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法村友井バレエ団が贈る“愛と活劇のドラマ”『海賊』に注目! 豪華絢爛な舞台をフレッシュなキャストで披露

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ギリシアの若い娘メドーラと海賊の首領コンラッドの恋を軸に繰り広げる華やかなスペクタクル。古典バレエの名作の中でも近年人気が高いのが『海賊』だ。1856年にパリ・オペラ座で初演されたアダン作曲によるマジリエ版が成功を収め、以後巨匠プティパの改訂を経てロシアで受け継がれてきたが、現在世界各国で新版が続々と制作されている。20191027日(日)、大阪・フェスティバルホールで行われる法村友井バレエ団『海賊』も話題だ。

法村友井バレエ団は1937年に創立され、現在三代目の法村牧緒が団長を務める。法村牧緒は、ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミー(旧ソ連邦国立レニングラード・バレエ学校)に日本人として初めて留学しワガノワ・メソッドを学んだロシア・バレエの第一人者だ。法村友井バレエ団が『海賊』を初演したのは2007年、マリインスキー劇場のセルゲーエフ版に準じるヴァジム・シローチンの振付だった。装置・衣裳はロシアのアンナ・コトロワのデザインで、Vozroizhenie社で製作・輸入し、豪華絢爛に舞台を彩った。このたび3回目の上演を迎える。

(C)Fumio Obana(OfficeObana)

(C)Fumio Obana(OfficeObana)

「エーゲ海を舞台に繰り広げられる愛と活劇のドラマ」で「全編、華やかなシーンで宝石のちりばめられたような作品」(リリースより)を上演するに際し大切なのは多士済々のダンサーたち。メドーラの新星・春木友里沙は、すらりと美しい容姿と安定感のあるテクニックの持ち主だ。コンラッド役のベテラン・今村泰典はパ・ド・ドゥにおけるサポートの上手さに定評がある。奴隷アリには西岡憲吾(福谷葉子バレエスタジオ)、奴隷商人ランケデムには今井大輔、メドーラの友人グリナーラには神木遙というホープを配し、海賊ビルバントにはマリインスキー劇場のドミトリー・プィハチョフを迎える。さらにトルコの提督セイード・パシャの井口雅之、キャラクターのソリストの堤本麻起子、坂田麻由美ら熟練の名手が舞台を締める。

(C)Fumio Obana(OfficeObana)

(C)Fumio Obana(OfficeObana)

術監督・演出は法村牧緒。全体の構成やキャラクター・ダンスをロシア・バレエに通じた法村圭緒が担い、クラシック・バレエの美の極致「夢の庭園の場」は名花として活躍し現在指導者として重責を担う杉山聡美がまとめる。また江原功が法村友井バレエ団音楽監督に就任し大阪交響楽団を指揮する点にも注目したい。

法村友井バレエ団はクラシック・バレエの全幕物を大事に上演しつつ、近年は新たな創作に挑んだり、名作のリ・クリエイションを行ったりと新生面も打ち出す。そして先に触れたように指導者・踊り手に新世代が台頭し活気があって、老舗かつフレッシュなカンパニーである。バレエの醍醐味を堪能できること請け合いの『海賊』の開演が待ち遠しい。

文=高橋森彦


【ニュースを振り返り】10/8(火)~10(木)のオススメ舞台・クラシック記事

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▼若手俳優ユニット・SUNPLUSが男子校の寮を舞台に本格的な会話劇に挑む~第1回公演『SUMMER BAZAAR』稽古場レポート
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『アナ雪』『モアナ』『プリンセスと魔法のキス』などを特別映像と組曲で 『ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ “ザ・コンサート”』が開催決定

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2020年5月16日(土)から全国15都市にて、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの映像制作陣によって特別に編集された映像と、 このコンサートのためにアレンジされた組曲をオーケストラの生演奏で楽しむ『ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ “ザ・コンサート”』の開催が決定した。

世界初の長編アニメーション映画『白雪姫』が、 アメリカで公開されてから80年以上にわたって、 大ヒットアニメーション映画を生み出し続けているウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ。本コンサートでは、過去10年間にウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが手がけたアニメーション映画5作品『アナと雪の女王』、 『塔の上のラプンツェル』、 『ズートピア』、 『プリンセスと魔法のキス』、 『モアナと伝説の海』をフィーチャー。各作品の組曲と特別映像、さらに、劇中歌やエンドソングが、NYのミュージカルシーンで活躍するヴォーカリストのパフォーマンスで披露されるという。

また、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオからクリエーターが来日して行うスペシャル・プレゼンテーションも決定。一枚一枚、手描きで行われていた伝統的なアニメーション制作の手法が、“今”のアニメーション作品にどのような影響を与え、 進化してきたのか、制作に秘められた魔法に迫るという。

ジェニファー・リー氏

ジェニファー・リー氏

コンサート開催にあたり、 『アナと雪の女王』の監督・脚本を務めた、 ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの最高制作責任者ジェニファー・リー氏は、「『白雪姫』をリリースした1937年から今日に至るまで、革命と創造性に富んだ歴史を受け継ぎながら、数々のヒット・アニメーションを世に送り出してきました。ひとつひとつの作品が誕生する背景には、才能あふれるクリエーターたちが力を合わせ、試行錯誤を繰り返してきた過程があります。 このコンサートでは、私たちクリエーター自ら、 知られざるストーリーを皆様にお届け出ればと思っております。」と語っている。

指揮は、2019年春に『ディズニー・オン・クラシック』シリーズの新指揮者としてデビューしたリチャード・カーシー。ほか、『ディズニー・オン・クラシック』でお馴染みのTHE ORCHESTRA JAPAN​、ナビゲーターにささきフランチェスコの出演が決定している。ヴォーカリストは、後日オフィシャルサイトにて発表される。演奏作品は以下のとおり。

『アナと雪の女王』 2014年3月公開(日本)

 (C)️2013 Disney

 (C)️2013 Disney

王家の姉妹、 エルサとアナを主人公に、 “真実の愛”を描いた感動作。 世界規模での興行成績が1200億円を超える大ヒットを記録。 2019年11月22日(金)に『アナと雪の女王2』が日米で同時公開される。

​<監督>クリス・バック、 ジェニファー・リー <製作>ピーター・デル・ヴェッチョ
<製作総指揮>ジョン・ラセター <脚本>ジェニファー・リー <音楽>クリストフ・ベック

『塔の上のラプンツェル』 2011年3月公開(日本)

 (C)️2010 Disney

 (C)️2010 Disney

金色に輝く“魔法の髪”を持つラプンツェルが、 新しい世界への一歩を踏み出す“勇気”を描いた、 ディズニー長編アニメーション第50作目にあたる、 美しく感動に満ちた物語。

<監督>ネイサン・グレノ、 バイロン・ハワード <製作>ロイ・コンリー
<製作総指揮>ジョン・ラセター、 グレン・キーン <脚本>ダン・フォーゲルマン

『ズートピア』 2016年4月公開(日本)

 (C)️2016 Disney

 (C)️2016 Disney

動物たちが人間のように暮らす楽園ズートピアを舞台に、 “夢を信じる”ウサギの新米警官ジュデイが、 “夢を忘れた”キツネの詐欺師ニックとともに、 楽園の隠れた秘密に挑むファンタジー・アドベンチャー。

<監督>バイロン・ハワード、 リッチ・ムーア <共同監督>ジェレド・ブッシュ
<製作>クラーク・スペンサー <製作総指揮>ジョン・ラセター

『プリンセスと魔法のキス』 2010年2月公開(日本)

 (C)️2009 Disney

 (C)️2009 Disney

1920年代のニューオーリンズを舞台に、 魔法でカエルの姿になったティアナとナヴィーン王子が、 人間の姿に戻るために繰り広げる冒険で、 仲間たちとの絆を通して、 本当に大切なものを見つけ、 夢を叶えてゆく、 新しいロマンチック・ストーリー。 手描きアニメーションの手法を復活させ、 伝統的なミュージカルシーンを取り入れて制作された。

<監督>ジョン・マスカー、 ロン・クレメンツ <製作>ピーター・デル・ヴェッコ
<製作総指揮>ジョン・ラセター <脚本>ロブ・エドワーズ、 ジョン・マスカー、 ロン・クレメンツ
<音楽>ランディ・ニューマン

『モアナと伝説の海』 2016年11月公開(日本)

 (C)️2016 Disney

 (C)️2016 Disney

豊かな自然に恵まれた南の楽園で、 海を愛し、 海に愛された少女モアナは、 自分の運命を知り、 愛する島と愛する人達を救うために、 大海原へと旅に出る。

<監督>ジョン・マスカー、 ロン・クレメンツ <脚本>ジャレド・ブッシュ 
<製作>オスナット・シューラー <製作総指揮>ジョン・ラセター 
<音楽>リン=マニュエル・ミランダ、 マーク・マンシーナ、 オペタイア・フォアイ
<アニメーター>エリック・ゴールドバーグ

ピアノの詩人・ショパンを目でたっぷり鑑賞できる『ショパン-200年の肖像』展

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「ノクターン」「前奏曲雨だれ」「小犬のワルツ」をはじめ、優美で流麗なピアノ曲を数多く残し「ピアノの詩人」と呼ばれているフレデリク・ショパン(1810~49)。彼の自筆譜や手紙、油彩画、版画など、貴重な資料や美術品を展示する『ショパン-200年の肖像』展が、10月12日から兵庫県立美術館のギャラリー棟を振り出しに、来年9月まで福岡(久留米市美術館)、東京(練馬区立美術館)、静岡(静岡市美術館)で開催される。

 普段、ショパンの音楽をコンサートやCDなどで「聴く」ことはあっても、関連物を多数まとめて「見る」機会は滅多にない。本展は日本とポーランドの国交樹立100年を記念しての特別展で、ポーランドの国立フリデリク・ショパン研究所をはじめ、ワルシャワ国立博物館やオランダのドルトレヒト美術館などからの、日本初公開の品々を含む約250点を鑑賞できるチャンスだ。 

 展示のとてもユニークな点は、クラシック音楽の大曲になぞらえて第1楽章~第5楽章の5部構成になっていること。 
 第1楽章「わたしたちのショパン」は、フリデリク・ショパン博物館からの造形化されたショパン像、明治~昭和の日本におけるショパン受容が分かる楽譜や書籍などを展示。
 第2章「ショパンを育んだ都市ワルシャワ」は、彼が育ったポーランドの風景や彼を取り巻く人々の肖像画などから、ワルシャワでの音楽活動を紹介。
 第3楽章「華開くパリのショパン」は、20歳で故郷を旅立ったショパンの、パリでの華やかな音楽活動や恋人のジョルジュ・サンドとの暮らしが伺える品々。
 第4楽章「真実のショパン-楽譜、手紙-」は、彼を直接知る人々による肖像画や自筆譜、手紙など。
 そして第5章「ショパン国際ピアノコンクール」は、多くの日本人ピアニストも輩出している同コンクールのポスター、映像、写真などから、コンクールの魅力と意義を探る。

日本初公開《「エチュード ヘ長調 作品10の8」自筆譜(製版用)》フリデリク・ショパン、1833年以前、インク、紙 Photo:The Fryderyk Chopin Institute

日本初公開《「エチュード ヘ長調 作品10の8」自筆譜(製版用)》フリデリク・ショパン、1833年以前、インク、紙 Photo:The Fryderyk Chopin Institute

 レクチャーコンサートや講演会など、多彩な連動イベントも行われて、まさに「目と耳の両方」でショパンを体感でき、理解を深められる展覧会となっている。

 なお、隣接会場では、森に捨てられたピアノをおもちゃ代わりに育った少年が次第に才能を開花させ「ショパン・コンクール」に挑む姿を描く、一色まことのヒット漫画「ピアノの森」の展示コーナーも。昨年からTV放映されて人気を呼んだアニメのオープニング映像や、貴重な原画などを鑑賞できる。 

日本初公開《自筆の手紙 ー パリのヴォイチェフ・グジマワ宛て(エディンバラ、1848年10月3日)》フリデリク・ショパン、1848年、インク、紙 Photo:The Fryderyk Chopin Institute

日本初公開《自筆の手紙 ー パリのヴォイチェフ・グジマワ宛て(エディンバラ、1848年10月3日)》フリデリク・ショパン、1848年、インク、紙 Photo:The Fryderyk Chopin Institute

文=原納 暢子

太田麻衣子演出による関西二期会『フィガロの結婚』~テーマは「伯爵一家、南国に行く!」 

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関西二期会が人気のオペラ、モーツァルトの『フィガロの結婚』を携えて、客席数2000席を有する兵庫県立芸術文化センター大ホールに2年ぶりに登場する。演出は、関西のオペラ団体に初お目見えとなる気鋭の演出家 太田麻衣子が務める。タイトルロールを演じる大谷圭介西尾岳史に加え、太田麻衣子にも今回の聴きどころを聴いてみた。

――チケットもいい感じで売れているようですが、『フィガロの結婚』の人気の秘密は何だと思われますか。

西尾岳史 あのワクワクする軽快な序曲からの疾走感ではないでしょうか。何とも騒々しい1日を、1幕から4幕まででテンポ良く進め、ラストで「Corriam tutti   みんな走って行こう!」と叫んで終わる。古典ですが「渡る世間は鬼ばかり」風に、人間模様も垣間見れて…(笑)。そういう面白さもありますね。

大谷圭介 オペラは音楽とストーリーのバランスが大切だと思います。その点、フィガロの結婚はモーツァルトの音楽が何と言っても素晴らしいですし、展開が早く、お客様を飽きさせないダ・ポンテの台本もたいへん魅力的です。そして、誰も人が死なないのも、人気の原因ではないでしょうか。只々楽しいオペラです!

――お二人は、これまでもフィガロの結婚は何度かやられているのでしょうか。

西尾 ありがたいことに、8年前の関西二期会の『フィガロの結婚』でも、2014年のいずみホールの『フィガロの結婚』でも、フィガロ役をさせて頂いています。

27日のキャスト、フィガロ 萩原とスザンナ 高嶋は、前回(2011年)に続いてコンビ復活! (C)早川嘉雄

27日のキャスト、フィガロ 萩原とスザンナ 高嶋は、前回(2011年)に続いてコンビ復活! (C)早川嘉雄

大谷 私はオペラデビューが『フィガロの結婚』でした。2004年の関西二期会『フィガロの結婚』で、伯爵役をさせて頂きました。

前々回の関西二期会「フィガロの結婚」(2004年)伯爵役でデビューした大谷圭介

前々回の関西二期会「フィガロの結婚」(2004年)伯爵役でデビューした大谷圭介

――『フィガロの結婚』は歌手の立場からすると難しい曲ですか。

大谷 技術的なことで言うと、モーツァルトはすべて難しいですよ。声楽的というより器楽的に書いてあるところが多いです。第1幕最後のアリアの、ドミソ、ミソド、ソドミドのような音型は、声楽の技術的にピッチをはめるのは難しいですね。

西尾 きっちりしたソルフェージュと発声が身に付いていないと、歳を重ねるにつれモーツァルトの難しさを痛感することになります。学生の頃は勢いでやっていました。とりあえずなぞると言うか…。表現を付けて歌うという意味では、むしろプッチーニなどのほうが歌いやすいと思います。

大谷 それに、モーツァルトのレチタティーヴォ(朗唱)は、すべての調性も音の作りも、言葉もロッシーニなどと違い、全く無駄が有りません。

西尾 そうですね。台本通りに、きっちり音楽が出来上がっています。物語における人間の感情の移り変わりが、レチタティーヴォで完璧に描かれていると言えます。

今回のフィガロ役 バリトン西尾岳史(左)とバリトン大谷圭介 (C)H.isojima

今回のフィガロ役 バリトン西尾岳史(左)とバリトン大谷圭介 (C)H.isojima

そんな話をしているところに、演出を担当する太田麻衣子が登場。今回の『フィガロの結婚』の演出上の狙いなど、フィガロ役の二人と一緒に話を聞いた。

――太田さんは関西のオペラ団体には初登場だそうですね。

太田麻衣子 「お前は笑いがわかってない!」と言われるのを覚悟のうえで、笑いの修行をしに大阪に参りました(笑)。今回、知っている人が一人もいないという環境の中、ドキドキしながら顔合わせの場に臨みましたが、皆さんのフレンドリーな姿勢と、ポテンシャルの高さにびっくり。笑いも交え、ちょっとだけスパイスを強めに演出をしようと思っています。

大谷・西尾 ちょっとだけ(笑)⁉

関西オペラ団体初お目見えの演出家 太田麻衣子 (C)H.isojima

関西オペラ団体初お目見えの演出家 太田麻衣子 (C)H.isojima

実は、取材をしたのが立ち稽古の初日。この取材の数時間前に演出の太田麻衣子から演出意図が発表されたばかりで、どことなく現場がざわついていたのだが……。

――だいぶんオリジナルとは違うのですか?

太田 いえいえ、そんなことはありませんが、今回のテーマはズバリ!「伯爵一家、南国に行く!」です。

――えっ、南国が舞台になるのですか?

太田 はい(笑)。ヨーロッパは寒い。一層の事、たまには家財道具一切合切を持って、暖かい所へ旅行に行こう!という事で、伯爵一家が総出で南国に来たものの……暑い!非常に暑い!!と。……この物語は貴族と市民の対立、つまり、旧態依然と昔のモノにこだわり続けている人と、新しいモノの到来を待っている人との対立がベースにあります。時代的にはフランス革命前夜、貴族社会に対する感情を、召使が伯爵を遣り込めて喝采を受けるハナシにすることで、人気を博したボーマルシェの戯曲です。生まれついての身分の差などは、現在の日本では感覚的に理解するのは難しいと思い、政治的、社会的なことではなく、肉体的に我慢できない環境の変化を取り入れてみました。今までに経験したことのない暑い所にやって来ました。さあ、どうしましょう⁉ということにしてみた訳です。登場人物の身分や、全体のストーリーはオリジナルと一切変わりません。

――なるほど。服なんかも向こうで着ていたものは、きっと暑くて、脱ぎたい!ってなりますよね。

太田 なりますよね(笑)。伯爵をはじめ、皆さんしっかりした衣装を着ています。「何故こんなに暑いのに、私はこんなにいっぱい着こんでいるんだ…!」そんな感じで進んで行きます。

――太田さんは細かく演出を付けられるタイプですか?

太田 私は歌手を型にはめるやり方は好きではありません。その人が歌っているのを聴いて、動いているのを見て、一緒に作っていくというやり方です。例えば、こうしてください!と言っても、一人ひとり全然動きが違う。それぞれに違う色が有って当たり前だと思うのです。それを生かして、どう転がせていけるのか。なので、ラストは立ち稽古が始まる段階では真っ白な状態なんです。このやり方、時間がかかるので、早く決めて欲しい人にとってはイラっとするかもしれませんね。

気鋭の演出家 太田麻衣子の周りには笑顔が絶えない (C)H.isojima

気鋭の演出家 太田麻衣子の周りには笑顔が絶えない (C)H.isojima

――こういう作り方、歌手の皆さんとしては如何ですか?

大谷 ここまで歌手に自由度を与えてくれる演出家はとても珍しいと思います。

西尾 何小節でどう動くかまで決める演出家もあるくらいですからね。細かな動きを決めてくれた方が手っ取り早いと言えるかもしれませんが、その動きは自分の中から出てきたものではないので、自分の気持ちと動きを同化させるのは意外と苦しいものなのです。そういう意味では画期的ですね。

ーー初日と2日目でキャストが違う場合、演出が変わることも有るのですか。

太田 そうですね。今回なんかで言うと、伯爵のキャラクターが初日と2日目では全然違います。同じ演出になりようがないと思いますよ。2日とも観る価値が有りますね(笑)。

――“南国のフィガロ”について、指揮者のグィード・マリア・グィーダさんはどう仰っているのですか?

太田 私はドイツのバイエルン歌劇場でオペラのノウハウを仕込まれました。マエストロはイタリア人ですが、ドイツの歌劇場での経験もあり、芝居優先のようなオペラ作りにも慣れておられます。話をさせて頂いて、演出意図についてはOKをもらっています。

指揮は関西二期会初登場となるグイード・マリア・グイーダ

指揮は関西二期会初登場となるグイード・マリア・グイーダ

大谷 音楽稽古でマエストロは、音程やリズムの事も仰いますが、レチタティーヴォなどでは、もっとその役の人間味を出してくれ!とよく言われます。『フィガロの結婚』をよくご存じのようなので、演出と音楽がバチッと合えば最高に面白いものが出来そうです。

太田 「オペラは一緒に作っていくものだ!」とマエストロは仰っていました。あなたは演出、私は指揮者だけど、一緒に作っていくんだよと。とにかく、これから始まる素敵な皆さんとの作業が楽しみで仕方ありません。大阪の皆さまにも喜んで頂ける『フィガロの結婚』が出来上がるはずです。どうぞご期待ください!

――今回は客席数2000席の兵庫県立芸術文化センターの大ホールが会場です。ここで『フィガロの結婚』のタイトルロールをやることについてお聞かせください。そして最後に、読者の皆さまにメッセージをお願いします。

大谷 ここで歌える機会はそう有りません。ここでフィガロ役をやらせて頂けて大変光栄です。『フィガロの結婚』は誰にとっても見応えのあるオペラ。演出も魅力的ですし、喜んで頂けるはず。一生懸命歌わせて頂きます。ぜひ会場に足をお運びください。

関西を代表するバリトン歌手 大谷圭介

関西を代表するバリトン歌手 大谷圭介

西尾 前回の「魔弾の射手」ではカスパー役としてこの舞台に立たせて頂きましたが、ちゃんと歌えば、大声を出さなくても良く響き、お客さまに届く素晴らしいホールです。ここでタイトルロールをやらせて頂けて、ありがたい思いでいっぱいです。オペラと言うと、なんか畏まって委縮するイメージが有りますが、どうか気軽な気持ちで、気楽な服装でお越しください。皆さまのお越しをお待ちしています。

関西でフィガロ役と云えばこの方 西尾岳史

関西でフィガロ役と云えばこの方 西尾岳史

<今回のキャストのうち、伯爵役、伯爵夫人役、スザンナ役の出演者から、公演に向けたメッセージを頂いている。稽古のシーンと併せてご覧頂きたい。>

片桐直樹(伯爵)「女好きの浮気性! でも気品があり、どこか憎めない、そんな伯爵を演じたいと思います」

白石優子(伯爵夫人)「夫への愛、一途な愛、ちょっびり揺らぐときだってある(笑)!完璧ではないけどそれが人間。何があっても最後は笑える強さを持ってロジーナ(伯爵夫人)を生きたいと思います」

伯爵役 片桐直樹と伯爵夫人役 白石優子は、26日のキャスト (C)H.isojima

伯爵役 片桐直樹と伯爵夫人役 白石優子は、26日のキャスト (C)H.isojima

萩原寛明(伯爵)「女好きでちょっとお間抜けなアルマヴィーヴァ伯爵を自由闊達に生き生きと演じたいと思います」

木澤佐江子(伯爵夫人)「浮気者の伯爵に心乱されながらも伯爵を心から愛し、素敵な品格ある女性を演じたいと思います」

髙嶋優羽(スザンナ)「お客さまに大いに笑っていただき、見終わったあとには温かい、幸せな気持ちになっていただける。そんな公演になるように、スザンナ役として舞台中を走り回りたいと思います!」

スザンナ高島優羽を中心に、伯爵役 萩原寛明、フィガロ役 西尾岳史、伯爵夫人役 木澤佐江子。全員27日のキャスト (C)H.isojima

スザンナ高島優羽を中心に、伯爵役 萩原寛明、フィガロ役 西尾岳史、伯爵夫人役 木澤佐江子。全員27日のキャスト (C)H.isojima

松浦優(スザンナ)「私の関西二期会デビュー戦です!!スザンナと共に生き抜きます!」

フィガロ役 大谷圭介とスザンナ役 松浦優は、26日のキャスト (C)H.isojima

フィガロ役 大谷圭介とスザンナ役 松浦優は、26日のキャスト (C)H.isojima

実は、『フィガロの結婚』を観るたびに、思っていたことがある。それは、第4幕最後で、浮気性な伯爵を、伯爵夫人は本当に許したのだろうかということ。2015年、指揮者 井上道義と演出家 野田秀樹がタッグを組んで『フィガロの結婚』をやったのを観た。演劇畑の野田秀樹は、行間や言葉の裏を読むのが専門……と云うことも有ってか、舞台のラストシーンで、伯爵夫人が鉄砲をバーン!とぶっ放す。これが事故なのか故意なのか、果たして真相は…的な幕切れだったのだが、許す訳ないよねという感じの終わり方に、同意する気持ちと、ホントにそれでいいのか…。実際にこのシーンを演じている歌手はどう思っているのか。今回の『フィガロの結婚』で伯爵夫人を演じる木澤佐江子に聞いてみた。

伯爵役 萩原寛明と伯爵夫人役 木澤佐江子は、27日のキャスト (C)H.isojima

伯爵役 萩原寛明と伯爵夫人役 木澤佐江子は、27日のキャスト (C)H.isojima

木澤「私は許したと思っています。なんだかんだ言っても、伯爵の事を愛しているし、伯爵の前では可愛い女でいたい。“許してくれ!愛している!”と言われれば、許してしまうのが女心。惚れてしまった方が負けなのでしょうか……。それと、やはりブッファのラストはハッピーエンドがいいと思います。まぁ、熟年夫婦になっても、何度も浮気を繰り返されれば、許せないと思いますけど(笑)」

前回(2011年)に続いて伯爵夫人を演じる、関西を代表するソプラノ木澤佐江子は、27日のキャスト (C)早川嘉雄

前回(2011年)に続いて伯爵夫人を演じる、関西を代表するソプラノ木澤佐江子は、27日のキャスト (C)早川嘉雄

なるほど。第4幕の最後、後悔した伯爵がひざまずいて夫人に許しを乞うシーンで歌う音楽は、あまりに美しく、許しに満ちた感動の音楽。

この音楽、映画『アマデウス』でサリエリが、完全にモーツァルトの才能に打ちのめされたと呟くシーンの音楽でもあるのだが、許しの音楽であると同時に、救済の音楽でもある。この音楽のチカラで、アルマヴィーヴァ伯爵も救われたように感じた。

そして最後、音楽はスピードを増していき、疾走感の中、狂乱の1日を終える。最後の音が鳴り止むか止まないうちに、会場に溢れる拍手喝采とブラヴォーの嵐。収まることのない拍手に応え、繰り返されるカーテンコール。そんな光景が容易に目に浮かぶ。

天高く馬肥ゆる芸術の秋!素敵なオペラを楽しんで、最良の1日を過ごしてみてはいかがだろうか? 天才モーツァルトの不朽の名作『フィガロの結婚』、一度くらいは劇場で観ることを、オススメしたい。

取材・文=磯島浩彰

サラ・ブライトマン、全国14都市16の映画館にてプレミア上映されたコンサートが映像作品化決定

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2019年4月に横浜アリーナ2days含む全国6都市で行われたジャパン・ツアーも大成功を収め、「声」のみで世界中にその名を轟かせた世界最高峰の歌姫サラ・ブライトマン。最新アルバム『HYMN~永遠の讃歌』発売に伴うワールド・ツアーから、ドイツはフュッセンの神秘的劇場、フェストシュピールハウス公演を収めた『HYMN~永遠の讃歌』が劇場版として映画化され、全世界は勿論、日本でも10月6日(日)より全国14都市16の映画館でプレミア上映されたが、その記念すべきスペシャル・コンサートが映像作品化されることになった。

『マンマ・ミーア!』や『美女と野獣』の振付を手掛けたアンソニー・ヴァン・ラースト、『エニグマ』を手掛けたフランク・ピーターソンによって考案及び制作された約100分間におよぶ本公演は、ミュージカル、クラシック、そして大規模なコンサート映像が、見事にハイブリッドされ、さらにバックバンドとしてバイエルンフィルハーモニー管弦楽団、合唱団(クワイア)、およびルートヴィヒ・アンサンブルのダンサーが参加している。代表作「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」「オペラ座の怪人」、クイーンのカヴァー「リヴ・フォーエヴァー」等、全24曲を惜しみなく披露。本公演は、スペシャルゲストに、最新作『HYMN~永遠の讃歌』に楽曲「Miracle」を提供したYOSHIKI(X JAPAN)、ヴァンサン・ニクロ、マリオ・フラングーリス、ナルシスを迎えたパーフェクト・コンサートである。

フェストシュピールハウス フュッセンは、東京ディズニーランドのモデルになったノイシュヴァンシュタイン城を望むアルプスの山々や森、湖などの自然に囲まれた風光明媚な中世の雰囲気を醸し出すドイツの名勝にそびえ立つ会場で、噴水を使った演出や大編成によるクワイアによる透き通る歌声による大合唱といった、海外公演ならではの演出も含め、ここでしか見られないサラ・ブライトマンの海外コンサートの醍醐味を、ダイナミックな映像とサウンドで心行くまで味わうことができる。  

【来週の星占い】ラッキーエンタメ情報(2019年10月14日~2019年10月20日)

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人生というリハーサルのない舞台のなかで、今のあなたはどんなストーリーの中の、どんな役柄を演じているでしょうか。登場人物がガラッと変わるような、新たな章を迎えているひとにとっては、毎日身の回りに起きる変化が、想像以上に大きなターニングポイントとなっていることを自覚するような出来事がありそう。

好奇心がふつふつと湧いてくるような前向きさとともに、ゆったり構えていると取り返しがつかなくなるような危機感も。早急に今後の計画を練り直さなくてはいけなくなるかもしれません。上がったり下がったり、気分の浮き沈みはあえてスルー。淡々と目標に向かってチューニングする、集中力や忍耐力が問われそうなとき。

いつも通りの変わらぬメンバーと相変わらずの日々を送っている、というひとにも、自分の中で「この人はこうだよね」「あいつはそういうところあるよね」なんてタカを括っていたら、相手は知らぬ間に大きな変化を迎えていて、いつの間にか距離感や関係値が変わっていた、なんてことも起きてきそうです。

一方で、会って間もない相手との一時の恋愛感情や、思い通りにならないことに執着している人とのトラブルには注意したいところ。あまりにもハマり過ぎていて、もしくは切羽詰まっていて、目先のことしか考えられていない状態で攻撃を受けてしまうかも。ただ、直感でイヤな感じは受けるのでうまく逃げて。些細な口論が大きな事件を呼ぶ暗示も。

言っただけの責任が伴う、とも言えますし、膿を出してしまってスッキリする、とも言えるのが悩ましいところ。いずれにしても現実的ではないことが、現実的に軌道修正されていく流れだけは年末にかけてひたすら続いていきます。ちょっとしんどいかもしれませんが、荒療治も楽しんで。

【タロットのお告げによる ラッキーポイント】

星占いの12星座がもつ性質や性格の傾向から
「火・土・風・水」4つのタイプ別にラッキーポイントをお伝えします!

〈火の星座〉のあなたへ
牡羊座(3月21日~4月19日 生まれ)
獅子座(7月23日~8月22日 生まれ)
射手座(11月22日~12月21日 生まれ)

そんなこともわからない?なんて、上からの言い方に注意した方がいいみたい。相手が下手に出てくれているだけかもしれませんから。

〈土の星座〉のあなたへ
牡牛座(4月20日~5月20日 生まれ)
乙女座(8月23日~9月22日 生まれ)
山羊座(12月22日~1月19日 生まれ)

これからもよろしく、と言ったきり疎遠になっている相手には、こちらから近況報告しに出かけてみましょう。相手の方がビッグなネタを持っていそうです。

〈風の星座〉のあなたへ
双子座(5月21日~6月20日 生まれ)
天秤座(9月23日~10月22日 生まれ)
水瓶座(1月20日~2月18日 生まれ)

そうそう、そういえばそんな話ありました。みたいな過去のトピックスから、今がまさにチャンス!みたいな掘り出しものが出てきそう。意外なところへ話が繋がる可能性も。

〈水の星座〉のあなたへ
蟹座(6月21日~7月22日生まれ)
蠍座(10月23日~11月21日 生まれ)
魚座(2月19日~3月20日 生まれ)

他人の話のなかに、隠されているある秘密を知ってしまうかも。うまく活用すれば、思いもよらなかったメリットが得られそうですよ。

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「千人の交響曲」など2020-2021シーズンラインアップを発表~神奈川フィル創立50周年は全10会場を巡演

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2020年10月に創立50周年を迎える神奈川フィルハーモニー管弦楽団が2019年10月15日(火)、横浜貿易協会(横浜市中区)で、9月末に公表していた2020-21年シーズンに行うコンサートについての概要を説明した。来年度は恒例の『みなとみらいシリーズ』を2020年4月11日(土)から、横浜や相模原などで全9回行うほか、楽団創立50周年記念公演として、メンバーを一般公募する「千人の交響曲」と、毎年1度開いていた『ベートーヴェン/第9交響曲』を全3回開催する。理事長の上野孝は「来年度は50周年の大きな節目を迎える。これまで作り上げてきた神奈川フィルの音楽をしっかりみなさまに聴いていただきたい。そしてこれからの50年、100年に向けてのスタートとして、初心を忘れずに演奏活動に注力していきたい」と述べた。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団は、1970年10月7日神奈川県立音楽堂(横浜市西区)で『第一回定期演奏会』を開いてからこれまで、定期演奏会はもちろん、子どもたちの音楽芸術体験事業など、地域に密着した活動を展開してきた。東日本大震災後には、復興支援のため被災地でコンサートを開くなど、さまざまな場所に音楽を届け続けている。

東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年。日本が祝祭ムードに包まれる中で、楽団創立50年の節目を迎えられることは、「大きな感謝」と上野。神奈川フィルの“いまを聴く”『みなとみらいシリーズ』で主にコンサート会場として使用している横浜みなとみらいホール(横浜市西区)が2021年1月から改修に入ることもあり、鎌倉、川崎、藤沢など全10会場を巡演するのも2020-21シーズンの大きな特徴だ。

『記念すべきシーズンに常任指揮を務めることができて光栄』と川瀬

『記念すべきシーズンに常任指揮を務めることができて光栄』と川瀬

『みなとみらいシリーズ〈全9回〉』 9月には上野耕平が初登場

2020ー21のラインアップについて就任7年目を迎える常任指揮者・川瀬賢太郎は、「新しく出向くホールでは、集客を考えてザ・名曲といえる曲を選ぶことも考えましたが、僕自身と神奈川フィルがレベルアップしていくために攻めた」と斬新なプログラムについて解説。

2020年4月11日(土)から始まる『みなとみらいシリーズ』の初回は「祈り」をテーマに、隠れキリシタンを1つのテーマにした、伊藤康英の管弦楽のための交響詩「ぐるりよざ」と、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」などをセレクト。「さまざまな“祈り”を、聴いて欲しい」と思いを込めた。

5月16日(土)には、神奈川県と友好交流がある韓国・京畿道(キョンギド)のオーケストラの音楽監督を務めた指揮者、シーヨン・ソンを招く。女性指揮者が同シリーズに立つのは初めてで、川瀬は「新しい時代の幕開け」と期待。木嶋真優のヴァイオリンでブルッフ「スコットランド幻想曲 Op.46」、ドヴォルザーク「交響曲 第8番 ト長調 Op.88」などが披露される。

6~8月は、2020年に生誕250年を迎えるベートーヴェンの楽曲を主軸に展開。6月27日(土)に特別客演指揮の小泉和裕を迎え「交響曲 第2番 二長調 Op.36」を演奏。川瀬は「小泉さんは8月の定期で、5番(「運命」)と6番(「田園」)を連続して指揮されている。さらに進化したベートーヴェンを感じてもらえるはず」と熱く語った。

7月11日(土)には定期演奏会初登場の大植英次が、ベートーヴェンの交響曲 第5番 ハ短調 Op.67「運命」、チャイコフスキー「交響曲 第5番 ホ短調 Op.64」を指揮。川瀬は「僕だったら、怖くてこんなプログラムは組めない。前菜もメーンもステーキみたいな」と驚きの表情を見せたが、「(小泉が振った5番との)違いや個性を楽しんで欲しい」と話していた。

8月22日(土)には、ドイツ・ベルリン生まれのガブリエル・フェルツが客演。大植に続いて定期演奏会に初登場する。40歳代半ばながら“鬼才”とたたえられ、川瀬は「作り上げる音楽が魅力的」と絶賛。ベートーヴェンがヴァイオリン協奏曲として書いた曲を組曲にした「ピアノ協奏曲 ニ長調 Op.61a」を神奈川フィルがどう表現するかも聴きどころだ。川瀬は「めずらしい曲を選曲したと思っていたら、名フィル(名古屋フィルハーモニー交響楽団)も演奏する(2021年1月に予定)と知って・・・。こちらもいろいろなオーケストラと聴き比べてもらえたら」と語った。

9月5日(土)には、2017年に紫綬褒章受章を贈られた沼尻竜典の指揮で、サクソフォン奏者の上野耕平を招く。上野が同企画に出演するのは初めてだが、プライベートで親交があるという川瀬は「とても勉強熱心な音楽家」と称賛。今年1月に東京都交響楽団と行ったニューイヤー・コンサートを上野が訪れていたことを振り返り、「(上野が師事していた)須川展也さんの演奏を聴いて勉強されていた。サクソフォンを超えて、音楽に対して愛が深い音楽家。彼なら素晴らしい演奏をしてくれると思う」と期待していた。

みなとみらいシリーズは2020年10月31日(土)まで、横浜みなとみらい大ホールで午後2時から開演。2021年2月からは会場を巡演していく。会場を変えての初回は、2021年2月6日(土)に相模女子大学グリーンホール(模原市南区)。「初めての会場で、お客さんが入るか心配」としながらも、「ド名曲は選ばなかった」とアメリカのトランペット奏者、ウィントン・マルサリスが、スコットランド出身のヴァイオリニスト、二コラ・ベネデッティのために書き下ろした「ヴァイオリン協奏曲」、コリアーノの「ハーメルンの笛吹き」幻想曲をラインアップ。1983年にジャズとクラシックの両方でグラミー賞を手にしたマルサリスの「ヴァイオリン協奏曲」を聴いた際、「最初の出だしで、石田さんに合うと思った」と神奈川フィルで首席ソロ・コンサートマスターを務める石田泰尚のことが浮かんだことを回想し、「4楽章から成る曲は、ブルース、ジャジー、マーラーのような響きや、オーケストラ全員でクラップする場面もある。日本初演も、神奈川フィルと、石田さんとならできると思った」と意気込んだ。2021年3月6日(土)には鎌倉芸術館(神奈川県鎌倉市)に、オーボエの吉井瑞穂を初めて招き、モーツアルトの「魔笛」などを演奏する。

就任7年目。『オーケストラとは悪い関係の時もあった。ぶつかった時、話し合うことで成長を続けてきた』と川瀬

就任7年目。『オーケストラとは悪い関係の時もあった。ぶつかった時、話し合うことで成長を続けてきた』と川瀬

『オーケストラ・超名曲集〈全3回〉』

神奈川県民ホール(横浜市中区)で開かれる『名曲シリーズ』はオーケストラとの融合を楽しんで欲しいと全3回開催。2020年4月25日(土)は「ダンス」をテーマに、ラヴェル「ボレロ」やサラサーテ「カルメン」などを選曲。同12月20日はアメリカンジャズを中心にガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」、チャイコフスキー「くるみ割り人形」などを聴かせる。2021年3月20日(土)の第10回公演では、川瀬も大ファンという『レ・ミゼラブル』を、オペラのアリアのほか、ミュージカルのナンバーなども混ぜ「この演奏会だけの『レ・ミゼラブル』を聴かせたい」と気炎。オーケストラ、ミュージカル、オペラとの融合は聴き逃せない。

『音楽堂シリーズ〈全3回〉』

2019年に開館65年目を迎えた神奈川音楽堂(横浜市西区)で開催する全3回のシリーズ。「天才モーツアルトの楽曲を中心に、音楽のフルコースを味わって欲しい」と、開演前にシェフ(指揮者)自らが聴きどころを説明していく。「舞台と客席の隔たりがないところが、最大の魅力。客席にいても、自分が舞台に上がっているかのような一体感があるこの場所で、オペラをやってみたかった」と話す川瀬は、2021年1月23日(土)に、宮本益光の構成でモーツアルトの歌劇『魔笛』を披露。川瀬は「神奈川フィルは古典が上手なオーケストラ。神奈川フィルの魔笛は日本一なので、ぜひ聴きに来て欲しい」とPRした。

楽団創立50年を記念した2つの特別演奏会

2020年10月に迎える創立50周年。2020年11月21日(土)には主催公演として初めて、「千人の交響曲」を演奏することが決まった。川瀬は「マーラーの千人の交響曲は幼稚園の頃から指揮したかった曲。(就任してから)しつこく『8番』と言い続けて、やっと50年の節目、アニバーサリーーヤーにかなえることができました。この公演は、神奈川フィルと僕の集大成として、位置づけています。責任感を持って頑張りたい」と決意。半田美和子(ソプラノ)、福井敬(テノール)らソリストと共に、慶應義塾ワグネル・ソサエティー男声合唱団などと感謝の歌声を響かせる予定だ。

2020年を締めくくる演目は、ベートーヴェン「第9交響曲」。毎年年末に一度行ってきたが、祝祭の年は3度公演を行うことが決定した。2020年12月24日(木)は横浜みなとみらいホール、同26日(土)はミューザ川崎シンフォニーホール(川崎市幸区)、同27日(日)に2020年を締めくくるステージを藤沢市民会館(神奈川県藤沢市)で開催する。

指揮を務める鈴木秀美は2017年に同企画でタクトを振る予定だったが、健康の上の理由により、公演をキャンセル。「あの時、果たせなかった歓喜を」と思いを込めて舞台に臨むという。

音楽主幹の榊原徹は「巡回公演は50周年を記念するというだけではなく、新しい道へ進むためのものでもある。ぜひ近くで神奈川フィルを聴いてもらいたい」と呼びかけた。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団の応援マスコット『ブルーダル』の50周年バージョン(中央)もお披露目された

神奈川フィルハーモニー管弦楽団の応援マスコット『ブルーダル』の50周年バージョン(中央)もお披露目された

取材・文・撮影=Ayano Nishimura


Youtubeチャンネル登録者数8万人を突破 クラシックの枠を超えジャンルレスに展開する新時代ピアニスト・角野隼斗(Cateen)

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「天は二物を与えず」というが、三物も四物もの資質を備えた人たちがいる。ピアニスト・角野隼斗は間違いなくその一人だ。エリート校である開成中学・高校で学び、大学は東大へ。工学部計数工学科数理コースというバリバリの理系。大学院での研究生活を送る一方、昨年2018年夏には、国内最大級の規模を誇るピアノコンクール、ピティナ・ピアノコンペティション 特級で、並み居る音大生たちを抜いてグランプリに輝いた。コンサート活動を展開する一方、YouTubeからジャズやアニメやゲーム音楽を超絶技巧的なアレンジで配信。現在チャンネル登録者数は8万人超えという人気ぶり。そんな角野の多様な活動について話を聞いた。

サロンで、ストリートピアノで〜パリジャンたちを興奮させた角野のピアノ

——昨年2018年にピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリを受賞されてから、約一年が経ちました。受賞後すぐに半年間フランスに留学されましたね。

東大大学院の交換留学の扱いで、フランス国立音響音楽研究所(IRCAM)という所で研究をしてきました。ここは作曲家やアーティスト寄りの人たちと、エンジニア寄りの人たちがいるのですが、僕はエンジニア側で、AIを用いた音楽創造の研究チームに入りました。研究の内容を簡単に言いますと、AIによる自動採譜やアレンジの技術研究です。たとえば、ピアノ曲をオーケストラ用にアレンジする際、強弱の違いを表現するために、別の評価軸を加えていく……というような研究です。

角野隼斗

角野隼斗

——その一方で、パリでコンサートを開く機会があったとか!

そうなんです。あちらは若い奏者に演奏の機会を与えようという文化が息づいていて。いろんな方から応援していただき、有難いことに、留学中の半年間で9回ほどサロンでのコンサートを開かせていただきました。雰囲気はとても良くて、かしこまらない空間。お客さんは演奏にアクティブに反応してくれます。ラヴェルやドビュッシーなどのフランスもののほか、アンコールではジャズや自作曲なども入れました。ファジル・サイ編曲の「トルコ行進曲」を弾いたときなんかは、めちゃくちゃ盛り上がってくれましたね。

——コンサートを聴きにいくこともしましたか?

週に2、3回は行ってました。若者は10ユーロ(※1ユーロ=約118円/2019年10月現在)くらいで、日本よりリーズナブルですから、「今日はなんかあるかな」みたいな気楽な気分で。クラシックだけじゃなく、ジャズバーにも行きました。ジャムセッションという、お客もセッションに参加できるものがあって、僕も弾いてきました。その場で初めて出会った人とセッションできて、楽しかったですね。

大きな駅にはストリートピアノがありました。日本にも今少しずつ置かれているみたいですが、向こうは全然雰囲気が違って、人がたくさん集まって全員で歌ったりするんです。ツイッターにその時の動画を載せているんですが、僕も弾きながら、道ゆく人たちと一緒に歌いましたよ。ラーララーラーラー……って(♪Don’t Stop me now/Queen)。

——楽しそうですね! どんなジャンルの曲も即興的にアレンジができて弾けてしまう角野さんだからこそ、こんなにみんなを盛り上げることができるんでしょうね。ところで、研究や音楽以外でも、刺激的だったことはありますか?

刺激……なんでしょうね。悪い人もいましたよ(苦笑)。レストランで、パスポート、携帯電話、マックブック、現金などがはいったバッグを盗まれたことがありました。近距離にあったのに、ちょっと目を離したスキに。パソコンは二台持ってきていたし、携帯もスペアで二個持っていたんです。盗まれると思って。

角野隼斗

角野隼斗

——思ってたんですか(笑)。

データはすべてクラウドに保存しているから大丈夫。問題なかった。パスポートの再発行が面倒でしたね。

——ピアノのレッスンもしっかりと受けてこられたそうですね。

はい、クレール・デゼール先生とジャン=マルク・ルイサダ先生にレッスンを受けることができました。ピアノのレッスンではあるけれど、デゼール先生は頻繁に「このパッセージはオーケストラでは何の楽器か」といった質問をされました。これはまさに自分の研究分野とも繋がることです。弓で弦をこするヴァイオリンと、ハンマーで弦を打つピアノとでは、音の立ち上がり方がまったく違いますが、ヴァイオリンのようなアタックをピアノで出そうとするならば、タッチを工夫しなければなりません。多様な楽器をイメージしながら音色を追求することで、音の幅を増やしていくことができました。

ルイサダ先生は映画がお好きで、学生をご自宅に呼んで上映会を開いていました。僕も2回くらい参加しました。映画のタイトルは忘れてしまったけれど、第2次世界大戦直後の香港におけるイギリス人の恋愛ストーリーだったと思います。15人くらい、学生とその友人が集っていましたね。

角野隼斗

角野隼斗

YouTubeフォロワー数8万人超え! 角野ワールドが目指すもの

——さて、帰国されてからは、ますます精力的に演奏活動をスタートされました。

今年2019年3月には、コンクールグランプリとして関連のコンサートがありましたし、この半年間で20回ほどコンサートがありました。

——一方で、ツイッターやYouTubeから配信される動画が大きな話題を呼んでいます。クラシックの演奏のみならず、映像とのコラボレーションや、和太鼓とのセッション、多ジャンルのアレンジなどは、角野さんならではのコンテンツですね。

日本はまだ音楽関係者でプロとして活動しながらYouTubeを積極的にやっている人はさほど多くないのではと思います。海外はもう少し多いし、他のジャンルでも多い。日本でもこれから増えてくるとは思います。僕ももっと伸ばしていきたいですね。トーク動画とは違い、音楽の動画は言語に縛られるものではないから、海外の人に映像を見て楽しんでもらえるのは素晴らしいことだと思います。

ピアノの蓋に映像が写し出される動画は、友人と組んで作っているものです。映像系に強い友達とコラボレーションできる場としては、まさにYouTubeはうってつけです。​

【Super Mario Odyssey】Jump Up, Super Star! 【Piano Cover】スーパーマリオ オデッセイ メインテーマ [かてぃん]

——1時間ほどのYouTubeライブ配信も面白いですね。角野さんがゆったりとした雰囲気で、即興的にさまざまなアレンジで演奏し、視聴者がリアルタイムでどんどんコメントを書き込む。リアルな演奏会場ではなかなか難しいですから。

たしかに、生演奏のコンサートにはない楽しさがありますね。しっかりプログラムを組まず、しゃべりながら、アドリブをまぜて。何の準備もいらないんです(笑)。今後も続けていきたいです。

——現在YouTubeチャンネルのフォロワー数は8万人を超えています。目標値はありますか?

そうですね、年内に10万人くらいはいきたいし、最終的には100万人に到達できたら嬉しいです。

——そのチャンネルを拝見していて思いますが、角野さんはクラシックもジャズもポップスも、ジャンルに垣根なく自在に弾けることが大きな強みですよね。

クラシックで学んだことは、あらゆるジャンルのアレンジに生かせるところがあります。クラシックがきちんとベースになければいけないと思っているんです。その上でアドリブやアレンジを広げたいし、将来的には作曲もするかもしれない。オーディエンスに対しても、そうした僕の姿勢がしっかりと伝わるように活動していきたいですね。

角野隼斗

角野隼斗

——12月には札幌・福岡・大阪・東京・名古屋でのコンサート・ツアーが予定されていますね。

プログラムはラフマニノフがメインです。ソナタ 第2番と、交響曲 第2番 第3楽章を自分でピアノ独奏用にアレンジしたものを披露します。この曲にはピアノ協奏曲版があるのですが、ピアノ単体でいけないかなという挑戦です。ほかにも、ラフマニノフに影響を受けているゲーム音楽や、自分がリスペクトする作品のアレンジものも加える予定です。

——春には修士論文を完成させて東大修了ということになりますね。

論文のテーマはフランスでの研究を土台に厚みを持たせた内容にしたいと思っています。修了後は、演奏家としても研究者としても、充実した活動をしたいですね。音楽的には、来年はクラシックのインプットに集中したいと思っています。コンクールを受けたり、場合によっては、海外で勉強するかもしれない。

秋からは、機械学習の研究開発等に強い企業に所属する予定です。今はまだ詳しくは言えませんが、音楽×AIでインパクトのあるものを世に出していきたいと思っています。音楽的な経験は研究にも活きると、音楽活動に深い理解を示してくださっているので、音楽家の視点で研究プロジェクトに関われればな、と思っています。​

角野隼斗

角野隼斗

取材・文=飯田有抄 撮影=安西美樹


2019年10月19日(土)には、eplus リビングルームカフェ&ダイニングにて『【Living Live】角野 隼斗 ~Cateen’s Piano Live Vol.6~』が開催される。今回のライブは、角野のYoutubeチャンネルにてライブ配信され、これまでのYoutubeライブ配信と同様のスタイルをとるという。すなわち、セットリストは用意されておらず、リアルタイムでコメントされる楽曲のリクエストに応え、アレンジを加えて演奏を披露していく。自宅を飛び出し、eplus リビングルームカフェ&ダイニングにてYoutubeライブを行うというスタイルだ。12月の全国ツアーも完売となっている角野の演奏を聴くことができるチャンス。当日の席はすでに完売しているが、Youtubeにてライブ配信をぜひチェックしてみてほしい。

Cateen's Piano Live Vol.6 (at LIVING ROOM CAFE & DINING) [8万人記念]

ピアニスト・吉見友貴インタビュー 初の本格リサイタルを前に「お客様には気負わず純粋に楽しんでほしい」

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2019年11月24日(日)トッパンホールにて『吉見友貴ピアノリサイタル2019』が開催される。吉見は2017年、第86回日本音楽コンクールピアノ部門で最年少優勝。豊かで格調高い音色に注目が集まっているが、このほど10代最後の演奏会となる本公演にかける思いを語ったインタビューが到着したので紹介する。

――日本音楽コンクールピアノ部門で最年少優勝を飾られてから2年。その後、気持ちの変化などはありましたか?

「1位」という肩書きが、自分を成長させてくれたと思います。自分の音楽を、より自信を持って突き詰めていくことができていると実感しています。

――具体的には、日々どんなふうに音楽と向き合っているのですか?

もちろん演奏のテクニックは大事だと思うのですが、文献を読んだり、いろんな人の演奏を聴いたり、楽譜をじっと眺めて分析したりと、ピアノから離れて勉強することが多くなりました。

弾くことが好きなので、高校1年生くらいまではずっとピアノに向かっていたのですが、 それだけでは勉強しきれないこともあるんですね。たとえば楽譜を分析すると作品を客観的に掌握できます。そういった意味では、以前に比べて視野が広がったと思います。

吉見友貴

吉見友貴

――ご自身の音楽の魅力は、どんなところだと思いますか?

自分が強みだと感じているところを、お客様も同じように感じてくれるとは限りませんが、 強いて言えば、ピアノを「歌わせる」ということ、音色の多彩さが武器かなと思っています。今回のリサイタルも、新たな魅力に気づいていただけるような機会にできたらと思います。

――今回のリサイタルでは、1曲目にベルクのピアノ・ソナタを予定されています。

はい。多くのお客様があまり聴いたことがないか、よく分からないという印象を持っている作曲家だと思うんです。僕自身、ベルクの音楽がすごく好きなので、紹介したいという気持ちが強いです。僕がベルクに出会ったのは、漫画『のだめカンタービレ』の作中に登場するヴァイオリンコンチェルトがきっかけでした。子どもながらに感激して、ピアノ・ソナタも勉強したんです。少し難しい曲かもしれませんが、「分からないけど、ちょっといいかもしれない」と感じて、楽しんでいただけるような演奏がしたいと思っています。

吉見友貴

吉見友貴

――ベルクのほかに、今回のプログラムで思い入れがあるのはどの曲ですか?

ラヴェルの「ラ・ヴァルス」と、ショパンの「舟歌」ですね。「ラ・ヴァルス」はこれまでもたびたび弾いてきた作品。そして、ショパンの「舟歌」も幾度か演奏する機会に恵まれましたが、なかなかに大変な作品です。この作品は、色々なものに左右されてしまいます。ピアノ、ホールの響き、そして自らの体調や心理状態など...。それほど難しい作品なのです。

――本格的なコンサートホールでのリサイタルは、初めてだそうですね。

はい。素晴らしいホールで自分の音楽がどのように響くか、とても楽しみです! お客様には、気負わず純粋に楽しんでいただけたら嬉しいです。
 

吉見 友貴/Yuki Yoshimi  プロフィール
2000年生まれ。5歳よりピアノを始める。
高校2年在学中、第86回日本音楽コンクールで最年少優勝を果たす。
4th Manhattan International Music CompetitionにてSilver Medalを受賞。
その他、安川加壽子記念コンクール第2位など多数のコンクールで入賞。 2015年アリオン桐朋音楽賞受賞。
2019年にはCHANEL Pygmalion Days Artistに選出された。
これまでに東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、
新日本フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、セントラル愛知交響楽団等と共演。
NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」等ラジオ出演も多数。
桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を首席で卒業後、現在桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースに特待生として在籍。上野久子氏に師事。 2019年度ローム・ミュージック・ファンデーション奨学生。

ヴァイオリニスト戸澤采紀がピアニスト樋口一朗とリサイタルで共演 公演を前にスペシャルインタビューが実現

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2019年11月23日(土)トッパンホールにて『戸澤采紀ヴァイオリンリサイタル』が開催される。第85回日本音楽コンクールヴァイオリン部門で最年少優勝に輝いた戸澤采紀と、同コンクールピアノ部門で優勝した樋口一朗が共演する本公演を前に、スペシャルインタビューが行われたので紹介する。

――今回のリサイタルでは、戸澤さんから樋口さんに共演を依頼したそうですね。

戸澤さん(以下、 敬称略):はい。音コン(日本音楽コンクール)の翌年のツアー中もずっと一緒に同じコンサートに出演していたんですが、あまり共演の機会がなくて。今回のリサイタルは、まず曲目を決めたのですが、中でもラヴェルの音のイメージが私の中で樋口さんにぴったりはまっていたので、お誘いさせていただきました。

――お互いへの印象を教えていただけますか?

戸澤:樋口さんは朗らかな人柄で、一緒に演奏していて焦ったり不安になる要素がなく、とても安心できる人柄です。音も明るくきらきらしていて、惹かれるものがたくさんありますね。

樋口さん(以下、 敬称略):戸澤さんは、ヴァイオリンを弾いているときと、普段のギャップがすごいです。一緒に音楽を作るときはしっかり芯が通っていて、説得力がある感じだけれど、ふだんは明るい女の子ですね(笑)

戸澤采紀

戸澤采紀

――いま、戸澤さんは大学1年生、樋口さんは大学院1年生ですが、大学生・大学院生になって、音楽との向き合い方に変化はありましたか?

戸澤:時間に余裕ができたので、同じ曲をゆっくり勉強したり、夏休みを全部勉強に捧げたりと、久しぶりに自分のために音楽を学んでいる感じがあって、有意義に過ごせていると思います。

樋口:音楽に充てる時間が増えて、集中できています。同時に「ちゃんとしなきゃ」とも感じていて、責任を果たしながら、技術も高めていきたいです。

樋口一朗

樋口一朗

――音楽を学ぶ上で大切にしていることはありますか?

戸澤:演奏を聴いて「安定している」と言ってくださる方が多いのですが、自分ではそういうつもりがなくても、お客様には、音楽よりも先に技術が聴こえてしまっているのかなと思いました。表現のために技術があって、技術のために表現があるわけではないので。技術が見えない、技術に聴こえない音楽が今の目標なのですが、すごく難しいです。

樋口:音楽の内容については、やりたいことが子どものころからぶれていないんですが、今はそれに加えて、目標が2つあります。ひとつは、自分の中身を成長させること。積極的にいろいろな人と関わったり、美術館などいろいろな場所に行ったりして経験を積むということですね。もうひとつは物理的にピアノのことを勉強して、自分のイメージと実際の演奏をできる限り近づけたいと思っています。

――今回のプログラムでは、どんなところにこだわっていますか?

戸澤:まず、コンセプトとして、前半と後半にひとつずつメインのヴァイオリン・ソナタを置きました。イザイは毎年勉強して、毎年リサイタルで演奏させていただいているので、 今回は2番を選び、ラヴェルの前に。スターターは当初、シューベルトかモーツァルトのソナタを弾こうかとも思ったのですが、シューベルトの「華麗なるロンド」が冒頭、とても印象的な始まり方をするので、それをリサイタルの最初に持ってきたらかっこいいなと思い、このようなプログラムになりました。前半が重いプログラムなのですが、その分後半はエンターテインメント性があるので、楽しんでいただければと思います。

――最後に、今回のリサイタルへの意気込みをお願いします!

戸澤:ふたりにしかできない演奏があると思うので、「伝えたい」と感じることに妥協せず、 命を削って弾きたいと思います。

樋口:今の自分たちの演奏が交わって、どんな音楽になるのか楽しみです。

戸澤采紀

戸澤采紀

さらに2019年12月24日(火)浜離宮朝日ホールにて、戸澤采紀がピアニスト西川響貴、チェリスト泉優志と、このコンサートのために結成した一夜限りのスペシャルトリオで「トリオ・クレスコ コンサート」が開催される。

戸澤は「ピアノの西川くんとはずっとデュオをやってきて、チェロの泉くんとはカルテットをやってきたので、彼らのことはとても信頼していますし、音楽的にも遠慮なくぶつかり合える」とコメントしており、西川のことは「どんな時も思いを込めて弾いてくれる熱いピアニスト」、そして泉については「直感が冴えていて、アカデミックに考えて弾く私(戸澤)とは違うタイプの印象的な演奏家」と語っている。

戸澤采紀 /Saki Tozawa プロフィール
第85回日本音楽コンクール最年少(15歳)優勝、 第69回全日本学生音楽コンクール中学校の部東京大会第1位、 全国大会第1位、 2017年ティボール・ヴァルガ国際ヴァイオリンコンクール第2位(最高位)、 第15回大阪国際音楽コンクール第1位等、 これまでに数々のコンクールで入賞。 2017年Kronberg Academy にてアナ・チュマチェンコ氏のマスタークラス受講。 2018年第11回ミュージックアカデミーinみやざき 優秀賞受賞。 室内楽にも積極的に取り組み、 2018年よりチェルカトーレ弦楽四重奏団に加わり、 サントリー室内楽アカデミー第5期フェローとして学んでいる。

現在、 玉井菜採、 ジェラール・プーレ、 ドンスク・カンの各氏に師事。 2017、 2018年度ヤマハ音楽奨学生。 江副記念リクルート財団 第48回奨学生。 使用楽器は、 文京楽器の協力によりイギリスのBeare International Society より貸与されている、 Matteo Goffriller。 現在、 東京藝術大学音楽学部1年に宗次徳二特待奨学生として在学中。

樋口一朗 /Ichiro Higuchi プロフィール
桐朋学園大学大学院1年に特待生として在学中。 2018、 2019年度ロームミュージックファンデーション奨学生。
第35回飯塚新人音楽コンクール第1位。 第85回日本音楽コンクール第1位。 併せて、 野村賞、 井口賞、 河合賞、 E・ナカミチ賞、 アルゲリッチ財団賞を受賞。 第16回チェコ音楽コンクール第1位。
奨学生としてドイツのleipzigで開催されるメンデルスゾーン国際音楽アカデミー2018に参加。
これまでに青柳晋、 M.Voskresensky、 P.Devoyon、 B.Riggtto、 Jean-Claude= Pennetier、 M.Raekallio、 J.Rouvier、E.Virsaladzeの各氏のレッスンを受講。 これまでに川口由美子、 中村順子の各氏、 現在岡本美智子氏に師事。

大阪交響楽団「感動の第九」が実質的な正指揮者お披露目公演となる指揮者 太田弦に聞く!

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10月も後半に入り、朝夕の気温がぐっと低くなって来た。クラシック音楽の世界で、この時期話題となるのが、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」、いわゆる「第九」のこと。

ベートーヴェン生誕250年を翌年に控え、そのキックオフ的な意味合いを持つ今年の第九が自身にとって特別な演奏会となる指揮者太田弦

大阪交響楽団の特別演奏会「感動の第九」は、 彼の正指揮者就任披露演奏会的な意味合いを持つ公演となる。全国のプロフェッショナルオーケストラでポジションを持つ指揮者としては、最も若い25歳の太田弦。前回取材したのは、昨年11月の正指揮者就任発表の直後なので、約1年前のこと。プライベートでは6月に結婚もし、公私ともに充実の一途を辿っている若きマエストロに、あんなコトやこんなコトを聞いてみた。

プロのオーケストラでポジションを持つ指揮者としては、最年少25歳の太田弦 (C)ai ueda

プロのオーケストラでポジションを持つ指揮者としては、最年少25歳の太田弦 (C)ai ueda

ーーいよいよ待ちに待った「感動の第九」ですね。

太田弦 ありがとうございます。ただ、12月のトップシーズンの中での第九なので、リハーサルに充てる時間はあまりありません。その中で最大限にこだわって演奏したいと思い、今もライブラリアンさんにお願いしてパート譜を持ってきて貰い、見ていたところです。オーケストラのパート譜には色々な指揮者の書き込みがあり、自分のやり方と違うものも多く、短時間でリハーサルするには効率が悪いのです。どうしても書き込んである指示の通りに先ず弾いてしまう。真っ白なパート譜に、やりたいことをあらかじめ書き込んで渡しておきたい気分です。先々の事を考えても、第九のパート譜はこの先何度も使うと思うので、新たに買おうか考えているところなんです。

ーー第九は版の問題というか、解釈にかなりの差があるようですね。

太田 第九はもちろん凄い作品なんですが、スコアを見ていると未完成というか、随分間違いが有ります。第1楽章ではベートーヴェン自身、かなり迷ったんじゃないでしょうか、最初は4分音符=120と書いていたのに、途中で108になり、最終的には88になっています(笑)。また、第4楽章では、時間が無かったのか、パートによって同じ音型なのに、アーティキュレーション(演奏技法において、音型を整えたり、音と音の繋がりに表情付けをすること)などの指示が書かれていたり、なかったり。明らかに耳が聴こえてなかったのでしょうね、バランスの悪いところもいっぱいあり、その上に編集者の書き間違いなんかもあります。

ちょっと専門的な話になりますが、今ではすっかりスタンダードになりつつあるベーレンライター版とは別に、ヘンレ版の楽譜が「ベートーヴェン新全集版」としてブライトコプフ社から、交響曲第6番「田園」まで現在出版されています。なかなかよく出来ているので、11月の新日本フィルの演奏会ではこの版で交響曲第5番「運命」をやるつもりです。この版の「第九」もまもなく出るらしいと聞いていますので、今はそれを楽しみに待っているところです。買うならこっちでしょうね。

嬉しそうに弦楽器のパート譜を眺める太田弦 (C)h.isojima

嬉しそうに弦楽器のパート譜を眺める太田弦 (C)h.isojima

ーー太田さんのスコアの読み込みの深さには定評があります。師匠の尾高忠明さんも「彼は勉強の虫だから、何でも暗譜で振れるようにしてしまう。」と仰っていますね。

太田 ありがとうございます。でも今は、暗譜禁止期間中なんです(笑)。「第九」は直筆譜をファクシミリで購入し、しっかり読み込んだことで、自分なりのやり方は固まって来ました。例えば、(ヴァイオリンのパート譜を見ながら)この音なんかはピチカート(弦を指で弾く奏法)になっていますが、本当はここからアルコ(弓を使って演奏すること)だと思います。また、この楽譜の、ココとココにffの指示が有りますが、このffの賞味期限はどこまで続くのか!といったことを明確にオーケストラのメンバーに伝えたいのです。

パート譜の問題点を丁寧に説明する太田弦 (C)h.isojima

パート譜の問題点を丁寧に説明する太田弦 (C)h.isojima

ーー「第九」はオーケストラだけでなく、合唱団にも指示を出さないといけないので大変ですね。

太田 オーケストラと合わせる前段階の合唱練習が大切です。私はドイツ語の発音にはさほどこだわっていません。発音に神経質になって、音楽に集中出来なくなるのが問題だと思っています。大事なポイントをしっかり出して、それ以外はあまり出さないと云ったメリハリが大切だと思います。合唱指揮者との連携が重要です。

ーー実質、「第九」が正指揮者のお披露目みたいな感じですが、2月の「名曲コンサート」ではメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」をメインで取り上げられます。

太田 大好きな曲なんですが、メンデルスゾーンは勉強すればするほど嫌いになる作曲家です(笑)。きっと楽譜の細かいところまで興味がなかったのではないでしょうか。スラーの位置やデュナーミク(強弱法)なんか同じ音型でもバラバラです。古い楽譜は、ブライトコプフの編集者が気を利かして揃えていたのですが、今の楽譜はオリジナルのままなのでなかなか手ごわいです。まだ時間が有るので、もう少しスコアを研究したいと思っています。

オーケストラから瑞々しい音楽を引き出す、正指揮者 太田弦 (C)Takafumi Ueno

オーケストラから瑞々しい音楽を引き出す、正指揮者 太田弦 (C)Takafumi Ueno

ーー大阪交響楽団のミュージック・アドバイザー外山雄三さんは現在88歳。太田さんか外山さんの年齢になるまで63年あります。63年後、どんな指揮者になっているか、イメージ出来ますか。

太田 いやー、63年後ですからね。意外とベーレンライターに就職していて、ベートーヴェンの新しい楽譜を出版してるかもしれませんね(笑)。あっ、でもそれじゃ実演出来ないから、やっぱり指揮者がいいかな。

ーー本当に楽譜が好きなんですね(笑)。4月の正指揮者就任から満を持して臨む「第九」。読者の皆さまにメッセージをお願いします。

太田 4月のシーズン開幕から、0歳児のためのコンサートや映画音楽のコンサートなどを大阪交響楽団の皆さんと一緒にやらせて頂き、顔と名前が一致するようになり、だいぶん分かり合えて来たと思います。おかげさまで他のオーケストラを指揮する機会も増えてきましたが、12月の「感動の第九」では、私と大阪交響楽団だから出来る「第九」を皆さまにお聴きいただきたいです。ぜひ、ザ・シンフォニーホールにお越しください。

皆さまのお越しをコンサート会場でお待ちしております! (C)h.isojima

皆さまのお越しをコンサート会場でお待ちしております! (C)h.isojima

取材・文=磯島浩彰

ピアニスト、ヴィキングル・オラフソンが英グラモフォン賞「アーティスト・オブ・ジ・イヤー」を受賞 新アルバムには坂本龍一らが参加

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ロンドン、2019年10月16日、ピアニストのヴィキングル・オラフソンが、クラシック音楽界のアカデミー賞ともいわれるグラモフォン賞 2019の「アーティスト・オブ・ジ・イヤー」を受賞した。

グラモフォン賞は、英国の権威あるクラシック音楽雑誌『グラモフォン』が毎年主催している音楽賞。「アーティスト・オブ・ジ・イヤー」は、世界中の音楽ファンの一般投票により選出され、毎年大きな注目を集めている。歴代の受賞者にはピエール・ブーレーズ、マルタ・アルゲリッチなど錚々たるアーティストが名を連ねる。

オラフソンは、1984年アイスランド生まれ。2008年にジュリアード音楽院でロバート・マクドナルドのクラスを卒業。これまで、アイスランド音楽賞、アメリカン・スカンジナビア社会文化賞、ジュリアード・バルトーク・コンクール賞、ロータリー財団文化賞など、多くの賞を受賞している。コンサート・ピアニストとしての活動と同時に、ビョークやオーラヴル・アルナルズ等コンテンポラリー・コンポーザーたちともコラボレーションを行い、英グラモフォン誌をはじめ数々のクラシック専門誌で称賛されていた。

今回の受賞へもつながったオラフソンのアルバム『バッハ・カレイドスコープ』(原題:Johann Sebastian Bach)(2018)は、アイスランド音楽賞の最優秀演奏賞と年間最優秀アルバム賞(2019年3月)、BBCミュージック・マガジンの最優秀器楽アルバム賞と年間最優秀アルバム賞(2019年4月)、ベルリンのオーパス・クラシック賞では最優秀ソロ・リサイタル賞(2019年10月)を受賞している。

『バッハ・ワークス&リワークス』ジャケット写真

『バッハ・ワークス&リワークス』ジャケット写真

数々の受賞を祝してドイツ・グラモフォンから2枚組のアルバム『バッハ・ワークス&リワークス』が発売となった(国内盤は12月4日発売)。このアルバムは『バッハ・カレイドスコープ』(CD1)に、バッハを現代的に蘇らせた数々のアーティストとの魅惑のコラボレーションを収録したリワークス(CD2、デジタルではBach Reworks(Pt. 1)、(Pt.2)として発売中)を追加したデラックス・バージョンで、最先端の作曲家たちによるバッハの現代的再創造となっているという。リワークスには日本を代表する世界の坂本龍一、ドイツの実験音楽・環境音楽・電子音楽のパイオニアでレジェンドのハンス・ヨアヒム・レデリウス、映画『ジョーカー』のスコアを担当したヒドゥル・グドナドッティル、エレクトロ・ノイズの鬼才ベン・フロスト、などが参加している。

オラフソンは2019年12月に来日を予定している。『ヴィキングル・オラフソン ピアノ・リサイタル ラモー×ドビュッシー×展覧会の絵』と題し東京(4日(水))、名古屋(6日(金))、大阪(7日(土))、札幌(13日(金)にてピアノ・リサイタル、また、12月11日(水)には、すみだトリフォニーホール 大ホール(東京)で行われるトリフォニーホール・グレイト・ピアニスト・シリーズに新日本フィルハーモニー交響楽団とともに出演する。

今秋アジア初上陸のエレクトロ・クラシックグループ SYMPHONIACSとは? 彼らが創る”ネオクラシック”その神髄

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ヨーロッパを中心に全世界で注目を浴びている若手クラシック奏者集団・SYMPHONIACS(シンフォニアクス)。ドイツを活動拠点とし、管弦楽団などの奏者、またソリストとして活躍中のヴァイオリニスト3人、チェリスト2人、ピアニスト1人、そしてエレクトロアーティスト/コンダクター1人の計7人からなる筋金入りの実力派だ。

“コンサートにいったことがない人でも気軽にクラシックを楽しんでもらいたい”をコンセプトにした熱い思いから新ジャンル<ネオクラシック>を提唱し、コールドプレイ、アヴィーチーやダフト・パンクなどの楽曲をクラシカルでダイナミックなサウンドに昇華すると同時に、バッハやヴィヴァルディといったクラシックの名曲をエレクトロニックなサウンドやビートで躍動感あふれる新しいクラシックを奏でる。そんなシンフォニアクスが2019年11月15日(金)東京国際フォーラムにて初の日本公演を行う。シンフォニアクスの目指すものや来日公演に向けての意気込みを、プロモーションで来日中のヨハネス・フライシュマン(ヴァイオリン)、トム・スーハ(ヴァイオリン)、コリン・ストークス(チェロ)の3人にきいた。

ーーシンフォニアクス結成のいきさつと、どんなことをやろうということで集まったのでしょうか。

コリン・ストークス(以下、コリン):まずは“音楽は音楽だ”ということが共通認識としてあった。300年前のものでも現代に書かれたものでも、”自分達の気持ちを伝えるために音楽はある”という考え方なんだ。僕らはクラシックから始まっているんだけど、クラシックと今の音楽を全部ひっくるめて新しいものとして提示しようというのが僕たちの理念なんだ。

コリン・ストークス

コリン・ストークス

ーーみなさんは個々にクラシックアーティストとして活躍していらっしゃる。そんななかでシンフォニアクスとして集まるのはスケジュール管理が大変そうですね。

コリン:そうなんだよ。それぞれ個々のプロジェクトが進行中で、ツアー中のメンバーもいる。それぞれのスケジュールの合間に今回は日本に来たんだ。ヨハネスなんか、先週日本にいてまた今戻ってきて、そして11月に来日公演をするという過酷なスケジュールなんだよ(笑)。

ヨハネス・フライシュマン(以下、ヨハネス):それで1月にもまた日本に来るんだよ。僕の住んでいるオーストリアと日本は国交樹立150周年で、僕はオーストリアの音楽大使をつとめているだから大使館などでイベントがあると僕が呼ばれるので、日本とオーストリアを行ったり来たりなんだ(笑)。

ーーみなさん住んでいるところも世界中でバラバラですよね。どうやってそんな皆さんを集めたんでしょう?

トム・スーハ(以下、トム):今の時代だからネットだよね。僕たちはそれぞれが成功しているので、いろいろなところに名前が挙がっているんだ。それをこのグループのプロデューサーでありオリジナル曲の作曲もしているアンディ・レオマーが集約して声をかけていったんだよね。まずは腕のい良いプレイヤーであること、そしてシンフォニアクスが目指すものに興味があって、それをステージでもちゃんとパフォーマンスできるかどうかが重要だったんだ。

トム・スーハ

トム・スーハ

ーーリハーサルも大変ですね。レコーディングもそうだと思うんですが、どうやっているんですか?全員が集まるのって大変でしょう。

ヨハネス:ベルリンにオーケストラが集まれる規模のアンディのスタジオがあって、そこがマザーシップのようになっているよ。必要なときは皆がそこに集まるんだ。アンディが曲のベースを作って、それをクラシカルアレンジにしたりエレクトロなものにしたりと皆で試していく。ものすごい実験場のようなことになるんだよ。それはすごく楽しい作業なんだ。事前の話し合いなどはネットでやりとりすることもあるけど、録音に関しては必ず全員が集まってやる。ストリングカルテットというのは、絶対に全員で演奏するのが基本だからね。でも僕たちの場合はそこにエレクトロが入るので、そういうのは一つずつオーバー・ダビングしていく。そのやり方はクラシックとは違うけど、必ず立ち会うようにしているんだ。

コリン:アンディにはドイツで認定されている“トーン・マイスター”という肩書きがあって、クラシックのオーケストラのレコーディングがちゃんとできるという資格なんだ。一つ一つの音をしっかり録ってそれをオーケストラ全体として成立させる。普通のポップス系の人にはちょっと無理な仕事なんだよね。それができるアンディがいるからこそ、このシンフォニアクスの音作りができて僕らが存在できるんだ。

ーーヴァイオリニスト3人、チェリスト2人、ピアニスト1人、そしてエレクトロアーティスト/コンダクター1人の7人編成なんですが、ヴィオラがいないんですね?ちょっと不思議に思いました。

コリン:いや別にヴィオラに恨みは無いんだよ(笑)。というのは、ヴァイオリン、チェロというのはオーケストラのソロ楽器なんだよね。ソリストを集めるというのがシンフォニアクスの趣旨だったのでこうなっているんだ。

ヨハネス:でも、クリスチャン・キムがヴィオラを弾くよ。僕らにはアンプラグドのコンサートもあって、そこではシューマンやショスタコーヴィチなどの純然たる室内楽もするので、そういうときはクリスチャンがヴィオラを弾くんだ。

ヨハネス・フライシュマン

ヨハネス・フライシュマン

ーーシンフォニアクスには激しいリズムの曲も多い。クラシック・ミュージシャンにとって、リズムトラックに乗せてインテンポで弾くというのはかなり難しいと思いますが。

ヨハネス:難しいね。普段はイヤモニ(インイヤーモニター)を使ってクリックなどを聞きながら演奏するんだけど、これ自体も慣れないと難しいんだ。それとホールにもよるんだけど、5万人収容のホールで演奏するときは、音が後ろまで行ってステージ側に戻ってくるまでに相当の時差がある。それにプラスして、ドイツのお客さんは手拍子が好きなんだよね。だから、自分の出している音と返ってくる音と手拍子が入り混じって、もう頭が大混乱するんだよ(笑)。

コリン:アレンジによっては曲の途中でクリックを止めてフリーテンポで演奏し、またクリックが始まるなんていうこともあって、それは演奏者の柔軟性がすごく必要になるんだ。でも、電子楽器も僕たちの音楽の一部。一緒になって作り上げているものだから、そこは楽しんでいるよ。

ーーアンディはシンセサイザーのミニ・モーグを使っていますね。クラシック楽器との相性はいかがですか?

コリン:ミニ・モーグって一番ストリングスに近いシンセサイザーなんじゃないかな。ビブラートもかけられるし、音と音の間の音階を出せるポルタメント(※ある音から別の音に移る際に、滑らかに徐々に音程を変えながら移る演奏技法)で演奏もできる。アンディはシンセマニアでたくさんのシンセを持っているんだけど、ミニ・モーグが一番コンサートで使いやすいんだと思う。

左から ヨハネス・フライシュマン、トム・スーハ、コリン・ストークス

左から ヨハネス・フライシュマン、トム・スーハ、コリン・ストークス

ーーコールドプレイやアヴィーチーなどのロックやEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)をクラシック風に演奏することと、クラシックを現代風に演奏することは違いますか?

トム:どんなアレンジでもそうだけど、やっている人の個性が出るよね。僕らの音楽はロックやEDMやポップス、それとクラシックまで本当に幅広い音楽をやるので、心がけているのは“品良くやらなければならない”ということなんだ。且つ両方のエキスパートじゃなければできない。とにかく難しいことだから、双方の音楽に愛情を持って、そしてすべての経験値を注ぎこんで、とにかく練習しまくるしかないんだよね。最終的に優れたものを残そうという気持ちはどちらも同じだよ。

コリン:これはアンディが言っていたことなんだけど、エレクトロのリズム重視と反復という構造に、クラシックの叙情性を持ち込むということを大事にしているらしいよ。逆の場合では、バッハの無伴奏チェロ組曲なんかだと、クラシックの元の曲の資質は活かしつつ、シーケンサーの反復などの性格を持ち込むということ。でも先ほどトムも言っていたけど、ポップス側からのアプローチもクラシック側からのアプローチも目指すところは同じなんだよね。

ーーベルリンでの公演をYouTubeで見ましたが、お客さんが踊りまくっていますね。シンフォニアクスのファンって、ああいう踊りに来る若い人が多いのでしょうか。

ヨハネス:僕たちも最初のコンサートのとき、こういう音楽を聴いてくれるのはどういう人たちなんだろうって思っていたんだ。でも子供から年配の方まで幅広い層が来てくれた。僕たちのファンにはクラシックはもちろん、ジャズやロック、クラブ系の人までいろいろな人がいるんだよね。僕の母はオペラを教えているプロフェッショナルでEDMのコンサートになんか絶対に行かないんだけど、僕らのコンサートには来てくれて、ショーとしての要素があってすごく楽しかったと言ってくれた。クラシック好きな人にはEDMのテイストが新鮮で、逆に馴染みがない人にはピュアなクラシックの要素が楽しめる。そういうショーを作り上げられているのかなと思う。演っている僕らが楽しいので、踊ってくれてもいいし、楽しさが伝わればいいかな。

A Sky Full Of Stars/Coldplay - SYMPHONIACS (violin, cello, piano and electronic version/cover)

ーー最後に、11月の来日公演についての抱負を聞かせてください。

トム:パーティー・パーティー・パーティーだよね!

コリン:日本ではまだアルバムも出ていないけど、ここ6ヶ月くらい皆でスタジオに集まって曲作りをしていたんだ。そこでオリジナル曲もできているので、今度の来日公演ではオリジナルを2曲、世界初披露することになると思うよ。

ヨハネス:VIPチケットがかなり売れていると聞いたんだよね。これには秘密のギフトも付いているので、それも楽しみにしてほしいな。

取材・文=森本智 撮影=山本れお

バイオリニスト松田理奈が出演 ゲーム音楽をフルオーケストラで演奏するコンサート『Symphonic Memories - music from SQUARE ENIX』開催

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2019 年 12 月 14 日(土)にスクウェア・エニックスのゲーム音楽をフルオーケストラで演奏するコンサート『Symphonic Memories - music from SQUARE ENIX』が、カルッツかわさきにおいて日本初開催される。2014 年 5 月 4 日に開催されたコンサート『Final Symphony Tokyo - music from FINAL FANTASY VI, VII and X』を手掛けたトーマス・ベッカーがプロデュースする。

ゲームのデジタル音源をそのまま生の楽器で再現するのではなく、それぞれのゲームタイトル選りすぐりの楽曲で構成された 4 楽章からなる壮大な交響曲で、アレンジメントにストーリー性を持たせることによりゲームを遊んでいた頃の「Memories」が鮮明に蘇る。今回の日本公演を記念して、昨年 20 周年を迎えた「Xenogears」とスクウェア・エニックスの新たな RPG として発売された「OCTOPATH TRAVELER」楽曲に新規アレンジメントを施し世界初公開で届けられる。

またOCTOPATH TRAVELER Violin Concertoのソリストと構成楽曲が一部確定した。バイオリニスト松田理奈を迎え、“OCTOPATH TRAVELER -メインテーマ”、“踊子プリムロゼのテーマ”、“剣士オルベリクのテーマ” 、“フロストランド地方”、“ボスバトル2”からなるアレンジで演奏される予定だ。

バイオリン:松田 理奈

松田理奈

松田理奈



2001 年第 10 回日本モーツァルト音楽コンクール第1位。2002 年にはトッパンホールで「16才のイザイ弾き」というテーマでソロリサイタル開催。2004 年、第 73 回日本音楽コンクール第1位、2007 年にはサラサーテ国際コンクールにてディプロマ入賞。 これまで国内の主要オーケストラに加え、ハンガリー国立フィル、ヤナーチェク・フィル、スーク室内オーケストラ、ベトナム響など数々の楽団や著名指揮者と共演。2006 年ビクターより『ドルチェ・リナ』、 2008 年に『カルメン』、2010 年には『ラヴェル・ライブ』をリリース。イザイの無伴奏 ヴァイオリン・ソナタ全曲集は、「レコード芸術」特選盤に選出された。2018 年 5 月にはブラームス とフランクのソナタを収録した 5 枚目のアルバムをリリース。  

ディレクター・エグゼグティブプロデューサー:トーマス・ベッカー
メレグノン・スタジオの設立者であり代表。2003 年、日本国外では初めてとなるゲーム音楽コンサートをプロデュースし、ドイツ、ライプチヒで行われた公演のチケットは完売。2008 年以降、WDR ラジオ管 弦楽団を起用し Symphonic Fantasies を含む 6 回のアニュアルコンサートをプロデュース。2013 年にはロンドン交響楽団にとって初めてのゲーム音楽演奏となる Final Symphony London 公演をプロデュースしている。Abbey Road Studios にてロンドン交響楽団と Final Symphony のアルバムをプロデュースした。


反田恭平と牛牛/ニュウニュウが出演 TVアニメ『ピアノの森』ピアノコンサートがオーケストラとのスペシャルコラボで上演決定

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2020年1月12日(日)に東京オペラシティにおいて、TVアニメ『ピアノの森』ピアノコンサート with オーケストラを開催される。8月に開催したTVアニメ『ピアノの森』ピアノコンサートは大好評のうちに終演したが、そのコンサートがオーケストラとのコラボレーションでスペシャル上演されることが決定した。ピアニストの反田恭平と牛牛/ニュウニュウが出演し、オーケストラを従えて、圧巻のピアノ協奏曲が披露される。

10月25日(金)よりイープラスにて先行予約受付が始まるので、ぜひチェックしてほしい。

新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』開幕 舞踊芸術監督・大原永子からのメッセージが公開 会場内では『マノン』特別展示も開催

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2019年10月19日(土)より新国立劇場 オペラパレスで、新国立劇場バレエ団『ロメオとジュリエット』が開幕する。本作は400年以上前にシェイクスピアが書いた同名戯曲をバレエに翻案した作品で、20世紀最高の振付家のひとりケネス・マクミランの傑作。

ロメオとジュリエット過去の舞台写真 撮影_鹿摩 隆司

ロメオとジュリエット過去の舞台写真 撮影_鹿摩 隆司

本バレエは新国立劇場バレエ団で2001 年 10 月の初演以来、再演を重ねている人気演目だが、すでに当作品の主役を演じている小野絢子、米沢唯、福岡雄大に加え、今回は木村優里がジュリエットに井澤駿と渡邊峻郁がロメオにと、初役に挑戦する。新国立劇場バレエ団が総力をあげて臨む、大原永子舞踊芸術監督ファイナルシーズンのオープニング作品に期待が高まる。

また、公演期間中『ロメオとジュリエット』会場内では、同じくケネス・マクミラン振付作品である『マノン』(2020年2,3月上演)の特別展示を開催する。実際に舞台で着用する衣裳の展示や、マノン役の小野絢子、米沢唯、そしてデ・グリュー役のワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)、福岡雄大、井澤駿からのコメントも紹介。

マノン展示の様子

マノン展示の様子

マノン_過去の舞台写真 撮影_瀬戸秀美

マノン_過去の舞台写真 撮影_瀬戸秀美

さらに、『溺れるナイフ』『ダンス・ダンス・ダンスール』等で知られる漫画家のジョージ朝倉、漫画家・コラムニストの辛酸なめ子が『マノン』の描き下ろしイラストを提供。ジョージ朝倉の描き下ろしイラストには、著作『ダンス・ダンス・ダンスール』のクラシックバレエに魅せられ、男子ながらもプロのダンサーを目指す、主人公・潤平がデ・グリューを、都がマノンを演じる様子が描かれており、貴重な原画も、会場限定で展示されている。さらに、プロフィギュアスケーターで元オリンピック日本代表の鈴木明子、元宝塚歌劇団月組トップ娘役で女優の愛希れいかが応援コメントを寄せている。また10 月 19 日(土)からは『マノン』ツイッターキャンペーンがスタートするとのことなので、あわせてチェックしたい。

ダンス・ダンス・ダンスール書影 (C)ジョージ朝倉/小学館

ダンス・ダンス・ダンスール書影 (C)ジョージ朝倉/小学館

辛酸なめ子

辛酸なめ子

愛希れいか

愛希れいか

鈴木明子

鈴木明子

シーズン開幕に向け、舞踊芸術監督の大原永子からメッセージが到着したので紹介する。

大原永子メッセージ

大原永子舞踊芸術監督

大原永子舞踊芸術監督

ドラマティック・バレエの大傑作、サー・ケネス・マクミラン振付の『ロメオとジュリエット』を私の芸術監督任期最終シーズンの開幕公演として上演いたします。 サー・ケネス・マクミランは20世紀最高の振付家の一人で、日本でこのマクミラン版『ロメオとジュリエット』を上演しているのは、新国立劇場バレエ団だけになります。舞台装置・衣裳、すべてにおいて重厚な豪華絢爛さに溢れた非常にドラマ性が高い作品で、これを高い水準で舞台化するためには劇場としての最高の総合力が必要されることになります。現在のバレエ団はそれを実現し、お客様皆様に存分にご満足いただける舞台をお届けできると確信しております。私がダンサーとして渡英し「ドラマティック・バレエ」と出会い、芸術家として「ドラマティック・バレエ」がどれほど重要であるか、また観客の皆様がそうした舞台をご覧になり、どれほど深く感動してくださるか身をもって知りました。新国立劇場バレエ団ダンサーたちの技術はとても高い水準にありますが、さらに世界水準のレベルを目指して、私が新国立劇場芸術監督に就任してからは、ドラマ性を重視したラインナップを考えてきました。特にマクミランの作品はこの『ロメオとジュリエット』しかり、来年2、3月に上演する『マノン』などダンサーには高い技術と演技力が要求されるばかりでなく、作品への深い理解力といったアーティストとしての資質が問われます。また観客の皆様には、これらのマクミラン作品を通して、バレエという芸術の奥深さ、表現力の豊かさを体感していただけると思います。本作『ロメオとジュリエット』は再演を重ねている人気演目でもあります。ダンサーが全身全霊で表現するこの悲劇の物語をぜひ劇場でご堪能ください。目前で繰り広げられる出来事をぜひ体感していただき、感動を分け合っていただけたらば、それに勝る喜びはありません。今回の上演にあたってパトリシア・ルアンヌ・ヤーン、カール・バーネットの 2 人のコーチ、そして指揮のマーティン・イェーツといった世界一流のスタッフが集結し、彼らの世界最高の専門知識とノウハウを私たちバレエ団に提供してくださっていることに心より感謝いたします。彼らは、2、3月に上演するケネス・マクミラン振付『マノン』でも再び来日予定です。この『マノン』もバレエ団の総合力が問われる、ドラマティック・バレエの最高傑作のひとつです。他にも多彩なラインナップを揃えましたので、観客の皆様が舞台芸術の素晴らしさを劇場で体験くださることを願っております。

ロシアの名門ミハイロフスキー劇場バレエが4年ぶりに来日 ドゥアト版『眠りの森の美女』とフランス革命を題材にした『パリの炎』は強力ラインナップ!

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2019年も残すところ2カ月余りとなったが、今年のバレエのハイライトのひとつになること必定の公演が控えている。ミハイロフスキー劇場バレエの来日公演だ。11月21日(木)~24日(日)東京文化会館で上演されるナチョ・ドゥアト振付『眠りの森の美女』とミハイル・メッセレル改訂振付『パリの炎』は共に日本初演となり見ものである。

当代随一の名匠ドゥアトが吹き込んだ新風

ミハイロフスキー劇場バレエはロシアのサンクトペテルブルクを拠点とする名門で、日本では「レニングラード国立バレエ」として1981年~2012年まで毎年来日し広く親しまれてきた。ロシア・バレエならではの優美なスタイルに貫かれ、主役やソリストだけでなくコール・ド・バレエ(群舞)の隅々に至るまでの一体感に定評がある。2009年にはスペイン出身の名振付家ナチョ・ドゥアトが芸術監督に就任し(2014年まで務め2019年に復帰)、古典バレエのみならず新たな作品を開拓して世界的に注目度を高めているのは周知の通り。このたびは2016年1月以来約4年ぶり待望の来日であることに加え、魅惑的なレパートリーを披露するので胸躍る。

ミハイロフスキー劇場バレエ『眠りの森の美女』

ミハイロフスキー劇場バレエ『眠りの森の美女』

美麗なドゥアト版『眠りの森の美女』

ドゥアト振付『眠りの森の美女』(2011年初演)は古典バレエの最高峰を新たな装いで魅せる話題作。チャイコフスキーの音楽とプティパの原振付を踏まえながらダンスシーンを増やしテンポよく進める。主人公のオーロラ姫の成長そして善と悪の対立をしっかりと描き、アンジェリーナ・アトラジックによる幻想的な舞台美術、洗練された衣裳も相まってドラマティックで美しい舞台に浸ることができるだろう。

ミハイロフスキー劇場バレエ『眠れる森の美女』

ミハイロフスキー劇場バレエ『眠れる森の美女』

オーロラ姫は日本でも人気が高いイリーナ・ぺレン、たおやかな演技が魅力のアナスタシア・ソボレワ、今や劇場を担う実力派アンジェリーナ・ヴァオロンツォーワが競演し、さらに悪の妖精カラボスをレジェンド・ダンサーのファルフ・ルジマトフ(ゲスト)が全公演に登板する。

ドゥアトは長らくスペイン国立ダンスカンパニーを率い、ベルリン国立バレエ団の芸術監督も務めたが、音楽性豊かな動きで語る振付に深みがあり、現代最高の振付家のひとり。名匠がミハイロフスキー劇場のダンサーたちと共に創り再演を重ねる『眠りの森の美女』の日本初演に期待が高まる。

ミハイロフスキー劇場バレエ『眠りの森の美女』

ミハイロフスキー劇場バレエ『眠りの森の美女』

よみがえった一大巨編『パリの炎』

『パリの炎』は1932年にワシリー・ワイノーネンがアサフィエフの音楽に振付した全幕バレエで、フランス革命を題材に民衆が蜂起する姿を描く。ガラ・コンサートで主役のグラン・パ・ド・ドゥに接する機会はあるが全幕上演は限られる。キャラクター・ダンスも豊富なのでダンサーの層が厚い団でなければ上演できない演目だ。

ミハイロフスキー劇場バレエ『パリの炎』

ミハイロフスキー劇場バレエ『パリの炎』

2013年に改訂振付を手がけたメッセレルは2009年からミハイロフスキー劇場バレエのバレエマスターを務め、芸術監督を経てゲストプリンシパルバレエマスターの任にある。名門バレエ一家に育ったメッセレルはワイノーネン版を実際に見ており、映像や資料、関係者の証言にもあたって復刻した。

主人公のジャンヌとフィリップを、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ&イワン・ザイツェフ、オクサーナ・ボンダレワ(ゲスト)&ジュリアン・マッケイが競演する。またぺレンが全公演でミレイユ役として出演。要注目は日本初登場のマッケイである。アメリカ出身の弱冠21歳の麗しの王子様は近年主役・ソリスト役として活躍中。SNSのフォロワーも多く発信力がありブレイク必至だ。

ミハイロフスキー劇場バレエ『パリの炎』

ミハイロフスキー劇場バレエ『パリの炎』

活気あふれるカンパニーから目が離せない

ドゥアトは今秋ミハイロフスキー劇場バレエで『ラ・バヤデール』を新制作し話題を呼んだばかりで、今後もバレエ界をリードしていくだろう。いっぽうメッセレルはロシア・バレエの伝統を継ぎ、クラシック・バレエを踊れるカンパニーの基盤を固めてきた。来日する2演目には両者それぞれの資質が現れているが、共にバレエ団の看板作品で、踊りの見応え満点。活況を呈するミハイロフスキー劇場バレエによる美と迫力にあふれた舞台を堪能したい。

2019年11月来日「ミハイロフスキー劇場バレエ」PV

文=高橋森彦

ウィーンフィルとベルリンフィル、人気を二分する人気オーケストラが同じ週に大阪にやって来る!

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世界に君臨する2大オーケストラ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団クラシック音楽専門誌のファンによる人気投票でもつねに人気を二分してきた二つのオーケストラが、この秋、同じ時期に来日公演を行う。

西日本で唯一両方のオーケストラを、なんと1週間の間に聴くことが出来るのが、大阪中之島に在る音楽の殿堂、フェスティバルホールだ。

仮に年末年始、ヨーロッパに二つのオーケストラを聴きに行くとすれば……、実際このツアーは根強い人気で、定番の商品として専門の旅行社が売り出しているのだが、それによるとベルリン・ウィーン8日間のツアーでお一人様650,000円ほど。もちろん、現地で聴くことが出来るのは、ベルリンフィルのジルベスターコンサートや、ウィーンフィルのニューイヤーコンサートではなく、通常のコンサートだ。

ウィーフィルと云えば、テレビでもおなじみのニューイヤーコンサート! C)Terry Linke

ウィーフィルと云えば、テレビでもおなじみのニューイヤーコンサート! C)Terry Linke

両オーケストラの大阪公演のチケット代金は、ウィーンフィルのS席は37,000円、A席は32,000円に対し、ベルリンフィルはS席43,000円、A席38,000円と、なかなか容易には手を出し難い値段だが、ヨーロッパに行くことを思えば……などと、お金の話から入るのは些か野暮なハナシだが、そこは筆者が関西人のことなのでお許し頂きたい(笑)。

実際に両オーケストラの出演者やプログラムなどを考察していくと、大変魅力的なプログラムを携えて、本気モードで日本公演に臨んでいることがわかる。

■ウィーンフィル大阪公演

まずは第57回大阪国際フェスティバル2019の一環でコンサートが行われる、ウィーンフィルから見て行こう。

シェフを置かないことで知られるウィーンフィルの日本公演のうち、大阪公演を指揮するのは、今年のニューイヤーコンサートでお馴染みのクリスティアン・ティーレマン。ベルリンに生まれ、これまでのキャリアからも、ドイツ・オーストリア音楽の伝統を受け継ぐ指揮者としてウィーンフィルと密接な関係を築いている。

世界中の主要オーケストラを指揮するティーレマン (c) Roman Zach-Kiesling

世界中の主要オーケストラを指揮するティーレマン (c) Roman Zach-Kiesling

演奏曲目を見ると、「これぞウィーンフィル!」と叫んでしまいたくなりそうな3人のシュトラウスの音楽で組み立てられた盤石のプログラム。

今年没後70年を迎えるリヒャルト・シュトラウスの代表作、交響詩「ドン・フアン」、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」と、オペラ「ばらの騎士」組曲で、ワルツ王ヨハン・シュトラウス二世のオペレッタ「ジプシー男爵」序曲と、その弟ヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「神秘な魅力(ディナミーデン)」を囲む、絢爛豪華なプログラム。

魅力的なシュトラウス・プログラムは大阪と東京だけ! (C)Matthias Creutziger

魅力的なシュトラウス・プログラムは大阪と東京だけ! (C)Matthias Creutziger

アニバーサリーイヤーの今年、在阪のプロオーケストラ4団体も共同企画「とことんリヒャルト・シュトラウス」を立て、こぞって彼の作品を取り上げている事でもわかる通り、彼の作品は現代のオーケストラレパートリーの中核をなしている。

今回のプログラムで興味深いのは、ヨーゼフ・シュトラウス「ディナミーデン」とR.シュトラウスの「ばらの騎士」組曲を続けて演奏する事。

「ばらの騎士」組曲の中の「ワルツ」は、「ディナミーデン」をもとにして作曲されたという説もあり、その2曲を聴き比べられることは大変興味深い。

日本オーストリア友好150周年という記念の年に、ウィーンから宝石のような煌めきに満ちた音楽が届けられた。

ウィーンフィルと録音したベートーヴェン交響曲全曲集の評判は頗る良かった C)Terry Linke

ウィーンフィルと録音したベートーヴェン交響曲全曲集の評判は頗る良かった C)Terry Linke

■ベルリンフィル大阪公演

そして、ベルリンフィル。

指揮をするのはベルリンフィルと50年以上に及ぶ関係を築き、今年2月には名誉団員の称号を与えられた巨匠ズービン・メータ。彼の名前は、日本のクラシックファンにとっては特別なものではないか。2011年4月、東日本大震災による原発騒動で海外からのアーティストのキャンセルが続出していた最中、本人の強い意志で来日を果たし、ベートーヴェンの「第九」をNHK交響楽団と演奏したのがメータだった。彼の行動と音楽に励まされたファンは多かったのではないか。その彼が、ベルリンフィルを率いてやって来る。

ベルリンフィルから名誉団員の称号を与えられたメータ (C)Terry Linke

ベルリンフィルから名誉団員の称号を与えられたメータ (C)Terry Linke

ベルリンフィルの来日公演は今回が23回目。そして6年ぶりの大阪公演の舞台はもちろんフェスティバルホールで、なんと2ステージが予定されている。

プログラムは1日目がブルックナー畢生の大作、交響曲第8番。朝比奈隆と大阪フィルでブルックナーの名演が数多く生まれて来た大阪・フェスティバルホールに鳴り響く、メータとベルリンフィルのブルックナー交響曲第8番は、今後のブルックナー演奏のメルクマールとなる最高峰の演奏が聴けるはず。これは聴き逃せない。

ベルリンフィルを指揮するメータの雄姿を見られるチャンスだ (c)Marco Brescia

ベルリンフィルを指揮するメータの雄姿を見られるチャンスだ (c)Marco Brescia

そして2日目は、やはりこちらもリヒャルト・シュトラウスで交響詩「ドン・キホーテ」と、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」という、ファン垂涎モノのプログラム。

ソリストを務めるのは、ベルリンフィルの第1ソロ・ヴィオラ奏者のアミハイ・グロスと第1ソロ・チェロ奏者のルートヴィヒ・クヴァントという、共に楽団の内外でこれまでもソリストも務め、名声を博してきた人物。互いを知り尽くした関係だからこそ生まれるR.シュトラウスの名曲に期待が高まる。

ベルリンフィルの第1ソロ・ヴィオラ奏者 アミハイ・グロス (c)Sebastian Hanel

ベルリンフィルの第1ソロ・ヴィオラ奏者 アミハイ・グロス (c)Sebastian Hanel

ベルリンフィルの第1ソロ・チェロ奏者 ルートヴィヒ・クヴァント (c)Sebastian Hanel

ベルリンフィルの第1ソロ・チェロ奏者 ルートヴィヒ・クヴァント (c)Sebastian Hanel

そしてメインは、ベートーヴェン交響曲第3番「英雄」。ベルリンフィルで「エロイカ」!と言えば、ラトル、アバド、カラヤンに、ベーム、クーベリック、フリッチャイ、シューリヒト、クリュイタンス…と名盤の宝庫だけに、DVDやレコードで耳にして来た愛聴盤と聴き比べてみてはいかがか。

ベルリンフィルは今回が23回目の来日公演。 (C)Stefan Hoederath

ベルリンフィルは今回が23回目の来日公演。 (C)Stefan Hoederath

いずれにせよ最高の指揮者と最高のオーケストラが奏でる最高の音楽を、最高のホールで聴く絶好のチャンス。この日くらいは、いつもより少しお洒落に決めて、音楽の殿堂フェスティバルホールに出向いてみることをお勧めする。

思い切って購入したチケットは、頑張っている自分へのご褒美。非日常の心地よい緊張感がこれから起こる魔法のようなひと時へと導いてくれる。感動は保証されたも同然。ただ、マエストロがオーケストラから紡ぎだす音楽に身を任せていれば良い。演奏が終わり、嵐のような拍手と歓声の中、嗚呼、来て良かったと心底思うはずだ。

あなたはウィーンフィル派? それともベルリンフィル派? いずれにしても、この機会を逃すのは本当にもったいないと思うのだが。

客席数2700席を誇る音楽の殿堂フェスティバルホール

客席数2700席を誇る音楽の殿堂フェスティバルホール

文=磯島浩彰

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