動を続けている二人が、『サンデー・ブランチ・クラシック』で夢の初共演を果たすことになった。

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

クラシックの名曲が、ポップなアレンジで華やいで

冒頭、ヴァイオリンリサイタルの、アンコールピースとしても親しまれているエルガーの「愛の挨拶」を、クラシックの正統的な美しい旋律で小瀧が奏ではじめる。そこに、ヴァイオリンが加わるか?と思わせた刹那、演奏はリズミカルに弾け、 益子侑ならではの軽快な「愛の挨拶スペシャル」へ。馴染み深いメロディーだからこそ、益子自身による編曲の軽やかさが生き、リビングルームカフェは、一気に益子ワールドに染め上げられる。

益子侑

益子侑

温かな拍手が広がる中、二人は同じ大学の出身で、互いの活動への関心をずっと持ち続けていたが、今日が初めての共演になりますと挨拶。益子が小瀧を「小瀧王子」と呼びかけるなど、微笑ましい会話が交わされた。

続いて、益子のオリジナル曲「門出」が演奏される。楽曲は益子の笑顔のように明るく、聞く者に楽しさを呼び起こす曲調で、メインのメロディーがピアノと掛け合うように繰り返し重なり、更に転調していく。晴れやかな歌を聴いているかのような心地がした。

演奏を終えたあと、この曲が先ごろ発売された、バンド編成によるポップスのアルバムに収録されていることが紹介され、互いのCDや、多彩なジャンルでの活動の話も聞かれた後、3曲目は映画『美女と野獣』より「 Be our guest」が華やかに披露される。アニメーション映画、ミュージカル、実写映画化と、幅広い支持を得ている作品『美女と野獣』の中で、野獣の城に囚われたヒロイン・ベルを、ポット、時計、燭台、絨毯、カトラリーなどに姿を変えられている城の家来たちが、明るい歌と踊りでもてなす、劇中でも屈指の賑やかなナンバーが、益子の明るいヴァイオリンの音色にピッタリ。後半小瀧のピアノにメロディーが移ると、益子のヴァイオリンはまるで即興のような自由さを増して奏でられ、美女と野獣ならぬ、美女と王子の演奏に、カフェは大いに盛り上がった。

益子侑

益子侑

小瀧俊治

小瀧俊治

繊細なピアノソロから華麗なロマン派ヴァイオリン名曲メドレーへ

熱気の中益子がいったん退場し、小瀧のピアノソロで、リストの「愛の夢」が披露される。リストらしい煌びやかな華やぎを持った、こちらも大定番曲だが、小瀧の演奏にはひと際の繊細さがあり、そもそもが歌曲であったこの曲の出自を感じさせる、豊かな表現力が印象的な演奏となった。

再び、益子がステージに戻り、コンサートはいよいよクライマックスへ。「こちらは『サンデー・ブランチ・クラシック』ですので」とのことで、用意されたのは「ロマン派 ヴァイオリン名曲メドレー」。音楽の歴史の中で、楽曲にロマンティックな要素が展開されていった時代の、名曲中の名曲がメドレーで綴られていく。

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

まず、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲第一楽章」から著名な旋律が流れ、そこからゆったりとしたマスネの「タイスの瞑想曲」をたっぷりと。続いてメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲第一楽章」から哀愁に満ちたメロディーが奏でられると、ヴィエニャフスキー「創作主題による変奏曲」パガニーニ /クライスラー編曲「ラ・カンパネラ」と、演奏者と楽器が一体になる醍醐味が伝わる、ヴァイオリンの多彩な技巧が煌めく演奏が続き、最後は冒頭で演奏された、チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲 第一楽章」の、フィナーレ部分へとつながり、息もつかせぬ名曲ばかりの贅沢なメドレーが見事にフィニッシュ。会場は喝采の拍手に包まれた。

その拍手に応えるように、アンコールはこれもお馴染み、葉加瀬太郎の「情熱大陸」へ。会場から自然に手拍子が沸き起こり、益子がフロアーに降りて、ラウンジのソファーの間を練り歩きながらの演奏もあり、ステージと聴衆とが一体となって更に大きな拍手と歓声に包まれる中コンサートは終演。益子と小瀧ならではの、ジャンルレスな音楽が堪能できる時間となった。

思いがけずフロアライブも

思いがけずフロアライブも

音楽の楽しさを伝えたい意欲を持った、二人の共演

演奏終了後、熱気も冷めやらぬお二人に、お話を伺った。

――素晴らしい演奏をありがとうございました。演奏していて会場の雰囲気はいかがでしたか?

益子:すごくアットホームで、お客様を身近に感じて、一緒に音を共有できたことがとても楽しかったです。一生懸命聞いてくださって、温かい空気の中演奏することができました。

小瀧:僕はこちらのリビングルームカフェでは二回目の演奏で、前回も温かさが感じましたが、今日は特に演奏後の拍手の温かさが伝わって、幸せな気持ちになりました。

――選曲にあたっては、どんな工夫をされたのですか?

益子:普段はポップス系の曲を演奏することが多いのですが、今日は「クラシック・コンサート」ということなので、クラシック音楽ではあるけれども、皆様にポップスのように親しまれている、馴染みのあるサウンドやリズムのものを選んで、お客様に楽しんで頂けるようなプログラムになるように考えました。

益子侑

益子侑

――『美女と野獣』等が入ることによって、お子さんも喜ばれたと思います。

益子:そうなんです。小学生のお子さんが何人かいらして、演奏後「美女と野獣」の話をしにきてくれて。喜んでくれたのが伝わるお話が聞けて、私も元気をもらえました。

――小瀧さんは、ピアノソロに「愛の夢」を選ばれましたが。

小瀧:いくつか候補があったのですが、ちょうどバレンタインデーが近いこともあって、やはり「愛」がテーマかなと。

益子:「王子」ですしね。

小瀧:いや、待って、それ自分では思ってないから(笑)。でも曲想的にもこの空間にあっているかな?と思って選びました。

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

益子侑(ヴァイオリン)、小瀧俊治(ピアノ)

――また、メドレーが素晴らしかったです。

益子:楽曲の構成は自分で考えたのですが、大学までクラシックを勉強してきた中で好きだった曲を選んでいて、今日が初披露なんです。途中に入っているヴィエニャフスキーの「創作主題による変奏曲」は、卒業試験で弾いた曲で、個人的な思い出も詰め込んで作ってみました。

――とても楽しいメドレーで、有名なメロディーもどんどん出てくるので、次は?次は?と興味をひかれました。そのメドレーも含めて、ご一緒された小瀧さんはいかがでしたか?

小瀧:セットリストをもらった時に「幅広いな」という印象をまず持ちました。最初の「愛の挨拶」も元々原曲バージョンでやるつもりだったのですが、実際に今日聞いて頂いたような編曲のバージョンもお持ちで、本当に音楽性の幅が広いなと。クラシックの基礎がきちんとある上に、ポップスの要素などが入ってきている。オリジナル曲も素敵で、今回僕は初めてご一緒させて頂いたので、是非他の曲も聞いてみたなと思いました。

小瀧俊治

小瀧俊治

――お二人共、ジャンルを超えた活躍をされていますが、お互いの存在は刺激になっているのでは?

益子:刺激になりますし、尊敬しています。

小瀧:いや、こちらこそ。本当に一緒に演奏することこそ今日が初めてでしたけれども、SNS上で様々な活動の様子は見てきていたので。

益子:私もです!

小瀧:やっと一緒に演奏できて良かったです。

益子:私こそです。貴重な機会をありがとうございました。

――今後の活動についての夢などは?

益子:たくさんの方に演奏を聞いて頂きたいという気持ちが1番にあって、夢や希望、音楽の楽しさを、自分なりに多くの人たちに伝えられたら良いなと思っています。

小瀧:元々クラシックをやっていて、今色々な音楽もやっている中で、やはりクラシック音楽はどうしても広がりが難しい側面を持っているなと感じます。それをもう少し気軽に聴きに来て頂けるものにしたい、広く接して頂ける機会を作る為に、少しでも力になる活動をしていきたいと思っています。

――お二人の活躍を楽しみにしています。ありがとうございました。

小瀧俊治(ピアノ)、益子侑(ヴァイオリン)

小瀧俊治(ピアノ)、益子侑(ヴァイオリン)

取材・文=橘 涼香 撮影=荒川潤

サンデー・ブランチ・クラシック情報
2月25日(日)
滝千春/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月4日(日)

藤井香織/フルート&藤井裕子/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月11日(日)

あいのね/フルート、ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月18日(日)

但馬有紀美/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月25日(日)

太田糸音/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

4月8日(日)

寺下真理子/ヴァイオリン&SUGURU​/(from TSUKEMEN)ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

飯森範親と日本センチュリー交響楽団5年目のシーズンは勝負の時!~山口明洋演奏事業部長に聞く~

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大阪を代表するオーケストラ、日本センチュリー交響楽団と首席指揮者の飯森範親​は、4月より5年目のシーズンを迎えようとしている。2019年に楽団創立30周年を迎える両者にとって、来シーズンは正念場となりそうだ。

日本センチュリー交響楽団 首席指揮者 飯森範親 (C)山岸伸

日本センチュリー交響楽団 首席指揮者 飯森範親 (C)山岸伸

楽団は、2015年よりザ・シンフォニーホールで年間8公演2日連続開催としていた定期演奏会を、来年度から年間10公演1日開催にすると発表した。苦渋の決断を迫られた格好となった日本センチュリー交響楽団だが、これは非常に前向きな決断だったのではないか。来年度のシーズンパンフレットを見ていて気付いたのは、自主公演全体のバランスの良さ。

ザ・シンフォニーホールで行う定期演奏会のプログラムは、古典から現代曲まで色々な国のバラエティに富んだ作品を採り上げ、日本のオーケストラとして初めて劇場の指定管理に入った事でも話題となった豊中市立文化芸術センターを舞台に行う「豊中名曲シリーズ」では、非の打ちどころのない名曲が並ぶ。いずみホールを舞台に行う話題の「ハイドンマラソン」では、さまざまなハイドンの交響曲に並び、楽団のスター奏者を育てる目的で、首席奏者をソリストに起用するしたたかな側面も。

自主公演全体を見てその絶妙なプログラミングやキャスティングは、細部にこだわりながらも一貫して攻めの姿勢を貫いていて、見事のひと言!

演奏会の選曲を一手に担う演奏事業部長山口明洋に聞いてみた。

--2日連続公演を1日公演に戻す事になった訳ですが。

そうですね、こればかりは仕方有りません。もう一度基本に立ち返り、そのプログラムに合ったお客さまに向けてチケットをしっかり売っていかないと。多くのお客さまの前で一生懸命演奏する事がオーケストラにとってすべての基本です。しかし定期演奏会で2回本番演奏する事は、とても勉強になりました。

日本センチュリー交響楽団の快進撃の予感! (C)s.yamamoto

日本センチュリー交響楽団の快進撃の予感! (C)s.yamamoto

--定期演奏会を金曜と土曜に実施されていたのに、1公演に戻って木曜開催というのは驚きました。週末の金曜、土曜ではなく、木曜にされたのは、やはり他楽団とのバッティングを避けられたという事ですか?

そうですね。どうしてもオーケストラの演奏会は週末に集中します。貴重な一回の定期演奏会。確実にお越しいただきたいので、バッティングを避けて木曜日にしました。先日の山田和樹氏と樫本大進氏との特別コンサートは、火曜日開催でしたが満杯でした。しっかり演奏会の告知をしていけば、平日でもいっぱいになると思うのです。どうしてもマチネの演奏会がいいと仰る方は「豊中名曲シリーズ」をお勧めしていこうと思っています。

--他に力を入れられている事は有りますか。

先ほども申し上げました通り、確実にコンサートの告知を強化していこうと思っています。そのひとつがSNSの強化。ツイッターなんかの表現方法を従来とは変えてみました。その結果、フォロワーの数も急増しています。また、メディアとの関わりも余り上手くない当団ですが、その辺りも見直す必要が有ると思います。そして、何といっても個別の営業強化ですね。

--もともと大阪府のオーケストラだった訳ですから、営業的なセンスは余り必要無かったのかもしれませんね。

今となってはそんなことは言ってられません。しかし依頼公演は随分増えていますし、豊中市との関係は上手くいっていて、来年度から市内の中学生に向けた音楽鑑賞会の話も持ち上がっています。以前とは比較にならないほど忙しくなり、連続勤務なども悩みの種も有りますが、楽団としてここは一体となって乗り越えようという機運が高まっています。良いことだと思います。

--では演奏会についておうかがいします。定期演奏会10回の指揮者陣の内訳はどうなっていますか?

首席指揮者の飯森範親氏が全10回のうち4回指揮します。他では、お馴染みのジョセフ・ウォルフ氏、7年振りのガエタノ・デスピノーサ氏、オペラでご一緒したものの定期は初めてのキンボー・イシイ氏。

飛ぶ鳥を落とす勢いの若きマエストロ川瀬賢太郎 (c)Yoshinori Kurosawa

飛ぶ鳥を落とす勢いの若きマエストロ川瀬賢太郎 (c)Yoshinori Kurosawa

そして、飛ぶ鳥を落とす勢いの川瀬賢太郎氏とは、彼自身の東京国際コンクールの入賞者デビューコンサートでご一緒して以来、依頼公演では何度も共演していますが定期演奏会はこれが初めてとなります。初顔合わせはクリストフ・ケーニッヒ氏と、ミシェル・タバシュニク氏ですが、マルケヴィッチやブーレーズの薫陶を受け、カラヤンに才能を認められたタバシュニク氏との共演はとても楽しみです。

--特にこれは!といったプログラムを教えてください。

飯森範親氏が振る演奏会としては、キラール、カプスーチンといった現代作曲家の名前が並ぶ第230回定期演奏会と、オールR.シュトラウスプログラムの第232回定期演奏会でしょうか。R.シュトラウスでも「メタモルフォーゼン」や歌劇「インテルメッツォ」より“4つの交響的間奏曲”のような、比較的演奏機会の少ない曲を取り上げます。

オーボエの名手、ラモン・オルテガ・ケロはセンチュリー交響楽団と初共演。 (C)Steven Haberland

オーボエの名手、ラモン・オルテガ・ケロはセンチュリー交響楽団と初共演。 (C)Steven Haberland

この回に登場するオーボエのソリスト、ラモン・オルテガ・ケロ氏は、バイエルン放送響の首席奏者。40年振りのミュンヘン国際コンクールの覇者で、おそらく現在世界で一番上手いんじゃないでしょうか。

他では、先日アフィニス文化財団の助成(アフィニスエンブレム)をいただく事が決まった第231回定期演奏会。こちらはアイヴズやバーバー、ナイマンの曲を川瀬賢太郎氏が指揮します。珍しいプログラムですので、ぜひお聞きいただきたいですね。

初顔合わせとなるブリュッセル・フィルの名誉指揮者タバシュニク (C)jean-baptiste millot

初顔合わせとなるブリュッセル・フィルの名誉指揮者タバシュニク (C)jean-baptiste millot

そして、ミシェル・タバシュニク氏が指揮する第233回定期演奏会は、うちのオーケストラが得意としているストラヴィンスキーのバレエ組曲「火の鳥」(1919番)をどのように指揮されるのか、興味深いです!

--他にも第226回定期演奏会の、飯森範親さんのブルックナー交響曲7番は、先日の交響曲第4番「ロマンティック」が評判良かっただけに楽しみですね。大阪のお客さまはブルックナーを聴く耳はこえていらっしゃる方が多いですから。

飯森範親と日本センチュリー交響楽団5年目のシーズンがスタート! (C)s.yamamoto

飯森範親と日本センチュリー交響楽団5年目のシーズンがスタート! (C)s.yamamoto

小さな編成でお届けするブルックナーの音楽は、新鮮で刺激的だったようですね。ブルックナーは高関健氏、小泉和裕氏の時代にしっかり取り組んできました。自信を持ってお届け出来ます。

--評判の「ハイドンマラソン」は、来年度は2回の実施ですね。

4月からの半年間、いずみホールの改修が入る為、今年度の半数、2回の実施となります。それぞれの演奏会では、ハイドンのシンフォニーを3曲ずつ。

日本センチュリー交響楽団の顔、首席チェロ奏者 北口大輔

日本センチュリー交響楽団の顔、首席チェロ奏者 北口大輔

その間にいずみ定期Vol.39では当団の首席奏者、チェロの北口大輔のソロで黛敏郎「文楽」を……。

ソロにアンサンブルに大活躍のコンサートマスター松浦奈々 (C)s.yamamoto

ソロにアンサンブルに大活躍のコンサートマスター松浦奈々 (C)s.yamamoto

Vol.40ではコンサートマスター松浦奈々をソリストに、当団のコミュニティ・プログラム・ディレクター野村誠氏の「ポーコン」という作品を3人の打楽器奏者の伴奏でお聴きいただきます。

--「ハイドンマラソン」の演奏はすべてCD化されるご予定でしょうか?

現在2枚発売されています。演奏した曲はすべて録音しているのでストックは増える一方ですが、CD化は時間をかけてじっくり行っていこうと考えています。

--そして最後は「豊中名曲シリーズ」です。先日久しぶりに豊中市立文化芸術センター大ホールにうかがいましたが、随分響くようになりましたね。

センチュリー交響楽団のもう一つの本拠地、豊中市立文化芸術センター大ホール (C)s.yamamoto

センチュリー交響楽団のもう一つの本拠地、豊中市立文化芸術センター大ホール (C)s.yamamoto

そうですね、ホール全体が乾いて引き締まり、ようやく響きが安定してきました。どうしても時間がかかるようです。

来シーズンの豊中名曲シリーズ、先ずはオーケストラ・リベラ・クラシカを主宰する鈴木秀美氏を初めてお迎えします。

得意の古典派プログラムを指揮する鈴木秀美マエストロ

得意の古典派プログラムを指揮する鈴木秀美マエストロ

1曲目のボッケリーニのチェロ協奏曲では、弾き振りも披露していただきます。モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」とベートーヴェン交響曲第8番に関しては、古典作品を知り尽くされているマエストロだけに楽しみです。

前音楽監督 小泉和裕との音楽作りは楽団員にとって今も刺激的。 (c)Ivan Maly

前音楽監督 小泉和裕との音楽作りは楽団員にとって今も刺激的。 (c)Ivan Maly

続く飯森範親氏はドヴォルザークの交響曲第8番他を、小泉和裕氏にはベートーヴェン交響曲第2番とブラームス交響曲第4番という楽団にとっての王道プログラムを指揮していただきます。楽しみなのは27年ぶりにお迎えする大友直人氏によるイギリスプログラム。エルガーのチェロ協奏曲のソリスト山崎伸子さんとも1998年以来の共演となります。20年以上の時を経てどのような音楽が生まれるのか、どうぞご期待ください。

--最後に読者の皆さまに向けてメッセージをお願いします。

日本センチュリー交響楽団は2管10型とサイズ的には大きくはありませんが、緻密なアンサンブルと多彩なサウンドをもち合わせたオーケストラです。演奏会では私たちが作り出す音楽の魅力を皆さまに届けようと、全体のバランスを考慮したプログラム作りを心掛けています。どうか一度演奏会にお越しください。そして、皆さまの感想をお聞かせください。よろしくお願いします。

取材・文=磯島浩彰

公演情報
日本センチュリー交響楽団
 
定期演奏会
 
第224回定期演奏会
▮日時:4月5日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:飯森 範親
▮独奏:ワルター・アウアー(フルート)
▮曲目:
ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲
ライネッケ:フルート協奏曲 ニ長調
カリンニコフ:交響曲 第1番
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
 
第225回定期演奏会
▮日時:5月31日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:ジョセフ・ウォルフ
▮独奏:クロエ・ハンスリップ(ヴァイオリン)
▮曲目:
ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲 第4番
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
 
第226回定期演奏会
▮日時:6月14日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:飯森 範親
▮曲目:
ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」より”聖金曜日の音楽”
ブルックナー:交響曲 第7番 (ハース版)
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
 
第227回定期演奏会
▮日時:7月5日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:クリストフ・ケーニッヒ
▮独奏:ジャン・ワン(チェロ)
▮曲目:
チャイコフスキー:幻想的序曲「ロメオとジュリエット」
ショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲 第1番
シューマン:交響曲 第3番 「ライン」
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:3月14日(水)
 
第228回定期演奏会
▮日時:9月13日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:ガエタノ・デスピノーサ
▮独奏:アレクセイ・ボロディン(ピアノ)
▮曲目:
ラヴェル:組曲「クープランの墓」
プッチーニ:交響的奇想曲
ブラームス:ピアノ協奏曲 第2番
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:5月23日(水)
 
第229回定期演奏会
▮日時:10月25日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:キンボー・イシイ
▮独奏:荒井 英治(ヴァイオリン)
▮曲目:
J.S.バッハ:「音楽の捧げもの」BWV1079より"6声のリチェルカーレ"(ウェーベルン編曲)
R.シュトラウス:楽劇「ばらの騎士」よりワルツ
コルンゴルト:ヴァイオリン協奏曲
モーツァルト:交響曲 第41番「ジュピター」
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:6月13日(水)
 
第230回定期演奏会
▮日時:11月15日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:飯森 範親
▮独奏:川上 昌裕(ピアノ)
▮曲目:
キラール:オラヴァ
カプースチン:ピアノ協奏曲 第5番
リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:7月11日(水)
 
第231回定期演奏会
▮日時:12月6日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:川瀬 賢太郎
▮独奏:マハン・エスファハニ(チェンバロ)
▮曲目:
アイヴズ:答えのない質問
バーバー:弦楽のためのアダージョ
ナイマン:チェンバロ協奏曲
アイヴズ:交響曲 第2番
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:8月1日(水)
 
第232回定期演奏会
▮日時:2019年2月14日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:飯森 範親
▮独奏:ラモン・オルテガ・ケロ(オーボエ)
▮曲目:
R.シュトラウス:メタモルフォーゼン(23の独奏弦楽器のための習作)
R.シュトラウス:オーボエ協奏曲 ニ長調
R.シュトラウス:歌劇「インテルメッツォ」より"4つの交響的間奏曲"
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:10月17日(水)
 
第233回定期演奏会
▮日時:2019年3月7日(木) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:ザ・シンフォニーホール
▮指揮:ミシェル・タバシュニク
▮独奏:アレクサンドラ・スム(ヴァイオリン)
▮曲目:
ラロ:スペイン交響曲
モーツァルト:交響曲 第36番「リンツ」
ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
▮料金:A席6000円、B席4500円、C席3500円、D席1500円
※チケット発売:11月7日(水)

いずみ定期演奏会
 
いずみ定期演奏会No.39「ハイドンマラソン」
▮日時:10月19日(金) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:いずみホール
▮指揮:飯森 範親
▮独奏:北口 大輔(チェロ)
▮曲目:
ハイドン:交響曲 第61番
ハイドン:交響曲 第39番
黛 敏郎:文楽(無伴奏チェロによる独奏)
ハイドン:交響曲 第73番 「狩り」
▮料金:A席4500円、B席3500円
※チケット発売:6月13日(水)
 
いずみ定期演奏会No.40「ハイドンマラソン」
▮日時:2019年1月25日(金) 19:00開演 (18:00開場)
▮会場:いずみホール
▮指揮:飯森 範親
▮独奏:松浦 奈々(ヴァイオリン)
▮曲目:
ハイドン:交響曲 第12番
ハイドン:交響曲 第65番
野村 誠:ポーコン(ヴァイオリンとポータブル打楽器のための協奏曲)
ハイドン:交響曲 第94番 「驚愕」
▮料金:A席4500円、B席3500円
※チケット発売:9月26日(水)
 
センチュリー豊中名曲シリーズ
 
センチュリー豊中名曲シリーズVol.7
▮日時:5月26日(土) 15:00開演 (14:15開場)
▮会場:豊中市立文化芸術センター 大ホール
▮指揮・チェロ:鈴木 秀美
▮曲目:
ボッケリーニ:チェロ協奏曲 ト長調
モーツァルト:交響曲 第35番「ハフナー」
ベートーヴェン:交響曲 第8番
▮料金:S席:4,500円/A席:3,500円/B席:2,500円
 
センチュリー豊中名曲シリーズVol.8
▮日時:7月14日(土) 15:00開演 (14:15開場)
▮会場:豊中市立文化芸術センター 大ホール
▮指揮:飯森 範親
▮独奏:ハンス・ペーター・シュー(トランペット)
▮曲目:
スメタナ:連作交響詩「我が祖国」より”モルダウ”
ネルーダ:トランペット協奏曲
ドヴォルザーク:交響曲 第8番
▮料金:S席:4,500円/A席:3,500円/B席:2,500円
※チケット発売:3月14日(水)
 
センチュリー豊中名曲シリーズVol.9
▮日時:9月29日(土) 15:00開演 (14:15開場)
▮会場:豊中市立文化芸術センター 大ホール
▮指揮:小泉 和裕
▮曲目:
ベートーヴェン:交響曲 第2番
ブラームス:交響曲 第4番
▮料金:S席:4,500円/A席:3,500円/B席:2,500円
※チケット発売:5月23日(水)
 
センチュリー豊中名曲シリーズVol.10
▮日時:2019年2月2日(土) 15:00開演 (14:15開場)
▮会場:豊中市立文化芸術センター 大ホール
▮指揮:大友 直人
▮独奏:山崎 伸子(チェロ)
▮曲目:
ディーリアス:歌劇「村のロメオとジュリエット」より”楽園への道”
エルガー:チェロ協奏曲
ヴォーン・ウィリアムズ:トマス・タリスの主題による幻想曲
ブリテン:青少年のための管弦楽入門 - パーセルの主題による変奏曲とフーガ
▮料金:S席:4,500円/A席:3,500円/B席:2,500円
※チケット発売:9月26日(水)
 
▮公式サイト:http://www.century-orchestra.jp/
 

May J.、柏木由紀、SKE48らがディズニーの名曲カバーを披露 『Thank You Disney Live 2018』閉幕

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2月17日(土)、中野サンプラザにて『Thank You Disney Live 2018』が行われた。このイベントは、ディズニーカバーアルバム『Thank You Disney』の発売を記念したスペシャルライブで、May J.や柏木由紀など、多くのアーティストが生演奏でディズニーの名曲を披露した。

このアルバムは、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』、ディズニー・チャンネル・オリジナル・ムービー『ハイスクール・ミュージカル』『ディセンダント』シリーズを手がけたケニー・オルテガをエグゼクティヴ・プロデューサーに迎えて制作され、昨年10月にリリースとなった。

『Thank You Disney Live 2018』Beverly

『Thank You Disney Live 2018』Beverly

浮かび上がるミッキーマウスのシルエットの中、フルバンドによるオープニングメドレーで幕を開けると、トップバッターのBeverlyが登場。突き抜けるハイトーンボイスが際立つ「愛を感じて」で会場の度肝を抜き、続くSOLIDEMOは、見事なハーモニーを響かせ、SOLIDEMOとMiracle Vell Magicによるスペシャルな「ホール・ニュー・ワールド」や、Thank You Disney Special Bandとの見事なコラボレーションで、「アンダー・ザ・シー」を披露したSKE48、「輝く未来」を歌いあげた柏木由紀、そして宮本笑里による「星に願いを」などこの日でしか見ることのできないスペシャルなステージは終始、観客達を魅了。

『Thank You Disney Live 2018』柏木由紀

『Thank You Disney Live 2018』柏木由紀

『Thank You Disney Live 2018』SKE48

『Thank You Disney Live 2018』SKE48

『Thank You Disney Live 2018』宮本笑里

『Thank You Disney Live 2018』宮本笑里

そしてトリを飾ったMay J.による圧巻の「レット・イット・ゴー」でイベントは大盛況のうちに幕を閉じた。なお、このイベントのために作られたオリジナルグッズはオフィシャルサイトにて購入可能とのことなので、行けなかった人は是非チェックして欲しい。

『Thank You Disney Live 2018』May J.

『Thank You Disney Live 2018』May J.

『Thank You Disney Live 2018』

『Thank You Disney Live 2018』

『Thank You Disney Live 2018』

『Thank You Disney Live 2018』

『Thank You Disney Live 2018』SOLIDEMO

『Thank You Disney Live 2018』SOLIDEMO

『Thank You Disney Live 2018』

『Thank You Disney Live 2018』

 
■Thank You Disney LIVE 2018セットリスト
01.Opening JAM –Thank You Disney medley 1 -  / Thank You Disney Special Band
02.愛を感じて (ライオン・キング)/ Beverly
03.そばにいて(魔法にかけられて) / Beverly
04.魔法にかけられて – 組曲 / Thank You Disney Special Band
05.思いを伝えて(魔法にかけられて) / SOLIDEMO
06.トライ・エヴリシング(ズートピア) / SOLIDEMO
07.ホール・ニュー・ワールド(アラジン) / SOLIDEMO
08.悪の力を呼び覚ませ(ディセンダント2) / Miracle Vell Magic
09.始まりの予感 – ハイスクール・ミュージカル劇中曲/ Thank You Disney Special Band
10.みんなスター(ハイスクール・ミュージカル) / SKE48
11.アンダー・ザ・シー(リトルマーメイド) / SKE48 with Thank You Disney Special Band
12.フー・イズ・シー(シンデレラ) / Thank You Disney Special Band
13.夢はひそかに(シンデレラ) / 柏木由紀
14.輝く未来(塔の上のラプンツェル) / 柏木由紀 with Thank You Disney Special Band
15.美女と野獣(美女と野獣) / 柏木由紀 with Thank You Disney Special Band
16.もう糸はいらない(ピノキオ劇中曲)  /  Thank You Disney Special Band
17.星に願いを(ピノキオ劇中曲) / 宮本笑里 with Thank You Disney Special Band
18. いつか王子様が(白雪姫)、いつか夢で(眠れる森の美女)、
パート・オブ・ユア・ワールド(リトルマーメイド / May J. with 宮本笑里 & hank You Disney Special BAND 
19.イフ・オンリー(ディセンダント) / May J.
20.レット・イット・ゴー<英語ver.>(アナと雪の女王) / May J.
21.Ending Jam – Thank You Disney Medley 2- / Thank You Disney Special Band – ALL LINEUP -

 


45分の大熱演! 声楽アンサンブルユニット「文代fu-mi-yo」によるオペラ『フィガロの結婚』

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2018.1.14 ライブレポート

日曜のお昼時、ゆったりとクラシック音楽に耳を傾けながら過ごす『サンデー・ブランチ・クラシック』。1月14日に登場したのは声楽ユニット「文代fu-mi-yo」だ。

中須美喜(ソプラノ)、萩野久美子(ソプラノ)、大平倍大(テノール)、石井基幾(バリトン)の4人が、モーツァルトの名作オペラ『フィガロの結婚』を初上演。本来なら上演時間約3時間の主要な登場人物だけでも10人はいるというオペラをわかりやすく、しっかりストーリーの本筋にものっとって45分で熱演した。

歌と共に熱演を繰り広げるメンバーのパフォーマンスに、時には笑いも起こった楽しいひと時をレポートしよう。

ナビゲーターはバジリオ。フィガロと伯爵は2役

“舞台”が始まり、最初に登場するのはバジリオ役の大平。
「このお話に登場するのはフィガロとその婚約者スザンナ、ちょっとエッチな伯爵と、そのしおらしい夫人……」と登場人物を紹介する。バジリオは伯爵家の音楽教師で、いわゆる脇役だが、この文代fu-mi-yo版ではナビゲーター役だ。

そして登場するフィガロ役の石井とスザンナ役の萩野。結婚を前にした2人が、部屋にベッドが入るかどうかを確認しながらの二重唱が歌われる。陽気なフィガロと元気なスザンナの、結婚を前にしたウキウキした気持ちが伝わってきてかわいらしい。一方で萩野スザンナは、伯爵が色目を使い逢引を持ちかけてきた話も打ち明ける。

続いて恋する少年ケルビーノが登場するが、彼は指人形。伯爵夫人に恋する思いをスザンナに打ち明けているところに、当の伯爵が彼女を口説きにやってくる。伯爵は石井の2役。ここで歌われるのは伯爵とバジリオ、スザンナの三重唱だ。歌はもちろんのこと、演技も熱が入っており、オペラ歌手は同時に役者であるなぁと、改めて思わせられる。

しっとりとした伯爵夫人。スザンナは元気いっぱい

ピアノの「ポロロン」という音とともに場面が転換し、伯爵夫人役の中須が登場。この夫人の登場でドタバタとした雰囲気が一転してしっとりと、アンニュイな空気に変わる。

夫である伯爵の冷たさに嘆く伯爵夫人のアリアが歌われ、夫人を心配する萩野スザンナは「伯爵をこらしめましょう!」と提案をもちかける。つまりスザンナが伯爵と逢引を仕掛け、伯爵夫人がスザンナの服を着てその現場に行くという算段だ。

「女性を怒らせたらコワイですね」と大平バジリオが、随所で客席とのコミュニケーションを取り、場を温める。客席と舞台も場が進むにつれてどんどん馴染んでいく。

「ポロロン」ののち、スザンナは伯爵と逢引の約束。2人の二重唱とともにお話は伏線の回収に入っていく。石井伯爵のやに下がりっぷりが絶妙で、会場からはクスクス笑いが起こる。

続いて伯爵夫人のアリア「楽しい思い出はどこへ」。『フィガロの結婚』のなかでも有名なアリアの一つだ。さらにスザンナと伯爵夫人が伯爵をおびき出すための手紙を書く二重唱へと続き、お話はいよいよクライマックスへ。

伯爵と夫人の和解とフィナーレ。あっという間の45分

いよいよお話も終盤へ。その前に、バジリオのアリア「元気に溢れ血気にはやる」が歌われる。しばしばカットされることの多いこの曲だが、今回は大平が熱唱する。


そして物語はクライマックス。スザンナはフィガロへの思いを乗せてアリア「恋人よ、早くここへ」を歌う。そこへ罠にかかった伯爵が逢引の場所へ現れ、そこには「あなた……!」と奥様が。伯爵は反省し、夫妻の二重唱から全員が登場しての終曲が歌われ、華々しく幕が下りる。

会場からは大きな拍手。3時間のオペラの大筋はがっつりと押さえ、しかし45分で駆け抜けた、愉快な文代fu-mi-yo版フィガロ。有名なオペラのあらすじもすっと入ってくる、楽しい舞台であった。

それぞれが役柄を演じる工夫を

上演後、文代fu-mi-yoの皆さんにお話を伺った。

――熱演ありがとうございました。前回の『愛の妙薬』に続き2回目の出演となりましたが、お客様の反応はいかがでしたか?

大平:楽しかったです。最初は空気が硬いかなと思ったんですが、喜劇ですし、笑わせなきゃと思いました。

――『フィガロの結婚』を45分にまとめるのは大変だったのでは? 脚本や演出は皆さんで考えられたのですか。

大平:そうです、ファミレスにこもって(笑)。 構成を考えるだけで3、4回集まりました。

中須:台詞もちゃんと台本を書いてやりました。

――石井さんはフィガロと伯爵の2役でしたね。

石井:前回の『愛の妙薬』も2役だったんです。『フィガロの結婚』は、主人公はフィガロですが、ストーリーは伯爵と夫人の心情が中心。だから今回はそれぞれの心をしっかり歌おうと思いました。大平君がナビゲーターとしてお客様とのコミュニケーションに付きっきりになってくれたので、集中できました。

――伯爵夫人の中須さんはいかがでしたか。

中須​:私は普段明るい性格なんですが、今回はがんばってしおらしい夫人になろうと思いました(笑)。 いつもと違うカラーでできたかなと。

――萩野さんはスザンナでしたね。

萩野:今回は5人のキャラを際立たせたかったんです。ナビゲーターのバジリオ、しおらしい伯爵夫人。ではスザンナは?と思った時、いろいろと考えたのですが、最終的には“やんちゃ”で。ですから髪の毛もちょっと外はねにして、元気いっぱいのスザンナとして演じました。

――大平さんには、滅多に歌われないバジリオのアリアを一曲ご披露していただきました。カットされることが多いと聞きましたが。

大平:最近は少しずつ歌われるようになってきているようですが、10~20年前はほぼカットされていました。結構難しいんです、あのアリア。

――ナビゲーターをバジリオとしたのは何故でしょう。

大平:一般的にテノールは主演や王子の役が多いんですが、『フィガロの結婚』の主要な登場人物――伯爵やフィガロはバリトンなんです。テノールはキャラクターテノールとしてバジリオがいる。なので、キャラクターとして出すならバジリオだし、じゃあナビゲーターもと。本当のオペラではそれほど大事な役じゃないのですが、今回は大事な役なので、とにかく噛まないようにしようと思いました(笑)。

――今回45分のオペラを上演した意図は。

萩野:わかりやすくとっつきやすく、オペラ自体を楽しんでもらうためです。

大平:一般の方にとってはオペラを見に行くというのは着飾って行かなきゃいけないとか、高額というイメージがある。でも決してそうではなく、安く買えるチケットもある。そうしたなかで、まずはきっかけ作りが大事だなと。

でもいきなり『フィガロの結婚』を3時間も見たら絶対寝ちゃうじゃないですか。でもこういう形で音楽も聴きつつ、お話も短くして笑いも入れると、ちょっとだけでも興味を持ってもらえるのではないかと。こういう公演が何かのきっかけになってくれたらいいなと思います。

――ユニット結成のきっかけはなんだったのでしょう。

大平:全員大学の同級生で、偶然ご飯を食べに行ったんです。

石井:お寿司の食べ放題に。そしたら待ち時間が長かった。

大平:そこで話が盛り上がって、4人で演奏会をやってみようかという話になりました。

石井:ちょうど声種も別れていたし。ソプラノ、テノール、バリトンと。

――今後はどういった形で活動されていこうとお考えですか。

萩野:一緒にグループを組んでコンサートをやるというのは、向かいたい方向や、どういう公演にしたいか、どんなお客さんに、どんな気持ちで聴いてほしいかなど、ある程度同じ方向を向いていないと難しいんです。この4人は全くじゃないですけど、大体同じ方向を向いてやれる。そこで様々な要望に応えながら、できることをどんどんやっていこうと思います。

大平:この4人のいいところは、意外と曲のジャンルを問わないところです。宗教曲、オペラ、ちょっとポップス寄りの曲と、いろいろできるのが魅力だと思います。

萩野:今回CDを作った際も、いろいろな文代fu-mi-yoをみせるためにオペラの曲、美空ひばりさん「川の流れのように」、宗教曲などを集めました。

――様々なジャンルを歌いながら、また次へと活躍の場を広げていく感じですね。ありがとうございました。

文代fu-mi-yo

文代fu-mi-yo


取材・文=西原朋未 撮影=中田智章

文代fu-mi-yo公演情報
森トラスト・ランチタイムコンサート
日時:2月22日(木) 12:10~13:00
会場:丸の内トラストタワーN館・1階エントランスホール
https://www.mori-trust.co.jp/concert/schedule/marunouchi.html

山手の丘メロディーガーデン4
日時:4月7日(土) 13:00~
会場:横浜市イギリス館
https://tiget.net/events/19556 

 

サンデー・ブランチ・クラシック情報
2月25日(日)
滝千春/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月4日(日)

藤井香織/フルート&藤井裕子/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月11日(日)

あいのね/フルート、ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月18日(日)

但馬有紀美/ヴァイオリン
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

3月25日(日)

太田糸音/ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

4月8日(日)

寺下真理子/ヴァイオリン&SUGURU​/(from TSUKEMEN)ピアノ
13:00~13:30
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

国内最大級のクラシック音楽祭『ラ・フォル・ジュルネ東京』 2018年のGWは音楽三昧! 丸の内と池袋で400公演を開催

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「熱狂の日」として知られるクラシック音楽祭『ラ・フォル・ジュルネ東京(LFJ)』が、今年は5月3日から5日の3日間、東京国際フォーラム(千代田区丸の内)と、新たに加わった東京芸術劇場(豊島区池袋)の2会場を中心に開催される。1995年、フランスのナントで生まれ、2005年に東京に上陸したこの音楽祭は、「気軽にクラシック音楽にふれられる機会」としてゴールデンウィークのイベントとして定着し、13回目の昨年は約42万人を集めた。

14回目となる2018年から『ラ・フォル・ジュルネ東京』として名称を一新。「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」をテーマに、2地域で計約400公演が予定されている。このほど今年のLFJの概要について、アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタン氏を迎え記者会見が行われた。

テーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」

記者会見冒頭、KAJIMOTOの梶本眞秀代表取締役社長は「2005年の開始以来、音楽提供の実験室であり続けてきた」と挨拶。メジャーな音楽から普段聴く機会の少ないもの、子供連れでも入場可能な「0歳からのコンサート」など、多彩な音楽を提供してきたLFJは今年も実に多彩な音楽プログラムを用意している。

2018年からロゴも一新

2018年からロゴも一新

まず今年のテーマは「モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ」。マルタン氏によると、亡命や移住、移動など「新しい世界」を求めた音楽家や音楽をテーマに、中世から現代まで、「例年以上に幅広いプログラムでお届けする」。

例えば、「亡命」というテーマでは故国ポーランドを離れフランスで活躍したショパンや、ロシア革命でアメリカに渡ったラフマニノフやプロコフィエフ、第二次世界大戦で祖国を離れたヒンデミットやシェーンベルクの曲が取り上げられる。

また自身の意志で新天地へ渡った音楽家としてドボルザークやヘンデル、リュリなどの曲が組み込まれるほか、「音楽の世界に救いを求めた」という視点から、シューベルト(「冬の旅」)なども演奏される予定だ。さらに中世の十字軍歌や吟遊詩人の音楽、旅から旅を重ねたジプシー(ロマ)の音楽、アメリカで誕生したブルースやジャズ、アルゼンチンタンゴなど、例年になく幅広いラインナップとなっている。

多様なジャンルのミュージシャンが集結

こうした音楽を演奏するミュージシャンも多彩。LFJではすでにおなじみとなったピアニスト、ボリス・ベレゾフスキーや、若手ピアニストとして年々注目度が高まっているレミ・ジェニエやルーカス・ゲニューシャスは今年も来日予定だ。ヴァイオリニストの前橋汀子、イ・ムジチ合奏団の初登場も話題となるだろう。

国際色も豊かだ。
毎年おなじみの林英哲と英哲風雲の会による和太鼓は、今年没後50年になる藤田嗣治へのオマージュを奏でるという。英国からはルネッサンス音楽を奏でるリコーダー四重奏が参加。中世の音楽を得意とするフランスのアンサンブル・オブシディエンヌ、ジプシー・ヴァイオリンの名手シュポルツルのほか、アコーディオンによるアルゼンチンタンゴ、ニューオリンズ・ジャズのブラスバンドなど、国もジャンルも幅広い音楽家が集まることになる。東京にいながら、様々な世界の音楽シーンにふれるチャンスとなるだろう。

丸の内と池袋で約400公演

会場はお馴染みの東京国際フォーラムを中心とする丸の内エリアに、今年から東京芸術劇場を中心とした池袋エリア(豊島区)が加わった。豊島区では、2019年には芸術劇場前の公園に野外劇場を設けた広場を建設するなど文化都市を目指し再開発を行っている。高野之夫豊島区長によると、マルタン氏に「変わる可能性がある街、というお墨付きをいただいた」とのことで、LFJの初開催に意欲的。

高野之夫豊島区長

高野之夫豊島区長

有料公演は丸の内エリアで125公演、池袋エリアで53公演、無料公演も含めると2地域合計で約400公演が予定されている。無料公演は全公演の約3分の2で、丸の内では国際フォーラム前の広場や地下ホール、大手町などで、池袋では南池袋公園などで予定されている。有楽町と池袋は地下鉄有楽町線で約19分。「コンサートのハシゴも可能なので、ぜひ2つの会場で音楽を楽しんでほしい」とマルタン氏。

有料公演は1500~3000円(予定)。今年からLINEを利用したオンラインチケットを導入するなど、新たな試みも加えられている。

バーンスタイン生誕100周年記念に最後の愛弟子・佐渡裕が“恩返し” 映画『ウエスト・サイド物語』全編映像に合わせてフルオーケストラ生演奏

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2018年8月4日(土)、5日(日)に、バーンスタイン生誕100周年記念として『佐渡裕指揮「ウエスト・サイド物語」シネマティック・フルオーケストラ・コンサート』が開催される。本公演では、佐渡裕指揮のもと、映画『ウエスト・サイド物語』全編映像に合わせてフルオーケストラ生演奏がおこなわれる。全ての演奏者と映画の登場人物が一体となる渾身の公演である。


本公演は、舞台上の大スクリーンで映画全編を上映し、目の前でフルオーケストラの生演奏を合わせるシンクロライブ。1961年に誕生したアカデミー賞10部門受賞の完璧なパッケージ(映画)の感動と、現代に生きるミュージシャンたち(オーケストラ)がその瞬間に音楽を創り上げる感動が共存する。オーケストラ音は削除され、効果音と台詞、歌声だけ残した映像、例えば、冒頭のフィンガースナップ、トニーやマリアの歌、ジェット団シャーク団の体育館のダンスなどのシーンに、指揮者は耳に入るクリック音を頼りに約100名のオーケストラの演奏をぴったりと合わせなければならない。

「トゥナイト」「マリア」「サムホエア」「アメリカ」「マンボ」「クール」「ワンハンド・ワンハート」「クインテッド」など名曲の数々、そして「エンドクレジット」までもがノーカットで、映画に合わせて演奏され、再構築されていく。映像は待ってくれないから、少しの狂いも許されない、実に「音楽を扱う職人たち」が繰り広げるスリリングなコンサートだ。

この緊張感溢れるコンサートの指揮を担うバーンスタインの最後の愛弟子、佐渡裕は、“『ウエスト・サイド物語』の音楽に魅かれる理由は、複雑な構成の中での奥深さだ”と言う。決して聴きやすいだけではない、頭と心に残る音楽。「シネマティック・フルオーケストラ・コンサート」だからこそ、天才バーンスタインを真に感じ取ることができるはずだ。

佐渡裕メッセージ

佐渡裕 (C)Takashi Iijima

佐渡裕 (C)Takashi Iijima

私がバーンスタインに初めて会ったのは26歳の時、その後彼の晩年に3年ほど師事しました。彼の指揮姿を見ていなかったら今の自分はなかったと思います。バーンスタインに色んな出会いやチャンスを頂きましたが、今年の1月には生誕100年を記念して彼の交響曲を指揮するためにアメリカデビュー(56歳にして)も果たしました。

“バーンスタイン生誕100周年”は、僕の中では「彼への恩返し」をする時という強い思いがある。彼に出会うことができた一人として、彼の作品の素晴らしさ、音楽の面白さを今こそ、そして生涯伝えていきたいと思っています。

「シネマティック・フルオーケストラ・コンサート」は私にとっても本当に難しい技術を求められ、一時も気を緩められない公演です。けれど皆さんは、難しいことは考えず、観て、聴いて、感じてもらえればいいと思う。当時のアメリカの天才たちが集まって作った傑作を、五感全部を使って堪能してください。
 

レナード・バーンスタイン

レナード・バーンスタイン

レナード・バーンスタイン(1918~1990年)
アメリカ生まれのユダヤ系移民二世。作曲家、指揮者、教育者。カラヤンと並び、世界的評価を受けた20世紀クラシック界の巨匠。ハーヴァード大学で理論と作曲を学び、カーティス音楽院ではフリッツ・ライナーに師事する。1943年、セルゲイ・クーセヴィツキーに認められ、ニューヨーク・フィルの副指揮者に就任。同年にブルーノ・ワルターの代役としてデビューし、大成功を収めた。1958年から1969年まで同フィルの音楽監督をつとめ、退任後はウィーン・フィルをはじめ、数多くのオーケストラの客演指揮者として名演を重ね、世界中に感動を巻き起こした。また、クラシック界のみならず、ミュージカルでも“ウエスト・サイド物語”(1957)ほか不朽の名作を残すなど、作曲家としても幅広く活躍し、その作品は今も多くの人々に影響を与え続けている(『バーンスタイン わが音楽的人生』より) 

 

METライブビューイング2017-18《トスカ》(新演出)、石丸幹二トークショー「今まで見た中で最高の《トスカ》」

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METライブビューイングで現在上映されているプッチーニのオペラ《トスカ》(新演出)。このほど新宿ピカデリー(東京)に俳優の石丸幹二を招き、上映前にトークショーが行われた。

今回の《トスカ》はデイヴィッド・マクヴィカーによる新演出で、ローマに現存する舞台となった建物が忠実に再現されている。出演はトスカにソニア・ヨンチェヴァ、カヴァラドッシにヴィットーリオ・グリゴーロ、スカルピアにジェリコ・ルチッチというスターを並べた舞台は、「今まで《トスカ》のなかで最もドラマチック」と石丸も絶賛だった。

■特等席で世界最高峰のオペラを存分に楽しめる

トークショー当日はオリンピック・フィギュアスケート男子の活躍に沸く日曜の朝。にもかかわらず、会場はほぼ満席の大盛況だ。

今回上映されるオペラ《トスカ》はMETでは1月27日に上映されたもの。現地の上演からほとんど間を置かずに、また数台のカメラを駆使して収録した作品を大スクリーンでたのしめるのは「ある意味特等席ですね」と石丸。

クラシック番組の司会を務める石丸は昨年、オペラの名曲などを録音したCD「石丸幹二のクラシックへようこそ」をリリースした。実はその中に今回上演されるオペラ《トスカ》のカヴァラドッシが3幕で歌うアリア『星は光りぬ』が収録されている。

「以前、プラシド・ドミンゴが出演した《トスカ》を観たが、ピアニッシモが絶妙だった。それ以来、《トスカ》は自分の中では外せない、大切なオペラなんです」と話す。

■憎々しいのにセクシーなスカルピア。出演者の迫力ある演技にも注目

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

プッチーニの《トスカ》は1800年代のローマが舞台。ナポレオン戦争により共和制となったローマが、ナポレオンの没落と共に再び保守派の圧政にあるなかで、共和主義者の画家カヴァラドッシとその恋人である歌姫トスカ、そして警視総監のスカルピアの3人が繰り広げる愛憎入り混じる悲劇だ。

石丸は「非常にドラマチック。《トスカ》はいろいろな作品を観ましたが、今回のMETのものはとても演劇的。オペラ歌手は歌う役者だと思っているが、まるで演劇を見ているような臨場感がある。歌がなければ普通のドラマと同じで、演技も自然で心理描写が素晴らしい。見ていてワクワクしました」と話す。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

主演のヨンチェヴァをはじめグリゴーロ、ルチッチについても「みんなハマっている。とくに主演のトスカ(ヨンチェヴァ)はオペラ歌手という設定で当然技術が要求される。また、トスカはわがままで奔放な女性だと言われるが、ヨンチェヴァのトスカは私が今まで見たトスカのどれとも違う。我儘だけじゃない何かがあるんです」という。

悪役スカルピア(ルチッチ)についても「ホントに悪い。最悪(笑) でも攻め方が憎々しいのにとてもセクシー。あの演技、盗もうと思いました(笑)」とも。

■ローマの実在の場所が舞台。リアリティ満点

このオペラ《トスカ》は実在するローマの名所を舞台としているのも話題の一つだ。

1幕の聖アンドレア・デラ・ヴァレ教会、2幕のファルネーゼ宮殿、3幕のサンタンジェロ城など、幕間のインタビューでスタッフが「現存する場所は何も手を加える必要がないほどに、十分に美しい」と語ったように、すべてが現存する建物を忠実に模している。そしてそれが生々しい物語に、一層のリアリティを与えている。

「特に2幕のスカルピアの部屋。トスカとスカルピアのやり取りの後ろで暖炉の炎がチラチラと燃えているのがとても効果的。火にあおられるように燃える男女のやり取りという感じでゾクゾクしました」と石丸。

またカヴァラドッシが描く聖母マリアの絵、3幕冒頭の演出などの見どころを紹介し、さらに「セットは実は傾斜している。それによる遠近感と奥行きの効果が素晴らしいんです」と役者らしいコメントも語ってくれた。

ライブビューイングは幕間の歌手やスタッフへのインタビューも見どころのひとつだ。「インタビュアーもオペラ歌手だから質問もツボを突いているし、回答も理路整然としている。同じ舞台人として参考になりました」(石丸)。

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera

さらに今回カヴァラドッシを演じるグリゴーロはローマ生まれのローマっ子。しかも13歳のときにパバロッティがカヴァラドッシを演じた際に、3幕冒頭の羊飼いの少年の歌を歌っていたという。「この役はどうしてもやりたかった」と幕間のインタビューで語るグリゴーロのエピソードも「必見です!」とも。

オペラは敷居が高いという印象を抱く人も少なくはないが、石丸は「ミュージカルもオペラも、どちらも歌を介して物語を伝えるもの。ミュージカルは現代のオペラともいえます。役者としてもオペラから学ぶことはとても多い」と話す。そして最後に「『愛のために死ねる』のは、現実には無理ですが、オペラの中でならあり得ます。オペラは大人の夢物語。皆様どうぞ、ハンカチを忘れずに」と締めくくった。

19世紀のローマがそのまま再現されたオペラ《トスカ》。瞬く間に時間が過ぎる見応えのある作品だ。

日本のオーケストラの礎を築いた恋多き作曲家、山田耕筰の足跡と管弦楽作品を、NHK-BSプレミアム『クラシック倶楽部』で紹介

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山田耕筰(1886~1965)は、一般に『赤とんぼ』『からたちの花』『待ちぼうけ』『この道』をはじめとする歌曲の作曲家として知られている。だがそれだけではなく、日本人で初めて交響曲や交響詩を作り、プロのオーケストラを組織するなど、文明開化期の日本に管弦楽の礎を築いた人であった。俳優の中島歩がその足跡をたどりながら、山田が希望に燃える若き日に作曲した管弦楽曲を、広上淳一指揮、東京フィルハーモニー交響楽団演奏でお届けする。

山田は、東京音楽学校(現・東京藝術大学)声楽科卒業後、三菱財閥の岩崎小弥太男爵(1879~1945)の支援を受けて、1910年(24歳)から約4年間ドイツに留学。ベルリンでマックス・ブルッフ(1838~1920)らに作曲を教わり、1912年に『序曲二長調』や交響曲『かちどきと平和』、1913年に交響詩『曼陀羅の華』など、管弦楽曲を積極的に創作した。帰国後は、これらを、岩崎が主宰していた音楽会「東京フィルハーモニー会」で、自ら指揮して初演し、楽団の常設化に乗り出す・・・。実に順風満帆にみえるが、破天荒な私生活が影響して、楽団解散という事態を招いてしまう。

山田は恋多き男で、ドイツ留学前から帰国後30歳頃までは、日本人やドイツ人の女性と浮き名を流し、婚約しては解消するの繰り返し。まさに「教科書に載せられない」私生活で、最初の結婚をするや今度は不倫騒動を起こし、岩崎男爵の逆鱗に触れて楽団支援を打ち切られ、たった1年で前述の楽団解散を余儀なくされたのだった。だがオーケストラへの思いは強く、後に、NHK交響楽団の前身となる日本交響楽協会を創設するも、仲間との不協和音で分裂など、波瀾万丈の人生はまだまだ続くのであるが。

さて、留学時代の山田は、リヒャルト・シュトラウス(1864~1949)に傾倒。弟子入りを志願するも講師料が高くて断念したときく。R.シュトラウスといえば、映画『2001年宇宙の旅』の『ツァラトゥストラはかく語りき』が有名である。管楽器や弦楽器を駆使し打楽器を効果的に用いた色彩豊かでどこか官能的でもあるサウンドは、なかなか複雑だ。

山田はそれを独学で研究し、1913年に交響詩『曼陀羅の華』を作曲。父を亡くした親友の詩や心情をモチーフに書いたといわれる。詩は、真っ赤な太陽が沈んで、暗闇に浮かぶ父の幻影を追いかけようとするが見失ってしまい、辺りをひととき曼荼羅の華が照らすも、闇となって花が散る・・・といった内容だが、R.シュトラウスの『死と変容』の影響を感じる楽曲である。

ちなみに、山田の「日本に西洋音楽を」という思いは、やがて40歳頃からは、日本語の語感や詩情を生かした歌曲を通じて広く一般に向かうこととなる。変拍子を取り入れた『この道』『からたちの花』などはそれを象徴する曲だ。いずれも万人向きの唱歌の体で、時代を超えて歌い継がれ、今日も愛唱されている。

番組では、山田が若かりし頃に情熱を注ぎ込んだ管弦楽作品を紹介するとともに、指揮者の広上と慶応大学教授の片山杜秀が「山田耕筰とオーケストラ」について語る。

文 原納暢子

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