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イッセー尾形が“歌わない”役・看守フロッシュとして初登場 二期会公演『こうもり』の見どころとは

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二期会が2017年11月22日から日生劇場でオペレッタの名作『こうもり』を上演する。ベルリン・コーミッシェ・オーパーとの提携公演で、演出のアンドレアス・ホモキも来日して、新たに東京バージョンが誕生する。稽古場での様子とともに見どころをご紹介したい。

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

今回の目玉のひとつが、俳優・イッセー尾形が演じる看守フロッシュ。唯一「歌わない」役ではあるが『こうもり』の本場ウィーンでも名俳優が演じる役どころだ。第3幕の冒頭での一人口上のシーンでは、長年一人芝居の新境地を拓いてきたイッセー尾形の真骨頂が見られること間違いなし。稽古場でも堪えきれず笑い声が上がっていた。オペラ歌手たちとのからみからも、独特のおかしみが生まれている。これがイッセー尾形自身、二期会初登場で初のオペラの舞台だ。「彼の卓越した笑いのセンスが、共演する歌手たちにも刺激を与えて、とてもよい効果をあげている」と演出のホモキ。

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

続いて第2幕の夜会のシーン。驚いたことに、ホモキはドイツ語歌唱だけでなく、日本語の台詞の部分に対しても細かく演技をつけていく。ときどきホモキ自身が日本語の台詞まわしを、コンナフウニ、と声に出して指導する場面も! また、フィレンツェに留学していたロザリンデ役・嘉目真木子にはイタリア語で、ウィーンで学んだアイゼンシュタイン役・又吉秀樹にはドイツ語でそれぞれ直接に指示の言葉を伝えていたことも印象深い。

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

そうやって、笑いの神は細部に宿ると言わんばかりの細かさと、妥協のなさで、コメディならではの台詞と間と身体の動きの絶妙なタイミングが作られていった。

第2幕はヨハン・シュトラウスの名曲ぞろい。オルロフスキーの「私はお客を招くのが好き」、アデーレの「公爵様、あなたのようなお方は」、ロザリンデの「チャールダーシュ」、ロザリンデとアイゼンシュタインの「時計の二重唱」などにも細やかな演技が施されている。ぜひ劇場でお楽しみいただきたい。

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

二期会『こうもり』稽古の様子

オペレッタ『こうもり』は、金満な銀行家アイゼンシュタインを、彼に騙されて町中の笑いものになってしまった悪友ファルケが、その仕返しをやってのけるというストーリー。今回の演出では、ファルケの仕掛け人ぶりがとても際立って、シュトラウスの華やかな音楽とともに物語もすんなりと入ってくる印象をうけた。第2幕では特にオルロフスキー公爵の登場シーンが斬新。今回の二期会公演『こうもり』は、初めてオペラに触れる人にはとても分かりやすく、またオペレッタ・ファンにとっても新鮮に観ることができるに違いない。

公演は11月22日(水)から26日(日)までの5日間。

公演情報
東京二期会オペラ劇場『こうもり』

日時:2017年11月22日(水)~11月26日(日)
会場:日生劇場 (東京都)

指揮:阪哲朗
演出:アンドレアス・ホモキ 
<11月22・24・26日公演> 
アイゼンシュタイン:小森輝彦 
ロザリンデ:澤畑恵美 
フランク:山下浩司 
オルロフスキー:青木エマ 
アルフレード:糸賀修平 
ファルケ:宮本益光 
ブリント:大野光彦 
アデーレ:清野友香莉 
イダ:秋津緑 
フロッシュ:イッセー尾形 
<11月23・25日公演> 
アイゼンシュタイン:又吉秀樹 
ロザリンデ:嘉目真木子 
フランク:杉浦隆大 
オルロフスキー:和田朝妃 
アルフレード:吉田連 
ファルケ:小林啓倫 
ブリント:大川信之 
アデーレ:三井清夏 
イダ:辰巳真理恵 
フロッシュ:イッセー尾形 
 
合唱:二期会合唱団 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団 

★11月22日(水)はプレミエ・キャンペーンあり!
S席お買い求めのお客様全員に、スパークリングワイン・ミニボトルをプレゼント
★11月24日(金)はプレミアムフライデー・スペシャル
S席 13,000円 A席 12,000円 B席 8,000円 

 

 


『初音ミクシンフォニー2017』初の大阪公演大盛況、ボカロPピックアップコーナーはジミーサムP

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初の大阪公演となった『初音ミクシンフォニー2017』のオフィシャルレポートが到着した。


11月17日(金)初の大阪公演が開催された「初音ミクシンフォニー2017」。開場前から長蛇の物販列ができ、会場となったフェスティバルホールは多くの賑わいを見せていた。18時に開場し、多くの初音ミクファンがシンフォニーを聴いて10周年を祝おうと思い思いに入場し、19時のオンタイムに開演。
 

初音ミクシンフォニー2017大阪公演

初音ミクシンフォニー2017大阪公演

初音ミクシンフォニー2017大阪公演

初音ミクシンフォニー2017大阪公演


会場が暗転したのちに、Mitchie Mが未来序曲 (short ver.’17)で動画公開していた今回のKEIが描き下ろしたメインビジュアルを3Dモデリング化した初音ミクがバイオリンを片手に華麗に登場。見事なオープニングを飾り、そのまま初披露の未来序曲フルヴァージョンを初音ミク歌唱で演奏、続いて昨年演奏して好評だった「Tell Your World」(kz(livetune))を大阪公演限定で演奏した。

初音ミクシンフォニー2017大阪公演

初音ミクシンフォニー2017大阪公演


そして、大スクリーン画面に司会の初音ミクが登場。10周年のお祝い、初音ミクシンフォニーの開催のお礼、そして今回演奏する「大阪フィルハーモニー交響楽団」、指揮の栗田博文を紹介した。

そして、初音ミクの消失から今回初演奏となる初音ミクの激唱(cosMo@暴走P)を初音ミクの高速Vocalに合わせて見事にに演奏し、今年、初音ミクと同じく10周年を迎える「鏡音リン、鏡音レン10周年楽曲メドレー」を演奏、そして四季折の羽(ひとしずく×やま△)、Fire◎Flower(halyosy)をフル尺で演奏し、鏡音リン、鏡音レン アニバーサリーイヤーに華を添えた。
 

初音ミクシンフォニー2017大阪公演

初音ミクシンフォニー2017大阪公演


昨年に引き続き、【SEGA Project DIVAコーナー】にてODDS&ENDS~メルト【ryo(suoercell)メドレー】、ゴーストルール(DECO*27)を演奏した後、【初音ミク名曲 小編成コーナー】のピチカート小編成演奏が場を和ませた。

そして、今回目玉の事前公開されていなかった「ボカロPピックアップコーナー」に選出されたのは、ジミーサムP。
大ヒット曲「from Y to Y」、復活のきっかけとなった「Reboot」、名バラード曲である「Starduster」をフル尺で3曲続いて演奏し、感動の拍手が巻き起こった。

初音ミクの司会が残り2曲と告げ、オーディエンスに向け改めて10周年への感謝を告げ、黎明期の名曲「歌に形はないけれど(doriko))、ラストは、合唱団を従えて初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、KAITO、MEIKO 6人全員がConnecting(halyosy)を歌唱。優雅なオーケストラに合わせて、VOCALOID達と合唱団が大阪公演アニバーサリーコンサートの終演を飾った。

 

初音ミクシンフォニー2017大阪公演

初音ミクシンフォニー2017大阪公演


 

 

初音ミクシンフォニー2017 大阪公演演奏プログラム
【オープニング】
Mitchie M 「初音ミクシンフォニー」オープニングテーマ『未来序曲』フルver.
Tell Your World(kz(livetune))
初音ミクの消失~初音ミクの激唱(cosMo@暴走P)
【鏡音リン、鏡音レン」10周年楽曲メドレー】
炉心融解(iroha)~ ココロ(トラボルタ)~ 悪ノ娘、悪ノ召使(mothy_悪ノP)~ ロストワンの号哭(Neru)【メドレー】
四季折の羽(ひとしずく×やま△)
Fire◎Flower(halyosy)
【SEGA Project DIVAコーナー】
ODDS&ENDS~メルト【ryo(suoercell)メドレー】
ゴーストルール(DECO*27)
【初音ミク名曲 小編成コーナー】
みくみくにしてあげる♪【してやんよ】(ika)~ Ievan Polkka ~ Nyan Cat(daniwellP) ~ 子猫のパヤパヤ(ワンカップP)【メドレー】
【ボカロP ピックアップコーナー】
from Y to Y~Reboot~Starduster(ジミーサムP)
歌に形はないけれど(doriko)
Connecting(halyosy)
【エンディング】

 

コンサート情報
初音ミクシンフォニー2017

大阪公演
2017年11月17日(金)
会場:フェスティバルホール
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団

東京公演
2017年11月29日(水)
会場:東京国際フォーラム・ホールA
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

スペシャルシート(デザインチケット&限定グッズ&パンフレット付):¥14,800(税込)
S席:¥9,000(税込)
A席:¥8,000(税込)
司会:初音ミク 他
指揮:栗田博文
※大阪公演と東京公演で一部内容が異なります。予めご了承ください。

主催:ワーナーミュージック・ジャパン
協力:クリプトン・フューチャー・メディア
特別協力:SEGA feat. HATSUNE MIKU Project
制作:プロマックス
スペシャルシート(デザインチケット&限定グッズ&パンフレット付):¥14,800(税込)※大阪公演SOLD OUT!
【スペシャルシートオリジナルグッズ】
・オリジナルデザインチケット
・オフィシャルパンフレット
・オリジナルTシャツ(Illustration:寺田てら)
・オリジナルラバーストラップ(Illustration:iXima)
・オリジナルクリアファイル
・オリジナル不織布バッグ
S席:¥9,000(税込)
A席:¥8,000(税込)
チケット各プレイガイド一般発売中!
 

 

リリース情報
2018年3月7日(水)発売

Blu-ray『初音ミクシンフォニー~ Miku Symphony 2017 ~オーケストラ ライブ Blu-ray』
【東京公演】Blu-ray
WPXL-90169 ¥6,000(本体価格)+ 税

アルバム『初音ミクシンフォニー~ Miku Symphony 2017 ~ オーケストラ ライブ CD
【初回限定盤】2CD+DVD
CD(東京公演)+DVD(大阪公演ダイジェスト映像)
WPZL-31413/5 ¥3,900(本体価格)+ 税
【通常盤】
2CD
WPCL-12829/30 ¥3,000(本体価格)+ 税
 

 

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2017年11月20日~2017年11月26日)

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目に見えないことや、形ではないものに対して更に思いを深めるといい時期です。スピリチュアルなお話や、都市伝説やオカルトのようなものまで含め、実態のつかめないものに対しての感受性が働きやすいのです。人と話しているときにインスピレーションもわきやすくなりますし、人の気配から読み取る情報量も多くなりそうです。

見せかけや小手先の技術でよく見せているもの、守れない口約束や社交辞令、誇大表現や“盛り過ぎ”を感じることには厳しい判断や断捨離を。もちろん自分自身がそうなっていないかを再点検する必要も含まれます。曖昧なことはどんどん許されない雰囲気に塗り替えられていくでしょう。

ここで大切なのは堅実さです。人より抜きんでた美貌や知識や才能、素晴らしい実績だけが取り柄ではなく、コツコツと積み上げることが出来る、その人自身の魂や姿勢にスポットライトの当たる先が変わる気配。本来の自分を知る人や心地よい生き方を選ぼうとしている人へ興味関心が移りゆきます。

エゴではない他社への優しさや愛情とは何か、徳を積むとはどういうことかについて、フォーカスがあたるでしょう。力関係が変わるムードは続行中。グレイでファジーな関係、いわゆる忖度(そんたく)で済ませてきたようなこと、悪友との企みに対して、周囲の無言の忠告はガマンを超え、厳しく白黒はっきりつけさせるような流れができてくるはずです。

好奇心旺盛に動きまわることよりも、普段通りのことの中から何か新たな視点を見つけて癒されることがあるみたい。ムリに大きく見せることを頑張らないで、毎日を自分のサイズで満たしていく、がキーワード。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
必要最小限、ミニマリスト
おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
共時性、シンパシー
ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
丸く収める、スムージー
かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
脚本を書く、ストラテジー
しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
役割を変える、ゲームチェンジ
おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
圧倒的、スーパースター
てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
奇想天外な、トリック
さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
泳がせる、ファジー
いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
偶然、シャッフル
やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
温厚な、ハートウォーミング
みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
豪華、スペシャルエディション
うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
拡散する、パワープレイ

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小寺里奈(ヴァイオリン)&福井あや那(ピアノ)が奏でる、愛すべき名曲たちの美しき調べ

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.11.5 ライブレポート

クラシック音楽をもっと身近に、気負わずに楽しもう! 小さいお子様の入場も大丈夫、お食事の音も気にしなくてOK! そんなコンセプトで続けられている、日曜日の渋谷のランチタイムコンサート『サンデー・ブランチ・クラシック」。11月5日に登場したのは、ヴァイオリニストの小寺里奈と、ピアニストの福井あや那だ。

東京藝術大学在学中から演奏活動をはじめた小寺は、現在クラシックのみならず、松下奈緒、絢香、ジェーン・バーキン、中孝介、秋川雅史、柚希礼音、平原綾香、T.M.Revolution、サラ・ブライトマン、ホセ・ジェイムズ、the FIELD OF VIEW、近藤真彦、ももいろクローバーZなど、ポップス、ミュージカル、アイドルと、国内外を問わず様々なジャンルのアーティストのライブやレコーディングに参加し、多彩な活動を続けている。

一方の福井は、現在東京音楽大学大学院修士課程に在学中で、院生として研鑽を積みながら、ジョイントリサイタルやコンサート活動も行っている。演奏の合間には福井が小寺を「お姉さま」と呼ぶなど、演奏家として前を歩く小寺に、福井が敬意を持って共にこの場に臨んでいることが伝わってくる、和やかな雰囲気の中、名曲の数々が演奏された。

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

アンコールピースとして有名な楽曲から始まるコンサート

まず1曲目はエルガーの「愛の挨拶」。ヴァイオリンの数ある名曲の中でも、1、2を争うほど一般知名度の高い、多くの人々に愛されている佳曲だけに、ヴァイオリン・リサイタルなどでは、アンコールピースの定番ともなっているが、その耳に馴染んだ美しいメロディが冒頭で演奏されるのは『サンデー・ブランチ・クラシック』ならでは。小寺の奏でる華やかな音色が、会場を一気にクラシック音楽の世界に誘う。

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

それぞれの自己紹介のあと、2曲目はトーマの「アンダンテ・レリジオーソ」。「ご存知ない方もいらっしゃるかも知れませんが、ヴァイオリンの教則本にも載っている曲です」との小寺の説明もあったが、ヴァイオリン学習者にはお馴染みの1曲だ。「敬虔に」という意味のレリジオーソの名の通り、祈りにも似た哀切なメロディーが徐々に膨らみ、後半では福井のピアノと対話するかのように音楽が広がりを見せて、クライマックスに向かう高まりが美しい。

そのまま続いて3曲目、モンティの「チャルダッシュ」へ。歌手であるレディー・ガガのアルバムや、フィギュア・スケートの浅田真央のプログラムに用いられたこともある有名な楽曲である。ゆったりとした序奏から、次第にテンポをあげて音楽が迸る様は高揚感たっぷり。ヴァイオリンという楽器だけでなく、小寺が全身に音を共鳴させて演奏しているのが伝わり、会場は踊り出したいような空気に包まれた。

小寺里奈(ヴァイオリン)

小寺里奈(ヴァイオリン)

軽やかなピアノソロから、歌い奏でる弦楽器の神髄へ

迫力の演奏のあと、小寺がステージからいったん退場すると、ここで福井のピアノソロ、ショパンの「華麗なる円舞曲」から通称「仔猫のワルツ」が披露される。ショパンのワルツでは「小犬のワルツ」がよく知られているが、この「仔猫のワルツ」と呼ばれて親しまれている「華麗なる円舞曲」も、短い楽曲の中に装飾音符がふんだんについた、あたかも仔猫が走り回っているかのようなメロディーが有名だ。福井の軽快なタッチから生まれるフレッシュな音色がどこかコケティッシュにも感じられ、愛らしさに満ちた演奏になった。

福井あや那(ピアノ)

福井あや那(ピアノ)

拍手の中再び小寺が登場し「休憩したので、ガッツリいきます。大好きな曲です」と宣言しての5曲目はヴィターリの「シャコンヌ」。哀愁に満ちたメロディーが、やがて迫力の重音となって響き渡る。小寺の奏でる重音は実に豊かで、深い。更に福井のピアノがユニゾンのように加わると、より力強さを増した演奏は、まるで天の高みを目指すかのよう。壮大な世界を描いた見事な演奏に「ブラボー!」の声も飛んだ。

そして6曲目がカッチーニの「アヴェ・マリア」。「アヴェ・マリアと言えばシューベルトが有名かも知れませんが」と二人は語っていたが、美しくドラマ性のある楽曲は、フィギュア・スケートのプログラムや、演劇の世界でも使われているので、耳にしたことがある人も多いと思う。「シャコンヌ」の迫力とはまた種類の異なる、静けさの中に芯の強さを秘めた小寺の音色が美しいメロディーによく合い、後半は伴奏とメロディーというよりも、小寺のヴァイオリンと福井のピアノがセッションと言える掛け合いを聞かせ、荘厳な時間が流れていった。

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

大きな拍手の中、演奏を終えた小寺が「この曲が本編の最後だったのに、説明するのを忘れていまいました!」と笑いを誘う一幕も。その為、アンコールとして用意されていた曲が、引き続いて演奏され、マスネの「タイスの瞑想曲」へ。有名曲ばかりのプログラムの中、更によく知られた名曲中の名曲がたっぷりと歌うように奏でられ、これぞ弦楽器の素晴らしさ!と言いたい魅力に満ちていた。そのまま敢えて楽曲名は告げられずに演奏されたのは、山田耕作の「赤とんぼ」。秋深まるこの時期に相応しい歌曲が、静かなヴァイオリンの音色ではじまり、やがてピアノと多彩にからみあう編曲も面白く、聞きごたえのあるフィナーレとなった。

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

鳴りやまない拍手に応えた二人の挨拶のあと、小寺が福井に「ドレスがよく似合うけど、髪飾りが落ちちゃったの知ってた?」と指さすと「え!? 本当ですか? 全然気がつかなかった!」と慌てる福井に「また次の機会にお客様に見てもらいましょうね」と、再会に期待の高まる会話も聞かれ、どっぷりと名曲に浸れた40分間が過ぎていった。よく晴れた日曜日の午後の、とても贅沢な時間となった。

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

初心に帰り、新たな一歩ともなった二人の共演

演奏終了後、熱気も冷めやらぬお二人に、お話を伺った。

――素晴らしい演奏会でしたが、演奏していて会場の雰囲気はいかがでしたか?

小寺:皆さんがすごく静かに聞いてくださって。「もっと食べたり、飲んだりしていいんですよ!」と思っていたのですが、とても真剣に聞いてくださったので、こちらも真剣に演奏しました。でも皆さんが本当に温かったです。

福井:そうですね。本当に温かい雰囲気の中で熱心に聞いてくださったので、とても弾きやすくて、楽しく演奏することができした。

――小さなお子さんとも一緒にクラシックを聴くことができる、とても素敵な場ですが、選曲にあたってはどんな工夫を?

小寺:まずは自分が弾きたいなと思う曲をあげていったんですが。

福井:やはりお子さんたちもいらっしゃるということを1つのポイントと考えて、1曲があまり長くなく、聞きやすくて、有名な曲をということを1番意識しました。最後の「赤とんぼ」などは特にその想いが強く入っています。

小寺:耳馴染みのある曲は聞きやすいと思いましたし、せっかくのこういう場なので、皆さんに楽しんでいただけることを何よりも大切にしました。

――共演されてお二人、それぞれの印象は?

福井:“お姉さま”って呼ばせていただいていて。

小寺:もうここだけですよ! お姉さまなんて呼んでもらえるのは(笑)。

福井:素晴らしいヴァイオリンにリードしていただいて、色々なことを教えてもらって「とにかくついて行こう!」と思いました。

小寺:(福井さんが)本当に真面目。「わからないところがあったら言ってね」って言うんですが、必ず「大丈夫です」って。

福井:大丈夫じゃないんですけど(笑)。

小寺:ううん、本当によく勉強していらっしゃるから、これからが楽しみですね。彼女のようなフレッシュな人と一緒に演奏させてもらって、私もちょっと昔を思い出しながら演奏できました。

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

小寺里奈(ヴァイオリン)、福井あや那(ピアノ)

――刺激にもなりましたか?

小寺:そうですね。「あの頃私はどうやって弾いていたんだろう」と、初心に帰るような気持ちにもなりました。

――福井さんは、小寺さんから吸収することもあったのではないでしょうか。

福井:はい、たくさんありました。こういった小品ばかりを集めて演奏する機会もこれまでなかったので。学校に通っていると、ひたすらピアノソロの10分、15分ある長い曲をただただ1人で籠もって弾いている、という時間ばかりでしたから、合わせる楽しさが大きかったです。元々合わせることが大好きなので。

――では、またこのような機会があるといいですね。

小寺:本当にそう思います。

福井:是非!

――お二人の今後についても伺いたいのですが、演奏を続けていく上での抱負などは?

小寺:私はやはり「初心忘るべからず」を、常に持っていたいです。様々なジャンルの音楽をやる機会が多くなってきているのですが、私のベースはクラシックなので、それを常に忘れないで、これからも勉強し続けていきたいなと思っています。

福井:私は演奏家としてはこれからなのですが、家で1人で練習ばかりしているとやはり辛くなってしまいまして……。皆様の前でこうして演奏させて頂けると、その1回で家での練習以上のものが学べるので、これから色々な方たちとのご縁を大切に演奏していきたいです。今、ピアノを教えることもはじめていて、幼稚園生や、小学生のレッスンをしているのですが、小さな子たちは頭も感性も柔軟なので、ちょっと教えただけでするするっと弾けたりすることからも、発見がたくさんあります。毎日、様々なことから学んで進んでいきたいです。

――本当に楽しい素晴らしい時間でしたので、是非また演奏を聴かせてください。今度は髪飾りも見せていただきたいです(笑)。

福井:あー、そうなんです! これです!(振り返って髪飾りを見せる)

小寺:すごく綺麗にアレンジしてたのに、もったいなかったよね! ステージに出た時にはなかったから(笑)。

福井:もう全然気づかなかったです!

小寺:次はちゃんとつけて(笑)、また一緒に演奏できるといいですね!

福井:はい! よろしくお願いします!

――ありがとうございました。またお二人の演奏を聴ける日を楽しみにしています。

福井あや那(ピアノ)、小寺里奈(ヴァイオリン)

福井あや那(ピアノ)、小寺里奈(ヴァイオリン)

ステージへの距離だけでなく、演奏家たちの素顔にも近づける『サンデー・ブランチ・クラシック』。日曜の昼下がりに気軽にクラシックを楽しんでほしい。

取材・文=橘涼香 撮影=鈴木久美子

サンデー・ブランチ・クラシック情報
11月26日(日)
松田理奈プロデュース OTOART vol.3
『MUSIC × ALIVE PAINTING』
13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円
 
12月3日(日)

米津 真浩/ピアノ&小瀧 俊治/ピアノ
13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円

12月10日(日)
1966カルテット/女性カルテット

13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

若手チェリスト伊藤悠貴が『サンデー・ブランチ・クラシック』初登場! 福原彰美と奏でる秋の調べ

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.10.29 ライブレポート

「クラシック音楽を、もっと身近に。」をモットーに毎週日曜の午後、東京・渋谷・道玄坂のeplus LIVING ROOM CAFE & DININGで開催されている『サンデー・ブランチ・クラシック』。10月29日は内外で活躍する注目の若手チェリスト伊藤悠貴、ピアニスト福原彰美が登場した。2010年にブラームス国際コンクールを制し、翌年に英フィルハーモニア管弦楽団定期公演でメジャーデビューを飾った伊藤は、今回が『サンデー・ブランチ・クラシック』初お目見え。一方の福原は、ソロ出演した10月8日の同イベントでブラームスの名曲を披露したばかり。11月15日にそれぞれ新アルバムの発売を控えた2人が、初共演とは思えない息の合った演奏を繰り広げた。

ハロウィ-ン直前の10月最後の日曜日。台風22号の襲来が重なるというタイミングだったが、開演前にはほぼ客席は埋まり、老若男女がゆったりと食事や談笑を楽しみながら、主役たちの登場を待っていた。

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

午後1時。黒の上下に真っ白のジャケットを羽織った伊藤と、真紅のドレス姿の福原が現れ、拍手で迎えられた。まずはおなじみ、エルガーの「愛の挨拶」から。ブランチにふさわしい、爽やかで上品な調べが耳に快い。チェロが時折脇に回ってピアノが主旋律を奏でたり、リピートのたびに音色やニュアンスが変化したり。2分半程の曲に、聴く者を飽きさせない工夫がちりばめられており、演奏終了と同時に「ブラビー!」の声が掛かった。

伊藤が「皆さま、おはようございます」と笑顔で語りかけ、すぐさま「あ、おはようございますっていう時間じゃないですね。こんにちは」と言い直した。すると、福原も明るい声で「こんにちは」と唱和。トークにも阿吽の呼吸が垣間見える。再び伊藤。「日本でコンサートでやる時は大抵、晴れるんですけど、大雨になってしまって……大変足元が悪い中、来ていただいて誠にありがとうございます。きょうのコンサートは、耳馴染みの良い作品から、聴くのが初めてというような曲まで、いろいろな国のいろいろな小品を集めてみました」

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

ここで初共演の経緯について言及があった。きっかけになったのは、ファッションブランド・シャネルによるクラシック支援企画『シャネル・ピグマリオン・デイズ』。ブランドの創業者ガブリエル・シャネルが無名時代のストラヴィンスキーらを支援したことにちなみ、シャネル銀座ビルのオープン(2004年)とともに始まった。才能ある若手アーティスト数人を選出し、同ビル内のホールで年6回コンサートを開く機会を無償提供するという試みで、2人は同じ時期に、その「シャネル・ピグマリオン・デイズ・アーティスト」に選ばれている。福原によると、「年6回のコンサートはソロですが、毎年秋にアーティストが集まって室内楽を行うフェスティバルがあり、そこで何度かお目にかかっているんです。演奏を聴いて素晴らしいと思い、いつかぜひ一緒にやりたいなと思っていました」。それで今回、伊藤との共演をリクエストしたのだという。

2人が『シャネル・ピグマリオン・デイズ』で出会ったのは2014年。当時、直接言葉を交わす機会はなかったそうだが、コンサート後に確認したところ、伊藤の方も「福原さんが素晴らしいっていう話は周りの方からもいろいろ伺っていて……」と話していた。ちなみに2人には15歳で英語圏(伊藤は英・ロンドン、福原は米・サンフランシスコ)に留学したという共通点もある。

伊藤悠貴(チェロ)

伊藤悠貴(チェロ)

トークの中で、次に取り上げるシューマンの「献呈」、スクリャービン「ロマンス」について伊藤が概略を説明し、演奏へ。2曲目の「献呈」は連作歌曲「ミルテの花」の1曲目で、ピアノと声楽のための曲を伊藤自身がチェロ用に編曲したという。幸せに満ちた、流れるように美しい旋律をチェロが担い、ピアノが柔らかく支える。「ミルテの花」は、シューマンが生涯のパートナーとなるピアニスト・クララに結婚直前に捧げた作品。男性の声域と重なるチェロによって奏でられると、さらに「愛の歌」の色合いが深まるように感じられた。3曲目「ロマンス」も愛の歌だが、曲調はやや哀調を帯びる。喜びと不安が交錯するような繊細さで奏でられ、1曲目の「愛の挨拶」同様、同じフレーズが現れるたびに表情を変えていく。そして最後はチェロのソロで幕。この曲もチェロ・オリジナルではなく、元々はホルンとピアノのために書かれたものだという。

伊藤が再びマイクを取り、次の2曲を紹介した。4曲目は現役の日本人作曲家でピアニストの雁部一浩による「ロマンス」、次がチャイコフスキー作曲「ユモレスク」。前者はフルートとピアノのための楽曲を伊藤自身が編曲したもので、後者は現代を代表するチェリストの一人・ゲリンガスが編曲を手掛けた。「ロマンス」は物思う秋にぴったりの小品。チェロとピアノがさりげなく主客を交代しながらゆったり進んでいく。「ユモレスク」は打って変わって軽やかにスタート。高音域と低音域、軽快と重厚、動と静を激しく行き来しながら、一部に民族音楽的なフレーズも紛れ込むという洒落た一品だった。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

伊藤悠貴(チェロ)

伊藤悠貴(チェロ)

中盤に差し掛かり、2曲ずつ演奏してトークという流れにリズムが出来てきた。6曲目は英国の作曲家アイアランドの「聖なる少年」で、7曲目がリヒャルト・シュトラウスの歌曲から「あなたは私の心の冠」。ともに思い入れの深い作曲家ということで、伊藤のトークも長くなっていく。

「アイアランドは日本では余り知られていませんが、英国ではエルガーやブリテンと同じように賞賛されている作曲家です。『聖なる少年』は元はオルガン、あるいはピアノのための曲。歌詞がついていて、今でもロンドンから少し離れた田舎にいくと、クリスマスの時期に演奏されているんですよ。それから、次のリヒャルト・シュトラウスは日本では大掛かりなオーケストラ曲が取り上げる機会が多いかと思いますが、今日は彼が残した歌曲から1曲、僕の編曲で演奏させていただきます。僕は編曲が大好きなんです。世の中にはチェロ以外にも素晴らしい曲がたくさんありますので」――。アイアランドの「聖なる少年」はゆっくりしたテンポが特徴。優しい響きが心にしみ、まさに聖夜にふさわしい作品だった。R・シュトラウスの「あなたは私の心の冠」は朗らかな愛情を感じる一曲。女性歌手がレパートリーにすることも多いが、チェロの音域で奏でられるとまたニュアンスが違ってくる。編曲の妙を感じた。

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

コンサートもいよいよクライマックスへ。8曲目には、デビューアルバムでチェロ全集に挑むなど伊藤がライフワークとするラフマニノフ作品を取り上げた。曲目は歌曲集「6つのロマンス」の3曲目「夜のしじま」で、これも伊藤自身の編曲だ。名ピアニストでもあった人の曲らしくピアノの比重が重く、福原の奏でる多層的できらびやかな響きが全編を彩る。優美なチェロとの絡みも絶妙。ラフマニノフのロマンティックな魅力が凝縮された名演となった。

そしてラストはユダヤ系チェコ人の作曲家兼チェリスト、ポッパーの「ハンガリー狂詩曲」。伊藤の十八番である。「編曲作品が続いてきましたが、最後はチェロ・オリジナルの曲になります。初めて聴かれる方も多いかと思いますが、ポッパーはヴァイオリンで言えば、パガニーニのような存在。チェロのテクニックを駆使した難しい作品をたくさん書いています」。その言葉通り、チェロの超絶技巧がぎっしり。肉眼ではとらえきれないほどの速さで左指を上下左右に滑らせたかと思うと、弓もアクロバットといってもいいほど派手な動きを重ねる。色彩の異なる7つのハンガリー舞曲をモチーフにしているということで、テンポもタッチも様々。目まぐるしく変化していくのにそれが自然な流れとなり、知らず知らずのうちに乗せられていく。ツィゴイネルワイゼンを思わせる民族色の濃いロマンチックな楽想も登場し、7分半の演奏が終わった時にはともに疾走したような充実感を味わった。

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

拍手と喝采にこたえ、「今日は『ヨーロッパの旅』のイメージで、イギリス、ドイツ、ロシアなどの作品を取り上げてきました。アンコールはスペインの曲になります」と伊藤。演奏の前にそれぞれの近況や今後の活動についてコメントがあった。福原は「12月は米国のチェリスト、クリスティーヌ・ワレフスカさんと一緒に中国や台湾で演奏した後、22日にはピエール・アモイヤルさん(ヴァイオリン)、ナサニエル・ローゼンさん(チェロ)、清水祐子さん(ヴィオラ)と一緒に山梨市で室内楽のコンサートを行います。それからブラームスの生誕120年を記念し、小品を集めたアルバムを作らせていただきました。発売日は悠貴君のCDと同じ11月15日です」。続けて伊藤が12月9日の「向山佳絵子+伊藤悠貴チェロDUOリサイタル」を始め、12月にかけてのコンサートを告知。「11月15日に発売される僕のセカンドアルバム(『ザ・ロマンティック』企画制作=ソニー・ミュージックダイレクト)には本日演奏した曲もたくさん入っていますので、チェックしていただければと思います」

アンコールは、ファレ作曲のスペイン民謡組曲の第1曲「ムーア人の織物」。福原から紹介に続いて演奏へ。アンダルシア独特の鋭いリズム感覚と哀愁を帯びた旋律。血のにおいすら感じさせる情熱的な曲を加えたことで、「ヨーロッパの旅」にもう一つの色合いが加わった。

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)


アンコールも含めるとたっぷり10曲。熱のこもった演奏の余韻冷めやらぬ2人にお話を伺った。

――初共演とは思えない息の合った演奏でした。

福原:実はリハーサルは1回だけ。通して弾いたのは1回だけなんです。

――いつなさったのですか?

伊藤:数日前です。普通なら2回はやるのですが、全く違和感がありませんでした。リハーサル一回でここまでできたのか、という感じ。こんな素晴らしいピアニストの方とご一緒でき、いい経験になりました。

福原:悠貴君の音楽はすごく大らか。かちかちと決めていくタイプではないんですよね。

伊藤:僕、適当すぎるところがあるから……。

福原:いや、そういう意味ではなくて(笑)。きょうは名曲集ということで小さな作品が多かったんですが、今後はソナタなども一緒にやってみたいなと思いました。

――具体的には?

福原:悠貴君はラフマニノフのCDも出されているので、ぜひラフマニノフのチェロソナタをやってみたいですね。

伊藤:あれは40分近くあるので、きょうは取り上げられなかったですけど、いつかやりたいですね。

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

福原彰美(ピアノ)、伊藤悠貴(チェロ)

――15歳で海外に渡られたという共通点に加え、11月15日に新たなCDを発売されるというのも重なりました。

伊藤・福原:11月15日は全くの偶然なんです(笑)。

――今日は伊藤さんのCD『ザ・ロマンティック』と重なる曲目が多かったですよね。

伊藤:30分の企画で小品集ということもありますが、今、僕が弾いてみたい曲を集めたらこうなった、という部分が大きいです。(福原に)初めての曲が多かったのではないですか?

福原:そうですね。弾いたことのあるのはエルガーの「愛の挨拶」とシューマンの「献呈」。

伊藤:それ以外を短期間で準備していただいて……。

――本番までどの位の時間があったのですか?

福原:一か月弱位でしょうか。悠貴君はすごくお忙しくて日本と英国を行ったり来たりですから……。

――それで一回で合わせて本番を迎えた。すごいですね。ところで伊藤さんは今回が『サンデー・ブランチ・クラシック』初登場だったわけですが、感触はいかがでしたか?

伊藤:チェロの音が前に行かないかもしれないと思っていたのですが、全然、そんなことはなかったです。

伊藤悠貴(チェロ)、福原彰美(ピアノ)

伊藤悠貴(チェロ)、福原彰美(ピアノ)

今回は各作曲家1曲ずつの構成だったため、「もっとじっくり聴きたい」という思いが残った。お二人によるソナタ共演が実現する日を楽しみにしたい。

取材・文=刑部圭 撮影=山本れお

リリース情報
伊藤悠貴『ザ・ロマンティック』​
発売日:2017年11月15日
価格:3,000円 (税抜)
https://www.japanarts.co.jp/artist/YukiITO​


福原彰美ソロアルバム『ブラームス  ピアノ小品集』
発売日:2017年11月15日
価格:3,000円(税込)
http://www.akimifukuhara.com/jp/

 

サンデー・ブランチ・クラシック情報
11月26日(日)
松田理奈プロデュース OTOART vol.3
『MUSIC × ALIVE PAINTING』
13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円
 
12月3日(日)

米津 真浩/ピアノ&小瀧 俊治/ピアノ
13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円

12月10日(日)
1966カルテット/女性カルテット

13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

ピアニスト福原彰美がカフェライブ~15年ぶりのCDに込められた、今この時の「ブラームス」

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“サンデー・ブランチ・クラシック” 2017.10.8 ライブレポート

日曜午後のひと時を、クラシック音楽を楽しみながら過ごす『サンデー・ブランチ・クラシック』。10月8日に登場したのはピアニストの福原彰美だ。この秋、福原は15年振りのCDとなるソロアルバム『ブラームス ピアノ小品集』をリリース。その発売記念も兼ねたこの日の公演では、そのアルバムの中から『6つのピアノ小品 Op.118』『4つの小品 Op.119』が演奏された。心の内面の奥底に染み入るような音色は、木々が黄金色に色付く季節にぴったり。

かつては「難しい」と思っていたブラームスと徹底して向き合い、その内面に迫ろうとした福原の演奏は、今の「福原彰美」自身。そして彼女の演奏を通して、ブラームスならではの深さが、客席に静かに染み入ってくるようでもあった。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

クララ・シューマンとのエピソードを交え、前半は「6つのピアノ小品 Op.118」を

深みのあるブルーの上品なドレスで登場した福原。まず演奏されたのは『6つのピアノ小品 Op.118』の第1番「間奏曲」イ短調と第2番「間奏曲」イ長調だ。どこかノスタルジックな、静かで透明な音色でリサイタルは幕を開けた。

2曲を終えたところで、「今回演奏する小品集はブラームスの最晩年の作品。大規模な曲と違い、内面を見つめる深みがある」と語る。ブラームスと言えばロベルト・シューマンと、その妻にして女流ピアニストであったクララ・シューマンとのエピソードがよく知られるところ。「晩年のブラームスはクララとは同士のような繋がりで、ブラームスは曲を書き上げるたびにクララに送っていた」という温かなエピソードを紹介してくれる。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

引き続き3曲目は『6つのピアノ小品 Op.118』の第3番「バラード」ト短調。ハンガリー風の軽快なリズムだ。続く第4番「間奏曲」へ短調ともども、どこか情熱的な静かな炎が見え隠れするような味わいがある。ロマンティックな曲が続く中、それでも全盛期に書いた交響曲のような情熱的なスケールの味わいは決して失われていないのだなと感じさせられる。

そして第5番「ロマンス」へ長調は、「クララがブラームスのために演奏した最後の曲」と言われているものだという。「ブラームスの時代は現代のメールなどとは違い、何日もかけて文通をした時代。この“ロマンス”は遠くにいる誰かをイメージしたのでは」と福原は語る。

曲は山の稜線が澄み切った空に広がるよう。その山々に誰かを思う、古くなった手紙の束に綴られた美しくも純粋な思いがこだまとなって響き渡るようだ。ふれてはならない大切な宝石のような「想い」をピアノにこめた曲に、胸が熱くなる思いであった。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

『4つの小品 Op.119 』では「灰色の真珠」と称された名曲も

さらに最晩年の作品集である『4つの小品 Op.119 』から数曲が演奏される。第2曲「間奏曲」ホ短調は「途中まで無調音楽で書かれた、前衛的な部分も併せ持つ」と福原。無調音楽とは19世紀末から20世紀にかけて起こったもので、文字通り、イ長調、ヘ短調という調性がない音楽。中心となる音がつかみにくく、不協和音が時折顔をのぞかせ「現代音楽への過渡期と言える」とも。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

この曲をクララは「灰色の真珠のようだ」と語ったというように、白い真珠の明瞭な輝きとは違う、どこか静かにひっそりと息を潜めたような、それでいて確かに輝きを放つような奥ゆかしくもどこか不安げな音色だ。

さらに第4曲「狂詩曲」変ホ長調は変拍子を多用した曲で、これもまた実験的な作風だという。ブラームス最晩年の作品の一つとは言え、ある意味時代を先取りしたような野心やどこまでも自由な心が高みを目指して昇華していこうとするような趣も感じられる。客席からは盛大なアンコール。最後まで音楽と向き合い挑戦し続けたブラームスの人生、思いが垣間見えるような、そんなひと時であった。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

15年ぶりのCD。ピアノの調律もブラームスの時代の音を目指す

演奏終了後の福原にお話を伺った。

――素敵な演奏をありがとうございます。今回のCD発売でブラームスを取り上げた理由はなんでしょう。

実は今回のソロアルバムは15年振りなんです。その前に出したCDは17歳の時で、学研プラッツレーベルの『Akimi plays Chopin and Liszt』でした。リサイタルではリストやショパン、シューマンなどとともに、ブラームスの小品集も取り上げていました。ただ私自身が内面ができあがっていない――というと今できあがっているように聞こえるんですが(笑)、ということがあってか、演奏をしていても、ものすごく難しいと感じ、なかなかしっくりこないことが続いたんです。でも非常に惹かれるものがあって、いつか弾きたいと思っていました。

録音しようというきっかけのひとつとして大きかったのは、今回CDに解説を書いてくださったブラームスの研究家で翻訳などの著書もたくさん出されている天崎浩二さんとの出会いです。いろいろお話を聞きながら、ブラームスの捉え方がだんだんと違ってきました。

――捉え方が違ってきたというのは、具体的にはどういうところでしょう。

例えば曲の書き方やリズムの取り方などです。ブラームスはクープランをはじめとする古典音楽の編集者として非常に長けた方だと教えていただきました。「この曲はバロックの楽器が基盤になっている」とか、あるいはブラームスでよく出てくるヘミオラ拍(注:3拍子の曲の2小節をまとめ、さらにそれを3つの拍に分け大きな3拍子とする技法)といった、学術的な部分でのヒントをたくさんいただきました。それによって演奏も変わっていったので、今回制作したCDはピアノの古典調律で録音することにしたんです。一般的にはピアノは平均率で調律するのですが、ブラームスやショパンといったロマン派の音楽は、ちょっと変調したときにふわーっとするようなカラーがあるんです。そこがよりよく表現できるようにするには、現代の調律法でやるとちょっと上手くいかないので。

――つまり古典調律にすることで、ブラームスが実際に弾いていた時代の音やメンタリティに近づいていこうとしたわけですね。

はい、なるべくそれを目指していこうと。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

――15年ぶりのCDで取り上げた曲が、今日弾いていただいたものなんですね。

しっかりしたテーマで録音したいと思ったので、ブラームスの『8つの小品作品 Op.76』『6つのピアノ小品 Op.118』『4つの小品 Op.119 』を選び、「76」と「118」の間の時代を繋ぐために歌曲のアレンジを加えて構成しています。

――リサイタルでブラームスは「内面が深い」というお話がありましたが、内面が感じられるようになったのは、例えばご自身が成長されたとか、人生経験を積み重ねたといったことがあるのでしょうか

多少あると思います。演奏家の方々はみんなそうだと思うんですが、楽曲が自分の一部であるかのように向き合って仕上げていくと思うんです。そうしたなかで、今回はブラームスの旋律をただ捉えるだけではなく、意識が宇宙に行ってしまうような境地を感じることがありました。

特に最晩年の作品118、119は一度音楽家生活から引退すると言って筆をおいた後に、再び書き出した曲なんです。聴かせるためというよりは、自分の内面だけを見つめて書いているというような、そんなところまで行っているんじゃないのかなと。

日本にブラームスファンはすごく多く、そういう意味ではコアな作曲家だと思うのですが、そういった方と話をすると「ブラームスって何故か一音目から泣ける」といことをよく聞きます。曲が盛り上がってきて、そこで涙がぽろっと出てきて泣ける、というではなく、どんな曲かわからないけれど、最初の一音で泣ける。それが本当に魅力なんですよね。

――「最晩年の作品」と仰っていましたが、技法的にも非常に意欲的な作品が多いという印象を受けました。

そこがすごいところです。全然枯れていなくて、「すごいな、この人」と(笑)。 『4つの小品 Op.119 』第2曲「間奏曲」ホ短調は地味と言えば地味なんですが、「なんでこんな曲が書けるんだろう」というくらい詰まっている。工夫が凝らされ、凝りに凝った作品で、第一主題、第二主題というのではなく、全部同じ主題で作られている。これはすごく珍しいんです。

――では最後にCDの魅力を皆さんに。

全てをかけて注ぎ込んで丁寧に心を込めて作った作品です。秋の季節にぴったりなのでたくさんの方に聞いていただきたいです。

福原彰美(ピアノ)

福原彰美(ピアノ)

取材・文=西原朋未 撮影=尾崎篤志

出演情報
福原彰美出演公演
■2017年12月1日 (金)
クリスティーヌ・ワレフスカ   西安コンサートホール
■2017年12月2日 (土)
〈追加公演〉クリスティーヌ・ワレフスカ 広州市オペラハウス
■2017年12月3日(日)
クリスティーヌ・ワレフスカ   広州市オペラハウス
■2017年12月6日 (水)
クリスティーヌ・ワレフスカ   上海オリエンタル芸術センター
■2017年12月9日(土)
クリスティーヌ・ワレフスカ  台湾 国家音楽廰
■2017年12月10日 (日)
クリスティーヌ・ワレフスカ  台北
■2017年12月22日(金)
樅楓舎コンサートシリーズ 山梨市花かげホール with ナサニエル・ローゼン (vc)、ピエール・アモイヤル (vl)、清水祐子 (vla)

福原彰美オフィシャルサイト
http://www.akimifukuhara.com/jp/​

 

サンデー・ブランチ・クラシック情報
11月26日(日)
松田理奈プロデュース OTOART vol.3
『MUSIC × ALIVE PAINTING』
13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円
 
12月3日(日)

米津 真浩/ピアノ&小瀧 俊治/ピアノ
13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円

12月10日(日)
1966カルテット/女性カルテット

13:00~13:40
MUSIC CHARGE: 500円

■会場:eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
東京都渋谷区道玄坂2-29-5 渋谷プライム5F
■お問い合わせ:03-6452-5424
■営業時間 11:30~24:00(LO 23:00)、日祝日 11:30~22:00(LO 21:00)
※祝前日は通常営業
■公式サイト:http://eplus.jp/sys/web/s/sbc/index.html?

映画『新世紀、パリ・オペラ座』公開間近! 芸術の殿堂に入り込んだカメラが捉えた人間ドラマとは?

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何とも面白いドキュメンタリー映画が生まれたものである。映画『新世紀、パリ・オペラ座』はパリ・オペラ座の総裁室から始まる。劇場をアピールするための記者会見に向けての重要会議がおこなわれているのだ。リラックスした姿勢でソファーに座る総裁とスタッフ達。だが、彼らの会話は真剣そのものだ。新しい時代を迎えたパリ・オペラ座をどうやって観客に、そして世界に向けて発信していけばいいのか?

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

映画は一年半にわたる撮影と、オペラにならった撮影手法で作られている。監督のジャン=ステファヌ・ブロンは「今回は映画自体が“オペラ”そのものになることを目指した」と語っており、劇場の人々の仕事ぶりや、壁がたちはだかるとき、そして葛藤が表に現れる瞬間を撮りたかったのだそうだ。

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

監督の試みは成功したようだ。オペラの舞台裏はオペラ以上にオペラチック、そして時には喜劇的なのである。シーズン開幕公演に選ばれたのは十二音技法を使った難解を極めるオペラ、シェーンベルクの《モーゼとアロン》だ。一年も前から上演のリハーサルに励む合唱団員たち。でも彼らより大変なのは、このプロダクションに登場することになった白い雄牛である。イージー・ライダーという名前の牛は、公演のずっと前からシェーンベルクの音楽を聴かされて、舞台に立つ訓練をさせられる。オペラとは、何とはた迷惑な情熱なのだろう!

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

一年半に渡った映画の撮影期間には様々な事件が劇場を彩っていく。その一つはバレエ団芸術監督ミルピエの辞任だ。パリ、オペラ座は世界最高峰のバレエ団でも知られる。映画《ブラック・スワン》のナタリー・ポートマンと結婚したフランス人振付家バンジャマン・ミルピエはパリ・オペラ座のバレエ団芸術監督を務めていたが、この映画の撮影期間中に電撃的な退任劇が起こる。あでやかな新監督オレリー・デュポンと並ぶミルピエは苦渋に満ちた表情を浮かべている。

またパリを襲った卑劣なテロ、バタクラン劇場の襲撃事件の後に、初めてオペラ座で公演(ゲネ・プロの公開)をする時の様子も描かれる。舞台の上に立つリスナー総裁とバレエ・ダンサーたちと一緒に、一分間の黙祷を捧げる観客。そして帽子をとって黙祷を捧げる舞台裏スタッフの姿もカメラは見逃さない。

楽しいシーンは若いアーティストや、観客の養成に関するものだ。オペラ座のアカデミーに合格した21歳のロシア人バス・バリトン歌手ミーシャ。無邪気な笑顔やストレートな感情表現に好感が持てる。英国の名歌手ブリン・ターフェルとの交流、講師陣から受ける厳しくも優しい指導が描かれる。また普段、芸術や文化に触れる機会のない子供たちをサポートするためのプロジェクトとして、子供たちが弦楽クラスに参加してコンサートまで練習する場面も興味深い内容だった。

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

オペラやバレエのファンにとっては、当然のことながら魅力的な映像や音楽が目白押しだ。音楽監督で指揮者のフィリップ・ジョルダンに加え、オルガ・ペレチャッコ、ヨナス・カウフマン(リハーサル場面でほんの一瞬登場する)、ジェラルド・フィンリー、ミヒャエル・クプファー=ラデツキー、ブランドン・ヨヴァノヴィッチなどのオペラ歌手も登場する。バレエではアマンディーヌ・アルビッソン、エルヴェ・モロー、ファニー・ゴルスのリハーサルや舞台シーンも堪能できる。

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

映画の最後にロシア人歌手ミーシャがリサイタルで、ジャック・イベールの歌曲「ドン・キホーテの四つの歌」を披露する。ドン・キホーテは歌う「人生はうたかたの夢」…と。儚さと魅力に満ちた人間のドラマが繰り広げられる場所。それこそが劇場だ。映画「新世紀、パリ・オペラ座」は鮮やかな人間ドラマを描きだすのである。

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

「新世紀、パリ・オペラ座」12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー 配給:ギャガ (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

文=井内美香
(c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

上映情報
「新世紀、パリ・オペラ座」
12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
公式HP:http://gaga.ne.jp/parisopera/

英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン2作目は身の丈の若者たちのドラマ『ラ・ボエーム』【現地パンフレットを3名様にプレゼント】

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英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)2017/2018シネマシーズンの2作目はプッチーニの名作オペラ『ラ・ボエーム』だ。

19世紀のパリを舞台に、夢と希望はいっぱいだが金はない若者たちの恋と友情を描いた、いわば「青春群像劇」だ。王侯貴族や魔法使いは出てこない、身の丈の若者たちを主人公に日常の中で紡がれる恋と友情を綴ったこのオペラは、その親しみやすさもあってか1896年にトリノで初演されて以来人気を博した名作。今なお世界各国の劇場がレパートリーとして取り入れているほか、映画にもなっている。

マイケル・ファビアーノ(ロドルフォ)、ニコール・カー(ミミ)をはじめ、出演者は20~30代の「若い」歌手たち。その彼らを「部屋にはプッチーニの写真がたくさん飾ってある」というアントニオ・パッパーノが愛情たっぷりに引っ張る。

また今回ROHでは43年振りに舞台をリニューアル。シンプルな舞台設定は、だからこそ登場人物たちの心情を際立たせ、舞台に降る雪ともども深々と胸に迫ってくる。4幕でありながら、映画の上演時間は2時間45分と短めなので、オペラ入門にももってこいだ。

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

※ROHで販売されている「ラ・ボエーム」のパンフレット(英文)を3名様にプレゼント。詳細は下記にて。

■金はないが夢はある。誰もが誰かに共感する物語

舞台は幕が開く前から雪が深々と降る。幕が上がると、そこはパリの屋根裏部屋。薪を買う金もない4人の若者たちが、寒さに震えつつも陽気なバカ騒ぎを繰り広げる。

詩人のロドルフォ、画家のマルチェッロ、哲学者のコルリーネに音楽家のショナール。金はないが友人がいて、夢があり、者によっては恋に悩むこの4人のキャラクターがそれぞれに個性的だ。

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

この4人の友情に、ロドルフォと胸を病むお針子のミミの純粋な恋、さらにマルチェッロと一時は金持ちの愛人となった強気のムゼッタの恋を絡ませながら物語は進む。ロドルフォとミミのアリア「冷たき手を」「私の名はミミ」は、オペラのコンサートでも取り上げられる有名な曲。作中この「テーマ曲」――主題が物語が進むにつれて、何度も形を変えて現れ、彼ら二人の心情をしっとりと彩る。

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

また見どころのひとつはロドルフォとミミ、マルチェッロとムゼッタの2組4人のカップルが歌う四重唱だ。ミミを愛してはいるが極貧生活ではミミを救えないと悩むロドルフォの、愛し合いながらも別れを決める2人の二重唱からはじまり、そこに喧嘩別れをするマルチェッロとムゼッタの二重唱が加わるもの。しっとりとした愛の語らいと喧嘩という、まったく正反対の曲が二重構造のように重なるこの曲は、多様な心理が絡み合う群像劇の奥行きの深さも感じさせる。

クライマックスの登場人物それぞれの心遣いや思いやり、友情に溢れるシーンもぜひご覧いただきたい。

■シンプルな演出だからこそ伝わるストーリー

この「ラ・ボエーム」はROHでも人気の演目。43年ぶりの新制作は、大英帝国勲章を受章した人気演出家にして、二期会「ばらの騎士」などを手掛けるなど日本でも活躍しているリチャード・ジョーンズによるものだ。

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

(C) ROH.CATHERINE ASHMORE

衣装などは19世紀パリのオーソドックスなもの。舞台セットは英国で使われていた昔ながらの手動による場面転換が用いられている。これが逆に新鮮で、このアナログな仕組みがプッチーニの時代のオペラを思わせられ興味深い。ときには見る者が若い時にかつて通った、昔の古ぼけた写真を見るような、そんな思いを抱かせられる。

ROHシネマシーズンならではの特典、幕間の解説や出演者インタビューも見どころの一つだ。特に今回のアントニオ・パッパーノが語るプッチーニへの思いは熱く、鑑賞の手助けにもなるのでお見逃しなく。

文=西原朋未

上映情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン『ラ・ボエーム』
 
■作曲ジャコモ・プッチーニ 
演出リチャード・ジョーンズ
指揮アントニオ・パッパーノ
出演
ニコール・カー(ミミ)
マイケル・ファビアーノ(ロドルフォ)
マリウシュ・クヴィエチェン(マルチェッロ)
ジョイス・エル=コーリー(ムゼッタ)
上演時間2時間43分
上映館:
北海道 ディノスシネマズ札幌 2017/12/16(土)〜2017/12/22(金)
宮城 フォーラム仙台 2017/11/25(土)〜2017/12/1(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2017/11/24(金)~2017/11/30(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2017/11/25(土)〜2017/12/1(金)
公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
 
プレゼント情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/2018の第2作、「ラ・ボエーム」の公演プログラム(英文)を抽選で3名様にプレゼント。ロンドンの英国ロイヤル・オペラ・ハウス会場で販売されているプログラムです。

【応募方法】
※Twitterでご応募ください。
STEP1:お持ちのTwitterアカウントにログイン
STEP2:SPICEアカウント<@spice_stage>をフォロー(当選案内DM用に必要です)
STEP3:あとは該当ツイートをリツイート(RT)するだけ!
応募用ツイートは【コチラ】
 
【応募期間】
2017年11月27日(月)18:00まで
※当選者には、ツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)でご連絡いたします。
 
【応募条件】
・日本に居住されている方(賞品配送先が日本国内の方)。
・応募に関する注意事項に同意いただける方。
 
【注意事項】
※本キャンペーンに関して、弊社が不適切な行為がされていると判断いたしましたアカウントは、キャンペーン対象外とさせていただきます。
※弊社は、応募いただいた方のツイート内容には一切の責任を負いません。
※当選発表は、当選者様への当選のご連絡をもってかえさせていただきますので、ご了承ください。
※当選通知後、2日間ご連絡がない場合は、当選を無効とさせていただきます。 
※当選結果に関するお問い合せは受け付けておりませんので、ご了承ください。
※当キャンペーンの掲載内容や条件は、予告なく変更する場合がございます。あらかじめご了承ください。
※当選の権利の譲渡はできません。
※キャンペーン参加にあたっては、必ず弊社個人情報保護方針「プライバシーポリシー」をお読みください。
※当選時にご連絡いただく住所、氏名、電話番号は、その確認などの関連情報のご案内のみに使用し、キャンペーン終了後は弊社の定める方法に基づき消去いたします。
※インターネット通信料・接続料およびツイートに関しての全ての費用はお客様のご負担になります。
※次の場合はいずれのご応募も無効となりますのでご注意ください。
・応募時の内容に記載不備がある場合。
・お客さまのご住所が不明、または連絡不能などの場合。

聖なる夜に、ピアニスト フジコ・ヘミングの奏でる魂の音色はいかかが!~西日本でクリスマス ソロコンサート

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1999年、NHKのドキュメンタリー番組で、波乱に富んだ半生と、魂の熱き演奏が取り上げられ、一夜にしてスターダムにのし上がったイングリッド・フジコ・ヘミング

あれから18年、彼女の喜怒哀楽に裏打ちされた「魂の演奏」が、ここまで多くの人を魅了し、支持を集めていることに驚いている。

確かに、アンチも多い。テクニック至上主義こそがクラシック音楽だと信じるクラシックファンには、彼女のゆったりしたテンポ設定や、時折見せるミスタッチは許せないらしい。

魂の音色を紡ぎだすフジコ・ヘミングの手

魂の音色を紡ぎだすフジコ・ヘミングの手

しかし感動は、研ぎ澄まされた超絶技巧とは別次元の所にもある。彼女の代名詞とも言えるリストの「ラ・カンパネラ」は、若手スター演奏家などと比べると1分以上も遅いのに、何故こんなにも多くの人の共感を得るのだろうか。

彼女に誘われてクラシック音楽の世界に飛び込んだ人がたくさんいるのは、紛れもない事実。そしてコンサートホールでは、泣きながら彼女の演奏を聴いている女性たちを多く見かける。一度、騙されたつもりで彼女の弾くショパンやリストの響きに身を委ねてみてはいかがだろうか。音楽は実際に聴いてみないと始まらないのだから。

ちょうどクリスマスシーズンに、ピアノソロや弦楽四重奏団と奏でるコンチェルトを楽しめるコンサートがあるようだ。フジコ・ヘミング本人からのメッセージと併せて掲載する。

和やかにインタビューに応えるフジコ・ヘミング

和やかにインタビューに応えるフジコ・ヘミング

「日本中どこに行っても、皆さま温かく迎えてくださり、感謝しています。今回は華やかなクリスマスシーズンに行うコンサートということで、よく弾いている曲の中からクリスマスに合うロマンティックな曲を選びました。気に入って頂けるといいのですが。

いつもはオーケストラと弾くショパンやモーツァルトのコンチェルトを、エレガントな弦楽四重奏と一緒に弾けるのも特別なことです。

今年西日本では、大阪、神戸、岡山に行きます。神戸は以前、阪神大震災の後、チャリティコンサートで行きました。ハイカラな街、神戸を久し振りに訪問するのも楽しみですね。

皆さまと素敵なクリスマスの一時を過ごせるといいですね。」

来年初夏、フジコ・ヘミングブームが再来の予感!

来年初夏、フジコ・ヘミングブームが再来の予感!

来年初夏には彼女のこれまでの軌跡と演奏活動、プライベートに切り込んだ初のドキュメンタリー映画「フジコ・ヘミングの時間」が公開予定だ。フジコ・ヘミングブームが再び到来する事は間違いなさそうだ。

文=磯島浩彰

公演情報
フジコ・ヘミング クリスマス ソロコンサート
■日時:12月9日(土) 14時開演
■会場:エブノ泉の森ホール(泉佐野市立文化会館)
■出演:フジコ・ヘミング(ピアノ)
■曲目:
ショパン/「エオリアン・ハープ」「別れの曲」「黒鍵」「革命」ほか
リスト/愛の夢第3番、「ラ・カンパネラ」ほか
■料金:プレミアム席12,000円 S席10,000円 A席8,000円
■問合せ:サワダアートプランニング 078-913-3881
■公式サイト:http://www.sabp.jp

 
フジコ・ヘミング クリスマスコンサート
■日時:12月12日(火) 15時開演
■会場:神戸国際会館こくさいホール
■出演:フジコ・ヘミング(ピアノ)
■共演:国立ソフィア・フィルハーモニック管弦楽団首席メンバーによる弦楽四重奏団
■曲目:
ショパン/ピアノ協奏曲第1番より第2楽章、第3楽章
モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番より第2楽章
リスト/愛の夢第3番、「ラ・カンパネラ」ほか
■料金:プレミアム席12,000円 S席10,000円 A席8,000円
■問合せ:サワダアートプランニング 078-913-3881

■公式サイト:http://www.sabp.jp

フジコ・ヘミング クリスマス コンサート
■日時:12月14日(木)18時半開演
■会場:岡山シンフォニーホール 大ホール
■出演:フジコ・ヘミング(ピアノ)
■共演:国立ソフィア・フィルハーモニック管弦楽団首席メンバーによる弦楽四重奏団
■曲目:
ショパン/ピアノ協奏曲第1番より第2楽章、第3楽章
モーツァルト/ピアノ協奏曲第21番より第2楽章
リスト/愛の夢第3番、「ラ・カンパネラ」ほか
■料金:プレミアム席12,000円 S席10,000円 A席8,000円
■問合せ:サワダアートプランニング 078-913-3881
■公式サイト:http://www.sabp.jp
 

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2017年11月27日~2017年12月03日)

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要らないものを手放し、新たなものを受け入れる準備に最適なタイミングです。出番の少ない持ち物は処分するかフリマに出してみましょう。残留している感情もそろそろ置いていけそうか試せるのかも。消耗品は新しいものに取り替えてみて。出来そうなことから手を付けるのがポイント。すでにもう、来年の春先あたりまでのことや、数年単位の計画に気持ちが向かっている人が多いかもしれません。

ジェットコースターのような目まぐるしさ、どこにも逃げ場がないような重苦しいムード、何ともいえない思惑や駆け引き、今まで信じてきたものに翻弄されるような気持ちも、ここで大きくリセットが必要なようです。なんとなくモヤモヤしたままいつもと同じような予定を組んでも、スケジュールや期待通りに物事は運びにくいかも。

一年の出来事を振り返って書き出してみるのもいいでしょう。何気なく呟いてきたこと、流されるまま受け止めてきた言葉の中に、その時は気づかなかった真意を見つけることもできるでしょう。それは幸か不幸かなんとも表しようのない感情にさせるかもしれません。残念ながら、そんな人ではないよね? と思いたいものほど、嫌な予感はアタリかも。ここにいても消耗するだけだ、と思ったらサッと離れる決断を。

もしくは、貴方自身がこれまで種明かし出来ていなかった本当の気持ちを伝えることもできそうです。やり切れていない事、思い残している事を、取り戻さなくてはいけないと心底思えることは諦めないで。怖気づいてしまいそうでも、ちょっとした勇気が仲間の協力を得て予想外にうまくいくラッキーな気配も。

自分自身の根幹にあったものや、日頃の多くを占めていた物事を刷新し、新たなテーマを見出す。日付として新年を迎えるのはまだ少し先のことですが、新たな時代の“幕開け”をしみじみと感じさせる年の瀬となりそうです。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
柔らかさ、アコースティック
おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
戦闘態勢、アクション
ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
合理的、ベストコレクション
かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
リセット、メンバーチェンジ
しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
有終の美、グランドフィナーレ
おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
見晴らしのよさ、オープンエアー
てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
クチコミ、アンダーグラウンド
さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
自己満足、パーティー
いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
損得勘定、コストパフォーマンス
やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
溺愛、ファンミーティング
みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
優越感、プレミアムサービス
うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
解放感、リラクゼーション

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スターダンサーズ・バレエ団『くるみ割り人形』~人気作6年目はフレッシュな顔ぶれで上演

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12月9日(土)、10日(日)に上演されるスターダンサーズ・バレエ団(SDB)『くるみ割り人形』。SDBの常任振付家、鈴木稔氏によるバレエ団オリジナルの作品で、2012年の初演以来、家族の愛情をテーマとした温かな物語と、工夫に富んだ演出・振り付け、美術など好評を博している人気作だ。

6年目となる2017年の上演は、クララ役にSDBでは幾度も主演を踊っている渡辺恭子のほか、SDBジュニアスクールからの生え抜きダンサーである西原友衣菜が初主演。さらに王子をSDBに2017年夏に入団した林田翔平と池田武志が踊る。渡辺以外の3人が初役という、フレッシュな顔ぶれだ。

新たなパワーを得て勢いも感じるSDBの『くるみ割り人形』のリハーサル現場にお邪魔し、主演ダンサー達に話を聞いた。

(文章中敬称略)

左から池田武志、西原友衣菜、渡辺恭子、林田翔平 撮影:西原朋未

左から池田武志、西原友衣菜、渡辺恭子、林田翔平 撮影:西原朋未

■ともに初挑戦。西原&池田のフレッシュペア

この日行われていたリハーサルは渡辺&林田、西原&池田それぞれのペアによるグラン・パ・ド・ドゥだ。

まずに西原&池田の、フレッシュなペアによるリハーサルが行われる。

踊るのは1幕、くるみ割り人形が王子に変身し、クララとともに踊る、音楽共々美しい、1幕屈指の名場面のひとつだ。ともに今回初めてペアを組むとあって手探りの様子で、振付の鈴木と小山恵美バレエ・ミストレスが時々動きを止めては手の添える位置、身体の向きなどを指導。時には鈴木・小山両氏が組んでの動きを見せながら、細かい動きを修正していく。

しかし西原は5月に『ドラゴン・クエスト』で女戦士を踊ったことを彷彿させるキレのある動き。今度は大人と子供の境目にいる少女ということで、踊りにどのようなテイストを加味してくるか、期待が膨らむ。また池田はフィジカルが抜群で、リフトもひょいと軽々とこなす。今後の練り込みが楽しみだ。

西原友衣菜、池田武志 撮影:西原朋未

西原友衣菜、池田武志 撮影:西原朋未

■互いに考え、話し合いながらすすめるパ・ド・ドゥ

続いて渡辺&林田ペアが踊るのは2幕の金平糖のグラン・パ・ド・ドゥ。渡辺は今回が3度目の主演となるが、林田は初役。しかし夏から秋の地方公演などで何度もペアを組んだだけあって、波長が合い始めているようだ。

アダージョのクライマックスで王子と金平糖がゆっくりと離れながら歩き、また近づくところでは鈴木から「宮廷舞踊のように!」との指示が飛び、なるほど、と思う。指示のあとの動きは一層優雅になり、衣装を着けたらどう見えるのか、楽しみになる。

西原&池田、渡辺&林田がそれぞれリハーサルをしている間、もう一組のペアは自分たちの動きの確認中。それぞれに話し合いながら2人で考え、問題点を確認している様子が見て取れた。

渡辺恭子、林田翔平 撮影:西原朋未

渡辺恭子、林田翔平 撮影:西原朋未

■経験者として「今度は自分が引っ張る立場に」

リハーサル終了後、4人の主演ダンサー達に話を聞いた。

――お疲れ様でした。SDBの「くるみ割り人形」は今年6年目を迎えますが、主演経験があるのは渡辺さんだけですね。

渡辺はい、私は3回目になります。毎回鈴木先生が少しずつバージョンアップをしていて、いつもフレッシュな気持ちで挑みますが、今回はパートナーが変わったこともあって、特に新鮮な気持ちで踊っています。

今までは経験者が多かったので私が引っ張っていってもらっていましたが、今回は3人が初役ということもあり、いよいよ私がしっかりしないと、と気を引き締めています。

――パートナーの林田さんとは、先ほどリハーサルを見ている限りでは結構息が合っているのでは?と思いましたが。

渡辺そう言ってもらえるのはうれしいです(笑) 地方公演や別の作品でも一緒に踊っているので、お互い信頼が少しずつできてきているのでは。(林田さんは)合わせて動きを修正してくれるなど、気を使ってくれています。

林田いえ、結構引っ張っていただいていますし、経験豊富なので頼りにしています(笑) でも最近はだんだん打ち解けて、話し合いながら互いのツボを押さえてきたような感じはあるかな。

渡辺恭子、林田翔平 撮影:西原朋未

渡辺恭子、林田翔平 撮影:西原朋未

――西原さん、池田さんはいかがでしょう。お2人の距離感などは。

池田西原さんとは同い年なので、話しやすくて楽です。どうやってそこに持って行こうかという話し合いながらやっています。こうしたい、ああしたいでぶつかることはあまりないですね。

西原間の取り方や呼吸など、「こうしたい」というのが合うんです。池田君はリフトなどパワーとエネルギーがあるので頼りにしています。

■「少女クララ」を演じる難しさ

――少女クララを踊るにあたり考えていることなどを聞かせてください。

渡辺「子供と音大人の中間」という年齢に設定されていて、弟もいるので、少女らしさを出せるように注意しています。最後のグラン・パ・ド・ドゥはクララが少し成長している感じで大人っぽく、と思っていますが、でもいわゆる「女王様」としての金平糖の精とは違うんですよね。そこもまた少女らしさを残しつつ、というのを心掛けています。

あとは衣装が重いのが大変かな(笑) 英国製でチュチュやドレスなど、一つひとつはきれいなんですが、体力が大変です。

西原私はこれまではドールズやフランス、スペインのディベルティスマンなどで出ていました。初演時に作品を一から創っていくのも見ており、「いつか(クララを)踊りたいな」と考える一方で、「なんてパワーが必要な役なんだろう」と思っていました。初演のクララは林ゆりえさんだったのですが、彼女くらいのパワーがないとダメなのではないかと。

またクララは自分の年齢よりずいぶん若いんですけど(笑)、とはいえ「白鳥の湖」のオデットなどに比べると入りやすさはあります。反面踊りを全部通すのにはすごいエネルギーが必要で。ましてや弟役は本当に年相応の男の子。子役君は素でテンションが高いし、喧嘩も本気でしてくるから、こちらも負けないエネルギーが必要になる。とにかく真っさらな気持ちで、エネルギーを持って挑みたいと思います。

――男性陣の手応えは。

林田ぱっと出てきたときにすぐ「王子」とわかるような立ち居姿は目指すところの一つですが、多少は自分なりに少しずつ掴み始めているかなと。理想にはまだほど遠いのですが、近づいてはいると思います。

池田「くるみ」と地方公演でやった「シンデレラ」共々鈴木先生の作品で、それを両方踊ることで、先生が王子に求めている身体の使い方や存在感といったものが掴めてきました。「王子」という形式的なものにとどまらず、存在をより大きく見せるために、登場した時の呼吸や動作などに気を遣うようになりました。「王子はエレガントに」というのはこれまでもありましたが、場をリードする、体温の通った自然な存在感というのかな、そうしたさらに新しいものが加わっている感じです。

池田武志、西原友衣菜 撮影:西原朋未

池田武志、西原友衣菜 撮影:西原朋未

■お気に入りのシーンは「バトル」と「雪」

――クララのお2人にお伺いしたいのですが、鈴木版「くるみ」で一番好きなシーンはどこでしょう。

渡辺私は1幕のバトルシーンです。見るのはもちろん、オーケストラからもいろいろな楽器の音が聞こえてきてワクワクするし、人形たちもチャーミング。ネズミは本番は被り物となるので視界が狭くて大変だと思うのですが、でもリハーサルの時は皆さんちゃんと表情まで作ってやっているんですよ。

スターダンサーズ・バレエ団『くるみ割り人形』 撮影:平井晋之介

スターダンサーズ・バレエ団『くるみ割り人形』 撮影:平井晋之介

西原私は1幕の雪のシーンが好きです。自分で踊ったこともありますし。衣装がかわいいし、雪の量がすごい。踊っていると突き刺さるくらいで、視界が見えないくらい降ってくるんですが、スリルがあって面白いです。

――雪があまりにたくさん降ってくると、きれいな反面、見ている側は「ダンサーさんが踏んだらどうしよう」とハラハラもしてしまうのですが……。

西原そこは雪を蹴るように振り付けができているんで大丈夫です。雪がある程度溜まったところに自由に踊れる箇所があって、私はわざと人がいないところに行って、雪だまりをヒュッヒュッと蹴る(笑)

――それはまるで子供の雪遊びのような(笑)。

西原鈴木先生も「雪ん子のように踊ってほしい」と。ですからわざと雪だまりを目がけて行くんですが、毎回毎回それが楽しくて(笑) 大量の雪を楽しみにしていてください。

――それではみなさん、お客様にメッセージを。

渡辺 SDBオリジナルのドイツのクリスマスマーケットを舞台にした「くるみ」です。一般家庭の普通の女の子が夢の世界を冒険する物語ですので、ぜひ一緒に楽しんでください。

林田二人でお客様にしっかりお見せできるような作品に仕上げていきます。

西原鈴木先生の「くるみ」は夢の世界ですが、リアリティがあります。クララと皆さんとともに人形の世界へ、冒険の旅へ出かけましょう。

池田 SDBオリジナルの「くるみ」ですからほかにはない、全然違う構成や装置、物語が楽しめます。バレエを見慣れている人はその違いを楽しみながら、作品全体の雰囲気を楽しんで、クリスマスシーズンの思い出にしてください。

――ありがとうございました。

『くるみ割り人形』スターダンサーズ・バレエ団 撮影:平井晋之介

『くるみ割り人形』スターダンサーズ・バレエ団 撮影:平井晋之介

取材・文=西原朋未

公演情報
スターダンサーズ・バレエ団「くるみ割り人形」
 
■日時:
12月9日(土)14:00~/クララ:渡辺恭子、王子:林田翔平
12月10日(日)11:30~/クララ:西原友衣菜、王子:池田武志
12月10日(日)16:00~/クララ:渡辺恭子、王子:林田翔平
※開演20分前より小山久美総監督によるプレトークを実施
■会場:テアトロ・ジーリオ・ショウワ
■公式サイト:https://www.sdballet.com/

 

イタリアの若き新・三大テノール「イル・ヴォーロ」が初来日! 陽気な貴公子たちの歌声は聴き逃せない

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今、世界中で話題のイタリアの若きテノールたちのユニット「イル・ヴォーロ」が初来日した。11月29日に東京、12月1日に川崎でコンサート「ノッテ・マジカ ~魅惑の夜~」を行う。レパートリーはオペラのアリア、カンツォーネ、ポップスとジャンルを越えて幅広く、2015年にリリースしたアルバム『グランデ・アモーレ』はビルボードのクラシック、ラテン・ポップ部門で共に1位を記録している。数年前、彼等を目に留めたプロデューサーが「まるで45歳のテノール歌手のように歌う」と言ったその確たる歌声はもちろん、貴公子然たる容姿も相まって、イタリアはもとより、ヨーロッパ、北米、南米で話題沸騰中のユニットだ。日本でもフィギュアスケートの羽生結弦選手がエキシビションでイル・ヴォーロの曲を使用するなど、じわじわと話題となっている。

このほどアジアで初のコンサートとして日本を訪れた彼らが登場した記者会見は、愉快な冗談が飛び交う、イタリアらしい雰囲気に溢れたものとなった。

■今まさに世界を飛翔するイタリアン・ユニット

イル・ヴォーロはジャンルカ・ジノーブレ(22歳)、イニャツィオ・ボスケット(23歳)、ピエロ・バローネ(24歳)の、3人のユニットだ。それぞれが子供の頃から三大テノールに憧れ歌手を目指し、イタリアの人気オーディション番組に別々に出場したところ、番組ディレクターの「三大テノールのようなユニットを作る」というアイデアによりユニット結成に至った。さらに彼らの活動がイタリア音楽界の大御所トニー・レジスの目に留まり、イタリア人として初めてアメリカのメジャーレーベルと直接契約。あれよあれよという間にヨーロッパ、アメリカ、南米のチャートに踊り出て、一躍イタリアを代表する世界的なアーティストに成長し、イタリア語の「VOLO(飛ぶ)」というその名の通り、飛翔を続けている。2016年はフィレンツェのサンタクローチェ広場で「祖父母の代からファンだった」という憧れの三大テノールの一人、プラシド・ドミンゴと共演。2017年は世界45都市57公演を行う予定で、今回の日本公演は彼等にとって初のアジア上陸となる。

このほど会見が行われたのはイタリア大使館の公邸。イタリア共和国ジョルジョ・スタラーチェ駐日大使が「イタリアの宝といっても過言ではない」というのも納得するほどだ。

スタラーチェ駐日大使 撮影:西原朋未

スタラーチェ駐日大使 撮影:西原朋未

■三者三様、陽気で冗談好きな貴公子たち

イタリアらしい濃いめのイケメン貴公子たちはそれぞれに陽気。「歌のパートはどのように決めるか」という質問に対し「まずは心理セラピーでそれぞれの性格を分析して……」と冗談を飛ばすなどさすがイタリア人であり、またある意味油断も隙もない(笑) 。「人を笑わせる、というイタリアの伝統が若い世代に生きていてうれしく思う」と言うスタラーチェ駐日大使のフォローが絶妙だ。

冗談を飛ばし合うイル・ヴォーロの3人 撮影:西原朋未

冗談を飛ばし合うイル・ヴォーロの3人 撮影:西原朋未

そんな彼等のキャラクターはそれぞれに三者三様。ジャンルカは「まるで日本人のように完全主義者」(イニャツィオ談)。ピエロは「こうと決めたらやり抜く」意志の強さがあり、イニャツィオは陽気でポジティブ。「月が曲がったように起きた朝(イタリア語で寝覚めの気分が悪い)時も、イニャツィオが陽気にしてくれる」(ピエロ談)というムードメーカーだ。

ジャンルカ・ジノーブレ 撮影:西原朋未

ジャンルカ・ジノーブレ 撮影:西原朋未

今回の来日公演に当たり「イタリアは世界中に愛されている国。料理や車だけではなく、音楽で知られている。そのイタリアの音楽を私たちの歌で日本で披露できるのはうれしい」とジャンルカ。

コンサートはは昨年フィレンツェで行われたプラシド・ドミンゴと共演した「三大テノールに捧げるコンサート」をベースとしており、「非常に名誉に感じている」と話す。オペラのアリアをはじめ、イタリアのカンツォーネ、ポップスなどジャンルを越えた音楽が披露される予定だ。

イニャツィオ・ボスケット 撮影:西原朋未

イニャツィオ・ボスケット 撮影:西原朋未

■ジャンルを越えたイタリア音楽の素晴らしさを伝えたい

このジャンルを越えた「イタリア音楽の素晴らしさ」を伝えることが、まさにこのユニットが目指すところ。そもそもイタリアのオペラは時代の流れとともに今でこそ「クラシック」「芸術」として一段高いところに置かれている感があるが、基本は誰もが歌えて楽しめる「歌芝居」だ。「3人とも祖父母の代から三大テノールの大ファン」とピエロが語る通り、イタリア人の生活シーンに溶け込んでいるのがオペラであり、オペラ歌手なのだ。ピエロは「自分達の世代がこうした(多ジャンルの歌を歌うことで)若い世代にイタリアの音楽の素晴らしさを伝えていきたい」と話す。

ピエロ・バローネ 撮影:西原朋未

ピエロ・バローネ 撮影:西原朋未

とはいえ「30代、40代のヴィジョンは」という問いに対し、「イタリア人だから先のことは考えません。今日をいつも最後の日と思い、エンジョイして生き抜く」とイニャツィオ。

その言葉通り、彼等は日本滞在も思い切りエンジョイしている様子。「アメリカナイズされていない」本物の寿司を味わいご満悦のようで「毎日食べたい」(イニャツィオ)とも。また今回は東京と川崎での公演となるが、「日本はヴァカンスにもいいところだと思った。田舎の古い町や歴史にもふれたいし、京都にも行ってみたい」(ジャンルカ)と話す。

そして最後は3人のコーラスでお礼の挨拶。その歌唱力とハーモニーは迫力満点で「やはり本物!」と圧倒された。ぜひ本公演も期待したい。

イル・ヴォーロ、スタラーチェ駐日大使 撮影:西原朋未

イル・ヴォーロ、スタラーチェ駐日大使 撮影:西原朋未

取材・文・撮影=西原朋未

公演情報
Il VOLO(イル・ヴォーロ)
Notte Magica ~魅惑の夜~

 
■日程・会場:
11月29日(水)18:30~ 
Bunkamuraオーチャードホール
12月01日(金)18:30~ 川崎市スポーツ・文化総合センター

抜群の歌唱力とアダルトな風貌、話すとユーモアがいっぱい! イタリアから初来日の「イル・ヴォーロ」、11/29・12/1に公演

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クラシカル・クロスオーバーの新星トリオ、イル・ヴォーロ(IL VOLO)が初来日。11月29日にBunkamura オーチャードホールで、12月1日にはカルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センターホール)でコンサートを開催する。

平均年齢22歳にもかかわらず、ミドルエイジのような風格と歌唱で聴衆を包み込み、すでに欧米で数々の記録を更新中だが、素の彼らは陽気なイタリアン。ジョルジョ・スタラーチェ駐日イタリア大使同席の会見も、ユーモアに富んだ会話で「人生を楽しみたい!」。

2010年、アルバム『IL Volo』でデビュー以来、欧米で快進撃中のイル・ヴォーロ。グループ名は、イタリア語で「飛ぶ、飛躍する」といった意味だが、その名の通りの活躍ぶりで、11年にアルバムが米国ビルボード・クラシックチャート1位になると、欧米ツアーがスタート。14年にはラテン・グラミー賞で2部門受賞、15年はイタリアのサンレモ音楽祭で優勝。16年には、フィレンツェのサンタ・クローチェ広場での3大テノールに捧げるコンサートでプラシド・ドミンゴと共演……など、話題に事欠かない。

昨年の3大テノールに捧げるコンサート。3万人の聴衆の前でドミンゴと共演し、讃辞をもらった最高の夜だ

昨年の3大テノールに捧げるコンサート。3万人の聴衆の前でドミンゴと共演し、讃辞をもらった最高の夜だ

メンバーは、ロマンチックな歌唱のジャンルカ・ジノーブレ(21)、おおらかで明るい歌声のイニャツィオ・ボスケット(22)、美しい高音で朗々とドラマチックに歌い上げるピエロ・バローネ(23)。オペラのアリアやカンツォーネ、ポップス、ミュージカルの名曲など、幅広いレパートリーをソロやハーモニーを駆使して歌う。
「それぞれのパートは、心理セラピーで性格を分析して決めるんです(笑)」と、ユーモアをまじえて話すイニャツィオは、ムードメーカー。「それはウソで、お互いの声の特徴を生かして決めています。ジャンルカの声から始める曲が多いのは、彼の声が温かくてムーディーだから。そしてそれぞれの声域に合わせて、ピエロは高音とか……」

 ジャンルカは「イタリアは車や料理だけでなく音楽でも知られています。その音楽を僕たちの歌で、日本で披露できるのがうれしい。昨年の3大テノールに捧げるコンサートは、とても名誉な出来事でした。日本公演は、このサンタ・クローチェ広場での夜を再現するような内容で、クラシカルな曲を中心に『オー・ソレ・ミオ』『帰れソレントへ』などカンツォーネやポップスも歌う予定です」。

イニャツィオも「ソールド・アウトになったそうですが、夢のような夜を味わってくれる人が増えるように思いをこめて歌います」。

イタリア大使館の紅葉の庭で。お互い写真を撮り合ったり、カメラ取材に応じたり

イタリア大使館の紅葉の庭で。お互い写真を撮り合ったり、カメラ取材に応じたり

 彼らの出会いは運命的。09年、イタリア放送協会RAIのオーディション番組に、それぞれソロで出演したところ、番組のプロデューサーの発案で、世界を席巻した「3大テノール」のようなトリオを組むことに。そこで、今度は3人で『オー・ソレ・ミオ』を番組で歌うと、14、5歳の少年たちとは思えない圧巻の歌唱にCDデビューが決まり、今日に至っているというのだ。

3人の性格はそれぞれ異なり「ピエロは考えがはっきりしていて、一度決心したらやり抜くタイプ。ジャンルカは完璧主義で、日本人みたいだね」とイニャツィオ。これに対し、ピエロは「イニャツィオは人を笑わせるのが上手で、寝覚めの悪いふきげんな朝でも明るい雰囲気にしてくれます」。

共通点は「祖父母の世代から3大テノールが好きでよく聞いていたりして、似た音楽的背景をもっていること。僕らと同じ若い世代の人たちにイタリア音楽の素晴らしさを伝えていきたい」とピエロ。ジャンルカも「イタリアで永遠に歌い継がれていく曲を、広めていきたい」。

今年は欧米45都市57公演で約25万人動員したというが、ついに上陸した日本でも、東京・川崎の両公演ともチケットは売り切れだ。オフタイムの楽しみは、本場の寿司を食べることだったよう。イニャツィオは、
「イタリアでは、アボカドのロール巻きのようにアメリカナイズドされて入ってきているので、日本では本物を毎日食べるぞと食べる気満々で来ました。自然素材をいろいろ使っていてシンプルで美味しい。まだまだ食べたい(笑)」

今後は「目標とするアーティストは特にいませんが、自分たちならではの道を進んで、イタリアを代表するグループになりたい」とイニャツィオ。でも「イタリア人なので、あまり先のことは考えず、いつも今日を楽しみながら生きていきたい」と最後までユーモアたっぷりだった。

 しかも、そんな3人をそばでずっと温かく見守り続けていたスタラーチェ駐日大使が、「私も若い頃からよく働き、人を笑わせ、人生を毎日エンジョイして生きてきました。彼らのような若者が、そんなイタリアの伝統を引き継いでくれてとてもうれしく思います」と締めくくったのだった。ブラボー!

「いい方向に進化しながら、ますます飛躍を!」などとスタラーチェ駐日イタリア大使に激励され、聞き入る3人

「いい方向に進化しながら、ますます飛躍を!」などとスタラーチェ駐日イタリア大使に激励され、聞き入る3人

取材・文=原納 暢子

公演情報
Il VOLO(イル・ヴォーロ)
Notte Magica ~魅惑の夜~

 
■日程・会場:
11月29日(水)18:30~ Bunkamuraオーチャードホール
12月01日(金)18:30~ 川崎市スポーツ・文化総合センター

英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン/3作目はバレエ『不思議の国のアリス』!【現地パンフレットを4名様にプレゼント】

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英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)のライヴビュー上映の3作目は、バレエのシーズン開幕を飾った『不思議の国のアリス』だ。

 

ルイス・キャロルの同名の小説を題材に、クリストファー・ウィールドンが振り付けたROHオリジナル作品で、2011年の初演以来、改定を加えながら再演を繰り返し、今やすっかりバレエ団の代表的なレパートリーとなった。2013年のROH来日公演でも上演されたほか、ロサンゼルス・バレエやオーストラリア・バレエなどがレパートリーとするなど世界にも広がっている。2018年は新国立劇場バレエ団がシーズン開幕作品としてこの『アリス』を上演予定で、まさに今注目の作品と言えるだろう。

今回のシネマでは、アリスに初演キャストのローレン・カスバートソン、ハートのジャックにフェデリコ・ボネッリ、マッドハッターにはスティーヴン・マックレー、さらにハートの女王にラウラ・モレーラが配されている。個性豊かなキャラクターを個性的なダンサーが表情豊かに、時には騒々しく、突き抜けた演技で踊り見応え満点だ。ROHバレエシーズン開幕にふさわしい、賑やかで華やかな舞台を大スクリーンでぜひ、目にしていただきたい。

※現地パンフレット(英文)を4名様にプレゼント。詳細は文末にて

■英国テイスト満載!伝統色に溢れた現代のバレエ

ROHのバレエ『不思議の国のアリス』はルイス・キャロルの原作をベースに、少女アリスと庭師ジャックの恋を通し、アリスの成長が描かれる。

物語の始まりはアリスの家のガーデンパーティー。キャロルが『アリス』を出版した1860年代のヴィクトリア王朝の時代で、キャロルがアリスや姉妹たちの写真を撮るなど、原作者へのオマージュも盛り込まれている。そのパーティーでルイス・キャロルが白ウサギに変身。キャロルおじさまなのか白ウサギなのか、ともかく「彼」を追ってアリスもウサギの穴に飛び込み、「不思議の国」の冒険が始まる。

©ROH, Johan Persson

©ROH, Johan Persson

「不思議の国」ではマッドハッターや三月ウサギに眠りネズミ、侯爵夫人と料理人、魚にカエル、そしてハートの女王とおなじみの登場人物が次々と登場する。衣装をはじめ舞台美術などの世界観は『アリス』原作の、テニエルの有名な挿絵が元となっている。侯爵夫人の乳母車など、小道具はヴィクトリア王朝時代のものを再現したそうだ。一方で不思議の世界の仕掛けにはプロジェクションマッピングを利用して効果的に表現する。踊りは古典バレエやコンテンポラリーのテイストにタップダンス、歌舞伎の黒子が操作するようなチェシャ猫、ハートの女王が踊る『眠れる森の美女』の「ローズ・アダージョ」のパロディといったユーモアなど、伝統と現代、様々なスタイルがセンス良く、品よく盛り込まれている。ともかく隅々まで英国らしさに溢れており、誇りさえ感じられる。

ⒸJohan Persson

ⒸJohan Persson

■より深化したストーリーとダンサー達の表現

ストーリーは2011年の初演から繰り返し改訂が加えられ、さらに深まった。最初は2幕だったこの作品は再演で3幕となり、さらに今回はアリスとジャックのパ・ド・ドゥなどに細かい改定がなされている。これにより話の軸である「アリスとジャックの恋」がよりわかりやすく明確になっている。

シーズン初演に『アリス』を選んだのは「たくさんのキャラクターが出てくるので、大勢のダンサーが活躍できるから」と幕間インタビューでケヴィン・オヘア監督が語る通り、この作品は大勢のダンサーが観られるのも魅力のひとつ。

©ROH, Johan Persson, 2011

©ROH, Johan Persson, 2011

 

初演からアリスを演じるカスバートソンにはこの役に対する愛情と思い入れがたっぷりと感じられ、マックレーのマッドハッターはクレイジーさにさらに磨きがかかるとともに、色気までが加わり怪しさ満点。

 

この『アリス』で忘れてはならないのがハートの女王。ゼナイダ・ヤノウスキーの怪演を記憶している方々も多いだろうが、今回演じたモレーラもまた負けず劣らずの爆演で笑いが止まらない。悪ぶっているようでどこか人の良さげなジェームズ・ヘイの白ウサギ、表情もアクションもいぶし銀感満点のギャリー・エイヴィスの侯爵夫人など、ダンサー達の役に対する解釈や踊り・演技も一層深まり、実に見応えがある。

©ROH, Bill Cooper, 2014

©ROH, Bill Cooper, 2014

「パーカッションがピットの3分の1を占める」という音楽もぜひ耳を傾けてほしい。時を刻むマリンバなどの音とともに繰り返されるアリスとジャックの主題が遠い昔の思い出のようにノスタルジックに響き、2人の恋物語に彩りを添える。

お馴染の幕間インタビューはダーシー・バッセルとともにアレクサンダー・キャンベルが登場。軽快でインテリジェンスなトークにも注目だ。

大人から子供まで、バレエを初めて観る人もマニアックなファンも幅広く楽しめる『不思議の国のアリス』。ぜひお見逃しなく!

上映情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2017/2018シネマシーズン
『不思議の国のアリス』
 
【振付】クリストファー・ウィールドン
【音楽】ジョビー・タルボット
【指揮】クン・ケセルス
【出演】ローレン・カスバートソン(アリス)
フェデリコ・ボネッリ (ハートのジャック)
ジェームズ・ヘイ(ルイス・キャロル/白ウサギ)
*エドワード・ワトソンから変更
ラウラ・モレーラ(ママ/ハートの女王)
*ゼナイダ・ヤノウスキーから変更
スティーヴン・マックレー(マジシャン/マッドハッター)
【上演時間】3時間13分
 
【上映劇場】
北海道 ディノスシネマズ札幌 2018/1/13(土)~2018/1/19(金)
宮城 フォーラム仙台 2017/12/2(土)~2017/12/8(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2017/12/1(金)~2017/12/7(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2017/12/2(土)~2017/12/8(金)
※上映時間について、公開日が近づきましたら 上映劇場へ直接お問い合わせ下さい。

■公式サイト:http://tohotowa.co.jp/roh/
 
プレゼント情報
英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2017/2018の第3作、『不思議の国のアリス』の公演プログラム(英文)を抽選で4名様にプレゼント。ロンドンの英国ロイヤル・オペラ・ハウス会場で販売されているプログラムです。



【応募方法】
※Twitterでご応募ください。
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【応募期間】
2017年12月4日(月)18:00まで
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【応募条件】
・日本に居住されている方(賞品配送先が日本国内の方)。
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※当選結果に関するお問い合せは受け付けておりませんので、ご了承ください。
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・応募時の内容に記載不備がある場合。
・お客さまのご住所が不明、または連絡不能などの場合。

ヴァイオリンミューズ川井郁子にインタビュー 『コンサートツアー2018 LUNA~千年の恋がたり~』に込めた想い 

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ヴァイオリニストとしての卓越した才能はもとより、その美貌と深い表現力で、視覚的にも楽しめるコンサートをはじめとした多彩な活躍を続けているヴァイオリンミューズ川井郁子のコンサートツアーが、2018年2月23日(金)渋谷のBunkamuraオーチャードホールで開催される。

テーマとなるのは「『LUNA』~千年の恋がたり~」。11月1日にソニーミュージックよりリリ―スされた、7年ぶりとなる待望のオリジナル・アルバム『LUNA』の収録楽曲を中心とした三部構成によるコンサートは、和楽器と洋楽器によるコラボレーションで壮大な音楽舞台となる。演奏曲目には、フィギュアスケートの羽生結弦選手が長年使用している「ホワイト・レジェンド」をはじめ、ミシェル・クワン氏も使用した「恋のアランフェス~レッド・ヴァイオリン~」、荒川静香氏が使用した「夕顔~源氏物語より~」など、音楽ファンのみならずフィギュアスケートファンにも絶大な支持を集めた楽曲も予定されている。さらに、本年6月より国立新美術館ほか全国で開催された『ジャコメッティ展』のテーマ曲「流星」や、2018年1月公開の映画『ミッドナイト・バス』のメインテーマ「ミッドナイト・ロード」などは広く親しまれ、他ジャンルで耳に馴染んだ音楽を、川井自身の生演奏で聞くことができる貴重な機会にもなっている。

スペシャルゲストにはロシアの至宝、バレエダンサーのファルフ・ルジマトフが参加。岩田守弘の振付による、川井郁子ならではの世界観が繊細にかつ大胆に、情熱的に表現されていく、必聴・必見のコンサートだ。

そんな、壮大な広がりを見せるコンサートに臨む川井郁子が、コンサートへの意欲、またその楽曲が収められたアルバム『LUNA』に込めた想いと、多彩な曲作りに向かう発想などについて語ってくれた。

川井郁子  撮影=山本れお

川井郁子  撮影=山本れお

三つの異なるコンセプトで展開されるシアトリカルなコンサート

――今回のコンサートの核となるアルバム『LUNA』のタイトルに込められたものはなんだったのでしょう。

色々な要素があるのですが、月には、すごく激しく見える月もあれば、雲がかかった朧な月もあるという、多面性があると思います。そして、私自身が「自分もそうだな」と最近気づいたのですが、やはり女性というのは受容体なんですね。起きる出来事とか、一緒にいるものによって、全く違うものが表れる。舞台の上にいる私もまさにそうですし、刻々と姿を変えていく月のイメージは女性そのものだなと。そして、月は世界中を照らしていて、遥かな宇宙から人々を見つめ続けていたし、また、太古の昔から人々が想いを持って見上げていたものでもある。そういう大きなイメージが、今回の音の世界にマッチすると思って、名付けました。

――楽曲が、赤・白・群青という3つの色でカテゴライズされていて、とても激しく情熱的なものから、和テイストのものまで大変多彩ですが、それもやはり月の多面性というものと合致したのですか?

そうです。“月”というコンセプトは楽曲が出揃ってきた時に出て来たものなのですが、月が様々なイメージになるというところが、ちょうどこの3つの色と、楽曲とに当てはまっていきました。

――そうした、様々な個性と壮大な世界観が、今回のコンサートでより大きく広がるのではないかと思いますが、コンサートの構成などはどのように?

今回初めて三部構成にしています。一部は地球が生まれた、プリミティブで民族的な、神話につながるような情熱を表現します。二部では、これまでのライブを踏襲するような、ジプシー系や、タンゴなどの躍動的なものを中心にお届けします。そして休憩を挟んだ三部は、2016年に初演した林真理子さんの「源氏がたり」を基にした、オリジナルのモノオペラで、源氏物語の世界を観て頂く形になっています。

川井郁子  撮影=山本れお

川井郁子  撮影=山本れお

――1つのコンサートの中で3つのコンセプトのステージが見られる、大変贅沢な内容なのですね。これまでも川井さんは、舞台芸術とコンサートを融合させた独自のステージを展開されていますが、そうした融合を今回のコンサートではさらに推し進めようと?

これまでは、ある決まった舞台に私自身が入れて頂くという形で、色々な舞台に立ってきたのですが、その舞台に立っている時の自分が、コンサート以上に音楽の中に入っていくことができるということを、強く感じていたので、これからは自分が表現する舞台でも、そういう形にしていきたいなという気持ちがあります。

――演じながら演奏するという舞台の経験から得た感覚なのですね。

そもそもは寺山修司さんの舞台(宇野亜喜良演出による『上海異人娼館』)に出させて頂いた時から始まるのですが、舞台に立っている自分が、自分でもびっくりするほど音楽と一体化できる、ということの衝撃がありました。その後様々な経験を積む中で、やはりそうした感覚がますます強くなっていって、これは私だけの特性なのだから、やはり生かしていきたいなと。それから、自分が見る側に回った時にも、音の記憶ももちろんなのですが、視覚から入った記憶というのはやはり強烈に残るので、私のステージも音と共に視覚にもずっと残るようなものでありたいと願いました。

――音楽と視覚的な要素が結びつくことによる相乗効果だと。

初めからそうだと気づいていた訳ではなく、結果としてそうだなと得心していきました。見る側としてもそうですし、演奏していて自分が解き放たれるのは、視覚的な要素の入った舞台の時だなというものがあったので。ですから、これまでの私のツアーはいつもコンサートだったのですが、今回はシアトリカルなイメージがある舞台にしようと思っています。

川井郁子  撮影=山本れお

川井郁子  撮影=山本れお

ヴァイオリンの音色は自分の声で歌うようなもの

――今回のステージにはロシアの至宝とも呼ばれるバレエダンサーのファルフ・ルジマトフさんも出演されます。

舞台の上で何に感化されて弾けるのか?というところから、やはり身体表現との化学反応から生まれるものはとても大きくて、中でも自分を高めてもらえるという意味では、ルジマトフさんが持っていらっしゃる世界観や存在感が、1番自分の音楽に近いなと感じていました。ルジマトフさんの神々しい、どこか近寄りがたいようなイメージと、その一方でとても官能的で野性的という、両極のイメージを見せてもらえていて、今回のステージに欲しい世界観に最も合う方だなと感じているので、共演できることがとても楽しみです。

――楽曲についても川井さんのオリジナル曲と、著名なクラシック曲を新たなアレンジで聞かせて頂けるものとが、とてもバランス良く構成されているなと感じるのですが、オリジナル曲とアレンジ曲で向き合い方に違いなどは?

端的に言いますと、クラシックのアレンジの方がとても大変です。私の場合はよくあるクラシックの名曲を短く聴きやすくしよう、というアプローチではなくて、こうアレンジすることによって、楽曲が全くこれまでと違う輝きを見せる!と思いついたものを取り入れるようにしているので……それはもう、ただ好きな曲だからと言って生まれるものではないですから。今回も数曲入っていますけれども、これは私ならではの新しいものになる、という想いで取り組んだ曲ばかりです。

――そういった「これだ!」という発想や、インスピレーションはどういう形で生まれることが多いのですか?

1番必要なのは和音なので、作曲もアレンジもピアノでやるのですが、夜遅く、ピアノの前に座って和音を弾いている中から、イメージが降りてくることが多いですね。そのスタイルはずっと変わらないです。

――その時、ご自身の中では、ヴァイオリンの音色がすでに鳴っていたりも?

そう意識はしていないのですが、やはり出来上がったものは不思議と、ヴァイオリンで弾くのに適したメロディーになっていますね。やはり私にとってのヴァイオリンというのは、自分の声で歌うようなものですから、自然にそうなっているのかなと思います。

――創られる時には「ヴァイオリン曲にしよう」というような意識ではなく、純粋に楽曲として書かれているのですね。

そうなんです。ヴァイオリンで弾いてみるのは、いつもかなり後になってからですね。

川井郁子  撮影=山本れお

川井郁子  撮影=山本れお

無限の可能性を感じるオーチャードホールの舞台

――ヴァイオリンの音色があれほど美しく響く楽曲が生まれるのは、川井さんとヴァイオリンの深い結びつきがあるからだと思います。今回のコンサートのように、視覚効果にも積極的に訴えていこうという気持ちに至ったのは、やはりこれまでの多彩な活動から生まれた志向でしょうか?

偶然に出会ってきた機会を経て、今があるということなのだと思います。10年前には、今のような形でのコンサートを想像すらしていませんでしたから。

――では、以前から音楽と同時に演劇的なものにも興味があったということではなく?

全くなかったんです。それどころか、ずいぶん昔のことになりますが、映画に出して頂いたことがあって、それは純粋に演じるものだったのですが、音楽を弾くような境地にはとてもなれないと感じて、自分には演じることは向かないと決め込んでしまっていたくらいでした。それが、さっきもお話しました寺山修司さんの舞台のお話を頂いて、音楽と演じるということが常にリンクした形での舞台を経験しましたら、演じる時にも音楽を弾いている時と同じモードで、別の世界に行けるということに気づいたんです。ですから、すべての経験によって今に至るということでしょうか。

――今ではご自身の曲を演奏している時に、曲の世界観の中に入っていくことと、演じながら役の世界に入っていくことがつながっている。

つながらないものだと思っていたものが、つながるんだとわかった時に、単に2つがつながるばかりではなくて、両方の相乗効果になりました。言葉で高まった気持ちのままに演奏することによって混沌とした情熱が生まれ、またその境地で台詞が言えるという、お互いがさらに、さらにと、高め合えるものなのだなと感じています。

――そうした情熱が、川井さんの唯一無二の表現を生み出していくのですね。「源氏物語」なども含めて、川井さんだけの要素がふんだんにある、今回のコンサートに懸ける想いを改めてお聞かせください。

ある意味私にとっての集大成になる舞台ではないかなと思います。やりたいことをやりたい形で表現できるという意味では、これまでで1番のものになると思うので、私は受容体として、ルジマトフさんをはじめとしたメンバーの方々の音や、気持ちで、月のように輝ける舞台になりそうなので、今とても楽しみにしています。オーチャードの舞台には、無限の可能性を感じているので、今は本当にこの舞台への想いで頭がいっぱいです。

――オーチャードホールでのコンサートを楽しみにしている方々にメッセージを。

今回のオーチャードホールのコンサートでは、『LUNA』のアルバムの世界観を中心に、色々な音の楽しみ方が味わえる舞台になっていると思います。ミュージシャンの編成も贅沢ですし、何よりルジマトフさんが入ってくださることで、世界観が明確で強烈なものになると思います。私自身もその化学反応がどれくらいのものになるかに期待していますし、『LUNA』の世界観にピッタリのキャストだと思っているので、是非生の音で展開される『LUNA』の世界を楽しんでいただきたいと思います。

川井郁子  撮影=山本れお

川井郁子  撮影=山本れお


インタビュー・文=橘 涼香 撮影=山本れお

公演情報
川井郁子コンサートツアー2018 LUNA~千年の恋がたり~

日時:2018年2月23日 19:00開演
会場:Bunkamuraオーチャードホール
出演者:川井郁子 スペシャルゲスト:ファルフ・ルジマトフ 吉井盛悟(和太鼓) 中井智弥(二十五弦筝) 朝川朋之(ハープ) ストリングス 他


 

【来週の星占い-12星座別おすすめエンタメ情報-】(2017年12月04日~2017年12月10日)

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やりたいという意思や、こうなりたいという目標が、誰に言われるでもなく自分の中から湧きあがる時です。しかし、強く願ったとしてもなかなか形にする道のりがつかめず、時間だけ過ぎて行くような想いになるかもしれません。

年末の忙しない空気がノイズのように感じられたり、立てようとした計画を真っ向から覆されるような情報が飛び込んできたり、何となく苛立ちや根拠のない不安に襲われることもあるでしょう。期待していた結果や反応が得られなくても、カッとして投げ出さないで。今はまだウォーミングアップの時期。壁打ち相手と思って深刻にならないことです。

向かおうとしている場所に、どうやっていくのか。これは自分にとって、毒なのか薬なのか。無駄と考えるか、投資と考えるか。物事の捉え方を、短期的なものから長期的なものにしたり、目先の所ではなく俯瞰から見てみたり、思っている以上に遠回りをしてみる方が、得られる結果や経験の質も変わってきそうです。

短絡的に熱を上げて手にしたものは以前にも増して、一瞬にしてその価値を失っていくでしょう。誰かにとっては価値のあるものでも、自分にとってはもはやそうでもない、という多様な感覚差に触れる機会があるかもしれません。良いな、すごいな、可愛いな、きれいだな、という瞬発的な感情を抱いたとき、すぐに言動に起こさず、数日寝かせてみる訓練をしてみるのも良いかも。

騒いでみたけれどたいていのことはそれほどでもなかったな、と、気づかずにハマっていたかもしれない足元の落とし穴も、華麗に避けられるようになると思います。

【12星座別 今週のラッキーワード】
◆おひつじ座(3月21日~4月19日 生まれ)
のどごしの良さ、キレッキレ
おうし座(4月20日~5月20日 生まれ)
美味しいご飯、ビジュアルヒーリング
ふたご座(5月21日~6月20日 生まれ)
寛容、イージーリスニング
かに座(6月21日~7月22日 生まれ)
発声練習、オーディオブル
しし座(7月23日~8月22日 生まれ)
歴史的、レジェンド
おとめ座(8月23日~9月22日 生まれ)
装飾品、デコラティブ
てんびん座(9月23日~10月22日 生まれ)
操作性、アトラクション
さそり座(10月23日~11月21日 生まれ)
荘厳な、ラグジュアリー
いて座(11月22日~12月21日 生まれ)
覚悟、アンセム
やぎ座(12月22日~1月19日 生まれ)
宣誓、ファンファーレ
みずがめ座(1月20日~2月18日 生まれ)
大衆的、カジュアル
うお座(2月19日~3月20日 生まれ)
段取り、メイキング

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ステファン・リスナー パリ・オペラ座総裁、映画『新世紀、パリ・オペラ座』を語る

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話題の傑作ドキュメンタリー映画『新世紀、パリ・オペラ座』が、いよいよ2017年12月9日(土)より公開される。公開に先立ち、このほどパリ・オペラ座のステファン・リスナー総裁のインタビューが届いた。興味津々の内容が語られている。映画の本編から抜いた動画(SPICEだけでしか見られないものもあり)と併せて、ぜひお読みいただきたい。

動画『新世紀、パリ・オペラ座』本編映像~デフィレ(オペラ座の生徒とダンサーの行進)+予告編


--完成した映画をご覧になった感想をお聞かせください。

私がこの映画の完成版を観る際に一番気にしていたのは、ちゃんとオペラ座の全従業員が満遍なく映っているだろうかということと、彼らがこの映画を観て気に入ってくれるかという事でした。実際完成したものを見てみると、皆気に入ってポジティブにとらえてくれて、全従業員がハッピーだったので、自分も安心したしとても嬉しかったです。

--オペラ座の<変革期>の舞台裏にカメラに入ることについては、マイナス要素は考えませんでしたか?

この話を引き受けるまでは正直悩みました。話をもらったときは、私がパリ・オペラ座の総監督に就任してまだ日が浅かったし、バンジャマン・ミルピエ(舞踊監督)も来たばかりだった。我々は、芸術的な方針や一般の観客に対する方針を決めているところだった…すべてが始まったばかりだったんだ! でも、ジャン=ステファヌ・ブロンという人間、そして彼の監督としての仕事ぶりを知って、考え直しました。彼の過去のドキュメンタリー作品、 « Cleveland contre Wall Street(直訳:クリーブランド対ウォール・ストリート)» « L’experience Blocher (直訳:ブロシェールの経験))» を観たんだ。彼の持つヒューマニズム、眼差し、思いやりに完全に心を動かされました。

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁  (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁 (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

--これまでもオペラ座の舞台裏を撮影した映画、ドキュメンタリーは数多くありますが、これがこれまでのものに比べフランスの興行収入において群を抜いているのはなぜだと思いますか?

この映画の成功は、観客らが登場人物らに感情移入できるところにあると思います。ジャン=ステファン・ブロンの眼差しは何よりとても人間らしい。新作のオペラ作品を創りあげる過程を、ふんだんな演出を施したり、ありきたりな方法を使って見せるのではなく、創作に取り組む人々を丹念に追ったのだ。オペラ座で働く様々な人々のポートレートを描きながら、彼はこのオペラ座という組織の一面を露わにすることに成功した。観客はそこに一つの完成された世界を見出すんだ!オペラ座には、ヒエラルキー、組織の働き方、集団としてのまとまり、また競い合いがあり、それらのいずれもが芸術に関するものと同時に政治的なものであるから、オペラ座は、“皆と同じように”一つの社会や、街、企業に例えることが出来る。

この作品は、ただパリ・オペラ座を題材にした映画というだけではなく、人々についてのドキュメンタリーなんだ!

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁(映画より) (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁(映画より) (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

--オペラ座の総監督の仕事は誰でもなれるものではないと思います。この仕事の醍醐味は何なのでしょうか?

パリ・オペラ座の総裁という仕事は唯一無二です。

パリ・オペラ座は2つの会場を持ち、年間400もの公演を行う。これは1500人以上のスタッフのノウハウと優れた仕事により実現できているんだ。世界で最も美しい街のひとつで、好奇心旺盛な観客たちに向けて仕事をする…これ以上何も望むものはないよ!

--「世界一のオペラ座」の質を維持していく上で、重要なことは何だと思われますか?また今後何が必要になっていくと思われますか?

我々のクオリティを保っているのは、技術、芸術、管理、すべての部門のノウハウだ。公演プログラムの編成も同じく重要だ。僕は、プログラムを立てるときは、あらゆる個人的な感情や外部からの情報を排して、作品自体、その音楽の質や音の美しさだけを考えなくてはならないと思う。さらに、編成は、演目うんぬんよりも、歌手やオーケストラの指揮者、演出家といったアーティストたちのために行わなくてはいけない。アーティストたちがまとまって一つの芸術プロジェクトに打ち込められるよう導くことこそが大切なんです。

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁  (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁 (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

--本作が、日本で公開されることについての感想と、日本の観客に見てほしい点を教えてください。

私はミラノ・スカラ座に勤めていた際、10年間で2回、公演のために東京に来たことがあるので、いかに日本のお客様がオペラに関心を持ってくださっているかという事を非常に良く知っています。今回のこの映画はオペラ座の内部を映していて、舞台上のダンスや舞台だけではなく、それ以外の人のすべての日常がのぞけるものなので、非常に面白いものだと思いますし、日本のお客様には必ず興味を持ってもらえると思うので、とても嬉しく思っています。

日本のお客様は舞台やバレエにとても興味を持ってくださいますし、今年の初めには私はオレリー・デュポンとバレエ団を率いて東京に行ったのですが、本当に日本の方はバレエに関心があって、中でもパリ・オペラ座のバレエに非常に情熱を持ってくださって、とても熱心に見てくださるので、それが非常に嬉しいです。自分は今までのキャリアの中でミラノ・スカラ座とパリ・オペラ座で勤めて、それぞれで日本に来たことがあるのでよく分かっているのだけれども、オペラならミラノ・スカラ座はとても評判が良いですし、バレエならパリ・オペラ座のバレエは大人気なので、いかに日本の皆さんが興味を持ってくださっているのかということを、よく分かっています。

動画『新世紀、パリ・オペラ座』本編映像~期待のスジェ、ファニー・ゴルス+予告編


 

--バンジャマン・ミルピエと彼の退任をめぐって電話でやり取りをするシーンには驚きました。どのように撮影したのですか? また本作について、ミルピエと何か話しましたか? 

ジャン・ステファン=ブロン監督は約2年間、撮影のためにオペラ座にいました。私のオフィスのすぐ横にずっといたり、オフィスに入ったり出たり、時に撮影したりってね。私の仕事中だったり、電話中だったり、どんな時でも自然に入ってきては撮影して、という感じだったのです。だから、この私が電話をしているシーンも、実際に撮影したのはこのシーンだけではなくて、役所の人と話しているシーンなんかもあります。このバンジャマンと電話でしゃべっているシーンも、たまたま電話しているときに監督が入ってきて撮影したもので、私はバンジャマンと元々辞任に関してやり取りしており、たまたま彼から折り返しの電話があった時だったんだ。たまたま辞任だって話してる時に監督が入ってきて撮ったものなので、まったくやらせとか演出とかは一切なしで、本当に自然に撮られたものなんです。

ちなみに今回撮影された中で「これは使わないでくれ」というようなシーンは一切ありません。

そして、本作についてバンジャマンと会話したかという件に関しては、この映画が出来てからバンジャマンと話してないので、シーンがどうこうとか、そういった話はしていないな。

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁  (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁 (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

--オレリー・デュポン体制のバレエ団になっていかがですか? 明確に変化した点は?

オレリー・デュポン体制になってからは、2017-18のプログラムがスタートしたばかりなんだけれども、今、非常に成功して人気を博していて、勅使河原のプログラム、ピナ・バウシュのプログラム、バランシンのプログラム、オープニングガラ・・・など、全て大成功しておりお客様にも人気なので、芸術面では非常に成功していると言えます。オレリー自身が元々エトワールだったし、バレエ団に入る前のエコールの時代からパリ・オペラ座で学んでいるので、とてもオペラ座に精通しているし、とても愛してくれている。そうやって下からずっと生え抜きで来た人が上にいるというのは、とても良い雰囲気も出ているので、バンジャマン・ミルピエの時代よりは遥かに良くなっていますよ。

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁(映画より) (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas  - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio  - RTS

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁(映画より) (c) 2017 LFP-Les Films Pelleas - Bande a part Films - France 2 Cinema - Opera national de Paris - Orange Studio - RTS

--本作では、音楽監督のフィリップ・ジョルダンの熱意に圧倒され、音楽を愛する彼の人間性がとても魅力的に映されていますが、リスナー総裁から見て彼はどんな人物ですか?

フィリップは非常に優れた指揮者であり、優れた人格者です。何故優れた指揮者であるかというと、彼は元々ピアニストで、お父上も有名な指揮者なので、そもそもそういう環境で育っているし、さらに若い頃は小さい劇場で働いたり、オペラも色々経験を積んでいて、私がシャトレ劇場で働いていた時の95年のワーグナーの「ニーベルングの指環」シリーズで彼はアシスタントとして働いていたり、とにかくいろんな実績がある。さらに非常に仕事に堅実に、まじめに取り組む人で、アーティストの知識、歌手の知識、音楽家たちの知識がものすごく深く、楽団員とも信頼関係を築けている。彼はオペラも良く知っているし、オーケストラにも認められているし、着任して約10年ですが、彼が着任してからいいことばかりで、本当に偉大な指揮者です。

さらに人物としても、非常に規律正しくて手本になるような人で、彼はすごくレパートリーが広く、「モーゼとアロン」であったり、ヴェルディの「ドン・カルロス」であったり、ベルリオーズの「ファウストの劫罰」であったりモーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」であったりと、レパートリーがすごく広く、それが非常に素晴らしい。オーケストラとの関係においても、よく長年同じ人と組んでいると飽きられたりしますが、彼はそんなこともなく、楽団員も彼からはずっと学ぶことがあるというな気持ちで居てくれて、本当に固い信頼関係があるので、パリ・オペラ座の成功の一因は彼のおかげだと思います。

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁  (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

ステファン・リスナー パリ・オペラ座 総裁 (c) Elisa Haberer - Opera national de Paris

--その後(映画で描かれているその後)のミハイルはどうしていますか?

映画の撮影後、ミハエルはオペラ・バスティーユで公演されるヴェルディの「リゴレット」でのチェプラーノ伯爵役とアルバン・ベルグの「ヴォツェック」のErster Handwerksbursch役の二つを獲得しました。今後の彼のキャリアが楽しみです。

動画『新世紀、パリ・オペラ座』本編映像 パリオペラ座オーディションへ潜入+予告編


 
上映情報
「新世紀、パリ・オペラ座」
12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
■配給:ギャガ
公式HP:http://gaga.ne.jp/parisopera/

『新世紀、パリ・オペラ座』ミルピエの芸術監督辞任会見での緊迫映像が解禁

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世界に冠たる芸術の殿堂パリ・オペラ座の最新の舞台裏を正式にカメラにおさめることに成功し、フランス本国ではパリ・オペラ座に関するドキュメンタリー映画史上No.1の動員を記録した話題作、『新世紀、パリ・オペラ座』(配給:ギャガ)が2017年12月9日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開される。

このほど、本編映像のうち、世界に衝撃が走った、バンジャマン・ミルピエの芸術監督退任発表会見の様子が一部公開された。

動画『新世紀、パリ・オペラ座』バンジャマン・ミルピエ退任記者会見


バンジャマン・ミルピエは、ナタリー・ポートマンにアカデミー賞主演女優賞をもたらした映画「ブラック・スワン」(2010)に振付師・アドバイザーとして参加し、それをきっかけにナタリー・ポートマンと結婚、本人も2014年にパリ・オペラ座で史上最年少の芸術監督に任命されたことで一躍時の人となった(紹介時に必ず「ナタリー・ポートマンの夫」という肩書がついてまわるのはいかがなものかとも思われるが……)。そのミルピエが、2016年2月、突然退任を発表した。今回解禁される映像は、その際の会見の模様だ。

会見に同席するのは、現代屈指の劇場支配人として知られ、ミルピエと同じく2014年からこのパリ・オペラ座の総裁を務めるステファン・リスナーと、2015年に引退するまで華麗なエトワールとして活躍し絶大な人気を誇り、ミルピエの後任として新しく芸術監督を務めることになったオレリー・デュポンである。世間の関心の的であった3人が会見に臨むために一堂に会し、記者たちから質問攻めに合う光景は、バレエファンならずとも興味津々だろう。

さらに詳しい状況を知りたくなったら12月9日公開の『新世紀、パリ・オペラ座』を観ることをおすすめする。

上映情報
「新世紀、パリ・オペラ座」
12月9日(土)Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー
■配給:ギャガ
■公式HP:http://gaga.ne.jp/parisopera/

大阪フィルハーモニー交響楽団の尾高忠明が初登場! 2018年春開幕『大阪4大オーケストラの響演』記者懇談会レポート

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大阪の春の風物詩として定着しつつある音楽の祭典、第56回大阪国際フェスティバル2018『大阪4大オーケストラの響演』(通称4オケ)が2018年4月21日(土)、大阪・フェスティバルホールで開催される。大阪を本拠地とするオーケストラ4団体とそれぞれのシェフが一堂に会する1日限りのスペシャル・コンサートだ。2015年から毎年開催され、今回で4回目(当初は4回を目処としたが、現在前向きに継続を検討中)。公演に先駆け11月に開催された記者懇談会の模様をレポートする。

登壇者は出演の4大オーケストラから、大阪フィルハーモニー交響楽団(1947年発足)の新音楽監督・尾高忠明(2018年4月就任予定)、関西フィルハーモニー管弦楽団(1970年発足)の首席指揮者・藤岡幸夫、日本センチュリー交響楽団(1989年発足)の首席指揮者・飯森範親、大阪交響楽団(1980年創立)のミュージック・アドバイザー・外山雄三。日本を代表するマエストロが、楽団の魅力と選りすぐりの楽曲についてたっぷりと語った。

■4大オケの垣根を超えて、あらたな演奏家や楽団の魅力に出会えるチャンス!

ーー2018年4月、4回目となる『4オケ』の開催が決定しました。

尾高忠明<大阪フィルハーモニー交響楽団・新音楽監督>:この話を東京で聞いた時、「すごいことやるな~」と思いましたよね。「楽屋足りるのかな?」って(笑)。まさか自分がここにくるとは夢にも思っていませんでした。オーケストラは自分たちの演奏はよく知っているが、他のオーケストラの演奏はよく知らない。それを聴くというのは、指揮者にとってもこれほど勉強になることはありません。互いに良い影響を受ける可能性が非常にある。お客様も、例えば関西フィルのファンの方が「大阪交響楽団良いな。今度演奏会に行ってみようかな」とか、相互で新たな聴衆が増えていくことを秘めている。新参者の私が入ったことで、今回が「完結」とならないように頑張ります。

尾高忠明

尾高忠明

藤岡幸夫<関西フィルハーモニー管弦楽団・首席指揮者>:今回で3回目の出演になります。毎回(会見のたびに)言っていますが、普通のコンサートよりも嫌ですね~。他の方のリハーサルを見るのはすっごく楽しくて勉強になるのですが、いざ自分が見られる側の立場になると、嫌で嫌でしょうがない(笑)。外山先生は、僕がデビューしたての頃にお電話を頂いた思い出があります。先生は覚えてらっしゃらないと思いますが、尊敬する大先輩です。

藤岡幸夫

藤岡幸夫

藤岡:尾高先生は、イギリス時代にとてもお世話になりました。僕の英国デビューの大きなきっかけとなったBBCフィルハーモニックの定期演奏会で、名匠ロジェストヴェンスキーの代役としてリハーサルを務めることになったのですが、マーラーの「復活」なんて、どうやって振ったらいいか分からない。マンチェスターから尾高先生のご自宅があるウェールズまですっ飛んでいって、振り方を教えてもらった大恩人でもあります。(飯森)範親は特に恩人でもなく、うちの家内が彼の子供たちの家庭教師をやっているので、むしろ僕の方が恩人です(笑)。コンサートが開催される2018年は僕にとって19年目のシーズンになります。毎年、30公演から多い年で50公演、関西フィルに全てを掛けてきました。19年間の意地を絶対に見せるような演奏会にしたいです。

左から、尾高忠明、藤岡幸夫

左から、尾高忠明、藤岡幸夫

飯森範親<日本センチュリー交響楽団・首席指揮者>:尾高先生は、僕の桐朋学園大学・指揮科時代の恩師です。担当教官として1年の時から相当厳しくご指導いただき、僕の出来の悪いところは全部バレています(笑)。

左から、尾高忠明、藤岡幸夫、飯森範親

左から、尾高忠明、藤岡幸夫、飯森範親

飯森:22歳でデビューして以来、30年以上続けてこられたのは、尾高先生のお陰です。また、外山先生は僕が24歳の時に初めてNHK交響楽団を指揮した時に、練習を全部みていただきました。(外山:「俺そんなことしてねぇだろ~」)。いえいえ(笑)、非常に丁寧にご指導いただきました。(藤岡)サッチーは、息子たちが彼の奥さんにお世話になり、お陰さまで下の子もめでたく幼稚園に入園できました(笑)。そんな皆さんと、互いが関わっているオーケストラの演奏を披露できる機会ですので、自分も日本センチュリー交響楽団の実力、クオリティーというものを最大限に発揮したい。大阪のお客様が、それぞれのコンサートに行きたくなって欲しいとの願いをこめて、満員の聴衆の中で演奏できることを願っております。

飯森範親

飯森範親

外山雄三<大阪交響楽団ミュージック・アドバイザー>:大阪交響楽団はご存じのように若いオーケストラですので、ドロドロした部分、重々しい部分があまり表にあらわれない。そこをどう処理するかが指揮者の責任だと常々感じております。今回(の演奏曲)はブラームスの交響曲第1番。私の中で一番強烈な印象はカラヤンがN響を指揮したときのもの。ドイツの指揮者はこんなにも重々しい序奏なのかと思いました。その後、ドイツ人はではなく“カラヤンはそうだった”ということに気づくのですが。いまだに何十年も前の、その時の印象が私の中に残っておりまして、邪魔です(笑)。

外山雄三

外山雄三

外山:今回そういう色々なことを私の中で全く新しいものにします。つまり、しょっちゅうやってるオーケストラに「ブラームスの1番って本当はこういう曲なのか!」と気付いてもらえたとしたら、聴衆の皆様にも「ブラームスもなかなか良いな」と思っていただけるのかなと思います。

左から、飯森範親、外山雄三

左から、飯森範親、外山雄三

■お馴染みのバレエ音楽からヨーロッパ熱狂の作品まで、厳選4作品を堪能!

ーーそれぞれの演奏曲についてお聞かせください。尾高さんのエルガーの序曲「南国にて」は、日本で演奏される機会は少ないかもしれません。

尾高:エルガーはイギリス時代にハマりました。例えば日本に演奏旅行に来てエルガーの1番をやると、聴いて下さった方からうちでもと依頼され、そこでやるとまたうちでもと頼まれることが続いて、自分の中ですごく大きな存在の曲になりました。そこから1番以外にももっと素晴らしい曲がいっぱいあるなと思い、その中のひとつが「南国にて」です。エルガーがイタリア北部を旅して、素晴らしい景色の中に佇んでいるうちに「もう自分の中では曲がかけた」という有名なエピソードで語られる曲です。中でもヴィオラのソロが本当に美しい。一度聴いた人はこの曲を一生忘れないというぐらい素晴らしい作品です。

尾高忠明

尾高忠明

尾高:エルガーは僕が一番長く滞在したイギリスのウェールズに近いウスター近郊に育ち、小高い丘を散歩するのが大好きだった。そこで聴こえてきたのがウェールズの民謡だったんですね。エルガーはそれを色んな曲に取り入れています。僕がウェールズにいて何を一番感じたかといえば、現地の陶器は唐津焼に似ているな、旋律線も「ああ、ノスタルジーを感じるな~」とか、日本との共通点でした。そこからエルガーの色んな作品を演奏するようになりました。実は来月(2017年12月)も英国で私のBBCウェールズ交響楽団在任30周年祝賀演奏会があるのですが、そこでのプログラムのトリにこの「南国にて」を演奏します。

ーー藤岡さんはバレエ音楽「白鳥の湖」を組曲ではなく、独自のセレクション版での演奏です。

藤岡:外山さんが今年4月「くるみ割り人形」をやられたこともあり、なるべく有名な曲でというところから決めました。「白鳥の湖」は組曲以外の曲が、素晴らしいんですよ~(笑)。本当にドラマティックに出来ていて、それを僕が関西フィルにきた頃から自分で、まるで絵本を見るようにお話に沿った形で編集していました。シンフォニックなオリジナルセレクション版として都内やヨーロッパのオケ、関西フィルとも何度も演奏してきた作品です。関西フィルはロシアのバレエ団が大阪で公演をするときに、ロシア人指揮者による演奏をピットで担ってきた伝統があるので、その意味でも関西フィルの個性を出せるのではないかと。我々らしい一体感のある演奏をお届けしたいと思っております。

藤岡幸夫

藤岡幸夫

ーー飯森さんは、リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」。こちらも日本で演奏されることは珍しいかもしれません。

飯森:ヴァイオリン、クラリネット、フルート、ハープ、また輝かしい金管楽器のファンファーレまで。この作品を演奏することで、日本センチュリー交響楽団の素晴らしいソリスト陣をアピールでき、それぞれに新たなファンが付くのではないかと、狙っての選曲です(笑)。ヨーロッパ、とくにドイツではすごく人気のある曲で、私も相当指揮してきました。スイスのルツェルン音楽祭でプログラムのメインにこの曲を持ってきたことがあったのですが、演奏が終わった時の聴衆の反応がすごくて、びっくりするぐらいスイスの皆さんが興奮されていました。やはり、スペイン独特のリズムとオーケストレーションの妙が、聴く者の心を激しく揺さぶるんだなと、その光景を目の当たりにしました。今回も卓越したソリスト陣ばかりなので自信を持ってお届けできる、満を持しての選曲でございます。

飯森範親

飯森範親

■演奏家も聴衆との出会いを心待ちにしている、スペシャルな夕べに酔いしれよう!

ーー尾高さんは2018年4月に大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任されます。関西音楽会との関わりや大フィルへの思いなどをお聞かせください。

尾高:大フィルを初めて振ったのは40数年前、扇町のプールでの練習でした。録音用にチャイコフスキーの4番を1曲だけでしたが、バックに朝比奈(隆)先生がおられたからか、大変に大人なオーケストラだなという印象でした。曲自体は、桐朋学園大学で仕込まれていたので自信はあったのですが、いざNHKのスタジオで録音となった時は大人たちを前に怖いような気持ちになり、弦楽器と木管楽器を交互に演奏するところで、思いっきり弦楽器に出すサインを管楽器の方に出してしまった。思わず大声で「ごめんなさい!」と録音中に言ってしまった。そうすると、みんなに「しゃべるな!」と返されて。間違えたところでオーケストラはオートマチックで演奏できるんですね。そこで真っ赤になったというのが、最初の思い出です(苦笑)。

尾高忠明

尾高忠明

尾高:その後、大フィルさんは40年間ずっと毎年のように呼んで下さって、すごく楽しかった演奏がいっぱいあります。なかでもエルガーの1番の交響曲は、世界中色んなところで演奏してきましたが、正直、僕は大フィルの演奏が一番心を打つ。大阪で生活し初めて感じるのは、やはり大阪のひとは情が厚いということ。演奏にもお客様からも受ける雰囲気から感じます。ここに長らく自分が居られることがすごく幸せです。大フィルと頑張っていきたい。

ーー外山さん、飯森さんは初回から4年連続でのご出演です。初回での戸惑いや続けることで印象が変わった部分などはありますか。

外山:第1回目は、4つのオーケストラがひとつの会場にいることが初めての経験でしたので、簡単にいえばみんな「どうしたらいいのか分からない」。どっちを向いて、誰と話したらいいのか。例えるなら、コンクールみたいな印象だったと思います。でも実際にやってみたら、久しぶりに会う音楽家がたくさんいて楽しくて、一方で「俺たちは普段からちゃんとやっているんだぞ」というのを見せたい思いもあって、とても不思議な雰囲気でした。通常ではありえない、他では見たことがない環境ですので、みんな口にこそ出しませんけど、毎年楽しみにしているんじゃないかと思います。

外山雄三

外山雄三

飯森:演奏家の皆さんも、オーケストラから離れますとアンサンブルや室内楽など、自主的に演奏会をされている方もたくさんおられますので、本当に舞台袖や楽屋が和気あいあいとしている。オーケストラの枠を超えてフレンドリーな雰囲気であることは大切なことですし、日本のクラシック界、オーケストラもまんざらではないというのはすごく感じました。個人的にはみなさんのリハーサルを見学することで、「だったら僕はこうしてみようかな」とか、モチベーションに火がつきます(笑)。そういった環境が年に1回あるのは、音楽家にとって物凄く貴重なことです。そんな演奏家の気持ちは、必ず聴いてくださるお客様にも伝わると思います。完結なんて話もありますが、これで終わると本当に尾高先生のせいになってしまうので(笑)、絶対に続けていただきたい。大阪のオーケストラにとっては貴重な機会だと申し上げたいです。

飯森範親

飯森範親

ーー藤岡さんは3回目のご出演になります。大阪での活動も20年近くになります。

藤岡:多分、大阪よりも他の地域の方々の方が「大阪って面白いことするよね~」と思っていると思います。いつも凄いと思うのは、楽屋が「男・女」で分かれていること。これ(楽団ごとではないの)は大阪でしかできないことだろうな~と(笑)。男性楽屋も和気あいあいで、心温まる舞台裏の光景も、いつも楽しみにしているところなので、絶対に(主催者は)止めちゃダメだよ。形はどうであれ、僕はこのシリーズが続いていくと信じている。新しい展開も楽しみにしています!

藤岡幸夫

藤岡幸夫

尚、2017年度に好評だった1,000円の学生席を今回も限定100席で販売するほか、開演前と終演後にはクラシック初心者にも楽しいイベントを用意。プレイベントには朝日放送 三代澤康司アナウンサーの司会進行による恒例企画「4指揮者によるトーク・コーナー」を、終演後には各楽団主催コンサートのペアチケットが当たるプレゼント抽選会を行う。その他、朝日カルチャーセンター主催「大阪4大オーケストラの響演」満喫講座も。詳細は公式サイトをチェックしよう。

取材・文・撮影=石橋法子

イベント情報
第56回大阪国際フェスティバル2018「大阪4大オーケストラの響演」
 
2018年4月21日(土)16:00開演(14:45開場)~19:00終演予定
■会場:大阪・フェスティバルホール
 
【スケジュール】
・15:30~ファンファーレ、アンサンブル、4指揮者によるトーク・コーナー
・16:00~開演 ※各楽団演奏後、舞台転換(10分) ※休憩は20分
・18:45予定 プレゼント抽選会
・19:00予定 終演
 
【演奏曲目】:
①エルガー:序曲「南国にて」作品50/大阪フィルハーモニー交響楽団<指揮:尾高忠明>
②チャイコフスキー:バレエ音楽「白鳥の湖」ハイライト(藤岡幸夫セレクション版)/関西フィルハーモニー管弦楽団<指揮:藤岡幸夫>
③リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲 作品34/日本センチュリー交響楽団<指揮:飯森範親>
④ブラームス:交響曲第1番ハ短調 作品68/大阪交響楽団<指揮:外山雄三>
 
■入場料:S8,500円、A7,000円、BOX14,000円(全席指定、消費税込)
※未就学児の入場不可 ※学生席の取り扱いはフェスティバルホール チケットセンターのみ
■一般発売:2017年12月10日(日)午前10時~
■フェスティバルホールhttp://www.festivalhall.jp
 

 

佐渡 裕(指揮)が語る トーンキュンストラー管弦楽団 日本ツアー2018 ~バーンスタイン生誕100周年によせて~

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レナード・バーンスタインの最後の愛弟子として薫陶を受けた指揮者、佐渡 裕(さど ゆたか)。彼のもつカリスマ性と包容力に満ちたダイナミックな指揮に、20世紀の音楽シーンに確かな足跡を残したバーンスタインの姿を重ねずにはいられない。現在、音楽の都ウィーンで名門トーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督を務めている佐渡だが、実は彼とウィーンとの縁は30年前に遡る。1988年、若き佐渡が、バーンスタインのアシスタントとして初めての海外生活をおくった地が、ウィーンだった。

2016年5月、初となる来日ツアーを行った佐渡&トンク管は、溢れ出る情熱を温かみのある豊潤な表現で魅せ、ウィーンの風を日本に届けた。そして、バーンスタイン生誕100周年に当たる2018年、再び彼らの凱旋が叶う。今回のツアーでは、作曲家としても名高いバーンスタインの作品を軸とした充実のプログラムを携え、全国13カ所を巡る。バーンスタインとの出逢い、トンク管との出逢い、そして生誕100周年―すべてが揃わなければ実現しなかった今回のツアーに運命を感じているという佐渡。恩師の作品を知り尽くした佐渡のタクトに、110年の伝統を誇るウィーンの名門はどう応えるのか。ツアーに臨む心境を、佐渡が語った。

恩師バーンスタインの作品に臨む

―――日本ツアーに臨む、今のお気持ちを聞かせてください。

トンク管の音楽監督を任されて3年目のシーズンです。来日ツアーは、昨年に引き続き2回目ですが、僕らが大切に培ってきたことを、日本各地で見ていただけるのは嬉しいですね。なにしろ、バーンスタインの生誕100周年という節目の年ですから。渾身のプログラムを準備万端の楽団の皆さんとお届けします!

―――ウィーンでも、生誕100周年を祝って、バーンスタインにゆかりのある作品の演奏に尽力されていますね。

トンク管の本拠地であるウィーンでは、2017/8シーズンに、「コスモス・バーンスタイン」と銘打って、バーンスタインの曲や彼が初演した曲を取り挙げています。

バーンスタインが70歳を迎えた頃、彼はどこへいっても《ウエスト・サイド・ストーリー》の作曲家として見られていたわけですが、実は、それをすごく嫌がっていた。他にも魅力的な名作が多くありますからね。「コスモス・バーンスタイン」では、《ウエスト・サイド・ストーリー》のレクチャーコンサートだけでなく、交響曲第三番《カディッシュ》や《ファンシー・フリー》などを取り上げて、バーンスタイン作品を様々な角度から掘り下げています。今回の日本公演には、こうしたプログラムの中から選りすぐりの3曲を盛り込みました。

―――そのひとつが、交響組曲《波止場》ですね。

エリア・カザン監督が1954年に作った映画のために書いた、バーンスタイン唯一の映画音楽です。舞台はニューヨークの港。主演のマーロン・ブランドが大きな悪の勢力に立ち向かっていく姿が印象的な名画です。改めて映画を観ましたが、驚いたことに、音楽が全てを語っている!

この音楽には、後の《ウエスト・サイド》や《カディッシュ》などに見られる要素の片鱗が垣間見えています。例えば、ジャズやラテン音楽で使われているサックスに、大きな役割が与えられている。複雑な拍子が重なって生み出される躍動感のあるリズムはジャズ的とも言えるし、それまでのクラシックにはなかった特有の響きがあります。

―――そして、お馴染みの《キャンディード》の序曲。「題名のない音楽会」でもテーマソングとして使われていましたね。

《キャンディード》は僕が最も好きな序曲で、天才バーンスタインの最高傑作と言っても言い過ぎではないと感じています。アメリカ的な華やかさがある一方で、ブロードウェイとは違う、ヨーロッパのミュージカルのような雰囲気も漂う。誰もが口ずさめる親しみやすいメロディーなのに、拍子は7拍子とかね!

―――《ウエスト・サイド・ストーリー》の「シンフォニック・ダンス」も、広く愛されてきた名曲ですね。改めて、魅力を教えてください。

この曲は、僕が、初めてバーンスタインの演奏を生で聴いた思い出の一曲。1985年のイスラエル・フィルとの来日ツアーのことでした。こんなにも自由で、心揺さぶられる曲があるのかと!

それから随分と時間が経ち、僕自身がマーラーやブリテンを研究するようになって、《ウエスト・サイド・ストーリー》に込められた色々な要素が分かるようになってきました。実は、ブリテンの《ピーター・グライムズ》をトリノで指揮する機会があったのですが、そのとき、大発見をしたんです!

―――大発見!?《ピーター・グライムズ》と《ウエスト・サイド》に繋がりがあるとは意外です。

日本の皇紀2600年に当たる1940年、日本政府は各国の作曲家に奉祝曲を委嘱しました。その時、イギリス代表として選ばれたのがブリテン。彼は、《シンフォニア・ダ・レクイエム》という交響曲を作ったんですが、祝典にレクイエム(鎮魂曲)​は相応しくないと、日本政府はその曲を断った。ブリテンは、この曲を携えてアメリカに移住し、結局、ニューヨーク・フィルによって世界初演されています。バーンスタインの師匠であったセルゲイ・クーセヴィツキー​もこの作品を指揮し、その際、ブリテンの才能を讃えて彼にオペラ作品の作曲を委嘱しました。《ピーター・グライムズ》は、こうして生まれたんです。《ピーター・グライムズ》の前に、ブリテンはガーシュウィン​の《ポーギーとベス》を見ており、両作品に多くの類似点があることも面白いですね。

そして、この《ピーター・グライムズ》のアメリカ初演を指揮したのが、若き日のバーンスタインでした。《ウエスト・サイド》にも、《キャンディード》にも、実は、ブリテンの《ピーター・グライムズ》から取り入れられたアイディアが随所に散りばめられている!

もし日本政府が《レクイエム》を断っていなかったら、《ウエスト・サイド・ストーリー》は生まれていなかったでしょうね。

―――とても興味深いですね。《ピーター・グライムズ》からの影響は、具体的にはどんなところにあるのでしょうか?

《ウエスト・サイド・ストーリー》は、ソ・ド・ファ#という3つの音が基本になっています。冒頭のホイッスル、有名な〈マリア〉を含め、多くのナンバーで、この3音を聴くことができます。これは、ひとつに、若者特有の抑え切れないエネルギーを表しているんですが、実は、《ピーター・グライムズ》にも、たった一小節だけですが、嵐の前のシーンでクラリネットが「ド・ファ#・ソ・ファ#・ド」と吹くところがある。《ピーター・グライムズ》が、若きバーンスタインに、どれだけの衝撃を与え、後の作品に影響を与えたかを感じ取ることができます。

トンク管、そしてウィーンと縁ある名曲の数々

―――Aプログラムでは、バーンスタインの作品に加えて、ショスタコーヴィチの《交響曲第5番》が演奏される予定ですね。

ええ。僕が高校三年生だった1979年にバーンスタインがニューヨーク・フィルと来日した際にも演奏されました。その時、僕は、京都会館に忍び込んだんですが、結局は見つかって、つまみ出されてしまいました(笑)。扉に耳を当て、ロビーに漏れてくる音を懸命に聴いたのを、思い出します。

実は、この曲は、僕がベルリン・フィルを振った時や、トンク管を初めて指揮した時も演奏しました。そのときの演奏が決め手となって、トンク管から音楽監督の就任を打診されたわけです。ですから、僕の人生の大切なターニングポイントで、縁を繋いでくれた一曲といえますね。

――Bプログラムでは、ベートーヴェン《交響曲第6番》「田園」とブラームス《ピアノ協奏曲第2番》が加わります。この選曲には、どのような想いが込められているのでしょう?

トンク管のレパートリーのベースは、ウィーンで活躍した作曲家による数々の作品。ハイドンからベートーヴェン、シューベルト、R・シュトラウスへ続く系譜を、僕は「ウィーン・ライン」と呼んでいますが、ウィーンで、こういった曲を演奏すれば、自ずと比較されてしまいます。だからこそ、自分たちが出来る最高の演奏を披露したいと思って、磨いてきました。

―――ブラームス《ピアノ協奏曲第2番》には、鬼才ピアニスト、アファナシエフを迎えます。どういう演奏になるのか、興味津々です。

彼と共演するのは初めてですが、独自の感性をもって豊かな演奏をされる方なので、どういう結果になるのか、僕も、半分、不安(笑)。ウィーンのオーケストラには、どこか保守的な一面もありますし…、演奏会のメインですし…。ドキドキ(笑)。

佐渡&トンク管の軌跡と目指すもの

―――数多くの世界的なオーケストラと共演されてきた中で、トンク管がもつ強みや個性をどう感じられているのでしょうか?

ベルリン・フィルのような「スーパーオーケストラ」ではないからこそ、猛練習をしてきました。オーケストラというのは、謂わば、社会の縮図ですから、気の合わない仲間もいるし、いがみあっていることすらある。でも、トンク管は、楽団員の仲がよくてチームワークが抜群。その上で、言うべきことは言って、もうひとつ上の音を創ろうとする姿勢もあります。こうした良好な人間関係は音にも出てきますから、説得力のある表現に繋がっていると思います。

また、この5年位の間に、オーケストラのメンバーも徐々に変わって、新しい奏者が入ってきました。これから、ぐっと姿を変えていく時期かなぁと思っています。

―――音楽的な面は、いかがですか?

ウィーン本来のスタイルをもつオーケストラといえます。中でもウィンナ・ホルンは特徴的で、ウィーンでしか使われていません。実は、オーストリアであってもグラーツやザルツブルクでは、フレンチ・ホルンが用いられています。

また、オーケストラ全体に、ひとつのフレーズ感みたいなものがあって、弦楽器、木管、打楽器も含め、常に「呼吸」をしている感じがあります。僕たちは、作品が求める音色の変化に深く、繊細に応じつつ、自分たちのフレーズを見つけだそうとしています。

―――今回のツアーについて、楽団員の皆さんは、どうお話しされていますか。

全国13カ所のハードなツアーですが、皆、「再び日本で演奏したい」と、楽しみにしてくれています。演奏旅行というのは、10回を超えると、どうしても退屈なものになりがちですが、彼らとはそういうことが一度もありません。努力を惜しまずにずっと音楽に向き合う過程があり、喜びがあります。それは、とても幸せなことですよ。

―――トンク管との活動のなかで忘れてならないのは、精力的なCDのリリースですね。

既に6枚のCDをリリースしており、録り終えたばかりものも2枚あります。CDとして録音を残すという過程で、ピッチが揃うまであきらめない精神を培い、「アンサンブルとはどういうものなのか」に対峙しながら、練習をしてきました。それを繰り返し、達成感を共有することで、良い人間関係が自然とできあがっていきます。

―――最後に、読者の方に向けたメッセージをお願いします。

今回は、バーンスタイン生誕100周年の特別プログラム。バーンスタインは、自分が指揮者としてやっていけるか分からなかった時期に、「お前ならできるよ」と言って、背中を押してくれました。その感謝の気持ちを胸に、自分のオーケストラと共に、バーンスタインが大好きだった日本で彼の作品を演奏します。110年という長い歴史をもつトンク管と、聴きごたえある演奏をお届けしますので、是非、演奏会にお越しください!

取材・文=大野はな恵  写真撮影=髙村直希

公演情報
大和証券グループPresents 佐渡裕指揮 トーンキュンストラー管弦楽団 日本ツアー2018
 
<出演>
佐渡裕(指揮) 
トーンキュンストラー管弦楽団
ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)※【プログラムB】のみ

 
<曲目>
【プログラムA】
バーンスタイン:交響組曲「波止場」
バーンスタイン:ウエスト・サイド・ストーリーより「シンフォニック・ダンス」
ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 ニ短調 Op.47
【プログラムB】
バーンスタイン:キャンディード序曲
ベートーヴェン:交響曲 第6番 ヘ長調 Op.68 「田園」
ブラームス:ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 Op.83

 
<日程(2018年)・会場>
5/12(土) 京都・京都コンサートホール 【B】
5/13(日) 熊本・熊本県立劇場 【A】
5/15(火) 福岡・福岡シンフォニーホール(アクロス福岡) 【B】
5/17(木) 東京・サントリーホール 【B】
5/18(金) 新潟・新潟市民芸術文化会館 りゅーとぴあ 【A】
5/19(土) 大阪・フェスティバルホール 【A】
5/20(日) 東京・NHKホール【A】
5/22(松本・キッセイ文化ホール 【B】
5/23(水) 浜松・アクトシティ浜松 【A】
5/24(木) 名古屋・日本特殊陶業市民会館(名古屋) 【B】
5/26(土) 仙台・東京エレクトロンホール宮城 【B】
5/27(日) 札幌・札幌コンサートホールKitara 【A】
大和証券グループの特別協賛は、熊本、足利以外の11公演が対象です。

<チケット>
【東京公演のみ】
■座席選択先行受付:11/14(火)12:00~12/10
)23:59 
2018年5月17日(木)19時開演 サントリーホール
2018年5月20日(日)14時開演 NHKホール
■一般発売:2018年12月16日(土)~
※東京以外の公演はこちらをご参照ください。

<公式サイト>
トーンキュンストラー管弦楽団
https://www.tonkuenstler.at/de/japanese-information/tonkuenstler-orchester

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